レッドアクシズ基地撤収の翌日 廃墟都市の島
(ランデブーポイントはここだが、なんじゃこれ)
現在長嶺はレッドアクシズの基地から撤退し、無線で連絡のあったランデブーポイントに向かった。しかし本来ならそこには何もない、精々岩礁群のある海域で特筆すべきものもない海域であった。いや、筈だった。
到着してみれば一体は廃墟と化したビル群の佇む島であり、どう考えても衛星の記録には残る様な建物だらけであった。
「あ、頭と胃が痛くなってきた.......。というか、この島は一体誰が後始末するんだよぉ」
長嶺の悲痛な叫びも虚しく、ビル達はただただ佇んでいるだけであった。取り敢えず立ち尽くしていても仕方がないので、シェフィールドらとの合流するビルを目指す。
拠点としている部屋に入ると、中にはシェフィールドとエディンバラの他に別のお客さんも居た。
「あー、確か明石とか言ったな。なんでレッドアクシズ側の技術屋が此処に居るわけ?亡命希望?」
「私共が逃げる際に、勝手について来てしまっていて。仕方がないので、こちらで保護する事にしました」
相変わらずの棒読みでシェフィールドが答える。明石はその横で「きっと、明石を始末しに来るにゃ。守ってくれにゃ。死人に口無しにゃ」と言っている。
「救助信号は出しておきましたので、救援がすぐに到着します」
「りょーかい。なら、廃墟探索にでも行ってくるとしよう。何か使える物があるかも」
そんな訳で部屋を出て行こうとドアノブに手を掛けるが、その瞬間に脳裏に何かが引っかかった。
(待てよ?この島、元は岩礁郡のある海域だった。それとは別に何か.......あ!!!)
一番歓迎できない「とある物」の存在を思い出し、急遽反対方向の窓から飛び降りて、岩礁郡だった頃の中心部へと向かう。しかし途中で、思わぬ者達と出会す。
(うげっ、鉄血の連中だ)
目の前にはヒッパーを除いた鉄血メンバーが勢揃いで、近くの建物の捜索を行っていた。しかもオイゲンが中心部にある禍々しい気を発する、巨大なビルに入っていった。もし長嶺の勘が正しければ、その中に「ある物」がある可能性が高い。本当は行きたくないのだが、行くしかないので後を静かに尾ける。
(頼むから、俺の杞憂であってくれよ。だが、アイツらには伝えておこう)
ビル内部 中階層
「怪しいと思ったけど、気のせいだったかしら?」
(いーや、気のせいじゃない。居る。絶対居る。それも、最悪な事にクイーンがな)
オイゲンが艤装の力か何かで、吹き抜けを上に上りながら偵察している。一方長嶺はワイヤーを一番上に撃ち込んで、そのままエレベーターみたく上がっている。しかし大体、27、8階の所で目の前に白いニット服の女性が立っていた。
「だ」
ガバッ!!
オイゲンが「誰?」と聞こうとした瞬間、長嶺がオイゲンの後ろから抱き付き、首にナイフを当てて口を抑えて自由を奪う。
「んー!ん〜ーー!!」
「いいか、よく聞け。口を閉じろ、さもないと切るぞ」
ドスを効かせて、殺気と怒気を一緒に込めて脅す。観念したのか抵抗しなくなったので、取り敢えずブランコの要領で適当な階に飛び移り、そのまま空き部屋に連れ込んで拘束を解く。
「だ、誰よアンタ!?」
「また会ったな、Süße Freyline?」
「長嶺、雷蔵.......」
「覚えていてくれたか。光栄だ」
さっきまでとは打って変わって、普通の口調で話しているのに少し驚くが、得意の演技でオイゲンはそれを巧妙に隠す。まあ、長嶺の観察眼を前には無意味だが。
「単刀直入に言う。この一帯からは離脱するんだな」
「お仲間でもいるのかしら?」
「逆だ。さっき、白ニット着た奴がいただろ?アレは恐らく、深海棲艦の港湾棲姫と呼ばれる個体だ。お前達、KAN-SENの艤装は深海棲艦には通用しない。しかもアイツはそっちで言うところの、超強化されたセイレーンの上位個体みたいな物だ。もし仮に俺達に気付き、動き出してみろ。アズールレーン、レッドアクシズ、深海棲艦、霞桜、新・大日本帝国海軍の五つがぶつかる泥沼になる」
最早、初っ端から意味のわからない単語しか出て来ておらず、珍紛漢紛である。
「ちょっと待ちなさい。あなた、頭が壊れたのかしら?深海棲艦?五つの陣営のぶつかる泥沼?何を言っているのかしら?」
「お前、聞かされてないのか。お前達レッドアクシズは、アズールレーン共々別世界に転移してんの。で、その転移した世界の住民が俺。深海棲艦って言うのは、そっちで言うところのセイレーンと似た様な存在だ」
「巫山戯ないでちょうだい!!」
「考えても見ろ。俺みたいな強い奴なら、戦場に生きる者として噂の一つ位聞くもんだろ?お前、俺に関する噂を聞いたことがあるか?」
オイゲンには心当たりがない。確かに、あれだけの強さがありながら噂一つ聞かないと言うのは変な話である。
「まあ信じる信じないはお前の自由だが、仲間を守りたいなら中心部からは手を引くんだな。じゃ、俺は帰らせてもらう」
そう言うとステルス迷彩を起動させて、拠点へと戻り一眠りする。翌日目を覚ますと既に周囲を40、或いは50のセイレーン艦、扶桑型2隻が展開し、扶桑の艦上には扶桑と山城は当然として、高雄、愛宕、翔鶴、瑞鶴、古鷹、加古、綾波の姿が確認できた。
これに加えて、鉄血のオイゲン達もいる訳で正直言って、状況は中々に面倒な事になりつつあった。しかしラッキーな事に、アズールレーン側の救援艦隊も到着した。規模もウェールズ、レパルス、エンタープライズ、ホーネット、ベルファスト、クリーブランド、ヘレナ、サンディエゴ、ジャベリン、ラフィー始めとした実力者の多い面子であった。
「どうするにゃ〜!!死ぬにゃ!三味線にされるにゃ!!」
明石がワタワタ慌て、シェフィールドが冷ややかな目でそれを見つめる。一方長嶺は、この状況を打開する策を打ち出していた。
(しゃあない。こうなったら、デモンストレーションがてらに切り札を使うとするか)
長嶺最大にして、最強のの切り札。つまり超戦艦『鴉天狗』の使用である。この状況を打開する為、というか勝利条件はアズールレーンの救援艦隊に合流すればいいのだが、多勢に無勢である。こっちはKAN-SENの数では一応勝ってはいるが、あちらはセイレーン艦が居る事で頭数は遥かに上である訳で、物量と火力に物を言わせて砲撃されれば目も当てられない。しかも廃墟群には鉄血の面々も控えており、撤退も命懸けである。
となると誰かが殿役を務めて囮となり、敵の砲火とヘイトを向けさせている間に離脱する必要がある。そして囮として最適解となるのが、鴉天狗である。目を引く巨大に圧倒的な装甲、火力、機動力を兼ね備え、更にはどんな状況下であったとしても最大限のパフォーマンスを発揮できるのだから、適任以外の何者でもない。
「よし。お前達、俺が囮になるから撤退しろ。スパイは情報を持ち帰るのが、何にも変え難い使命だ。ならば、その使命を果たすんだ」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
シェフィールドが止めてくる。彼女も囮がいるのは分かっているが、一応客人であり自分よりも弱い存在に囮は任せられないと思っているのである。
まあ、その認識はすぐに根底から粉々にへし折られるのだが。
「とは言うが、この状況下で他に方法ないだろ?それにお前達の様な軽巡程度じゃ、あんな場所に飛び込んだら速攻でお陀仏だ。しかも今回は、武装のほとんど付いてない明石という足枷がつく。そうなると、いよいよ囮が必要だろ?」
「そう言うあなたは、歩兵ではありませんか。長嶺様が幾ら強かろうと、歩兵と軽巡では比べるまでもありません」
「まあ見てな」
懐から7枚の黒い式神を取り出しながら、自信に満ちた笑みを浮かべる。
「それは?」
「俺の能力を解放するための鍵だ。俺はこのまま適当に奴らを引きつけるから、お前達は早いとこ艦隊と合流して撤退しろ。俺も頃合いを見て、撤退するから安心していい。あ、それから撤退するときは絶対に中心部だけは避けろ」
「何故ですか?」
「説明する時間はない。とにかく、中心部には行くな!」
中心部に行かない様に釘を刺し、長嶺はビルから飛び降りて立体機動でレッドアクシズ艦隊の方へと飛び立つ。
廃墟ビル島近海 レッドアクシズ艦隊
「もう高雄ちゃんってばまた難しい顔してる。」
「ひゃうっ!?」
愛宕が高雄にちょっかい掛けて、揶揄っていた。何処ぞの女子高生の昼休みみたいな感じである。
「愛宕!何をする!?」
「ほら、肩に力入りすぎてるわよ」
最初は頬をつつかれ、その後は肩に腕を這わせる。でもって腕や腹回りを撫でるような手つきで這い寄り、終いには胸にも手を伸ばしてくる。
「どこまで触っているんだ!」
流石にこれ以上まずいので、愛宕を振り解く。愛宕はそのまま高くバックステップでかわし、残念そうな顔をしている。ふとを上を見上げると、見張り台に綾波が居るのを見つけて登ってみる。
「悩み事かしら?悩みならお姉さんが聞いてあげるわよ?」
そう言って、愛宕は両手を広げて「胸に飛び込んでらっしゃい」と言わんばかりに、手をクイクイ動かしている。しかし綾波はさっきの高雄とのやり取りを見ていたので、謎のファイティグポーズを取って警戒する。
「綾波は大丈夫です。」
「そ、そんなに警戒しなくても.......。戦うのは気が進まない?」
「綾波は重桜の皆が好きです。大事な仲間なのです。でも、向こうも同じなのです」
そう言うと、愛宕は綾波を抱きしめる。身長的に丁度愛宕の豊満な胸が綾波の顔の位置にあるので、少し息苦しそうだが安心はしているようだ。
「変な感じ、です」
見張り台の上でこんな感じの事が起きている間、翔鶴と瑞鶴は偵察機を飛ばして長嶺達を探していた。しかし今回のフィールドはビルの廃墟郡であるため、隠れるには最適であるが見つけるの方は大変である。
「見つけた!」
「瑞鶴、何処にいたの?」
「こっちに向かってる。あの辺りを封鎖して!!」
長嶺の進路上にあるビルの前を翔鶴の偵察機が固め、他の艦艇もその辺りを指向する。長嶺はそれに気付き、ジグザグで艦隊へと肉薄しつつ子鴉を呼び出す。
「みんな備えて!!」
瑞鶴が叫び艦上にいた重桜のKAN-SENは艤装を構えるが、それを既に予見しているのでワイヤーを
「武器を捨てなさい!」
「嫌だ」
「貴様、状況を見ていっているのか?この状況、どう考えても貴様の不利だ」
高雄の言葉に、長嶺は突如笑い出す。
「フフフ、ハハハハ。アハハハハハハハ!!!!」
「何がおかしい、長嶺雷蔵!?」
瑞鶴が構えていた刀を、更に前に突き出して問いただす。
「お前達は俺を「飛んで火にいる夏の虫」とでも思っているのかもしれないが、俺はそこまで馬鹿じゃない。さっきの動き、翔鶴か瑞鶴かは知らないが見ていた筈だ。俺がワイヤーを使って、飛び回っていたのを。
あの島は全体が廃墟のビル郡だから、俺の様にワイヤーを使って飛び回る奴には最高の立地、最強のフィールドだ。だが俺は、そんな最高にして最強の場所を降りて、態々こんなワイヤーを打ち込む場所が皆無な海へと出て来た。この意味、わかるか?」
「それが一体、なんだと言うのです!!」
綾波も瑞鶴同様、前に一歩踏み出す。
「まーだ気付かないか。ならば、答え合わせと行こうか!!」
そう言った瞬間、長嶺の背後から7機の漆黒の戦闘機が現れる。一度上空を通過すると、エンジンのとは別の炎を後ろから吐きながら、炎の軌跡を残しつつ半円を描く様に飛ぶ。
その炎は残り続け段々と巨大な旭日旗の形を成す。そして旗の回り込んだ7機が、炎の旭日旗をぶち破って突き進む。すると後ろから巨艦が姿を現し、完全に出て来ると炎は消え、戦闘機も高度を上げる。目の前に起きた現実離れした光景と、見た事もない程、規格外の大きさを誇る超巨大戦艦を前にKAN-SENは呆気に取られて武器も降ろしている。
そんな事はお構いなく、今度はその戦艦が一気に業火の炎に包まれパーツごとに分解していく。そのパーツ達は炎の玉となり、長嶺の元へと集まり巨大な火の玉を形成する。パーツが全て収まると炎は一気に消え、そこには巨大な艤装を纏った長嶺の姿があった。
「あなた、一体何者なの.......」
「俺こそが新・大日本帝国海軍、連合艦隊司令長官にして、世界最強の特殊部隊、海上機動歩兵軍団「霞桜」の総隊長。そして世界最強の「戦艦の究極形」とも言える超戦艦をこの身に宿した唯一の人間、長嶺雷蔵だ!!!!」
そう言った瞬間、タイミング良くアズールレーン側の砲撃が始まり周辺のセイレーン艦に火柱が上がり、海には水柱が上がる。で、どうやら其れが深海棲艦を呼び起こしたらしく、一帯の空が真っ赤に染まる。
『クルナ...ト.......、イッテイル.......ノニ.......』
港湾棲姫の声がアズールレーン、レッドアクシズのKAN-SEN、そして長嶺の脳内に流れ込む。何方の陣営も完全に混乱し、取り敢えず砲撃が止む。レッドアクシズ、正確には重桜はさっきから現実離れした事ばかり起きている為、さらに拍車が掛かる。長嶺は驚きはするが、「お前らそんな事できたんかい」程度にしか思っておらず、至って冷静である。
『こちらグリム。総隊長、空の色から察するに何か嫌なトラブルの臭いがしてくるのですが?』
「悲しい事に大正解だ。しかも姫級、正確には港湾棲姫が出て来やがった。悪いが、ローリングヘリボーンでアプローチしてくれ。それから多分、鉄血のKAN-SENが中にいるから出来たら助けたい。色々シビアにはなるが、お前達ならできる筈だ」
『お任せを。ランディングゾーンは各大隊ごとにに1箇所ずつ配置し、周辺に展開しているであろう深海棲艦を殲滅しつつ中心部を目指しますが、よろしいですね?』
「頼んだ」
長嶺が中心部に向かおうとした瞬間、偵察に出しておいた八咫烏と犬神から連絡が入る。
『我が主、12時方向より戦艦3隻含む艦隊が接近中』
『こっちは空母5隻と戦艦2隻の大艦隊だよ!』
「わかった。お前達、暴れろ。好きな様に殺れ」
返事の代わり、遥か彼方から咆哮が聞こえる。ではこの二匹の戦い方を見てみよう。
犬神の場合
「アオォォォォォォン!!!!」
「オイ、私ハ味方ダ」
ドーン!!
敵の深海棲艦数隻を操り、同士討ちをさせる。犬神得意のマインドコントロールである。
「氷結地獄!!」
でもって得意の術である氷系の技を使って、一帯を氷で固めてバリボリ食べる。因みに人型の深海棲艦を食べると「巨人みたいな気持ちが味わえる」らしい。
八咫烏の場合
「翼扇!!」
八咫烏の場合は翼を使って竜巻を起こし、効果範囲の全てを上に吹き飛ばす。遠心力で死ぬ事もあれば、吹っ飛ばされて落下死する事もある。ある意味、一番食らいたくない技である。
「弱いな。もう終わりか」
そんな訳で発見の報告から、僅か2分で片が付く。かつて、ここまで深海棲艦が可哀想に思えてくる戦いは有っただろうか?
「さーて、お前達は早いとこ逃げた方がい、ってアイツら何処行った!?」
後ろを振り返ると綺麗さっぱり重桜のKAN-SEN達が消えていた。さっきグリムからの報告や犬神達に命令を出していた隙を突いて、既に島内に突入していたのである。
「って、船体が分解した!!」
しかも乗っていた扶桑も、キューブ状に分解し持ち主である扶桑の元へと飛んでいく。
「はぁ。あー、グリム?仕事追加だ。重桜のKAN-SEN達もどうやら島内に入っちまった。援護してやってくれ」
グリムに命令を追加指示して、自分も島内へと突入して行った。
同時刻 アズールレーン救援艦隊
一方救援艦隊は、深海棲艦に襲われていた。しかも規模がタ級3、リ級5、チ級elite8という中々に殺しに掛かって来ている編成なのである。
「何故攻撃が効かない!?」
「撃ってもダメージが入りません!!」
勿論KAN-SENには対深海棲艦徹甲弾を持っていないし、艦娘でも無いので幾ら撃ってもダメージが入らない。死が間近に迫り、全員の顔が悲痛な物へと変わる。しかし運良くバルク率いる第二大隊が上空を通り掛かり、急遽支援を開始する。
「大隊長、下でKAN-SENの嬢ちゃん達が襲われてます!」
「なら助けるぞ。総員、降下用意!!」
部下達にそう命じると、横に立て掛けてある専用武器のハウンドを手に持つ。
「よっしゃ行くぜぇぇ!!!!」
黒鮫から飛び降りて、盛大な水飛沫を上げながら着水しハウンドの銃身を回転させる。
ギュィィィィィン
「そーれー!!!HAHAHAHA!!!!!」
ブオォォォォォォォォォォ!!!!!!
毎分2万5千発という、規格外すぎる弾幕を展開し深海棲艦を鉄と肉の塊に加工していく。更に他の部下達も降下し、四方八方から弾幕を食らわせる。
「オラオラオラオラオラオラ!!!!」
「グレネード弾、発射だぁ!!」
「対戦車ミサイルもおまけだぜ!!」
さっきまで戦艦含む艦隊で一斉攻撃しても傷一つつけられなかったのに、目の前の兵士達はオーバーキルの域にまで達する勢いでダメージを与えていく。バルクが全弾を撃ち終える頃には、深海棲艦だった物に姿を変えていた。
「いっちょ上がり。で、旗艦はどいつだ!」
「私が旗艦だ」
ウェールズがバルクに向かって言う。バルクはウェールズの方に向くと、ここから撤退する様に伝えた。
「さっきの戦いで経験した通り、お前達の武装は深海棲艦には歯が立たない。雑魚艦であるコイツらですら倒せないなら、あの島の中心部にいる姫級と戦ったら全滅待ったなしだろうよ。だから、今は撤退しろ」
「それは出来ない。あの中には私の仲間達がいる。それも救出艦隊の仲間が」
「大丈夫だ。既に内部には第四、第五大隊が突入しているし、他の大隊と総長、長嶺雷蔵が向かう手筈になっている。その仲間達は俺達が責任を持って、基地に送り返してやるよ」
「感謝する」
頭を下げるウェールズに、仮面で隠れて分からないが微笑むと、部下達を引き連れて島内へと突入していった。一方その頃、先に突入していた第四、第五大隊は合流を果たし中心部に駒を進めていた。
「にしてもよぉ、姉貴。何で別世界の土地に深海棲艦がいるんだろうな?あっちの世界じゃ深海棲艦のしの字も存在してねーってのに」
「私に聞かないでちょうだい。そういうのはボスやレリックちゃんに聞くべきよ?」
「ちげーねー」
ベアキブルの問いにカルファンが答える。実際この2人は深海棲艦に関する知識は余り無く、まだ知識面では見習いである。そんな会話をしながら中心部を目指していると、ベアキブルが手で歩みを制する。
「(どうしたの?)」
カルファンがベアキブルに聞くと、ビルの角を指差す。こっそり覗き見てみると駆逐棲姫とハ級flagship 8隻が居たのである。flagshipまでなら一般の兵士でも対応可能だが、流石に姫クラスとなると大隊長や長嶺クラスの強さが必要となる。
となると駆逐棲姫と取り巻きのハ級を分断する必要がある訳で、作戦会議が始まる。
「で、どうするよ?」
「私のワイヤーや、ベアキブルの武装じゃ火力不足だものね」
「とするならば、我々のグレポンの出番でしょう」
ベアキブルの副官が、竜宮ARのレールに取り付けたM203グレネードランチャーを軽く叩く。
「弾種は?」
「レリック大隊長が試験的に配備している、威力低めの爆風高めな弾、確か「猫騙し」とかいうヤツです」
「ならソイツ使って混乱させて、駆逐棲姫を不意打ちで倒して、真上から襲い掛かってハ級を倒すのはどうだ?」
ベアキブルの提案に、全員がサムズアップで返す。
「それなら、あなた達は上に上がって。準備が整ったら、始めていいわ。後は私達で合わせるから」
「了解」
そんな訳で二個小隊がビルの上へとスタンバリ、猫騙しを発射する。派手な爆音と爆風とは裏腹に、敵へのダメージは少ない。その分混乱しており、隙だらけである。その隙を逃さず、カルファンが鋼糸で艤装を絡め取る。
「セイッ!」
破壊に成功すると、背後からベアキブルがドスを構えて突撃する。
「オラ、オラ、オラオラ、オラオラオラオラオラ!!!!オラァオラァ、もういっちょ!!オゥラァ!!!!!」
ドスで背後から滅多刺しにして、そのまま空高く蹴り上げて「仕上げだ」と言わんばかりに、ドスを落ちてくる瞬間に突き刺す。
「今よ!」
二個小隊、120名も降下し弾丸の雨を降らせる。瞬く間に8隻のハ級flagshipが沈んだのであった。
廃墟ビル島 東側
一方、此方ではアズールレーンとレッドアクシズのKAN-SENが深海棲艦に包囲されていた。しかも運が良いのか悪いのか、アズールレーン側は救出に向かっていた突入艦隊、レッドアクシズ側は鉄血と重桜の全員である。因みにシェフィールド達はちゃっかり脱出しているので、突入艦隊は完全に取り越し苦労である。
「一体何なのよ!!」
「幾ら弾を当てようと、傷一つ付かないぞ!」
「結構ピンチ、かも?」
因みに包囲しているのは戦艦棲姫を基軸にレ級4、ル級8、ヲ級5、ヌ級13、リ級18、チ級25、その他駆逐艦が計38隻という大艦隊である。更には全艦がeliteでもあり、良く生き残ったものである。しかし徐々に一箇所に追い詰められて、いよいよ退路も進む道すらも閉ざされた。
因みに突入艦隊のメンツはエンタープライズ、クリーブランド、ベルファスト、ラフィー、ジャベリンである。
「ナンドデモ.......シズメテ...アゲル.......」
「弱りましたね.......」
「どうやら、ここまでみたいですね。最後にアズールレーンと共闘する事になるとは、夢にも思いませんでしたよ.......」
全員が最後を覚悟した。実際退路は勿論無いし「島津の退き口」みたく敵に突っ込んでも良いが、ダメージを負わせられないならタダの犬死である。結論、死ぬしか無いのである。
しかし次の瞬間、一番外側にいたリ級とイ級8隻が大爆発を起こして沈んでいった。
「アハハ。モシカシテ、ヤツカナ?」
そう言って笑うレ級の前を、4機のF27スーパーフェニックスが通過していった。
「主砲砲撃戦、弾種徹甲榴弾!!全砲門、吹き飛ばせ!!!!」
ドゴォォォォォォン!!!!!
86cm四連装砲9基の同時発射により、敵深海棲艦艦隊の殆どが消し飛ぶ。
「まだまだ行くぞ!魚雷発射管開け!撃てぇ!!」
今度は足に装着された60cm酸素魚雷70本をお見舞いする。薄い装甲の駆逐艦にすら8本近く命中する等、中々のオーバーキルをして一方的な殲滅を始める。深海棲艦側も負けじと艦載機を繰り出すものの、
「敵機捕捉。対空戦闘!!全両用砲、機関砲は敵航空機に集中弾幕射撃!!」
約750の速射砲と約1300の機関砲の前には無意味である。射程に入るや否や片っ端から火だるまか、穴だらけになって海へと沈んでいく。普通ならその弾幕は一隻の船が作り出す物ではなく、何百隻の大艦隊でも無いと作り出せない物であるが、それを一隻で賄っているし、何なら命中率もほぼ百発百中の正確な射撃であり、何か深海棲艦が可哀想なレベルである。
「何か艦載機もウザイし、スーパーフェニックス、やっちゃって」
そう言うと真上から数百機の戦闘機が急降下しつつ、何千の小型ミサイルと対艦ミサイルを放つ。現代戦に対応できる対空火器を持たない深海棲艦は、抵抗こそするも無意味であった。数十隻が弾幕を張っても落とせたのは一発だけであり、残りは全て空母とレ級、他の雑魚艦達に突き刺さり海へと引き摺り込む。
「化ケ物メ!!!」
唯一生き残った、戦艦棲姫が叫びながら応援の艦隊を呼ぶ。しかし応援が来たのは深海棲艦だけではなかった。
ダァン!!
突如、戦艦棲姫が力なく倒れて沈んでいく。次の瞬間、真上に黒鮫が飛来しレリック率いる第三大隊とグリムの本部大隊が降下する。指揮官の戦死に、自分らよりも圧倒的に強い軍団を前に深海棲艦は敗走を始める。しかしそうは問屋がおろさない。
ブォォォォォォォォォォン
黒鮫からの容赦ない弾幕、隊員達の弾幕射撃、レリックのチェーンソー攻撃、マーリンの狙撃、グリムのハッキングによる艤装の機能停止で、完全に殲滅する。
「さて、この際だ。ここで決めてしまおう。主砲砲撃戦、電磁投射砲モードへ。弾種、広域殲滅弾」
主砲の砲身が四分割に割れ、小さな稲妻が砲身内を蠢く。
「主砲、発射ぁ!!!!」
ビルの壁ごとぶち抜いて、港湾棲姫に砲弾を食らわせる。着弾すると巨大な火球を作り出して、港湾棲姫の居た一帯ごと吹き飛ばす。
『こちらマーリン、港湾棲姫は消滅しました。作戦成功です』
斯くして、廃墟ビル群での戦いは霞桜の完全勝利で終結した。
(長嶺雷蔵.......。なんであの人と会うと、こうも心臓がドキドキするのかしら。まさか恋、なのかしら?)
レッドアクシズ基地への帰り道、オイゲンはそう心の中で呟いた。しかし、オイゲンは知る由もない。長嶺は周りから「脳に恋愛に関する物が存在してない」、「ラノベの主人公もびっくりの鈍感さ」と言われる程の超絶鈍感朴念仁男であり、仮に堕とすのなら並大抵の物ではない事を。