廃墟ビル群島から帰還して3日後 会議室
「これが例の黒箱ですか.......」
「俺もマジマジと見るのは初めてだが、なんか禍々しいな」
目の前のテーブルには、アズールレーンではお馴染みの装備箱っぽい箱に入った黒箱、こっちの言い方では「黒いメンタルキューブ」が置かれていた。
「セイレーンの技術を応用したセイレーンの切り札か」
「これがあれば、向こうの量産型のセイレーンを無力化できるのでは?」
マーリンが提案するが、明石が首を振る。因みに今更だが、部屋にいるのはウェールズ、ベルファスト、エンタープライズ、ホーネット、ヴェスタル、クリーブランド、長嶺、マーリンである。
「量産型を操ってるのはオロチの方にゃ。こっちは補助に過ぎないにゃ」
「つまりオロチがメインコンピューターで、こっちがサブコンって認識でいいのか?」
「それに近いにゃ」
明石がそう答えると、長嶺はニヤリと笑う。その顔はまるで、イタズラを考え出す悪ガキの様な顔である。
「ならコイツを介して、オロチのシステムに侵入できないか?俺達の仲間にITのスペシャリストと、物作りのスペシャリストがいる。コイツらに頼めば」
「それも難しいにゃ。明石はオロチの全てを知らないにゃ。もしかすると、赤城と加賀も全ては知らないかもしれんのにゃ。それにセイレーンの技術を流用している以上、何が起こるか未知数で、そもそも侵入できるのかも分からんにゃ」
「オロチとこのキューブ、一体どんな関係があるのでしょう」
ヴェスタルの問いに、ウェールズが答える。
「分かっているのはセイレーンの技術を流用していて、赤城はセイレーンと手を組んでいるという事だけだ」
「それが確かなら、重桜はセイレーンに騙されている事になります」
ベルファストがそう言い添える。その言葉を聞いた瞬間、長嶺とマーリン以外が項垂れる。
「これからどうするんだ?」
「このまま動かない訳にも行かないよね」
クリーブランドの問いにも誰も答えず、ホーネットの考えにも意見は出ない。完全なお通夜状態である。なんかもう他に意見も出ないので会議もお開きとなり、みんなが各々出て行く時にエンタープライズは黒いメンタルキューブに触れていた。すると何故か、ボーッとした顔になる。
「エンタープライズ様?」
「ッ!?」
「如何なさいました?心此処に在らず、というご様子でしたが」
「いや、何でもない。行こう」
そう言うとエンタープライズとベルファストは部屋を出ていった。長嶺も何か気になるので、ちょっと触れてみる。その瞬間、急にキューブが光だして視界が奪われる。段々と視界が戻ってくると、長嶺は燃え盛る大都市のど真ん中に立っていた。
「うおっ!?」
「おいおい何処だここは。ん?ハングル文字に、中国の漢字?ここは中国なのか?それとも韓国?」
場所を特定しようと辺りを見渡していると、目の前の炎が人の形を作り始める。暫くすると炎が消えて、代わりに真っ黒な戦闘用スーツに身を包んだ刀を持った鬼がいた。
「なーんでテメェが出てくるんだ。久しぶりだな、我が心」
長嶺がそう言うと鬼も「あぁ、久しぶりだな」と答える。暫しの沈黙の後、長嶺の意識はまた現実世界へと戻ってきた。
「長嶺、大丈夫か?」
「あ、あぁ。問題ない。俺もこれで失礼するよ」
数十分後 崖の上
会議の後は珍しく何もないオフの日である今日。長嶺は愛銃達の整備を行い、偶に景色を眺めながらジュースを飲むという、中々に優雅な日を満喫していた。
「あ、お兄ちゃん」
土蜘蛛HGの整備をしていると、後ろからユニコーンが声を掛けてくる。
「よお」
「何してるの?」
「ん?あぁ、銃の整備だ」
長嶺がシートの上に分解されて、各パーツ毎にバラバラにされた銃だったものを指差す。
「うわぁ.......。組み立てるの大変そう」
ユニコーンがそう漏らす。実際パーツが多すぎて素人がやったら、多分動作不良を起こす。
「実はそうでもないんだ。どんな銃であっても弾丸を詰め込む弾倉、弾丸を起爆させる機関部、弾丸を回転させる銃身、握る為のグリップ、引き金が必ず付いている。機関部は大体パーツが多いから面倒だが、それ以外は案外楽に分解組み立てられる」
「そうなの?」
「試しにやって見せよう」
そう言うと慣れた手つきで、銃のパーツを組み立て出す。何の迷いなく、まるで工場のロボットアームの様に正確で素早く銃の形にして行く。1分もしない内に、最後のパーツをつけてシートの上に置く。
「おわり」
「すごい.......」
「この位朝飯前だ。さて、後は」
そう言うと横に置いてあったビンを掴んで海に向かって投げる。ビンは放物線を描きながら飛んで行き、その間に土蜘蛛HGを構える。
「ッ!」
ズドン!
爆音が鳴り響くと同時に、空中を飛んでいたビンは砕け散った。
「何をしてたの?」
「一応整備が終わったんだ。試射くらいはしとかないと。さて、整備も終わった事だし、後はゆったりするかな」
そう言いながら、草のベッドに寝転ぶ。久しぶりの暇な一時に、少し身を委ねて安息の時を傍受する。
「お仕事はしなくていいの?」
「今日は何もない。後はセイレーンとか深海棲艦とかテロリストが現れないのを祈るだけだ」
やはりオフの日と言えど、何かあれば行かなければならない。行かなければならなくなった時の面倒臭さと、なんとも言えない気持ちはお分かり頂けるだろう。
「それなら、一緒にお昼寝、しよ?」
そう顔を赤らめながら顔を覗き込んでくる。別にロリコンではないが、一瞬そっち系の扉が開きそうになる。勿論、即刻閉じる。
「いいよ」
そんな訳で「let'sお☆ひ☆る☆ね」である。最近はいきなり「基地潜入しろ」と言われて潜入したら戦争に巻き込まれる羽目になるわ、謎勢力の襲撃は受けるわ、久しぶりに謎の戦闘団が現れるわ、仕事増えるわでブラック企業も逃げるような、労働基準法ガン無視の量の仕事を回していたので、すぐに眠りにつく。
眠り始めたのは14:00頃であったが、目が覚めると時計は17:00を指しており、既に太陽が赤くなっていた。
「ふわぁ、結構寝たな。で、この状況は何」
目が覚めると右側はユニコーンの枕になっていた。ここまではおかしくない。しかし左側に目をやると、イラストリアスが胸部装甲を胸板に乗せながら眠っていたのである。
「どうなってんのよ、マジで」
恐らく世の男性ならば、普通なら心臓の鼓動がはやくなり、愚息を抑えるのに躍起になり、何なら「ちょっとだけ〜」とか言いながら手を伸ばしそうな物であるが、長嶺は最早その程度では動じない。
「んー。あら、長嶺様。おはようございます」
「いや、おはようございますって普通に起きるね。この状況で良く何事もないように振る舞えるね。当たってるんですが」
「当てているのですよ?」
妖艶な笑みを浮かべながらカミングアウトしてくる。まあ長嶺は「やっぱりかよ」という反応しかせず、それが面白くなかったのか少し不機嫌になる。
「んで、一体どうしたんだ?まさか態々、当てに来たり、昼寝しに来たわけでもないだろ?」
「陛下から直々に命令です。明日、ロイヤルとユニオンの連合艦隊で演習をする際の敵役をやれ、だそうです」
「絶対訓練にならんぞ、それ」
そう言うとイラストリアスが笑いながら答える。
「何も敵役は長嶺様だけではありませんわ。他にも何人かつける予定だそうです」
「いや違う違う。そうじゃなくて、俺が敵役になっている時点で訓練にならないんだよ。お前達位の戦力じゃ、多分ダメージはおろか攻撃すら当たらない」
「あら、心外ですわね。それではまるで、私達が弱いみたいじゃないですか」
見るからに不機嫌になっていく。顔は笑っているが、謎の圧力が発生している。だが、その程度では動じるわけ無い。
「イラストリアス、俺の主砲って何センチ砲かわかるか?」
「40cm位では?」
イラストリアスは陣営の中では一番大きな主砲を持つ、ネルソン級の40cmくらいだと思っていた。一応世界最大の艦載砲は大和の46cm砲だし、もしくは超大和型の51cm砲を考えるのが妥当な所だろう。だがしかし、長嶺の鴉天狗はそれを超える。
「残念。俺の使う鴉天狗の主砲は、四連装86cm火薬、電磁投射両用砲だ。これが9基ついてるし、副砲も三連装の46cm火薬、電磁投射両用砲が13基ついてる。装甲も国一つを文字通りに地図上から消し去る兵器を、間近で受けてもビクともしない程度には硬い。多分アズールレーンとレッドアクシズのKAN-SEN達を一度に集めて、やっと勝負になるかなってレベルだぞ」
イラストリアスは最初の辺りから思考が止まっていた。これまでの普通が、いとも簡単に崩壊したのだから当然である。
「んにゅ。お兄ちゃんと、イラストリアス姉ちゃん?」
「あ、起きた。んじゃ、俺は部屋に戻るからクイーンに宜しく。まあもし、する事になっても殲滅するだけだから、そこのとこもよろしく」
結局翌日、急遽演習が行われた。参加する艦艇はアズールレーンの基地にいる全KAN-SENである。一方日本側は、長嶺の鴉天狗のみという戦力差のエグい編成となった。因みに審判役はマーリンである。
アズールレーンの基地から15kmの海域
「それにしても、たかが一隻に対して100隻近い艦隊で挑むなんてね。馬鹿なのか勇敢なのか、分からないわ」
「恐らく前者ですよ、陛下」
エリザベスやウォースパイトを含めた殆どのKAN-SENは「幾ら何でも、この差では向こうに勝ち目はない」という考えであった。しかし先の救出作戦に参加していたKAN-SEN達は、この先の展開が予想できていた。
「陛下はどうして、こんな事をお考えになったんだ.......」
「私も気付いた時には、もう止めようの無い所でしたからね。本当にどうしましょう.......」
特にウェールズにとっては自分の直属の上司であり、ベルファストにとっては自分が仕える相手であるエリザベスの企画という事もあって、胃が痛くなっていた。
一方でユニオン側は実際に戦い方を見た者達、例えばエンタープライズやクリーブランドは「たしかに強いが、戦略次第では案外倒せるかも?」という期待を胸にしていた。
「何でまあ、こんな面倒な事になったかなぁ」
肩をガックリ落とし、盛大な溜め息を吐く。長嶺からしてみれば、たかが晩飯用のウサギを一匹狩るのに軍隊を派遣する様なレベルで無駄な事なのである。
『こちらマーリン。総隊長、準備の程は?』
「棄権してーよ。全く、なんで最近面倒事が多いのやら。連合艦隊司令長官は押し付けられるし、クソ豚野郎の河本派閥*1の奴らから恨まれるし、やっと収まったと思ったら今度は、謎の島で戦争に巻き込まれるし。一体何なんだ」
『棄権は認められないそうなので、頑張ってくださいね』
「他人事だと思いやがって」
もう一回盛大に溜め息を吐いて、既にやる気が失せていた。しかし一つ、天啓が降る。
「ん?いや、待てよ。この際アイツらをサンドバッグにしてボコボコに負かせば、俺のイライラもいい感じに発散されるんじゃね?」
『そ、総隊長?入っちゃいけないスイッチ入ってません?』
「ハハハ、大丈夫だマーリン。ちょっとストレス発散してくるだけさ」
マーリンの脳裏に、真っ黒な笑みを浮かべながらアズールレーン艦隊を睨みつける長嶺の姿が浮かぶ。これからの展開が絶対大変な事になる事が確定した為、アズールレーン艦隊に手を合わせてた。
(アズールレーンの皆さん、ご愁傷様です。恨むなら、演習する事になった己の運を恨んでください)
アズールレーン側にも準備の確認を取り、準備完了と言われたので演習が開始された。
『双方の準備が完了しました。演習を開始してください』
それではここで、演習のルールを説明しよう。弾種は主砲や副砲などの大砲や爆弾には演習用の威力ゼロの代わりに爆風等は殆ど変わらない演習弾、機関砲等の小口径の砲や機関銃にはペイント弾を装填している。ルールとしては今上げた弾種を使っていて、相手に重傷を負わさないことだけ。後はどんな戦法を取ろうが、どんな戦い方をしようが自由である。勝利条件は何方かが全滅するか、降伏するかである。
「まずは艦載機を上げるぞ!」
「了解、エンプラ姉!」
アズールレーン側の初手は艦載機を発艦させる事であった。それは長嶺も同じであり、偵察機兼監視用のE2Dアドバンスドホークアイと戦闘機のF27スーパーフェニックスに加えて、SH60Kシーホークと攻撃ヘリのAH64Eアパッチ・ガーディアンを発艦させる。
「さーて、ラスボスみたく待つのもいいが早く終わらせたいし、突撃するか」
知っての通り長嶺の戦艦にはイージスシステムが搭載されており、艦載機の発艦した反応で空母艦隊の位置は割れていた。一方アズールレーン側の方は、長嶺の位置を割れていない。何なら艦載機が発艦しているのにも気付いていなかった。しかし数分後には、戦いは一気に動き出す。
「何が起きた?」
なんとアークロイヤルのソードフィッシュとフルマーが全機撃墜されたのである。
「アークロイヤル様、どうされたのですか?」
「イラストリアスか。いや、私の艦載機が全て墜とされてしまった.......。一体何が起きたのだ?」
次の瞬間、他の空母からも同じ報告が上がった。しかしエンタープライズとホーネットの2隻の艦載機は、スーパーフェニックスの姿を捉えられた。
「何あの機体!?速すぎるよ!!」
「背中を取っても、次の瞬間には引き離されて弾を当てられない」
エンタープライズ達の艦載機達が追いつけないのも無理はない。スーパーフェニックスの速度は、破格のマッハ5.5を誇る。一方エンタープライズ達の艦載機であるF4Fは、精々500km程度しか出せない。しかし執念でエンタープライズが何とか背中を取る事に成功するも、次の瞬間30mm機関砲8門の斉射を受けて撃墜される。
「アハハ、戦闘機隊が全滅したよ。これ、どうしよう.......」
「いや、問題ない」
実はエンタープライズは先に攻撃隊を上げており、その攻撃隊は長嶺を捕捉する事に成功したのであった。戦闘機を陽動も兼ねてスーパーフェニックスの方に当てた為に、直掩機の援護がない超博打の戦法だったがどうやら成功した様だった。しかし現実は非常で長嶺は気付いているし、何なら戦闘機隊を差し向けてもよかった。しかし敢えて泳がせて、長嶺の元まで来てもらったのである。
「敵機捕捉、対空戦闘用意!!両用砲群、機関砲群、撃ちまくれ!!!!」
射程に入った瞬間、空の色を真っ黒にするレベルの砲火を攻撃機隊に浴びせる。高い命中精度と威力を誇る対空火器の前に、攻撃機隊はなす術なく撃墜された。というか最早、元の機体のカラーがわからないくらいペイント弾の色である赤に染まっていた。
「全機、やられた.......。そしてこの進路、我々の位置はもうバレているな。前衛艦隊を動かすべきだろう」
命令を受けて前衛の軽巡と駆逐が動き出す。さらにその後方から重巡が火力支援の為に、合わせて動き出す。しかし次の瞬間、一気に轟沈判定を受ける事になる。
シュワワワワワワワ!!!
小型ミサイルのADMMが30機のスーパーフェニックスから発射される。その数、実に60,000発。正直、オーバーキルである。
「前衛艦隊が全滅したの!?」
現在生き残っているのは空母と戦艦、それからクイーン・エリザベスの側にいたベルファストしか残っていなかった。
「さてさて、突貫攻撃開始だ!!」
出力の一杯にして、一気に艦隊は肉薄攻撃を仕掛ける。130ノット(約240km)とかいう冗談みたいな速度で迫ってくるのたがら、恐怖以外の何物でもない。
「い、イラストリアス姉ちゃん!長嶺さんが来るよ!!!怖いよ.......」
「おんどりゃ、吹き飛べや!!!!」
85cm砲と46cm砲が火を吹き、一気に殲滅する。まさかの一斉射での全滅に、空母KAN-SENが混乱する。
「お前達には同情するぜ。俺の憂さ晴らしに付き合ってもらってなぁ」
そのまま一番後方にいた戦艦達に攻撃を仕掛ける。魚雷やASM3の飽和攻撃で、撃たれる前に殲滅する。しかし唯一、クイーン・エリザベスとウォースパイトだけ残す。
「陛下、お逃げになってください。ここは私が」
そう言うとウォースパイトは刃を落とした大剣を構えて、突っ込んでくる。しかしそれを片手で受け止めて、力一杯引っ張る。
「うきゃぁ!」
「消え去れ」
後方に旋回していた46cm砲で吹き飛ばす。そして最後のフィナーレは、全砲のレールガンモードによる一斉砲撃で終わらせる。
「ヒィ!あ、貴方!少しは手加減しなさいよ、この庶民!!!!」
「言いたいのはそれだけか。なら、さっさと吹き飛べや!!!」
エリザベスに轟沈判定をプレゼントした瞬間、演習終了の放送が入る。因みに演習時間は、たったの23分という完全なワンサイドゲームであった。
「そんじゃ、俺は帰るわ。仕事あるし」
そのまんま自室に戻り、執務に取り掛かる。数時間後には仕事も終わり、フライドチキンを買いに近くの店に向かう。しかしその道中に、ステルス迷彩をつけた人間とすれ違う。
「ん?おい待て!!!」
長嶺が声を掛けると、女湯の方に走り出す。取り敢えず新開発の平泉とEMPグレネードを呼び出して、追いかける。予想通り女湯に入っていたので、迷わず自分も入る。
勿論中には着替え中のKAN-SENたちがいるが、そんなのは構わずに浴室に突入する。
「キャーーー!!!!」
「覗きよ!!!」
「変態!!スケベ!!死んじゃえ!!」
色々言われているが、そんなの気にしない。長嶺の眼中にはKAN-SENの姿はなく、目の前の敵しかない。
「追い詰めたぞ。だがまずは、姿を見せろ」
そう言うとEMPグレネードを投げて、ステルス迷彩を無効化する。ステルス迷彩が解けると、真っ黒なボディスーツにストームトルーパーの様なメットをつけた人間が立っていた。
「国堕とし、死ね」
そう言うとAKS74Uを乱射する。左手に持っている平泉を展開して、体全体を覆う。
「ワオ、これ使えるな」
1マガジン撃ち終えると、平泉に付いているライトを点灯させて視界を奪い、電撃を喰らわせる。
「オラァ!」
ビリビリビリビリビリビリ
「あぴゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「オラ、動くんじゃねー!!」
しかし何処に秘めていたのか知らないが、平泉で押さえ付けていたが逃げ出す。
「逃すかよ!!」
石鹸を足元に投げ込んで、滑らせる。
「あ、ちょ、あららら!!」
ドゴーーーン
鏡に頭から突っ込むも、今度はナイフを持って攻撃してくる。
「効くわけないだろ!!」
ナイフを持っている手を蹴り上げて、そのまま落ちてきた瞬間にまた蹴って、左肩に突き刺す。
「ウグッ!!」
「もういっちょ行くぞ!!」
今度は掃除用のデッキブラシを構えて、持ち手の先を鳩尾目掛けて突く。「グボッ!!」という鈍い声と共に、崩れ落ちるが後一歩のところで踏ん張り外に逃げ出そうとする。しかし長嶺が前に回り込んで、腕を掴む。
「いい加減、気絶しやがれ!!!!」
空中に一旦投げて、そのままライダーキックを食らわせて浴室のドア、ロッカー、脱衣所と廊下を繋ぐドアをぶち抜かせて、最後は廊下の壁に肩までめり込んで、やっと気絶した。
「手間掛けさせるんじゃねーよ」
そう言い残し、そのまま外に出てめり込んだ奴を引っ張り出して、頭を鷲掴みにしながら駐屯地へと引きずっていった。そしてそれから一時間程してから、部屋に客人がやってきた。
「えぇーと、お邪魔しまーす」
「お前達が来るとは、一体どうしたんだ?」
やってきたのはジャベリン、ラフィー、ユニコーンの3人である。
「えっと、その、悩みがあるんです。長嶺さんなら、何かわかるかなって」
ジャベリンが深刻そうな顔をしながらそう言った。取り敢えず話す様に言って、部屋に入れてコーラを出す。
「んで、悩みって何だ?」
「私、綾波ちゃんと敵同士だけどお友達になりたいんです。これってダメな事、なんですか?」
「兵士が敵同士と友達になるってのは意外とレアケースだが、スパイ同士なら良くある話だし良いんじゃね?おもしろそうだし」
そうサラッと答える。3人は余りにアッサリとした回答に驚く。
「そ、そうですか?」
「あぁ。だけどな、これだけは覚えとけ。綾波は敵というのは理解しているだろ?だから絶対戦場で会う事になる。もし向こうがこっちを攻撃して来ようとするなら、迷わず撃て。戦場では正直「敵とお友達に」なんて、甘え以外の何者でもない。だからまあ、悔いの残らない方の選択をしなさいや」
厳しいアドバイスに3人とも、少し暗い表情をする。さっきまで真剣な顔をしていた長嶺だったが、今度は満面の笑みで3人に別の提案をする。
「さあ、重いのはここまでだ。ゲームでもやる……」
ピリリリリピリリリリ
タイミング悪く、電話が鳴る。出てみるとそれは、グリムからの電話だった。
『総隊長殿、例の襲撃者の正体がわかりました。襲撃者の所属はCIAです』
「おま!!うぇ!?マジで言ってるのか!!」
『これが冗談ならどんなに良かった事か。顔の検索を掛けたら、CIAの極秘部隊の奴らと一致しました。恐らく現CIA局長のウォットシャー・ブラスデンの独断でしょうね。今の大統領は、平和主義で日本とも良好ですから』
「まあ確かにブラスデンの奴は、時代遅れの白人至上主義の野郎だからな。あちらさんとしても、余り日本にシーパワーを独占して欲しくないんだろう。実際、クソジジイの奴も色々アメリカ関係で愚痴ってたからな」
『こっちはもう少し探りを入れますが、お気をつけください』
「あぁ」
グリムとの電話を終えると、そのままマーリンにも連絡して話を通しておく。一通りの作業が終わると、ユニコーンが口を開く。
「お兄ちゃん、何があったの?」
「ちょっと面倒な仕事が増えたってだけだ。それも、過去一な。それよりゲームだゲーム!!」
そんな訳でゲーム大会が始まり、レースゲーで遊びまくったのであった。