最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第二十話レッドアクシズ基地小戦争

重桜との決戦より2週間後 長嶺自室

『未だ詳しい事は分かっていない事ですが、この現象は深海棲艦に関連がある物と見られており』

 

「どうにか揉み消せたな.......」

 

手に持つタブレットには、日本のニュース番組が映っていた。その内容とは重桜との決戦後、オホーツク海に現れた謎の異空間についての特集であった。異世界の住民であるKAN-SENやらセイレーンやらの存在が明るみに出ようものなら他国からの干渉や様々な厄介事が持ち込まれるのは明白なので、長嶺と本国に居る防衛大臣の東川があの手この手で揉み消した結果、どうにか「深海棲艦が引き起こした物」で決着させた。

 

「失礼します、長嶺様。朝食をお持ちしました」

 

「おー、ご苦労さん」

 

椅子の上で「グデー」としていると、ベルファストがカートを押しながら部屋に入ってくる。

 

「お仕事の方は順調ですか?」

 

「どうにか深海棲艦の仕業にして、この間の戦闘や謎空間もKAN-SENやらセイレーンやらの存在は綺麗さっぱり揉み消した。気休め程度にはなるだろう」

 

「それだけやっても気休め程度なのですか?」

 

ベルファストが驚くのは無理もない。帰還してからずっと部屋に篭り、パソコンと格闘しながら電話をしたりして、あっちこっちに手を回していたのである。なのに「気休め程度」と言うのだから、ビックリもする。

 

「日本は艦娘が来た影響で、他国から逆恨みされてんだよ。特にアメリカからな」

 

「アメリカ、ユニオンの事でしたね?何故ですか?」

 

「深海棲艦が存在する前、世界の覇権を握っていたのはアメリカだった。しかし当時は中華人民共和国、そっちでいう東煌がアジア圏の覇権を握ろうとしていた事でアメリカとの軽い冷戦状態に入ったりしていた。

所が中国国内で独裁政権の共産党を倒す為に革命が起き、内戦状態が続いた事で軍事力は低下した。再びアメリカの天下に、と行きたかったのだが予想にもしない敵が現れた」

 

「深海棲艦でしょうか?」

 

「そうだ。国連軍総動員で大決戦を行うも、見事に軍が全滅した上に敵には被害が全く無かったというオチまでついた。そんな最中に日本に艦娘が現れ、期せずして日本は海の覇権を握ってしまった。奴らからすれば、おもしろくないわな。

お陰でアメリカの諜報機関であるCIAは潜入してくるし、同盟国なのに腹の中じゃ敵視されてるって状況だよ。しかもその尻拭いは俺らの元にも巡ってくるもんだから、こっちは溜まったもんじゃねーよ」

 

実際手に入れられた情報を取り返す為に諜報員を殺害したり奪い返したりと、意外と敵としてCIAと関わっていたりする。他にもNSA、KGB、SIS、GCHQ等の名だたる諜報機関と裏で戦争していたりする。因みに本日の朝食はサンドイッチと紅茶である。

 

「いつもながら安定のうまさだ」

 

「お褒めに預かり光栄です」

 

「うんじゃ、褒美代わりだ。これ、持っていけ」

 

そう言って長嶺は一歩の緑色のペットボトルを渡す。

 

「こちらは?」

 

「緑茶だ。日本での紅茶ポジの飲み物と思ってくれ」

 

「ありがとうございます。後で頂きますね」

 

緑茶を受け取ると、ベルファストはカートを押して部屋から出て行った。そして長嶺がサンドイッチに手を伸ばそうとした瞬間、携帯の着信音が鳴り響く。

 

「現在総隊長の電源は切られております。数時間後、お掛けなおしください」

 

『嫌です』

 

「.......で、一体何の用だ。こちとら例の謎空間出現の火消しで、あっちこっちに手を回してたお陰で疲れまくってんだが」

 

電話の相手はグリムである。最早グリムからの電話は面倒事への片道切符化しているので、正直今すぐに電話切りたい思いであるが流石に出来ないので諦めて話を聞く。

 

『二週間前のレッドアクシズとの決戦後、総隊長殿含め全員がオホーツク海の流氷海域に転移しましたよね?先程分かったのですが、あの海域でレッドアクシズの赤城が人型セイレーンに捕まっている姿を衛星で確認しました』

 

「マジかよ.......」

 

『ただし撮影されたのは其方が流氷海域で戦争をしている間でしたので、情報の鮮度自体はとても低い物です』

 

「取り敢えず、どうにかしてレッドアクシズの方に行ってみる。何かしら分かるだろう」

 

そうは言うが、流石の長嶺も何が目的か分からなかった。情報から察するに別にセイレーンとレッドアクシズは「仲が良い」という訳でもないし、赤城と加賀だって一見仲が良さそうに見えるが「仲間」というよりも、「ビジネスパートナー」や「利害の一致」という点でセイレーンと組んでいるように見える。

とするならば単に助けた訳ではなく、何かしらの裏や他に面倒事を起こす為の駒か何かとして助けた様に考えるのが妥当である。流石に死体に用はないだろうから、多分生きているとは思うが何が目的かは正確には分からない。

 

『それからもう一つ。レッドアクシズ方面に向かう、正体不明の潜水艦を探知しました』

 

「潜水艦?」

 

『初めて観測された音紋で何処の国家は分かりませんが、その音紋は旧中国人民解放海軍の保有していた039A型、所謂「元級」が搭載しているディーゼルエンジンと似ていました』

 

「おい待て、中華人民解放軍は2025年の香港革命*1で壊滅、そのまま解散している筈だろ?幽霊じゃあるまいし、何で元級が出てくるんだ?」

 

『此方も目下調査中で、詳しい事はまだ何も。何か分かりましたら、報告いたします。一応、第三大隊は即応可能ですから、何かあれば連絡してください。それでは』

 

「全く、CIAの次は亡霊かよ。特別ボーナス、せびるかな」

 

そんな訳で急遽、長嶺はレッドアクシズの拠点のある島まで飛んだ。出発した頃には東側にあったはずの太陽は、到着する頃には西に傾き赤く輝いていた。

 

 

 

レッドアクシズ基地 西側埠頭

「私に、もっと力があれば.......」

 

瑞鶴は海に沈む夕陽を眺めて、そうつぶやいた。とういうのも、謎の髑髏みたいな兵士との戦闘の後、レッドアクシズ側はアズールレーン艦隊を発見し翔鶴と瑞鶴が殿として残る事になった。

所が敵に覚醒モードのエンタープライズがいた事で、二人してこてんぱんに負けてしまい、更には助けに来てくれた綾波も危険に巻き込んでしまったのである。綾波は敵に囚われ、瑞鶴は軽症で済んだが、瑞鶴を庇った翔鶴は全治一週間の怪我を負ってしまい、瑞鶴は現在自責の念に囚われている。

 

「アレは.......」

 

夕陽の真ん中に、謎の黒い点が見える。その点は近付いているのか、段々と大きくなっていく。

 

「オートジャイロ?」

 

シルエットから察するにオートジャイロというのは分かったが、どの国のオートジャイロよりも洗練された形であった。因みに戦争時代のオートジャイロは知っての通り、主翼を外した飛行機に上向きのプロペラをぶっ刺した形をしている。正直、今のヘリコプターよりかは不恰好ではある。

 

バタバタバタバタバタバタバタバタ

 

「日本軍のオートジャイロ!?」

 

段々と近付いてくる姿に、やっと理解した。胴体と下に赤い日の丸が描かれていたのである。これの指す国家は、日本だけである。オートジャイロは瑞鶴の横にホバリングすると、中から見知った男が降りてくる。

※尚、本来なら霞桜の航空機に国籍証や部隊証は描かれない。

 

「ご苦労だったな、帰投しろ!」

 

「お気を付けて!!!」

 

爆音と爆風の中長嶺と犬神&八咫烏が降り立ち、ヘリコプターは元の方向へと帰っていく。

 

「な、何しに来たのよアンタ!」

 

「ん?おお、瑞鶴か」

 

「瑞鶴か、じゃないわよ!!ここは敵地で、あなたは一応敵なのよ!?」

 

瑞鶴が声を荒げる。

 

「知ってる。だが今日は敵ではなく、メッセンジャーと霞桜総隊長として此処に来ている」

 

「どういう事?」

 

「明石と綾波の件と、赤城についてだ」

 

赤城の名前が出た瞬間に、瑞鶴の顔色が変わった。それを見て長嶺は、やっぱり赤城は帰還していない上にセイレーンからは何も聞かされていない事を察した。

 

「まあ取り敢えず、俺は長門の所にでも行かせて貰うよ。あ、勝手にいくから案内とかしなくて良いぞ」

 

「え?ちょ!」

 

長嶺はそう言うと、ワイヤーで拠点の中心部にある巨大な桜の木の元に飛んだ。

 

 

 

レッドアクシズ基地 中心部 

「多分この辺に。お、発見発見」

 

「何奴!!」

 

長門を発見するも、護衛の江風が刀を抜いて長嶺に剣先を向ける。

 

「ん?まあ怪しい者じゃ、いや、ガッツリ曲者だよな。なんて言えば良いのかね?」

 

「曲者」の単語を聞いた瞬間、江風が切りかかってくる。だがしかし、瞬時に最低限の動きで避ける。

 

「よっと」

 

「クッ!」

 

「ほいさ、えいよ、ほい、あらよいしょ」

 

その後も何度も斬りつけてくるが、その全てを華麗に避け続ける。

 

「フッ!!」

 

痺れ切らして縦方向に両断してこようとしてくるが、ジャンプで避けて刀の上に立つ。

 

「取り敢えず、こっちの話聞いてくれねーか?曲者っちゃ曲者だが、別にアンタらに敵対しようって訳じゃない」

 

「江風、よい。刀を納めよ」

 

「.......ハッ」

 

一旦刀から降りて、刀を収めて貰う。そして長門の正面に、堂々と座って目を見る。

 

(ほう。体こそ小さいが、しっかり支配者としての器が見え隠れしているな)

 

「して、貴様は何者で何をしにやってきた?」

 

「俺の名は長嶺雷蔵。加賀とか他の奴から、名前くらいは聞いていないか?」

 

名前を出した瞬間、長門の顔色が変わり江風の顔も強張る。恐らく、知っているのだろう。

 

「ではお主がやってきた理由はなんじゃ?」

 

「明石と綾波の件での報告、それから行方不明の赤城についても情報があるから伝えに来た」

 

「お主が何故、それを.......」

 

赤城が行方不明だと言う事を当てられて、見るからに動揺する。分かりやすくて、なんか可愛い。

 

「まあ、それは置いておいてだ。明石と綾波はこちらの保護下にある。綾波は新しく友達ができて平和にやってるし、明石に至っては「お客様がいれば、何処でも商売ができるにゃ」とか何とか言って店やってる。品揃えが良くなったって事で、KAN-SENの間で大人気だ。

で、赤城の事なんだが、コイツを見てほしい」

 

そう言うと長嶺は、長門の前にタブレットを滑らせる。画面には、赤城がセイレーンに捕まっている姿が映し出されている。

 

「これは何処で撮ったのじゃ?」

 

「この間の決戦の後、転移先でロシアの偵察衛星に映り込む筈だった物だ。先に言っておくと、衛星というのは空の上にある宇宙空間に浮かばせている、通信や偵察に使われる機械の事だ」

 

「生きておるのか?」

 

「流石にわからねーな。だが仮に死んでいたと仮定して、セイレーンが赤城の死体に用があると思うか?」

 

長門は指を顎に当てて考える。死体に用があるとなると、葬式を上げる位の理由しか見つからないからであろう。まあ長嶺としては葬式の確率より、死体を使った人造兵士の製造や何かしらの実験、もしくは単にセイレーンの趣味か何かという仮定を考えている。

 

「今まで足取り一つ掴めなかった赤城の事がわかった上に、状況証拠とはいえ生きている可能性も示唆できる情報であった。感謝する」

 

「気にしなさんな」

 

そう言うと立ち上がり「明朝に立つから、それまでは適当にゆっくりさせて貰う」と一言言って、中心部から出て行った。

 

「我が主、潜水艦の件は言わなくて良いのか?」

 

「主様の予想通りだったら、此処は地獄になるよ?」

 

八咫烏と犬神の2匹が、謎の潜水艦の件について言わなかった理由を聞いてくる。

 

「余計な心配や不安にさせる要素は入れない方がいい。だから俺は残った。高確率で遭遇する、今日の深夜に合わせる為に」

 

長嶺の考えていた潜水艦の仮説というのが、幻の潜水揚陸艦である。中国人民解放軍が中華人民共和国崩壊後に解散したのは前に書いた通りなのだが、この話にはまだ続きがある。組織としての中国人民解放軍は解散こそしたが、兵士達は中東やヨーロッパの紛争地域に逃げ込んだり、秘密兵器を保有している部隊や特殊部隊の残存兵については、首都である北京が攻撃を受けている合間に脱出して、世界中に散らばったのである。

そしてその中に含まれているとされるのが、秘匿兵器であった潜水揚陸艦と特殊部隊「蛟龍」である。もし仮に例の潜水艦が潜水揚陸艦であり、中身が蛟龍だとしたら、トンデモなく面倒なのは目に見えている。

 

「まあ取り敢えず「腹が減っては戦はできぬ」理論で、腹ごしらえだ!飯屋を見つけるぞ!!」

 

そんな訳で料亭に入り、適当に飯を食べる。そしてそのまま、この辺りで海を見渡せる高層建築の建物に入る。どうやら飲み屋だったみたいで、一番上の空いている所に陣取る。勿論、怪しまれないように酒とつまみの刺身を用意して貰う。

 

 

 

一時間後 長嶺達のいる隣の部屋

「ねぇ、隣の部屋って随分前に入った筈なのに、物音一つ聞こえないわよね?」

 

「言われてみればそうですね」

 

長嶺の隣の部屋には飲みに来ていた伊勢、日向、蒼龍、飛龍、愛宕、翔鶴の6人が居た。

 

「覗かないでくださいよ」

 

一番マトモな蒼龍が、今にも覗きそうな愛宕に釘を刺す。

 

「覗かないわよ」

 

愛宕がそう答える間に、柱にもたれ掛かっていた日向がふすまを勢いよく開ける。

 

「ハッハッハッ、日向の奴やったな!って、え?」

 

伊勢が笑いながら日向を囃し立てるが、開けた奥にいた男を前に固まる。他の5人も見た瞬間に、見事に固まる。

 

「おいおい、いきなり開ける奴があるかよ」

 

敵であるはずの長嶺が、堂々と酒を呑んでいるのだからこうもなる。

 

「何で此処にいるんですか?」

 

一番に口を開いたのは翔鶴である。妹である瑞鶴と最初に接触していた為、基地に長嶺が来ていることは知っていた。流石に隣で飲んでるとは思わなかった様だが。

 

「待っているんだよ。この世に存在を許されぬ身であるのに、存在している屑どもを」

 

次の瞬間、長嶺と横に控えていた犬神と八咫烏の目が鋭くなる。

 

「来たな。犬神、偵察してこい。風神と雷神以外、全種出せ」

 

犬神が窓から飛び降りて海の方へと向かい、八咫烏からは武器が大量に降ろされる。長嶺がそれを装備して、完全武装となる。背中にクロスさせて桜吹雪SRと龍雷RGを取り付け、その上から月華LMGと薫風RLを装備。更に両足の太腿前に朧影SMGと裏に土蜘蛛HG、尻に大蛇GLを装備し、安定の場所に刀も下げている。

 

『主様、敵は予想通り蛟龍。数は一個大隊、約900人。全員がステルス迷彩を装備していて、現在起動中。場所は主様のいる建物から、南西約2km。装備は03式、05式、95式なんかだよ』

 

「うへぇ、一個大隊規模の特殊部隊VS1人かよ。まあちょうどいいハンデか」

 

「(今、一個大隊っていたわよね?)」

「(コイツ、マジで人間か?)」

「(色々常識が通じない人だと思ってましたけど、特殊部隊と1人で渡り合えるんですか?)」

 

後ろで愛宕達がヒソヒソ話している。愛宕達よ、アイツを人間と思うな。アイツは(作者)かご(主人公補正)を受けまくった、ヤベェ男なのだよ。

 

「まずは、EMP発射だ!」

 

ポポポン

 

尻に装備した大蛇GLで、EMPグレネードを投擲する。EMPによる電磁パルスで、兵士達のステルス迷彩を無力化する。ステルス迷彩が切れて混乱に陥った瞬間、

 

ズドォン

 

桜吹雪SRで指揮官をいきなりヘッドショットで倒し、更に混乱させる。これにより900人全員が一斉に連携が取れなくなり、作戦計画を破綻させられたのである。

 

「さあ、地獄の始まりだ」

 

ズドォン、ズドォン、ズドォン、ズドォン

 

連射力に物を言わせて、敵の死体を更に増やしていく。20mm弾の破壊力も相まって、運が良ければ2、3人を一挙に倒している。

 

「クソッ、大隊長の他にも10人が瞬く間にやられたぞ!」

「まさかアイツが此処にいるのか!?」

「あり得ないだろ!?煉獄の主はもう死んだんだ!!撃ち返せ!!!」

 

持っている銃を建物に向けて、撃ちまくる。しかし距離が離れている上、元が中距離程度の射程しかない銃では当たらない。というか狙うことすらできない。

 

「狙撃兵!撃ってくれ!」

 

「わかった!って、1600ヤードはあるぞ」

 

彼我の間は約1600mの距離があり、当たるかどうか微妙である。

 

「だかやるしかな」

 

次の瞬間、覗いていたスコープごと撃ち抜かれて絶命する。他のスナイパーもスコープごと撃ち抜いたり、ヘッドショットで頭を吹っ飛ばして30名近い狙撃兵が一瞬で全滅した。

 

「中隊長!狙撃兵が全滅しました!!!」

 

「対戦車ミサイル、用意!撃てぇ!!」

 

持っていたRPG7を発射するも、弾頭が飛び出した瞬間に弾頭が狙撃されて爆発。撃っていた兵士と、近くの兵士を巻き込んで倒す。

 

「クソォォォォ!!!!」

 

「中隊長殿、そろそろ送り狼が行動を開始します。きっと倒してくれますよ!」

 

何とこのゴタゴタの間に精鋭一個分隊を、長嶺の狙撃している居酒屋に差し向けて置いたのである。しかしそれは犬神と八咫烏に見つかっている上、長嶺自身もそれに気づいていたのだから何とも言えない。

 

「!?蒼龍姉様」

 

「貴女も気付いたのね。長嶺様、下に」

 

「気付いてるよ。この建物の下、入り口付近に一個分隊15人が布陣してる。でもって、突入まで4秒ってとこだな」

 

うさ耳を持っている事から、重桜陣営の中でもずば抜けた聴覚を有する二人ですら、場所はわかっても数や突入のタイミングまでは分からない。それを言い当てた上に、下に敵が居ても動じない胆力に全員が固まる。

 

「来るな」

 

そう言うと階段の死角となる場所に陣取り、中国兵を待ち構える。

 

「手榴弾を投げ込むぞ」

 

隊長の一人がそう命じた瞬間、目の前に飛び出して鎌鼬SGの弾幕を浴びせて先頭の4人を倒す。後ろの兵士達は手榴弾を投げてくるが、土蜘蛛HGで撃ち抜いて、真上で起爆してやり吹っ飛ばす。この間、僅か8秒。

 

「あの数を、こんな容易く.......」

 

翔鶴がそう呟く。その間、また長嶺は敵をバンバン狙撃して倒していた。また倒すのかと思いきや左横に転がって、さっきまでの狙撃ポイントを開けた。

 

「敵は後850ってところだ。合図あるまで待機、背中は任せた」

 

長嶺と重桜側の人間以外、この場には誰もいない。では一体誰か?それは、後のお楽しみ。

この言葉を言い終えたと同時に、下の道に飛び降りて敵陣に突撃する。遮蔽物をうまく利用し、素早い動きで敵を蜂の巣にしていく。最早中国兵側は、弾幕張って弾が当たるのを祈るしか方法がなかった。そんなワンパターンな戦術で倒せる筈もなく、余計に被害を増やしていく。

 

「そろそろ頃合いだな。お前達、撹乱しろ!!」

 

犬神が物陰から飛び出し、八咫烏も真上から急襲する。予想だにしない敵に中国兵達は呆気に取られて、犬神達の方に意識が集中してしまう。

 

「撃て撃て!!」

「何だこの動物は!!弾が効かないぞ!!!!」

「ウガァァァァァ!!!!」

 

悲痛な断末魔と呻き声が支配する中、長嶺は裏路地に逃げ込み、次なる作戦の準備を始める為に移動を始める。所が、思いがけない連中と会う。

 

「で、なんでここに居るんだ?」

 

「それはこっちのセリフです」

 

何とZ23、オイゲン、ヒッパーの鉄血陣営と出くわしたのである。聞けば寮に帰ろうとしたら戦闘が始まり、急遽ここに逃げ込んだそうだ。所が戦闘は収まる気配がなく、動くに動けない状態だったらしい。

 

「一体何なの、アイツら。見た事ない装備だったけど」

 

「亡霊だ」

 

ヒッパーの問いに、亡霊と答える長嶺。勿論、ふざけてると勘違いされて「あんたバカァ!?」と怒られる。

 

「いや、マジでそうとしか言えないんだよ。アイツらは元々、こっちの世界にある国家の特殊部隊だった。だがその国は、もうこの世に存在しない。アイツらはその国と共に消え去るべき、この世に未練を残した者どもだ。そんな奴らを、亡霊と言わずして何と言う?」

 

「.......」

 

黙るヒッパー。まさか、本当に亡霊だとは思わなかったのである。そんな事は気に留める様子もなく、長嶺は「行くぞ」と一言言って目標地点に動き出す。

 

「一体何処に向かうのかしら?」

 

「仲間達が居る場所だ」

 

オイゲンの質問に一言返すと、急に立ち止まる。

 

「どうしたので」

「静かに」

 

長嶺が指を指す方向には、敵が4人いた。

 

「後ろの警戒しとけよな」

 

バレてないのをこれ幸いと、背後から静かに土蜘蛛HGで射殺する。敵を倒すと、また進み出す。歩き続ける事、数分。一行は敵のいる場所と対面になる場所に到着した。

 

「誰もいないわね」

 

「何処に味方がいるんですか?」

 

「まあ見てろって」

 

そう言うと長嶺は携帯で、何処かに電話を掛け出す。掛けた瞬間、中国兵のいる場所と今いる場所までの建物の屋根から、花火が上がる。突然の出来事に、中国兵もKAN-SEN達も呆気に取られる。

 

「野郎共!!!亡霊どもをぶっ殺せ!!!!!!」

 

今まで何もなかった場所から兵士達がいきなり現れ、更に屋根や建物の中にも兵士達が現れる。おまけに上空にも、中国兵を取り囲むように黒鮫がホバリングしている。そして勿論、飲み屋の中にも

 

「だ、誰!?」

 

「いきなり人が現れた!?」

 

狙撃銃を構えた兵士、マーリンがいた。

 

「aim、fire!」

 

「撃ちまくれ!!!」

 

ズドドドトズドドドトズドドドト

ブォォォォォォォォォォン!!!!

 

いきなりフィールドが切り替わり、見た事もない装備で固めた兵士がいて、完全に混乱する中国兵。圧倒的弾幕を前になす術なく、何なら一発も撃つことなく終わった。

 

「終わったな。よーし、死体処理を開始しろ。使えそうな物は剥ぎ取っとけ」

 

「総長、例の潜水揚陸艦、拿捕に成功しやしたぜ」

 

「お、いいねぇ。そんじゃそのまま、本部まで持ってちゃって」

 

「了解!」

 

『総隊長、マーリンです。一部航空機は一度帰投させてよろしいでしょうか?兵装を変えておきたいので』

 

「了解了解。一旦返して、再度また来てもらおう」

 

『了解しました』

 

隊員達も協力して死体処理(と言っても細かく裁断して、黒鮫で海に放流するだけ)をして、レッドアクシズ基地での戦闘は終わった。

 

 

 

*1
2025年に起きた革命。正式には中華民主独立革命と呼ばれるが香港の反乱軍が行った反乱である事から、一般的には香港革命と呼ばれている。この革命により、1949年の韓国より76年間の中国共産党による独裁政権は倒れた。現在は新・中華民国となっており、台湾と和解している。尚、この革命には「4体の化け物が大きく関わった」という都市伝説があったりする。

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