最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第二十一話長嶺の覚醒

翌朝 埠頭

「総隊長、死体の処理は粗方終わりました。それから装備についてですが、殆どが鹵獲できています。現在、帰還する黒鮫に積載しています」

 

「了解した。いつも通り分解して、売るなり再利用するなりしてくれ」

 

「ハッ!」

 

現在レッドアクシズ基地では、先の戦いの事後処理に追われていた。死体処理や残骸の撤去、被害を受けた建物の簡単な応急処置等である。と言っても被害自体は小規模で、もう8割方完了しており殆どの隊員が引き揚げ準備に入っていた。

長嶺自身も帰ったら書かないといけなくなる報告書の山を想像し、如何にして回避するかを考えていたりしていた。しかしある出来事によって、嫌でも戦闘モードに入る事となる。キッカケは地震であった。

 

グラグラグラグラ.......

 

「うおっと、地震か?」

 

「意外とデカいですな。震度3、いや4って所ですかね?」

 

呑気にバルクと話していたが、この地震は普通の地震ではなかったのである。

 

「そ、総隊長。あ、アレ」

 

腕を叩きながらマーリンが海を指さしていた。その方向に目を向けると目の前には、どう見ても全長が900mはある巨大な軍艦が浮かんでいたのである。

 

「何じゃありゃ!!」

 

「おいおい、アレってどう見ても例のオロチ計画のヤツじゃん」

 

他の霞桜の隊員達やKAN-SEN達は驚いてたが、長嶺だけはその姿に見覚えがあった。いつか忍び込んだ時に見た、オロチ計画とやらで作られた艦である。

 

「加賀先輩!!」

 

最初に反応したのは瑞鶴であった。オロチの艦上には先輩である加賀が乗っており、それを止める為に叫んでいたのである。その次に反応したのは長嶺で、長嶺は桜吹雪SRを構えてオロチに銃口を向けていた。

 

「お願い!!加賀先輩を撃たないで!!!!」

 

「心配しなさんな。弾丸は普通の弾丸じゃなくて、発信機だから殺傷能力はねー、よっと!」

 

ダァン!ダァン!

 

二発の発信機弾がオロチにめり込み、起動する。そのデータは長嶺の持っているスマホと、データリンクで繋がっている霞桜の隊員達全員が確認する事が出来ていた。

 

「どうしますか、総隊長?」

 

「まあ、こうなっちまった以上は介入せざるを得ないだろう。お前達はこのまま本国まで引き揚げて、領海への侵入が確認されれば撃滅しろ。言っておくが、手加減する必要はない。もし加賀が対抗するようなら、容赦なく殺せ」

 

「了解しました。では先に帰還します」

 

そんな訳で霞桜の隊員達は江ノ島鎮守府へと帰還していき、長嶺とレッドアクシズのKAN-SEN達はオロチ追撃に出撃した。一方でアズールレーン側もセイレーンの上位個体の一人である、ピュリファイアーの襲撃を受けて基地が半壊しており、おまけに黒いメンタルキューブも奪われていた。色々情報を精査するとオロチと関係があり、そのオロチが動き出している事からオロチ撃滅の為に出撃していた。

 

 

 

南太平洋 戦艦「扶桑」艦上

「なんて事をしてくれたのだ加賀殿。これでは、申し開きの余地は無いぞ.......」

 

「考えが甘かったわ。まさかこんな強引な手段に出てくるなんて」

 

完全にお通夜モードの重桜勢。特に直接の後輩である翔鶴と瑞鶴は少なからずショックだったようで、止められなかった事を悔やんでいる。

 

「加賀さん、どうなっちゃうんですか?」

 

「もしセイレーンと通じていたとあれば、それは重桜に対する重大な裏切りよ」

 

「状況次第では、オロチと一緒に討たなければならないわ」

 

「そ、そんな.......」

 

山城の質問に扶桑と愛宕が答える。控えめに言って状況は最悪であり、ほぼ確実に加賀は討たなければならない。

 

「こんなの嫌なのだ.......」

 

「雪風.......」

 

「綾波が捕まって、赤城がいなくなって、戦いが始まってから嫌な事ばかりなのだ.......」

 

雪風の言葉に、余計お通夜モードに拍車が掛かる。だがしかし、そんな空気をぶち壊す奴がいた。

 

「何を迷ってんだ。裏切ったなら殺せばいいだろ?」

 

長嶺である。勿論全員から睨まれて、高雄に至っては胸倉を掴んで来ていた。

 

「貴様、我らがどんな思いでいると思っている!!!第一、お前に出来るのか!?部下を自ら殺す事が!!答えろ!!!!」

 

「ハッ、愚問だな。勿論殺すさ。いや、というか殺したさ」

 

「何?」

 

「俺はな、昔っから世界の暗部で生きてきた。人も殺しまくったし、時には拷問や略奪だってした。俺は生まれながらのキリングマシーン。命令や自らの任務遂行の邪魔となるなら親兄弟、恋人、我が子、上官、部下、仲間、誰であろうと殺す!!」

 

余りに予想の斜め上を行った回答に、全員が固まっていた。というよりは長嶺の目が怖かったのかもしれない。その時の目が、無機質で感情を読み取らせない様な、坐った目をしていたのである。高雄も本能で危険と感じたのか、地面に下ろした。

 

「とは言ったが、別に俺は生物学的に殺せとは言ってないぞ」

 

この言葉に全員が「はい?」という、何とも面白い顔をしていた。

 

「殺すと一言で言っても、色んなのがある。1番最初に思いつくであろう生命活動を止めて生物学的に殺したり、大切な人や心の依代を破壊して精神的に殺したり、今まで築き上げてきた地位を壊して社会的に殺したりな。で、今回の場合なら「存在を殺す」事をお勧めする」

 

「存在を殺すって、どういう事ですか?無視し続ける事ですか?」

 

翔鶴がそう答えるが、長嶺は首を横に振って「違う違う」と言う。

 

「そうじゃなくて、戸籍とかの記録上では此処で死んだ事にするだろ?そんでもって新しい戸籍を作って、別人として生きてもらう。つまり空母加賀としては死ぬが、命までは死なないって事だ。これなら問題ないだろ?」

 

「つまり加賀は助かるのか?」

 

「あぁ。で、どうやら生物学的に殺さないと行けない連中が来やがったな」

 

ふと下を見ると、近くに控えていた犬神と八咫烏が右側の海を見つめ始めていた。長嶺も同じ方向を見つめ始める。

 

「200、いや300はいるか。戦闘前の慣らしには丁度いい」

 

「我が主、我らはどうすれば良い?」

 

「待機だ。もしかしたら伏兵が乗り込んで来て、そのまま白兵戦になるかもしれん」

 

「心得た」

 

そう命じると長嶺は懐から式神を取り出して、いつも通り鴉天狗を呼び出す。しかし今回は艦娘形態ではなく、艦船形態のまま戦闘する様だ。

 

「さーて、やるか。全艦対空戦闘用意!!主砲副砲回頭!!!弾種、超多重力弾!!!電磁投射砲モードへ!!!!」

 

砲塔が回転し、敵の方向へ指向する。それと同時に砲身が四分割して、砲身内に稲妻が走る。砲身が変形する事なんて考えられなかったのか、KAN-SEN達の目が点になっているが気にしない。

 

「撃てぇ!!」

 

砲弾が発射され、重力の壁を展開する。起爆した瞬間、殆どの艦載機が中に引き摺り込まれて、あちこちから掛かる重力に耐えきれず分解する。更に周りの機体も巻き込んで同様に破壊し、300機はいた艦載機は一気に50機まで数を減らした。

 

「左90°、真っ直ぐ突っ込んでくる。目標まで24,000。撃ちー方始め!!!」

 

たかが一門でも高い連射速度と命中精度を誇る速射砲が、何百門も向けられる。どんなエースパイロットであっても、ワープでもしなければ回避は不可能な弾幕を展開して、その全てが10秒も持たず破壊された。

 

「次は潜水艦だ!!左舷魚雷発射管、開け!!」

 

お次はバレてないと思っていたのか知らないが、艦隊の近くに潜んでいた潜水艦カ級4隻である。25個の60cm魚雷が発射され、もう絶対オーバーキルレベルの攻撃で、何のアクションを起こす事もできず沈む。

 

「いっちょ上がりだ」

 

そうこうしている間に、いつの間にかオロチの近くまで来ていた。すぐに艦娘形態になって、水上に降り立ち攻撃を始める。しかし

 

「なんて数なの.......」

 

目の前には上位個体が50体近くおり、雑魚タイプのセイレーン艦も100隻近く居た。

 

「お前達、行くぞ!!!!」

 

「了解」

「はーい」

 

KAN-SEN達が動揺しているのを他所に、長嶺達は敵に突っ込んでいく。勿論砲弾の雨が降り、KAN-SEN達の誰もが当たると思った瞬間、艦の挙動じゃない俊敏な動きで全弾躱した上に、弱点に正確な砲撃で攻撃を加えていた。

 

「ちょろいぜ!ちょろいぜ!」

 

「氷結地獄!!!」

 

「翼扇!!」

 

一方で犬神と八咫烏も技をバンバン使って、現実離れした戦闘を繰り広げていた。勿論セイレーン側も負けじと反撃してくるが、相手が悪すぎる。全弾避けるか、当たってもダメージが入らず、逆に砲弾や魚雷を貰う。完全に一方的な戦いになりつつあった。この辺りでやっと平静を取り戻したKAN-SEN達も参戦し、更に敵の数を減らしていく。

 

「可愛いお客さんね。歓迎すr」

ザシュッ

 

上位個体のセイレーンですら、セリフを最後まで喋らせてもらえず長嶺に切り捨てられる。こんなんじゃセイレーン側はマトモに戦えないと思っていたが、ある暴挙に出る事で攻撃を開始した。

 

 

シュゴォォォォォォォォォ!!!!

 

 

「おい嘘だろ!?」

 

何と大型巡航ミサイル二発を撃ったのである。対応しようにも、セイレーン艦が邪魔してきて撃てない。

 

「クソッ、このままじゃ迎撃不可能になる!」

 

「お困りのようね」

 

反重力装置で飛んでいるオイゲンが応援に駆けつけてくれて、周りの敵を一掃する。

 

「これ迎撃行けるのか?」

 

「さっきのフリッツXもどきの攻撃の事かしら?別にこっちには被害を齎さないんだし、放っていいんじゃないかしら?」

 

「いや、あの兵器は放っておいたら不味い。飛んでいった方向にはレッドアクシズとアズールレーンの基地がある。恐らく弾頭は形状からして、核弾頭の可能性がある。もしそうだとしたら、基地は一撃で消し飛ぶ事になるんだ」

 

レーダーの情報を頼りに探すが、もう迎撃不可能な所まで飛んでいってしまっていた。

 

「クソッ、ダメだったか!!!」

 

「どうしようもできないの?」

 

「あぁ。こうなったら外れてくれるか、弾頭が核でない事を祈るしかない」

 

幸にして核弾頭ではなかったがその威力は凄まじく、何方の基地も全壊していた。まあ何方の基地も全員が出払っていて、人的被害はゼロであるが。

 

「何か作戦とかは無いわけ?」

 

「生憎俺の専門は対人戦と対深海棲艦戦だ。セイレーンとの戦闘は、そっちが専門だろ?」

 

「私は指揮官ではないのよ」

 

「作戦とは言えねぇが、片っ端から敵を沈めろ!!」

 

作戦とは言えない脳筋な策に、「本当に作戦と言えないわね」と漏らすオイゲン。だが長嶺の場合は、大体の敵ならこれで倒せてしまう。そんな訳で量産艦をボッコボコに倒していった。

 

「女王陛下に、栄光あれ!!!!」

 

アズールレーン艦隊も到着し、攻勢を開始する。量産艦は大半をレッドアクシズ、正確には長嶺が倒した事で殆どの火力をオロチに投射できたが、一つ問題があった。

 

「攻撃が通らない!?」

 

「シールドが貼ってあるんだ!」

 

砲撃、爆撃、雷撃の全てが弾かれてしまう。一点に集中攻撃しても、ダメージは入らない。

 

「主砲副砲射撃準備!!弾種、徹甲弾!!電磁投射砲モード!!」

 

レールガンと徹甲弾の合わせ技と、全砲による一点集中攻撃でバリアを破ろうとするが、これですら受け付けない。

 

「無駄だ。オロチは倒せん」

 

「加賀!?」

 

「貴様如きに、姉様の邪魔はさせない!!」

 

後ろを振り向くと、加賀立っていた。しかも臨戦態勢で。手には式神を持ち、艦載機が上空を飛び回っている。

 

「どうやら、倒さないといけないみたいだな。お前程度に倒せるかな?この超戦艦「鴉天狗」を宿した俺を!!!」

 

「抜かせ!!!」

 

まず攻撃してきたのは九九式艦上爆撃機であった。急降下爆撃で兵装を破壊するつもりだったのだろうが、たかが27機程度では倒せない。

 

「取ったぞ!」

 

「それはどうかな?」

 

ブオォォォォォォォォォォォォン!!!!!!

 

機関砲による弾幕で、呆気なく全機が火だるまとなる。九七式艦上攻撃機による雷撃も加えようとしてくるが、其方も迎撃する。

 

「貴様!!」

 

今度は単に式神を使った炎攻撃をしてくるが、刀で式神ごと叩き斬る。

 

「あり得ない.......」

 

「何を驚いているんだ?たかが攻撃を全て躱しただけだぞ?砲撃しろ。弾幕を張ってみろ。航空機で突っ込んで見ろ。どうした、楽しい楽しいパーティーはまだ始まったばかりだぞ?さぁ、かかって来い。さあ、さあ、さあ‼︎」

 

「あぁ、やってやるとも!!!!」

 

頭に血の上った加賀がワンパターンに殴りかかってくる。勿論動きが予測しやすいので、後ろに回り込んで刀で頭を叩いて気絶させる。

 

「ぐっ!?」

 

「さて、何か少し進展した感あるが、状況は全く持って変わってないんだよなぁ。こんな事だったら、アイツらも連れてくるべきだったか」

 

霞桜全員で当たるべきだったと後悔するが、後の祭りである。どう自体を打開しようかと考えていると、頭上を何かが物凄いスピードでオロチに向かって飛んでいった。その独特な形状に、長嶺は見覚えがあった。

 

「ASM3!?一体何処から」

 

今度は頭上のセイレーン機が爆発し、撃墜された。周りには戦闘機もいないし、弾丸も当たっていなかった。次の瞬間、その爆炎を突き破って一機の戦闘機が飛び出してくる。

 

「F22ラプター!?」

 

アメリカのロッキード・マーティン社製の戦闘機、F22ラプターの姿である。アメリカ空軍かと思ったが、よく見ると垂直尾翼には青い八の字リボンと、それを突き抜けるレイピアの様なマーク。その後ろに地球というマークが描かれていた。

そのマークを使う飛行隊はただ一つ、江ノ島鎮守府所属の最強航空隊「メビウス中隊」である。

 

『こちらメビウス1。提督、加勢に来ました。みんなも一緒です』

 

「みんな?」

 

『上を見てください』

 

そう言うので上を見てみると、霞桜の隊員達が飛び降りて銃を構えたまま敵艦に突っ込んで行っていたのである。得意の戦法の「空挺強襲」である。

 

「あのバカども!!帰還して本国の防衛を命じていたのに!!!!」

 

『総隊長殿ー!!ご無事ですかー!!』

『総隊長ー!軍法会議なんかクソ喰らえですよーー!!』

『総長ー!!生きてやすかーー!!』

『総隊長、助けにきた』

『ボース、助けに来たわよー!!』

『親父ー!!喧嘩すんのに呼ばないのはヒドイですぜー!!』

 

無線で長嶺にメッセージを送ってくる。それ以外の一般の隊員達も心配の言葉や、安心しろという声が聞こえてくる。

 

「ホントにバカで、自慢の奴らだ!!」

 

隊員達が着水し、オロチをグルリと取り囲む。マーリンとグリムは長嶺の元に駆け寄り、謝罪してくる。

 

「総隊長、命令に反き申し訳ありません。後から、どんな処分でも受けます。ですが今しばらくは見逃してください」

 

「総隊長殿、責任は私にもあります。処分は私にも」

 

「処分どころか大助かりだ。丁度さっき、本国防衛に回したの失敗したって後悔してたんだ。ラッキーだったよ、ホント。

今の状況なんだが、正直面倒になっている。取り敢えずレッドアクシズとアズールレーンは共闘体制には入ったから問題ないとして、いかんせん防御が硬い。シールドを破らん事には、オロチ本体への攻撃が出来ない。もうこうなったら、飽和攻撃しかない」

 

「レールガンと徹甲弾は試したので?」

 

「全門斉射のオマケ付きでやってみたが、ヒビも入らなかった」

 

そこまで言うと、グリムはニヤリと笑って「5分程待ってください。最高の援軍が来ます」と言った。取り敢えずその考えに従い、その間に準備を始める。すると何処からともなく砲弾の雨がオロチに降り注ぎ、大爆発を起こす。勿論オロチは無傷だが。

 

「待たせたわね!円卓の騎士の到着よ!!」

 

クイーン・エリザベスと長門率いるアズールレーンとレッドアクシズの連合艦隊が到着し、支援を開始したのである。どうやら事前に知っていたのは当事者達とベルファストのみだったみたいで、KAN-SEN達は驚きまくっていた。

 

「余は長門。重桜の長門である!これよりレッドアクシズとアズールレーンはセイレーンを打倒する為、連合艦隊を結成する!!」

 

「我々は掲げる思想は違えど、思いは一つです。私達は戦う為に作られた存在。私達は____!」

 

「私達は世界を救う為に生まれてきた。行こう、戦士達よ!!命を燃やせ!!!」

 

エンタープライズの叫びに、全員が鬨の声を上げる。

 

「所でエンタープライズ様。何か作戦はあるのですか?」

 

「そ、それは」

 

「作戦ならあるぜ」

 

後ろから二人に長嶺が声をかける。その横には副長のグリムを連れている。

 

「それで長嶺様、作戦とは?」

 

「グリム、説明してやれ」

 

「はい。スキャンした所、オロチの貼るシールドは攻撃を全く受け付けていませんが、数ヵ所にシールド同士の結合が弱い箇所があります。そこをピンポイントかつ同時に攻撃出来れば、ほぼ確実にシールドは破壊できます。

破壊すべき要所は全部で8箇所です。各陣営で一つずつ対応してください。残りの四つはこちらで対応します」

 

「了解した。皆に伝えよう」

 

エンタープライズも了承し、この作戦にかかる事となった。船首部分をユニオン、右舷前方をロイヤル、左舷後方を重桜、船尾を鉄血、左舷前方を霞桜、左舷中心部と艦直上を長嶺、右舷後方を増援部隊が対応する事になった。

配置を完了した頃、増援部隊も到着し空挺降下を開始した。で、その増援部隊というのが

 

「戦艦大和、押して参ります!!」

「吹雪、参ります!!」

「Follow me!!皆サーン、ついて来てくださいネー!」

 

なんと江ノ島鎮守府の艦娘達(全員)だったのである。これには流石の長嶺も「俺も規格外だが、コイツらも規格外だったのか」と内心突っ込んでいた。

 

「それじゃ作戦開始、だな」

 

全員が目標地点に照準を合わせる。長嶺の方も艦載機を直上に待機させ、ミサイルとの一斉攻撃を加えせる準備を行う。

 

「行くぞ!!攻撃開始!!!!!」

 

一斉に砲弾が放たれ、直上にも丁度のタイミングでASM3とトマホークが突き刺さる。

 

ドゴォォォォォォン!!!!!

 

シールドを破り、何発かが船体にも命中する。

 

「この機を逃すな!!!!航空隊、攻撃開始だ!!!!!」

 

直上からはドーントレス、彗星、スクアMk.IIが迫り、水平線からはデヴァステイター、天山、ソードフィッシュが迫る。かつての大戦で大空を駆けた航空機達が同じ空を行くと言う、何とも言えない気持ちになれる一コマである。これに加えて大和型の46cm砲やら何やらで吹っ飛ばされ、一気にオロチ劣勢へと切り替わる。

 

「この演算結果は受け入れ難い。赤城、お前はもう要らないな」

 

そう言うと天城の姿をしたオロチが、赤城を艦上から突き落とした。見るからに約100mはあり、落ちたら一溜りもない。

 

「天城姉様?」

 

落ちていく赤城に最早何も出来ることはなく、死を覚悟するだけだった。しかし次の瞬間、グラップルによる立体機動で長嶺が赤城を助け出す。

 

「長嶺、雷蔵?」

 

手近にいたKAN-SENの方の瑞鶴に赤城を任せて、長嶺はオロチと対面する。

 

「貴様が全てのイレギュラーだ。貴様がいなければ、全てがうまく行ったと言うのに」

 

「悪かったな。だがアンタの野望もここまでみたいだな」

 

「フッ、この程度では終わらない。寧ろここからがスタートだ」

 

そう言うと突如、もう一組の腕がオロチに現れて武器を握る。しかしその武器というのが十文字槍、3mはある大太刀、鬼が持ってそうな棍棒の3つであった。

 

「この世で1番強い武器だ。これを前に、恐れ慄くがいい」

 

どこで……

 

何処で手に入れた、オロチ!!!!

 

見るからにガチギレしている。身体中から本当に赤黒いオーラを滲ませ、声を張り上げる。

 

その武器はなぁ、お前の様なクズが使っていい武器じゃねぇ!!!!その武器を使っていい奴らは、もう死んだんだ!!!

 

「何をそんなに怒って」

 

お前は俺を完全に怒らせた。その武器を使う罪、万死に値する!!!!

 

オロチも何故怒っているのか理解できず、オドオドしている。ついでに言えば長嶺以外の全員、KAN-SENも、艦娘も、霞桜の隊員も、あの八咫烏と犬神でさえ、驚きと恐怖を隠しきれていない。そんな皆を他所に、長嶺はどういう訳か空に浮かび出す。

 

「我ら四人、日出る皇国の盾にして、矛なり。我ら身命を燃やして、この皇国の権化とならん。我ら、ここに誓いて、古より続きし盟約に従いて、その力の全てを継承せん。それこそが我ら鴉天狗の使命なり」

 

何かの呪文か、はたまた俳句や和歌の一節かは知らないが、それを唱えた瞬間、長嶺の使う艤装が真っ赤に光る。その光は段々と広がり、長嶺の全身を覆う。完全に覆われて姿が見なくなると、その光は水平線まで広がり夜の様に暗くなる。これにはKAN-SENは勿論、長嶺と肩を並べて戦ってきた艦娘と霞桜の隊員達も驚いている。

しかし、変化はそれだけに留まらない。今度は何もない水面の筈なのに、水中から様々な高さの廃墟のビル群が浮上してくる。

 

「うお!?!?」

「何!?!?」

「あ、愛宕!!」

「高雄ちゃん!!」

 

そのビルは仲間達を分断してしまう。しかし、どうやらビル自体には当たっても擦り抜ける様で、何も怪我も無かったし屋上に移動してもいなかった。

 

「何だこれは.......」

「まさかこれも、黒箱の力なのか.......」

「こんなの分からないっぽいー!!」

 

全員が余りの光景に呆気に取られているが、さらに驚く事が起きた。何と、武装した兵士達が此方に突っ込んで来たのである。勿論、全員が武器を構えるがビルと同じように貫通していく。ある程度走ると突っ込んできた兵士たちは、1人、また1人と倒れていく。その顔は苦痛に悶え、体は欠損の酷い者もいた。

その余りの姿に、百戦錬磨の霞桜の隊員達でさえ叫びを上げる。そんな状況でパニックになっていると、東西南北の方角から4人の巨大な鬼が現れる。

 

「今度は何なんだよぉぉ!!!!」

「化け物!!!!」

「殺せる物なら殺してみやがれ!!鬼野郎!!!!!!」

 

さっきまでのパニックに拍車が掛かり、阿鼻叫喚の地獄絵図となる。しかし鬼達は襲うでもなく、ビル群の外で止まると槍、棍棒、大太刀、刀を中心に向かって構える。

次の瞬間、長嶺が艤装を展開した状態で中心地に現れて艤装から眩い光が溢れ出す。その光は艤装を中から破壊して行き、いつの間にか主砲と副砲はそれぞれ五連装砲と四連装砲となり、足の靴に当たる部分は噴射口となり、背中にアズレンのニュージャージーの様な丸い輪を背負い、右側の艤装には巨大な19個の砲身が追加され、左側の艤装には下側に新たに主砲二基と副砲四基に武装が変わっていた。武装が変わると、ビルも死体も鬼も、何も無かった様に消えた。

 

「空中超戦艦、鴉天狗!!!ここに見参!!!!さあ、殲滅の時間だ!!!!」

 

次の瞬間、一気にオロチの元にワープし空中へとアッパーで吹っ飛ばす。

 

「ぐはっ!」

 

そしてそのまま何度も刀で細切れに切っていく。その姿は正に「鬼神」そのものである。オロチがまた水面に戻る頃には、オロチだったものになっており、原型は留めていなかった。

 

「眠れ、我が友人達の忘れ形見よ」

 

 

「想定外すぎる結果だったわね。おもしろいデータが取れたわ」

 

「まさかオロチがやられるなんてね。それにあの武器、データを渡したのはオブザーバーでしょう?一体何だったの、アレ?」

 

「アレはねテスター、文字通りの記憶だったのよ。まさか覚醒するとは思わなかったけどね」

 

「ふーん、まあどうでもいいや。これからどうなるか、楽しみね」

 

オブザーバーとテスターというセイレーンの上位個体達の二人は、会話を終えると何処かに消えていった。画して、秘密裏に行われた海戦は一応の終結となった。

尚、報告書の山で長嶺が精神崩壊したのは言うまでもない。

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