最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

27 / 130
第二十四話ハイウェイバトル

翌朝09:00 江ノ島鎮守府車寄せ

「よし、全員揃ってるな。乗ってくれ」

 

そう言って長嶺達は迎えに来たマイクロバスに乗り込み、各々好きな席に座る。で、やっぱり各陣営や同じ派閥の方に座っていくのだが、一人驚きの行動に出るKAN-SENが居た。

 

「ふふふ♡」

 

「あー、赤城?お前、加賀の隣でなくて良いのか?」

 

「はい!問題ありませんわ」

 

なんといっつも加賀と一緒にいる赤城が、長嶺の隣を陣取ったのである。赤城と加賀は尻尾のある関係で、座席を二人分取る。その為通路挟んで隣同士になるのかと思いきや、長嶺の座る一番前の座席の隣に陣取ったのである。

 

「いや、お前が問題ないなら良いんだが.......」

 

そう言ってチラリと後ろを見ると、オイゲンが物凄いオーラを出してこっちを見てくる上に、エンタープライズとベルファスト、それにイラストリアスまでもが羨ましそうにこっちを見ているのである。だが鈍感ニブチン野郎の長嶺は、それが好意による物と気付いておらず、ずっとはてなマークを浮かべていた。

 

「閣下、出して宜しいでしょうか?」

 

「あ、あぁ。出してくれ」

 

「はい」

 

運転手にそう命じ、防衛省へと向かう。でその間長嶺は、ずっと眠っていた。何せ昨日一睡もしておらず、ここのところマトモに眠れてなかったのだ。そりゃ寝たくもなる訳で、出発して数十秒しないうちに意識が闇に落ちていった。

 

 

 

約1時間後 防衛省 防衛大臣執務室

コンコン

「失礼します!」

 

一応、公の場であるので、いつもの砕けた感じではなく普通の上官と部下と同じように振る舞う。中に入ると既に東川が会議用の机に座っていた。

 

「新・大日本帝国海軍、長嶺雷蔵元帥、帰還いたしました!!」

 

「待ちかねておったよ、長嶺」

 

東川も立ち上がり、お互いに堂々たる直立不動の敬礼で挨拶を交わした。KAN-SEN達も中に入れて、簡単な会議というか報告が行われた。

 

「さてさて。では長嶺、報告を」

 

「ハッ。調査した所、其々の島は同じ異世界から転移してきた物と判明いたしました。人口構造物のある島に潜入しました所、KAN-SENと呼ばれる、艦娘に近しい存在との接触に成功しました。ご承知の通り、今目の前にいる彼女達がそのKAN-SENです」

 

そう言ってKAN-SEN達を見てもらう。全員可愛いので、東川も口角が緩んでいる。決してイヤらしいことは考えていない。

 

「大臣。念の為言っておきますが、彼女達に手を出そう物なら問答無用で弾丸をぶっ込みますよ」

 

「わ、私を何処ぞの河本の様に言うでない!!それに貴様を本気で怒らせた時の恐ろしさは、この国、いや世界で一番知っとるわ」

 

「えぇ。対象とともに、国が一つ滅ぶでしょうね」

 

なんとも爽やかな笑顔で、どう考えてもヤバい発言をする。この男の場合、マジで前科がある上に冗談抜きの強さなので笑えない。

 

「東川とか言ったか。それで、本当にコイツはそんなに強いのか?」

 

「そうだとも。えぇーと、あ。ソビエツカヤ・ロシア殿」

 

未だ本気の戦いを見た事が無いものにとっては、長嶺の強さは御伽噺が関の山である。勿論、見た事がある面々に関しては「普通にあり得そう」程度には認識している。

 

「そうだ!長嶺、お前一回俺と戦ってみろ」

 

「嫌に決まってんでしょう。こちとら何処かの大臣様に仕事を一日で終わらせろとか言われて、折角歓迎パーティーとかしてたのに、それに参加しないで仕事して、結局終わったの朝で全然寝れてなくて疲れたんです。そうだ、ボーナスも今貰います」

 

「それなら、俺と戦った褒美にボーナスを受け渡」

 

次の瞬間、東川の座っていった椅子の肘置きが粉々に砕け散った。東川は横に風を感じたので、恐る恐る見てみると横には長嶺の足が肘置きに刺さっていた。

 

頭かち割って、いっぺん死んどくか?

 

「は、話せばわかる」

 

ボーナス、寄越せ

 

「はい.......」

 

世界最強の兵士に勝てる訳もなく、横にあった銀のアタッシュケースを机の上に置き中身を見せる。

 

「まあ、妥当な所だな。5億って所か」

 

「それからコイツも」

 

今度は別のアタッシュケースを開ける。中身は日本円ではなく、ドル札であった。

 

「大体2000万ドルか。ドル札なら、こっちは霞桜の予算だな」

 

「どちらも洗浄済みだから、足のつく事もない。好きに使え」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

霞桜の予算というのは、流石に大手を振って財務省に予算要求できない。その為、防衛省のさまざまな予算に上乗せして会得しているのである。しかしこれだけでは心許ないと感じた長嶺と東川が考え出したのが世界中に様々な業種のダミーカンパニーを作り、その売上金を持ってくる方法と殺害した対象の裏に貯めていた汚い金の隠し財産の接収、さらに倒した敵の死体から剥ぎ取った臓器や武器を闇に売るという方法である。カルファンとベアキブルと言った闇の人間をスカウトしたのも、これが理由である。

色々法的にヤバいが闇の中でもマトモなところであったり、悪の中でも「ダークヒーロー」的な組織だとか、民族や国を有るべき姿に戻す為に戦っている組織に流しているし、その得た金は全て霞桜の資金、つまり国家や場合によっては世界の為に使われているので、実質プラマイ0というのが言い分である。

 

「それじゃ今からは、個人個人と面談をさせて貰う。待ってる間は、好きなようにしていてくれ」

 

という事で、KAN-SEN達は東川との一対一の面談を受ける事になった。と言っても簡単なもので精々20分、長くても30分程度の物であった。内容については省くが「KAN-SENというのは、ぶっ飛んだ奴かキャラの濃い奴しかいないのか!?」と後から東川が突っ込んだので、まあ察して貰いたい。格好が露出狂(ホーネット&オイゲン)重桜の元祖ヤベー奴(最早説明不要)戦闘狂(加賀)

見た目の割にポンコツ(ロシア)etc。マトモな奴のが少ない。確かに艦娘にも中々濃いのはいるが、KAN-SENのはそれを超えている。

 

「指揮官。どうやら、あなたも対象みたいよ?」

 

「俺もかよ」

 

最後に面談を受けていたオイゲンが、長嶺を呼び出す。呼ばれたからには行かないといかんので、取り敢えず部屋に入る。

 

「おお。悪いが、お前も対象だ。雷蔵」

 

「いや何故に?」

 

「色々、お前に伝えたい事があったんだよ。まあ座れ」

 

勿論、見当もつかない。ボーナスも予算も貰ったし、報告書も提出済み。これ以上何かあるとなると、高確率で厄介事である。正直聞きたくないが、聞くしかないので腹括って聞く事にした。

 

「お前に来て貰ったのは、2つある。2つともバッドニュースだが、片方はグッドニュースでもある」

 

「じゃあ、バッドニュースだけの方から聞くか」

 

「さっき連絡があったんだが、首都高で事故があった。車が江ノ島方面に向かうICでトラックに突っ込んで爆発炎上して、現在首都高は通行止めで復旧は夜になる。KAN-SEN組はヘリで運んでもいいが、目立つしお前の物件に泊めさせようと思うとる」

 

「別にバッドニュースじゃないだろ。寧ろあんな美女のハーレムを家に上げれるとか、ご褒美なんだが?」

 

「確かにその面ではラッキーだろうよ。だが問題は事故の方。この事故、どうやらテロの可能性が高い」

 

この言葉を聞いた瞬間、長嶺の目は兵士の目へと切り替わる。

 

「一体どこの仕業だ?」

 

「まだ調査中で分からんが、私の見解を話しておこう。その前に一ヶ月前の事から話さないとな。

一ヶ月前、湾岸地区の倉庫区画に、ちょっとビックリな物が搬入されたのがわかった。均質圧延鋼装甲板*1だ。もう軍事的な価値のない物だが、コイツが大型のトラック一台分を覆える程の量が搬入されている。出所を辿ると、中南米からだった。

そして装甲板の発見される、約二ヶ月前。日本各地のアフリカ、中東、南アジア、中南米出身の技術実習生、取り分け自動車関連と溶接関連の人間が集団的に消息を立っている」

 

「その地方って確か、URの勢力圏内じゃねーか?」

 

「あぁ。素性を調べてみたら、全員が組織の人間と関わりのある事がわかった。恐らく密輸、或いは購入したパーツを組み合わせて自前の装甲車でも作るつもりだったんだろう。問題はここからだ。

奴さん達は鹿児島基地の一件で確実にお前達を敵視している」

 

長嶺の脳裏に鹿児島基地での戦闘が浮かび上がる。知らない、或いは忘れてしまった読者の為にURと鹿児島基地襲撃について解説しておこう。

URとは正式名称、Unstoppable Revolution(止まりなき革命)と呼ばれる世界最大級の麻薬組織である。アフリカを本部に世界中に根を張り先述した中東や中南米を始め、北米やヨーロッパでも暗躍している。武装は軍隊並みであり、装甲車やら戦車、戦闘ヘリをも保有するテロリスト集団でもある。

霞桜とは鹿児島基地の司令が艦娘を奴隷として売り払おうとした際の懲罰攻撃の際に戦っており、言うまでもないがURの派遣部隊は壊滅している。

 

「その復讐に動いていると?えらく攻撃が速い上に、何より今日ここにいるのを知っているんだ?」

 

「もしかするとスパイが潜り込んであるのかもしれん。元々報復の準備はしていたが、スパイの情報でお前がここに来る事が判明。急遽計画を早め実行した、という事なんだろう。いずれにしろ、明日の帰還時にはマイクロバスに護衛と軽機関銃を準備しておく」

 

「頼む」

 

東川は「さて」と一息つくと、もう一つの事について話し始めた。

 

「まずはこれを聞いてくれ」

 

そう言うと東川は懐からICレコーダーを取り出し、スイッチを入れた。音声は荒く、聞き取り難い。ただ言語が中国語なのはわかった。

 

『ガーーー、总 高中ザーーーーー暗ビーーーーーープツン』

 

「なんじゃこりゃ」

 

「ノイズの除去を行なったが、正確には分からなかった。だがまあ、明らかにマズイ事が起きようとしている。聞き取れた音声はこうだ。

「総武高校、暗殺計画、ままなく開始、戦闘員は帝国海軍の」

調べた所、総武高校は千葉県に公立高校として実在する。在校生、在籍教員の名簿も調べたが、県議会議員で建設会社の社長の娘である雪ノ下って子こそいたが別に会社もデカくない。そこそこの大きさだが海外進出は果たしていないから、暗殺だの戦闘員だのと大掛かりな事をしでかす価値がない」

 

「だが名前が出ちまった以上は対応せざるを得ない、てことだろ?」

 

「あぁ。そこで、だ。私はお前の養父だが、これまで父親らしい事は一度もしてあげられてなかった。だから私にできる唯一の、父親らしい事をさせてくれ。雷蔵、お前を総武高校に生徒(・・)として送り込む。

お前が密かに願い続けていた学生生活を、この仕事ついでに楽しんでこい」

 

長嶺が密かに願っていた「普通の学生生活」という夢が叶おうとしている。本来なら喜ぶべきなのだろうが要らぬオマケまで付いている以上、手放しで素直に喜べない。

 

「いやうん。嬉しいよ。嬉しいっちゃ嬉しいけど、そんなオマケは今すぐ返品したい」

 

「無茶言うな。お前がこの国に取っては、他国でいう「核兵器と同じ切り札」なのはわかってるだろう?その秘密兵器を高校に送り込むってだけでも、メチャクチャ苦労したんだぞ?」

 

「はぁ、贅沢は言えないか。戸籍はどうする?流石に「現職の連合艦隊司令長官が大手を振って一般高校に入学」って訳にもいかんだろ?」

 

「その点も問題ない。既に戸籍の当ては幾つかあるから、それを使ってもらう。それから一人だけ、部下の同行を許可する。まあ適当に選んでくれ」

 

「わかったよ。じゃあ、俺達はもう行くぞ」

 

「あぁ。気をつけてな」

 

長嶺達は防衛省から長嶺が個人的に所有する高級賃貸ビルに向かった。その日はそこで一旦過ごし、その間に長嶺は霞桜を帰還時のルート上に部隊を配置。緊急時の備えも万全の体勢を整えている。

 

 

 

翌朝 10:00

「長嶺閣下、お迎えにあがりました。護衛を命令されました、後藤三尉です」

 

「同じく目川二曹です」

 

「ドライバーの向井曹長です」

 

出発前、護衛の自衛官3名が挨拶に来た。そこでKAN-SEN達の防弾チョッキやヘルメットも渡された。

 

「三人とも、今日はよろしく頼む。何もなければ一時間で済むが、何かあった時は容赦なくやっていい」

 

「存じております。出発は30分後になりますので、準備を!」

 

「おう」

 

今度は部屋に上がり、KAN-SEN達にボディアーマーとヘルメットを配る。その間に護衛達は最終チェックに周り、30分後の10:30に出発した。このまま何事もなく江ノ島鎮守府に帰還、とは行く訳もなく後半分という所で事態は急変した。

 

「右方向、合流。警戒!!」

 

右側の合流車線から2台の車が現れる。別にあからさまな装甲車だとか見るからに怪しい車ではなく、ごくごく普通のセダンと四駆である。

 

「閣下、どう見ても普通の一般車ですよ?」

 

後藤がそう言うと長嶺は「いーや」と言った次の瞬間、2台のパワーウィンドウとサンルーフが開き、中から男が出てくる。手には銃が握られていた。

 

「コンタクト!!ウェポンズフリー!!!!」

 

ドカカカカカカカカカカ!!!!

 

長嶺はそう叫んだと同時に、装備していたM249を連射する。遅れて後藤も射撃を開始し、車両を蜂の巣にして脱落させる。

まるでこれを合図にしていたかの様に、後ろを走っていた大型トレーラーの荷台から続々と武器を構えた人間の乗る車両が出てくる。

 

「まさか、後続車両が全て敵の追手だったなんてな。予想外すぎる」

 

ものの2分で乗っているマイクロバスの後ろは、20台近くの敵車両で埋まっていた。

 

「閣下、どうしますか?」

 

「逃げるに決まってんだろ!!エンジンぶっ壊すつもりで回せ!!!!」

 

「了!!!!」

 

向井がバスを一気に加速させて、車両を引き離そうとする。しかしそんな事はできる訳もなく、普通に追いつかれて銃撃を加えられる。

 

ガンキン!!キンカランキン!!

 

「ってかなんであんな武装てんこ盛りな奴らがいるんだよ!?!?!?安全大国日本は何処行った!?!?警察と税関は何やってたんだクソッタレ!!!!」

 

ドカカカカカカカカカカ!!!!

 

何処に向けていいやら分からない怒りを弾丸に乗せて、敵に撃ちまくる。だが装甲板でも貼っているのか、とにかく硬い。正直、今持ってる手持ちの武器じゃ結構ジリ貧である。ならば保険を使う時であるだろう。

 

「総隊長より全隊!!現在アンノウンの襲撃を受けつつあり!!!!直ちに部隊を送ってくれ!!多分死ぬ!!!!」

 

この報告を受けた瞬間、道中のサービスエリアに展開しておいた機動本部車と自律可動武装車がエンジンを起動させ唸り出す。

 

「お?何だ何だ?」

 

「え!?スゲー!!カマロにフェラーリ、ランボルギーニにポルシェまで!」

 

「なんかのクラブ?」

 

何気に登場が実質初めての兵器であるので、簡単に説明しておこう。こよ自律可動武装車の見た目、というか車両は様々なスーパーカーやハイパーカーなんかを流用している。

その車両をレリックがボンドカー みたく、武装を中に格納する様に改造したものである。因みに何故スーパーカー等を使っているかというと、隊員達+長嶺の趣味である。

 

「野郎共、行くぞぉぉぉ!!!!!!」

 

先頭を務めるトヨタ86が発進する。その後ろに他の車両も続き、高速に入っていく。その後ろに機動本部車も続き、長嶺達を追う。またそれに並行して、他の一般車を止めて安全を確保する。

一方その頃、長嶺達はと言うと

 

 

「オラァ!!」

「そーら!!」

 

「ヒャッハーーー!!燃えろ燃えろ!!!!豚の様な悲鳴で泣き叫べ!!!!」

 

いつの間にか現れたバイクがバスに接近し、火炎瓶を投げつけてくる。堪らず長嶺は一度身体を引っ込めて、やり過ごす。屋根と後ろに食らったが、幸いビンに灯油か何かを詰め込んだだけの物だったので、あまり被害という被害はなかった。

 

「もういっちょ行くぜ!!!!そーら!!!!!!」

 

「何度も同じ手は食わねぇよ!!お返しだ!!!!」

 

また投げつけてくるが、なんと長嶺がキャッチ&リリースする。勿論リリスした相手は運転手諸共、火だるまになってこけて転がっていく道路上を転がっていく。

しかも残骸のバイクを後続車が踏みつけたのと同時に、ガソリンに火が回ったのだろう。後続車諸共爆発&大炎上する。

 

「スネロンの仇だ!!」

 

ダラララララララ

 

もう一台のバイクが右側からUZIを乱射してくるが、目川がM249でバイクの前輪と運転手を撃ち抜き撃退する。

 

「よっしゃ!」

 

「いいぞ目川!!」

 

「ありがとうございます後藤さん!」

 

「!?後藤!!!右からくるぞ!!気を付けろ!!!!!」

 

目川と後藤が話している時、長嶺は次なる刺客の気配に気付く。しかしその刺客というのが、中々に厄介な相手であった。

 

「ハンヴィーだと!?」

 

「じゃあな、イエローモンキーズ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガ!!!!

 

なんと屋根にM2重機関銃を搭載したハンヴィーが現れたのである。一応乗っているマイクロバスは急拵えで、13mm口径までなら耐えれる装甲板を装備しているので車体に隠れれば問題はない。ただしガラスは7.62mm口径が限界であり、ガラスが割れまくる。

 

「マズイ!!」

 

咄嗟に長嶺と目川は屈む。しかし後藤だけ間に合わなかった。

 

「オンドリャァァァァァァ!!!!死に晒せぇぇぇぇ!!!グブッ」

 

マトモに12.7mm弾を食らい、右腕が吹っ飛び胴体に大穴が開く。そのままハンヴィーは前に移動し、運転手の向井をも射殺する。

 

「後藤さん!!向井さん!!閣下、後藤二尉と向井曹長が!!!」

 

「放っておけ!!」

 

「な!?こんガキ、仲間助けろよ!!!!戦場を知ったような口を聞くんじゃねぇ!!!!!オラ、助けろよ!!テメェ、医学の知識があるんだろうが!?!?」

 

目川が長嶺に掴み掛からん勢いで、文句をマシンガンのように言い続ける。長嶺の名誉の為言っておくが50口径の威力というのは、この手の知識が有れば知っての通り「ヤバい」の一言に尽きる。1発でも胴体や頭に喰らえば、確実に死ぬ。というか即死である。腕や足だったとしても、吹っ飛ぶであろう。でもってこのバスには、それを救う機材なんざ搭載していない。

簡単な話、回復魔法でも使わないと助けられないのである。

 

「チッ。戦場も知らねー、ズブの素人がしゃしゃり出てくんな」

 

そう言うと長嶺は目川に向けて土蜘蛛HGを構えて、撃つ。しかし弾丸は目川を掠め、その先のバスの前にいるハンヴィーのM2。正確にはその横にある弾倉の弾丸に当たり、射手諸共吹き飛ばす。

 

「目川二曹。言っておくが次に俺のイラつく言動を吐いた瞬間、この15mm弾がテメェの脳天をぶち抜くと思っておけ。いいな?」

 

「はい」と目川が返事をしようとした瞬間、バスのドアがぶった斬られて、中に戦闘員と2mはあろうかと言う黒人の大男がチェーンソーを持って入ってきた。

 

「ぬん!!」

 

驚きすぎて何の抵抗もできない目川に照準を合わせ、大男は目川の胸にチェーンソーを突き刺す。勿論内臓やら血肉やらが、バス中に散らばる。その間にもう一人の戦闘員が運転席に座る。

血肉はKAN-SEN達にも降りかかるが、見てはいけない物と判断し顔を伏せ続ける。

 

「チェーンソーで突入してくるとか、何処のホラー映画だ、よ!!」

 

ズドンズドンズドン

 

「効かないぜ、少年」

 

「あーれま、一応15mm弾なんだがなぁ」

 

まさかのチェーンソーの真ん中の部分で、全弾弾かれたのである。

 

「それじゃ、血飛沫出して死のうか!!」

 

ギャリギャリギャリギャリ

 

図体と使っている武器の割にメチャクチャ素早く、避けることができない。一か八かで土蜘蛛をクロスして、どうにか受け止める。

 

「ぐっ!!重っ」

 

「ハハハ!楽しいなぁ。なあ少年!!だが君の本当の力はその程度ではないだろう?さあ、君の全力を見せてくれ!」

 

「悪いな。生憎、今は相棒達が居ないんで武器が限られてんだよ。自前のは、今アンタが破壊しようとしてるコイツだけっ、ぐぉ」

 

今にも推し負けそうになった瞬間、長嶺の右側から何かが入ってきて、そのまま左側に押し出される。

 

「え?」

 

気がつくとそこは車の外で、空中に浮かんでいた。常人であれば多分そのまま何が何なのか分からず、地面に叩きつけられて死んでしまうだろう。だがコイツの場合は違う。まず偶然を装ってスモークグレネードを周囲にばら撒き、そのまま身体を水平にしてグラップリングフックと気合でバスの下に潜り込む。後続車と上の敵は、長嶺が地面に叩きつけられて死んだと思うだろう。

実際車内では落ちる瞬間を見た赤城、イラストリアス、エンタープライズの三人が手を伸ばしたり「指揮官!」と声を上げ、そのまま泣き崩れる者もいたりとカオスな事になっていた。

 

「へへ。マスター・ヘルマン、どうですか俺のライダーキックは?お、可愛子ちゃんじゃねーか」

 

車内に飛び込んで長嶺を外に蹴り出した男、ベロゥボーイと呼ばれる奴がたまたま近くにいたイラストリアスにロックオンする。

 

「うお、いいもん持ってんじゃん!」

 

ガシッ、グニグニ

 

当然の様に両手でイラストリアスの胸を揉みしだき始める。それだけに飽き足らず、今度は着ているドレスを外そうとし始める始末である。勿論抵抗するが、首を片方の手で押さえつけて抵抗できない様にされてしまう。

 

「取り敢えず、俺のJr.を挟んで貰おうか?グヘヘ」

 

「おい、ベロゥボーイ」

 

「なんですか?マスt」

ギョリギョリギョリギョリ!!

 

「ギャーーーーーー!!!!????」

 

さっきマスター・ヘルマンと呼ばれていた、黒人の大男が突然ベロゥボーイの片腕を切り落としたのである。

 

「お前、俺の獲物を横取りして殺した挙句、女に手を挙げるったぁ、一体どういう了見だ?」

 

「お、おお俺の腕がぁ」

 

「たかが片腕ぐらいでどうした?」

 

「いでぇ、いでぇ!」

 

ヘルマンは「はぁーあ」とため息をつくと、今度は左足を切り落とし始めた。勿論悲鳴というか、もはや断末魔に近い絶叫をあげる。

 

「お前はもう用済みだ。お、丁度いいな」

 

足を完全に切り落としたタイミングで、2人の中東のゲリラみたいな格好した戦闘員がバスに乗り移ってくる。ヘルマンはその3人に「おい」と一声かけると「コイツ、外に放り出せ」と命令した。戦闘員達は「はい」と一言答えると、そのままベロゥボーイをバスの出入り口に引きずっていく。

 

「え?嘘?やだ。いやだ死にたくない!!!!」

 

「チッ。るせぇな。おい、お前顔面でも踏んで黙らせてやれよ」

 

「おう」

 

一人の戦闘員が鼻の辺りを力一杯踏みつける。顔面は完全に陥没し、鼻がへし折れる。ギャーギャー喚くが、そんな事気にせずに出入り口まで引き摺る。出入り口の前までくると、手と足をつかんで右に左に揺らし始める。

 

「「あーめん、そーめん、ひやソーメン!」」ブンッ!

 

そのまま車外に放り出され、側頭部から壁というか分離帯というか、とにかく高速の反対車線と面してない側にあるコンクリート塀に命中し、脳の中身を全て曝け出す。

 

「銀髪のお嬢さん、部下がすまなかったね」

 

「い、いえ.......」

 

まさかさっきまで長嶺と戦っていた男に謝罪されるとは思わず、一言しか発せなかった。

 

「よし、このまま回収班と合流するぞ。それからお嬢さん方に言っておくが、抵抗なんて愚かな事は考えるないで頂こう。もし抵抗されたらこっちも殺さないといけいないからな」

 

ヘルマンがKAN-SEN達にそう言っている時、長嶺は出入り口に向かって動いていた。そしてそのタイミングで現在こちらに向かってる、第五大隊のベアキブルと連絡が来た。

 

『こちらベアキブル。親父、ご無事で?』

 

「無事とは程遠い。車外にほっぽり出されたから、今バスの下にへばりついてる」

 

『えぇ.......。あ、それより。後2分程度で其方に追い付きます。それまで耐えていてください』

 

「どうにか頑張るよ!」

 

そう言って無線を切った直後、前後左右をトラックが囲み出したのである。

 

「迎えが来たな。よーし、ドライバー!そのまま荷台に入れ!!」

 

「へい!」

 

上手いこと位置を調整し、バスを前の10tトラックの荷台に入れ始める。しかし次の瞬間、彼らにとって予想だにしない出来事が起こる。

 

「グッ」

 

まず初めに被害にあったのは、出入り口近くにいた戦闘員である。首と脇腹を刺されて絶命した。サイレントキルだった為、誰一人として気付かない。

 

「まずは一人」

 

「ちょっと右か?」

 

そう言いながら運転する兵士を、壁を隔てた背後からデザートイーグルでヘッドショットを食らわせる。

ここになって初めて、ヘルマン含めた全員が長嶺の存在に気づく。

 

「生きていたか、少年」

 

「悪いな。俺を殺したいなら車外に投げ飛ばすとか、爆弾仕掛けた部屋に閉じ込めたりせずに自分の目で死亡を確認するか、頭上に核爆弾でも落とさねぇと殺せないぜ?」

 

「だがな少年、もう勝敗は決したんだよ。後はトラックの中に入れてしまえば、万事こっちの勝利だ。今更君が私達を殺したところで、最早何な意味もなさい」

 

そう自信に満ちた顔で言うが、長嶺は笑い始める。

 

「アンタ、賭け事苦手だろ?切り札ってのは、最後の最後まで取っておかないと、な!!」

 

次の瞬間「ヒュウウウ」とか「ダラララ」という音が聞こえると、後ろのトラック含めた後続車が急に爆発したのである。

 

「なんだぁ!?」

 

ボーボーボーーーン

 

今度はトレーラートラックが左右のトラックに突っ込み、無理矢理どかす。トレーラーのカーゴが開き、中から完全装備の兵士が戦闘員2人に銃を向ける。

 

「少年、まさか霞桜の総隊長か?」

 

「今頃気付いたのか。そうだとも。で、どうするね?」

 

「ふふ、ハハ。当然、君と戦わせて貰うよ。お仲間なら君の装備を持っているんだろ?」

 

「ああ。八咫烏、幻月と閻魔だ!!」

 

そう叫ぶと何処からともなく、いつもの2本の刀が飛んでくる。そして刀を抜いて、しっかり相手を見据えて構える。

ヘルマンも同様にチェーンソーのエンジンを起動させ、臨戦態勢をとる。

 

ドゥルドゥルドゥルドゥル

 

「スー、ハー.......」

 

次の瞬間、お互いに屋根を飛ばすために枠の部分を切り飛ばす。屋根は後ろに飛んでいき、バトルフィールドが少し広くなった。

 

「さあ、楽しもうぜ少年!」

 

「あぁ!!」

 

お互いに前に飛び出して、斬りかかる。

 

「セイヤァ!!」

 

「うらぁ!!」

 

チェーンソーの刃が刀の刀身とぶつかり、火花を散らしながら鍔迫り合いを始める。

 

「ゥゥラアァァァァァ!!!!!」

 

「ハアァァァァァァァ!!!!」

 

互いに後ろに飛んで一旦距離を取り、また斬りかかる。しかし今度は少し違った。ヘルマンは突っ込んでくるが、長嶺は寸の所で上に飛んで回避。そのまま背中を斬りつける。だがしかし

 

ガイィン!!

 

「な!?」

 

「危なかった」

 

なんとチェーンソーを後ろに担ぐ様に持って、斬撃を防いだのである。

 

「どうやら、タイムオーバーの様だ。さらばだ、少年。また会おう」

 

そう言うと懐から、謎の魔法陣が描かれた紙を取り出す。それにライターで火をつけると、ヘルマンの周りに紫色の光によって満たされる。残りの戦闘員もその光の元に行くと、その光が消えたと同時に二人の姿も消えたのである。

 

「なんだ今の。転移魔法か何か?」

 

『親父、こっちに収容します。お急ぎください』

 

「あ、あぁ」

 

最早後半は完全に放心状態でボーッとしてるKAN-SEN達を現実に引き戻し、横のトレーラー、もとい機動本部車に乗せ替える。勿論走行しながら。そんな状態なので、こんな事も起こりうる。

 

「あっ」

 

乗り移ってる最中、チャパエフが橋というか乗り移る通路から足を踏み外しかける。

 

「おっと。この速度で落ちたら即死だぞ」

 

まあ普通に長嶺が手を引いて引き戻し、また進ませるのだが。

チャパエフの顔が少し赤くなったのは言うまでもない。斯くしてURの襲撃は戦死3名を出すも、その悉くを撃退し一応の勝利に終わった。

 

*1
全体が均質な圧延鋼板で作られた装甲であり、主に第二世代主力戦車の装甲に用いられている。APFSDS弾やらHEAT弾といった様々な特殊砲弾が開発された事から、21世紀に入ると使われる事はなくなった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。