最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第二十六話最強提督は御乱心

「視察に行ってこい?」

 

『ああ、そうだ。お前も連合艦隊司令になったんだから、各基地の状況くらい知っておけ』

 

「待てゴラ!!こっちは唯でさえ執務が多いってのに、ここで更に公務倍増とか労基違反なんてレベルじゃねーぞ!!!!」

 

現在長嶺は電話口で、怒鳴り声を上げている。何故かって?安定の東川による無茶振りである。

 

『お前に拒否権はなーい。じゃ、ヨロシク』

 

「は!?おい!!ちょ!!!!もしもし。もしもし!!!!!!」

 

ツーツーツー

 

「あ、あ、あんのクソジジイ!!!!!

 

マジでなんなんだ!!霞桜の仕事と提督業で忙しいってのに、そこに連合艦隊司令長官を押し付けるわ、絶対どう見ても俺以外でも出来る仕事まで回してくるし、その上で視察だと!?!?過労で俺を暗殺する気か!?!?!?

 

完全に怒りのボルテージのメーターが振り切れて、テンションが謎な方向にバグった。こうなると長嶺は、戦闘狂としての顔が完全解放される。

 

一番近くの基地は此処だな。潰すか

 

「失礼します。ていと.......く」

 

偶々遠征の報告に来た吹雪が見たのは、完全な戦闘モードの長嶺だった。身体中から殺気と怒気が溢れ、後ろには阿修羅か何かが見えるかの様に思える。

 

おう吹雪。報告書は机の上に置いとけ

 

「は、はい!」

 

俺はちょっと深海の畜生共と、少しばかりダンスしてくる。執務は適当な奴にやらせておけ

 

最早恐怖で声が出せず、狂ったかの様に頭をブンブン振るだけの存在となった吹雪。そんなのに構う事なく、長嶺は執務室を出て格納庫の方へと歩き出す。

その間も顔は閻魔大王すらも恐怖で大泣きして、失禁してしまうであろう位の顔である。しかも殺気と怒気のオマケ付きで、うっかり機嫌を損ねよう物なら灰も残さずに消されそうな勢いである。

 

ドスン、ドスン、ドスン、ドスン

 

「そ、総隊長の怒りゲージが壊れてやがる。こうしちゃおれん!!」

 

偶々廊下で長嶺の姿を見た霞桜の隊員が、無線で鎮守府にいる全隊員に報告した。次の瞬間、全員が深海棲艦や敵と戦う時よりも緊張した顔で動き出す。

 

「武器と弾薬を掻き集めろ!!最悪の事態を想定し、一機を除いて黒鮫にはASM3を搭載しろ!!」

「えらいこっちゃ!えらいこっちゃ!」

「おい誰か!総隊長の周りに付いて、不足の事態に備えるんだ!!」

 

因みに武器の使用相手は長嶺である。何故かって?長嶺は昔、とある理由からこれよりも酷い状態になり、原因を作り出した政治家や軍の高官等を片っ端から殺して周った前科があるのである。

まあその政治家や高官達は、殺されて当然の事を仕出かしているので仕方がないのだが。

 

 

「あ。指揮官様ぁ♡。大鳳の作ったお弁当の味見を」

 

KAN-SENの方の大鳳が、安定の理由から長嶺に弁当を食べさせようと近付いた。しかしその前にバルクによって、口を押さえられたまま建物の影に引き摺られていく。

 

「んー!!んーー!!んーーーーー!!」

 

「(落ち着け!そして暴れんな!!)」

 

間一髪、長嶺の視界には入らず長嶺も気付いていない。建物の影の死角から様子を伺い、気付いて事が分かるとバルクは漸く大鳳を解放した。

 

「な、何するんですの!?私には指揮官様という、心に決めた殿方いるのです!!貴方の妃になんてなりませんわよ!!!」

 

「待て待て。誤解するんじゃないよ。大鳳の嬢ちゃん、物陰からよーく指揮官様を見てみ?」

 

そう言われて、一応背後のバルクを警戒しながら長嶺の様子を伺う。よく見るとヤバいオーラが出まくってるのに気付き、顔が青ざめていく。

 

「な、なんですの.......」

 

「あの状態の総長は、マジでヤバい。総長の今の状態は、歩く安全装置の外れた水爆も同然だ。ちょっと衝撃ですら起爆し、周りに災厄を齎らす。一通り暴れれば収まるんだが、機嫌を損ねよう物なら見境なく此処で暴れかねん」

 

「今日の所は諦めますわ.......」

 

「それがいい。」

 

流石の大鳳も今回ばかりは引くようで、少し落ち込んだ様子で部屋に帰っていった。一方、長嶺は霞桜の隊員達が迅速かつ丁寧に黒鮫まで案内し、ソロモン諸島方面の基地に飛んだ。

 

 

 

ソロモン諸島方面 深海棲艦前哨本部基地

「総隊長、そろそろです」

 

おう

 

高度一万五千mを飛んでいる事もあり、深海棲艦は誰一人として気付いていない。そんな中、長嶺は真っ逆さまに本陣のど真ん中目指して飛び降りた。因みに長嶺の肩にカメラがついており、新兵教育の一環で鎮守府の霞桜本部にある映画館もどき(隊員達からは視聴覚室と呼ばれてる)で現在の状況が流されていた。

 

「あの高度から飛び降りるのか!?」

「怖くないのか?」

「流石、一騎当千の精鋭を束ねる御方だ」

 

さあ、深海棲艦共。楽しい楽しいパーティーの時間だ

 

そのままの勢いで、手近のル級eliteを頭から一刀両断する。盛大な水飛沫に深海棲艦達が何事かと集まり出し、周りを取り囲む。長嶺の存在には気付いておらず、武器は構えていない。しかし、これが仇となった。

 

フハハハハ!!会いたかったぞ、愛しい愛しい俺のサンドバッグ共!!!!

 

水飛沫からいきなり出てきた長嶺に、武器すら構えてない深海棲艦が対応出来るわけもなく

 

ザンッ!

 

斬られる。それもイ級2、3隻を纏めて。

 

「化ケ物メ!!!」

「撃テ!撃テ!」

「殺セ!!!!」

 

やっと応戦が始まるが、殺気と怒気によって恐怖心が煽られまくった結果、照準が合わず砲弾が明後日の方に飛んでいく。

 

殺してみろ!オラオラどうした!?!?

 

「ギシェェェェ!!!!」

 

ここで勇敢なるハ級eliteが後方から砲弾を撃とうと近付く。しかしこれに長嶺はとっくに気付いており、敢えて気付かないフリをして他の深海棲艦を倒しまくる。

 

おい八咫烏。風神と雷神をと落とせ

 

『心得た、我が主』

 

武器を変えて、遠距離からの攻撃に切り替える。長嶺が距離を取るべく下がった結果、ハ級eliteの射程に入った。それも必中必殺の位置で、気付いてなければ(・・・・・・・・)必ず倒せる様な絶妙な場所である。ハ級eliteが口を開けた瞬間、長嶺が後ろを振り返る。

 

気付いてないと思ったか?バカめ、初めからお見通しだ!!!!

 

そう言って風神HMGをハ級の口内にぶち込み、トリガーを引く。

 

ダラララララララ!!!

 

無数の弾丸がハ級eliteの背中の肉と装甲板を突き破り、青い血も吹き出る。ハ級eliteの巨大な目から光が消えると、長嶺は無理矢理口というか、歯が並んだ部分を開けて中に10個近くの手榴弾とC4をセットする。そしてそれを、深海棲艦が密集している場所にぶん投げる。

 

お前達の仲間だったんだ。あの世でも仲良くやれよ?

 

ドガーーーーーン

 

C4が起爆し、周りの手榴弾にも伝爆。周囲の深海棲艦をハ級eliteの装甲板と手榴弾の破片が襲う。周りにいたのが水雷戦隊だった事もあり、軽巡へ級を除いて駆逐艦クラスの深海棲艦は大破か轟沈していた。

 

「ヨクモ.......」

 

ドーンだYO!!

 

残ったへ級も、雷神HCの120mm榴弾で吹き飛ばされる。その後も多彩な武器で周りの護衛を一掃し、ボスである戦艦棲姫と対峙する。

 

「貴様、ヨクモ我ガ同胞ヲ殺シタナ」

 

御託は良い。かかって来い

 

「主砲発射!!!!」

 

戦艦棲姫の巨大な艤装から、砲弾が長嶺に向かって発射される。しかし長嶺は横に体を逸らし、砲弾を全て躱す。

 

「生意気ナ!!」

 

全弾避けられた事が悔しかったのか、砲身を壊す勢いで連射してくる。しかしそれも全弾避けられて、益々ヒートアップする戦艦棲姫。

 

その単調な動きしか出来ないのか。今度はこっちのターンだ!!

 

一気に距離を詰めて、格闘戦を仕掛ける。格闘戦と言っても空手や柔道の様な綺麗な物ではなく、腕と足の骨を折るという蛮族じみた格闘である。

 

どうした。まだ右足と両腕の骨をへし折っただけだぞ?砲撃しろ。機関砲で撃ち抜け。左足で蹴り飛ばしてみろ。なあ、どうした?来いよ。ホラ!ホラ!!ホラ!!!

 

「ヤメロ!!来ルナ!!化ケ物メ!!!!」

 

面白くねーなぁ。これじゃ興醒めだ

 

そう言うと長嶺は戦艦棲姫の黒く長い髪を掴み、無理矢理立たせる。そして手を突っ込んで、胸の中にある心臓を外に引っ張り出す。

 

「私ノ、心臓.......」

 

終わりだ

 

そう言って心臓を握り潰し、周りに青い血が飛び散る。自分の心臓が握りつぶされる様を見せつけられながら、戦艦棲姫は絶命した。

 

「ハァー、スッキリした」

 

本人は涼しい顔をしているが、青い返り血で全身を塗り固められた姿は化け物か、サイコパス殺人鬼のソレである。本部にいる新兵達も殆どが気持ち悪くなって吐いたり、気絶したりと軽い地獄絵図となっていた。

大隊長クラスや古参組は「あーあ、派手に暴れたなぁ」程度にしか思ってなかったが。

 

 

 

翌日 江ノ島鎮守府 航空基地

「それじゃあ、留守を頼む」

 

「お気を付けて、総隊長殿」

 

大暴れの翌日、長嶺は視察の旅に出た。今回は全ての基地を回る事となり、約二週間掛けての出張となる。そんな訳で数名の護衛がつく事になった。補佐役として大和と長門、護衛として八咫烏と犬神、それから霞桜から第三大隊所属の隊員ドミニクと第五大隊の隊員ガーランが付く。因みに護衛はどっちも男である。

 

「上昇します」

 

汎用ヘリコプター『黒山猫』に乗り込み、先ずは舞鶴鎮守府へと向かう。道中は仕事を片付けていただけで、特に取り上げる物も無いので割愛する。約二時間程揺られて、京都舞鶴に到着する。

 

 

「来たか」

 

ヘリポートには主たる山本と、その秘書艦である朝潮が居た。

 

「提督、あのヘリですか?」

 

「あぁ。朝潮なら無いだろうが、無礼のない様にな」

 

「はい!」

 

(しかし、ブラックホークと英軍のワイルドキャットを足した様な機体はなんだ?)

 

初めて見る黒山猫の独特のフォルムに、少し驚きはするが長嶺が謎多き霞桜の隊長である事を思い出し納得した。

 

「お待ちしておったぞ、長官」

 

「出迎えありがとうございます、山本提督」

 

山本は何度か顔を合わせているので驚きはしないが、朝潮の方は違った。「連合艦隊司令長官」と言うと、どうしても髭を生やしたお爺ちゃんのイメージがあったからである。所が目の前で「長官」と言われているのは、高身長イケメンな青年でありイメージとは正反対の人物である。

 

「山本提督、こちらが提督の秘書艦ですか?」

 

「あぁ。朝潮、挨拶なさい」

 

「は、はい!初めまして、朝潮型駆逐艦の一番艦、朝潮です!!」

 

「あの朝潮か。俺は長嶺雷蔵だ。長官でも、長嶺でも好きに呼んでくれ」

 

「はい!承知しました!!」

 

緊張で結構カチンコチンだが、どうにか挨拶ができた朝潮。顔には出してないが、心臓バックバクである。

 

「ワン!」

 

「え?」

 

犬の鳴き声がして、振り返ると真っ白な毛並みの犬がいた。その上には三番脚の烏もいる。言うまでも無いが、犬神と八咫烏である。流石に堂々と喋る訳には行かないので、普通の犬と烏と同じように鳴く。

 

「可愛い.......」

 

「おーい、行くぞ」

 

撫でようと手を伸ばした瞬間、間が悪い事に長嶺が呼んでしまい撫でられなかった。長嶺らは山本と共に執務室に向かい、大和と長門は施設の視察、護衛の隊員達は待機となった。

 

 

 

執務室

「好きにかけてくれ」

 

「えぇ」

 

適当に座り、山本の入れた宇治抹茶を啜る。

 

「それにしても、あんなに小さかった君が私の上に立つ日が来るとはな」

 

「え?」

 

「なんだ、宗一郎の奴から聞いてなかったのか?私は君と宗一郎の関係も知っているし、まだ小さかった頃に会っているんだぞ?」

 

「初耳ですよソレ!?」

 

まさかのカミングアウトに長嶺も驚く。これまで東川と長嶺が親子であるのは、本人とかつて死んでいった戦友達と天皇陛下しか知らないと聞かされていたからである。

 

「あのアホは大事な事は、大体言わぬからな」

 

「その癖というか性格で、何度地獄を見せられた事か.......」

 

「なんだ、お前も被害者か」

 

「えぇ。それこそ、この視察だってそうですよ。こっちは霞桜の仕事、提督の執務、長官の執務で日夜ブラック企業が天国に思える位の量を捌いてるって言うのに、いきなり「視察行って来い」って言われたんですから」

 

「私の場合は、アイツの右腕だったか頃に仕事を何度も押し付けられたぞ。オマケにアメリカ海軍に提出する筈だった報告書を、期日前日に押し付けられた事もあったな」

 

そう言いながら笑っている山本であったが、目が笑っていなかった。長嶺が「ああ、この人も被害者か」と思ったのは言うまでも無い。

 

「それで視察と言っていたが、私はどうすれば良い?」

 

「簡単に質問に答えて貰うので、余りやって貰う事はないですね」

 

「そうか」

 

10分程、アンケートに答えて貰い権蔵との仕事は終わった。因みにアンケートの内容は、資源が足りてるかとか、現在の支援状況で大丈夫かと言った簡単な物である。

答えて終わって、また少し雑談していると頭にタオルを巻いた焼き鳥屋かラーメン屋の店主みたいな男が執務室にノックもなく入ってきた。

 

「権蔵爺はん、今度ん祭ん件なんやが」

 

「今度ん祭ん件、おへんよ!何やってんやこないな所で!?」

 

「アンタが余りにトロいから、こうしいやおこしやすやったんや!」

 

京都弁全開で会話する山本と、謎の親父に長嶺も「???」と困惑している。

 

「そんで、そこん青年はどなたはんや?アンタはんの、おとと子か何やか?」

 

「おとと子ではおまへん。うちん上司、連合艦隊司令長官そん人や」

 

どうやら長嶺を山本の弟子と勘違いしていた様で、「上司の連合艦隊司令長官」って聞くと驚いていた。

 

「こないな若いんに、お国ん為に頑張ってんんか。本当に御苦労な事で」

 

「私は別に何もしておりませんよ。苦労を掛けるのは私ではなく、私の部下たる艦娘達、そして日々の業務に理解と協力をしてくださる国民の皆様です」

 

「よお出来やはった長官さんや」

 

思ってたよりも、超有能そうな答えに謎の親父も驚く。山本が次に何か言おうと瞬間、鎮守府中にサイレンが鳴り響いた。深海棲艦襲来のサイレンである。

 

「長官、指揮権を譲ろうか?」

 

「いや。ここ舞鶴は私の海ではなく、貴方の海だ。大和と長門も一時的に、そちらの指揮下に預けます。かつて「海上自衛隊の二代将軍」とまで言わしめた男の手腕、疑いようもありません。日本海反抗作戦、太平洋反抗作戦そのままに、存分に暴れられたい」

 

「あいわかった」

 

山本の戦闘時には武士語を話す癖が発動し、完全に歴戦の侍みたいな口調になる。

 

「指令室に向かう。長官も来て頂きたい。親父はこのまま地下壕にて、放火収まるまで待機召されよ」

 

「権蔵爺はん、京都を守ってくれ」

 

「承知!」

 

衛兵を呼び出し、謎の親父を地下壕に連れて行って貰う。その間に二人は途中で護衛の隊員と合流し、地下指令室へと向かった。

 

 

 

地下指令室

「状況は?」

 

「はい。先程、近海に深海棲艦二個艦隊が出現しました。それぞれA艦隊、B艦隊と呼称しています。A艦隊はル級4、ヲ級2、リ級7、イ級14の機動艦隊で、B艦隊は雷巡チ級8、ロ級40の水雷戦隊です」

 

オペレーターの報告に、長嶺の顔が強張る。こんな大艦隊、基地を攻撃しなければ見ない物だからである。普通に考えて、色々と可笑しい。

 

「で、あるか。フッ、最高の状況ではないか。戦の醍醐味とは、劣勢を優勢にひっくり返す事。此度もそれに倣いて、勝利を収めてやろうぞ」

 

「山本提督、熱くなるのは良いですけど、無理攻めはやめてくださいよ?もしもの時は、切り札使って殲滅しますから」

 

「心配召されるな。端から、その考えは御座らん」

 

(いや多分これ、足元掬われるぞ)

 

長嶺は昔、東川の言っていた事を思い出していた。曰く「権蔵は基本的に冷静沈着なんだが、侍語話し始めたらヤバい。戦略に大胆な物を採用するが、それが当たらなかった時の尻拭いまで考え切れてない」らしい。今の状況、正にそれである。

そして何より、深海棲艦の配置が可笑しいのである。B艦隊の水雷戦隊はまだしも、どういう訳かA艦隊の空母までもが前線に出てきている。空母は本来、後方からアウトレンジ攻撃に徹するのがセオリー。艦の特性上、余り前に出る事はない。しかし今回はどういう訳か、襲撃だと言うのに前に出過ぎな程に出張ってきている。

 

「(ドミニク、ガーラン。多分、敵には何か狙いがある。いつ戦闘が起きても良い様に、警戒だけはしておいてくれ)」

 

「「((ハッ!))」」

 

(犬神、聞いてたな?偵察に出てくれ)

 

(はーい)

 

長嶺も打てる手を出来るだけ打ち、不足の事態に備え始める。この事は大和と長門にも伝え、二人にも警戒を強めて貰う様に頼む。

 

「敵艦隊、射程に入りました!」

 

「射てまえ!!」

 

開幕攻撃は大和と長門による砲撃から始まった。前衛に出ていた駆逐艦の3分の1が吹き飛び、間髪入れずに水雷戦隊が突入。前線を直ぐに瓦解させた。

 

「前線が崩れました!!」

 

「このまま押しきれ!!!!」

 

優勢になったのも束の間。敵は皮肉にも、ゲームの盤上をひっくり返す方法に出てきた。

 

(主様、ちょっと来ちゃいけない物が来ちゃったよ)

 

(いやーな予感しかしない)

 

(バーサーカー、来ちゃった)

 

この報告が来た直後、地下指令室にサイレンが鳴り響く。

 

「何事か!?」

 

「こ、これは!?鎮守府内に侵入者です!!現在、監視カメラの映像にて特定中です!」

 

程なくして、メインの巨大な画面に監視カメラの映像が映し出された。そこに写っていたのは、腕を6本生やした人間かどうかも怪しい、巨大な人型生物であった。

 

「何だアレは.......」

 

「差し詰め、バーサーカーロードって所か。山本提督、アレは俺の獲物です。任せて頂きたい」

 

「霞桜総隊長のお手並み、見させて頂く」

 

「ドミニク、ガーラン!行くぞ!!」

 

「「ハッ!!」」

 

三人は指令室を出て、バーサーカーロードのいる場所へと向かう。顔にこそ出してなかったが、長嶺の脳内はフル回転で考えを巡らせていた。

 

(しかし何故、こうも出来すぎたことが起こった?洋上の深海棲艦が艦娘を惹きつけ、ガラ空きの本陣を叩く。どう見たって偶然に出来る芸当じゃない。考えたくは無いが、深海棲艦とバーサーカーを運用しているのが同じ組織、あるいは深海棲艦がバーサーカーを動かしているのか?)

 

本来、バーサーカーと言うのは人民解放軍が開発した人間を生物兵器化するウイルスの劣化コピーであり、余程の資金力や科学力のある組織、それも国家機関と同等の力が必要である。それを深海棲艦が持っているとは考え難く、余計に頭がこんがらがってくる。

そうこうしている間に、バーサーカーロードのいる場所に到着する。しかし、結構な地獄と化していた。

 

ドガガガガガガガ!!!!

 

「なんて威力なんだ!?」

「おい、逃げ」

「来るな!!来るな!!」

 

6本の腕には、下から順に盾、剣、重機関銃と遠近両用の武装に、守りも硬いという中々にチートな装備をしていた。しかもこれに加えて、バーサーカー自体が重火器でしか倒せないという装甲がデフォルトなので、余計に厄介な存在になっている。

 

「野郎共、牽制しろ!!」

 

「ファイア!!」

 

「弾丸の押し売りじゃ!!」

 

ズドドドト!!ズドドドト!!ズドドドト!!

 

勿論、たかが5.56mmや7.62mmの豆鉄砲でどうにか出来る訳ない。しかし被弾させる場所を、例えば関節や目の周り等の装甲が薄い(と思われる)場所に絞れば、効果は無くとも惹きつける事くらいはできる。

 

ギャオオオオオ!!!!!

 

「ハハ、ドミニク。アイツ、お前にラブコールしてるぜ?」

 

「抜かせガーラン。精々、テメェのケツを掘られない様に気をつけろよな!!」

 

軽口を叩きながらも、正確に当て続ける二人。流石のバーサーカーロードもキレたのか、二人の方に向かってくる。しかし

 

「氷板の術!!」

 

犬神の妖術で、足元に氷を貼って滑らせる。更に八咫烏の「突風の術」でその場で、背中を軸に回転させる。

 

「ありゃ目が回るな」

 

やがての術の効果も切れて、煽られた事に気付いたバーサーカーロードがまた雄叫びを上げる。その瞬間に長嶺が「たらふく食いやがれ!!」と言いながら、薫風RLのロケット弾を撃ち込む。

 

ギャオオオオオ!!!!!

 

完全にブチ切れだのだろう。今まで一番デカい雄叫びを上げながら、突っ込んでくる。

 

「奴さん完全に怒ったぞ!!ドミニク、ガーラン。上手いこと避けながら誘導するぞ!!」

 

攻撃を避けつつも、適度に攻撃を当てつつ海の方まで誘い込む。そして海の前まで来ると、無線で合図を出す。

 

「海水浴の時間だ。楽しみやがれ!!」

 

次の瞬間、バーサーカーロードの後ろにミサイルと機関砲が連続して命中し、そのまま海の方に崩れ落ちる。

 

「チェックメイトだ」

 

そして長嶺が手に持っていたスイッチを押すと、水面が盛り上がり爆音が鳴り響く。

 

「爆圧と水圧でペチャンコになったな」

 

長嶺はバーサーカーロードと戦う前に、黒山猫のパイロットに頼んで、今いる場所の水中に爆弾を仕掛けてもらっていたのである。後はここまで誘導して、後ろから黒山猫の重火器で海に突き飛ばして起爆すれば、簡単に倒せてしまうと言う作戦を立てていたのである。

 

『長官、こちらは片付いた。そちらは?』

 

「化け物は海に還しました。我々は時間も推しているので、このまま次の基地に飛びます。それでは」

 

山本からの無線にそう答えると、無線を切ってヘリに乗り込む。大和達も回収し、また別の基地の視察へと向かった。そして視察を終えた一週間後、またもや東川からの指示が来ていたのだが、それは次回のお話。

 

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