最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第二十七話超絶鈍感朴念仁男

長嶺達が視察を終えて江ノ島に帰還した一週間後、新たな命令を携えて東川が江ノ島を訪れた。

 

「やあやあ、長嶺。視察はどうだった?」

 

「深海棲艦に襲われるわ、バーサーカーの強化個体は出てくるわ、河本派閥からは凄い目で見られるわで、視察という名の地獄を味わいましたよ」

 

「そうかそうか。で、だ。取り敢えずお前に、二つの命令を持って来た」

 

なんかいつになく真剣な顔になったので、長嶺も身構える。

 

「聞かせてもらいましょう」

 

「一つはソロモン方面への大規模反攻作戦が決定した。ミッドウェー同様、お前達江ノ島艦隊にその攻略を任せたい」

 

「ソロモンを解放し、そのままインド洋、南太平洋、オセアニア方面への橋頭堡とするって所、ですか?」

 

 

「ああ。で、もう一つ何だが」

 

そこまで言い終えると、東川は横に置いてある持参した皮の鞄から薄い本というか、幼稚園や保育園の卒業証書みたいな薄さの物を取り出して開いてみせた。

 

「え?」

 

「雷蔵、お前そろそろ身を固めろ」

 

「ゑ?」

 

余りに突拍子すぎる発言に、長嶺の理解は追いついていなかった。今現在、長嶺の脳内は「身を固めろ」がグルグル回っている。

舞台は変わって、今二人のいる執務室の前の扉。そこにはメイド長であるベルファストが、中の様子に聞き耳を立てていた。紅茶を用意しに入ろうとしたら、ちょうど中から話が聞こえてしまい、様子を伺う事にしたのだ。

 

「大臣、何故にいきなり「身を固めろ」とか言い出しやがりました?」

 

「だってお前、戦争関連に関しちゃ世界最強レベル、他の才能も世界トップクラスだってのに、こと恋愛に関して言えばレベル1もいい所じゃん。だがらそろそろ身を固めさせて、新しい艦娘達との接し方を模索して欲しいんだ。あ、後な孫の顔を早く見たいってのもある」

 

(ご主人様、どうか断ってください.......)

 

「悪いが、俺は身を固める気はありません」

 

(よし!!)

 

ベルファストは心の中でガッツポーズをしていた。因みにベルファストも、指揮官LOVE勢の一人であり他の女に取られたくはないのである。

 

「理由を聞こうか」

 

「一つ、今が戦時下である事。二つ、仕事多くてデートやら仮に結婚したとしても家に帰れない。三つ、俺の呪われた血を子や孫に残したくない」

 

「まあ予想通りの答えだ。特に最後のは。だがせめて、写真くらいは見ろ。それに「身を固めろ」と言ったが、今はまだ見合いの段階だ。結婚するしないは、別に今すぐじゃなくていい」

 

「わかりました」

 

そう言ってさっきのお見合い写真を見る。そこには黒髪ロングの清楚なスタイル抜群な女性が載っており、名前も記載されていた。名前は「大道寺春香」というらしい。

 

「大臣、前言撤回します。やっぱりこの縁談、受けさせて貰います」

 

「本当か!?」

 

「えぇ。いつお見合いで?」

 

「多分、明後日だ」

 

「わかりました」

 

この言葉を聞いた瞬間、ベルファストは自分の職務も忘れてロイヤル寮に走った。ちょうどティータイムの時間であり、艦娘の金剛四姉妹もいた事から鎮守府全体に爆発的な速さでこの情報が駆け巡った。

艦娘勢は金剛、榛名、大和が。KAN-SEN勢はヤベー奴である愛宕、赤城、大鳳、隼鷹を筆頭に、オイゲンやらイラストリアス等の指揮官LOVE勢が執務室に突撃をかまそうとしたが、丁度グリムが執務室から出て来たのでグリムを取り囲んで質問攻めにする。

 

「Hey、グリム!!テートクがお見合いをすると言うのは本当ですカ!?!?」

「お見合いってどういうことですか!?!?」

「榛名は大丈夫じゃありません」

「ねぇ、グリムさん?本当の事言ってくれないと、お姉さん達、お仕置きしないといけなくなるわ」

「グリム様、本当の事を言ってくださいますよね?」

「グリム様ぁ、早く言ってくださいまし」

「ねぇ、グリム?本当の事を言ってちょうだい?」

「グリム様、お願いですからお見合いをお止めください」

 

普通の人間なら圧で負けそうだが、あの長嶺が副長に置くだけの事はあり全く動じていない。ある程度落ち着いくのを待ってから、グリムは口を開いた。

 

「貴女方が総隊長殿に想いを寄せているのは分かりますが、今回の一件はどうか邪魔しないであげてください。もし貴女方が真に総隊長殿、いや。長嶺雷蔵を想っているのであれば、このお見合いは成功させなければなりません。お見合いは上手くいけば、貴女方にとってもプラスになりますしね」

 

そうグリムから言われると、全員が完全にフリーズした。確かにグリムの言う事には筋が通るが、それでも自分の気持ちは変わらない。中には泣き出す者もおり、自然に解散の雰囲気となった。

しかしまだ一部の人間は諦めていなかった。艦娘は金剛、KAN-SENは赤城、大鳳、オイゲンの4人である。じゃあどうしたかと言うと、まずは情報集めとなった。金剛は霞桜の隊員であり、独自の情報網を持つカルファンとベアキブルに話を聞きに。オイゲン、赤城、大鳳はパソコンと睨めっこして、ネットからの情報収集の役割分担となった。でもって情報を集めた成果を、取り敢えず書いておこう。

 

・本名は大道寺春香。年齢は17歳

・顔も整っており、スタイルも高校生とは思えない程に良い。グラドルと同程度。

・親の意向で普通の高校にこそ通っているが、地頭は東大を余裕で受かる程度には良い。

・弓道の全国大会優勝記録があり、スポーツセンスも高い。

・親が世界的にも有名な大道寺コンツェルンの会長。

etc

 

とまあ普通に考えてフィクションの完璧少女が、そのまんま現実世界に飛び出して来た様な存在と言える。思ってたよりも強敵だった事に、読み進んで行く内に全員の顔から笑顔が引いていった。

 

「Hey、everyone。これ、どうするネー」

 

「ヤバイですわね.......」

 

「人間にしては高スペックですわ.......」

 

「容姿じゃ負けないけど、これは流石に想定外ね」

 

オイゲンの言う通り、容姿じゃ負けない。何せ艦娘もKAN-SENも容姿は絶世の美女であり、幼女から大人のお姉さんまで幅広く、スタイルだって一部はマジで現実離れしてる程に良い。今いる4人だって、街に出れば5分もしない内に男から声を掛けられるだろう。

だがしかし艦娘は扱い上は艦船扱いの物であるし、KAN-SENに至っては今はまだ存在が隠されている。仮に存在が正式に認められたとしても、その扱いは艦娘と同じだろう。となると戸籍の問題やら何やらが出てきて、この辺りになってくるとお見合い相手の春香に軍配が上がる。つまり「誘惑するだけなら確実に勝てるが、結婚云々の話になると土俵にすら上がれない」という訳である。

 

(こうなったら、夜這いして既成事実を作ってやるわ!!)

 

他の3人が打開策を考えている間、オイゲンはある意味で正攻法の打開策を考え出した。結局、他の3人は打開策が作れず解散となったがオイゲンは部屋から、態々パーティードレスの「ヴァイン・コーンブルメ」を引っ張り出して、お見合いの前日に長嶺の自室でセッピーーーーをして子供を作る事を決めた。では時間を進めて

 

 

 

翌日 深夜 長嶺自室

(フフフ、この姿で悩殺してやるわ)

 

そんな訳でエロエロな衣装で部屋に忍び込んだ。すぐにベッドに潜り込み、長嶺が帰ってくるのを待つ。しかし約2時間経っても、人の気配すら無い。もう流石に部屋に戻ろうかと考えていた矢先、長嶺が部屋に戻ってきた。

 

(来たわね指揮官。後はベッドに入るのを待つだけよ.......。入って来たら、そのまま胸を揉ませて、そのまま、ね)

 

(すまんなオイゲン。お前がそこにいるのはバレてるんだ。嫌な予感しかしないから、俺は触れないぞ)

 

どう言う訳か、オイゲンがベッドに居るのは長嶺には筒抜けであった。何故かって?犬神が嗅覚で、オイゲンの存在を見つけたからである。念の為言っておくが、何もオイゲンが臭い訳ではない。

 

「犬神、八咫烏。明日は失敗は許されない。もう休んでおけ」

 

「はーい」

 

「主はどうなさるのだ?」

 

「俺はまだやる事が残ってる。まあ一日寝なくても問題ねーよ」

 

そう言って長嶺は奥の執務室(いつも使う場所ではなく、部屋に置いてある予備みたいな物)に入る。

 

「もう出て来ても良いよ。オイゲンお姉ちゃん」

 

(!?!?)

 

「まさかお主、バレてないとでも思っておったか?」

 

2匹の予想外な言葉に、思わず動いてしまい布団も少し膨らむ。もう無理だと悟り、観念して布団を剥がして出てくる。

 

「はぁ。で、私をどうするつもり?」

 

「別に何もしないよ?だってオイゲンお姉ちゃんが悪い事をしにここに居るわけでもないし、別に何か壊された訳でもないもん」

 

「左様。大方、お見合いの件で夜這いでもするつもりだったのであろう?」

 

八咫烏の鋭い指摘に、オイゲンの顔が紅くなる。やはり自分で計画しといてアレだが、恥ずかしい物は恥ずかしいのである。

 

「.......そうよ/////」

 

「でも相手が悪いよ。何せ主様は、ねえ?」

 

「うむ。超絶鈍感朴念仁男、であるからな。戦闘に関しては前線での戦闘も、後方での指揮も、暗殺や工作等を取っても天下一品のセンスだが、こと恋愛に関しては疎いどころか脳内に恋愛に関する思考すら存在せぬ勢いだ」

 

相棒である2匹からも、ほぼ諦められてる事にオイゲンは頭が痛くなって来ていた。

 

「ねぇ、明日のお見合いって止められないかしら?」

 

「無理であろうな。今回のお見合いは、唯のお見合いではないからな」

 

「余程の奇跡でも起こらないと無理だよね」

 

「そう.......」

 

微かな希望をも打ち砕かれた事に、詰んだことを悟った。もう用はないので、帰ろうとすると八咫烏がそれを止めた。

 

「待たれよ。お主、本当にこれで良いのか?折角、好きな殿方である我が主の部屋まで来たのだ。この際、主の匂いに包まれて眠りにつく位してもバチは当たらぬ。というか、この我が許すから当たる事は絶対にあり得ぬ」

 

「そうそう。あのねオイゲンお姉ちゃん、八咫烏は本物の神様でね、この国を収めてる天皇っているでしょ?大昔に初代天皇となる彦火火出見(ひこほほでみ)の旅を導いた凄い神様なんだよ?その神様がOKって言ってるんだからさ、寝ちゃえば?」

 

もう神様らしからぬ事を言っているが、これは2匹の考えついた一番の配慮というか励ましというか、一応オイゲンを思っての行動である。神様による悪魔の囁きで、オイゲンはそのままベッドに入る。さっきは緊張で感じていなかったが、ベッドに入った瞬間に長嶺の暖かい包み込むような優しい匂いに包まる。そしてものの3分で眠りについた。

 

「水水〜。って、オイゲン寝てるし」

 

「我が主、もうこの際、襲えば良かろう?正直に言って、明日のお見合い相手より美女だろう」

 

「お前、俺がお見合い受けた真の目的を知ってんだろ?というか、俺が子供を作りたくない事も知ってるくせに」

 

八咫烏の問いに、長嶺が突っ込む。実を言うと長嶺がお見合いを受けたのは、何も春香が好みだった訳ではない。春香の実家である大道寺家に用があり、春香はその踏み台にする為に明日、お見合いという形で接触するのである。

 

「主様、子供を作りたくない理由って、やっぱり主様の能力のせい?」

 

「あぁ。あの能力は、確かに強力だ。一国を容易く滅ぼせてしまう程に。だが、あの力を制御するのは本来、とても難しい。例え俺の子供だとしても、力を抑えきれなければ暴走し、やがて力に自らも喰われる。俺は子供にそんな思いをして欲しくない」

 

「なら避妊具をつければ良かろう?」

 

「避妊具つけて相手に薬を飲ませても、100%ではない。万に一つでも可能性があるなら、やはり無しだ」

 

長嶺の言う能力とはブラック鎮守府立て直しに出て来た「焔龍」、碧き航路開拓録に出てきた「焔道」を始めとする技の事である。詳しくはもっと後に解説するが、かつて長嶺はこの力を使って三つの国を滅ぼした事がある。今はその殆どを封印しているが、力を完全に解放し別の場所に封印してある、特殊な装備を身に付ける事で神をも凌駕する力を持つ。

しかしまあ、そんなトンデモ能力がタダで使える筈もない。能力に認められなければ、能力を使い続けるとやがて暴走し自身が死ぬ事になる。しかも例え能力に認められても、100%の能力を使えるかは能力の気まぐれであり、国を破壊する程の能力を発揮できる者もいれば、人すらも殺せない能力しか使えない者も過去には居たとされる。

 

「まあ今は、明日の事を考えよう。相手はあの大道寺だ。恐らく、スピード勝負になる」

 

「まあ僕達は、お見合い中に仕事はないけどね」

 

「だが、本番ではお前達の力が確実に必要となる。頼むぞ」

 

「はーい」

「心得た」

 

2匹は自分達の寝床で眠り、長嶺はソファの上で眠った。そして翌朝、長嶺はいつも行うトレーニングをせずに、朝食を取ってシャワーを浴び、用意してあった紋付き袴に着替える。丁度そのタイミングで、オイゲンが目を覚ました。

 

「あ、起きた」

 

「しき、かん?」

 

「おはよう。お前、早いとこ帰った方が良いぜ?さもないと、変な所から変な怨みを買う羽目になるぞ」

 

そう言うと神谷は部屋の外に出て、鎮守府の車寄せで待っていたLS500hに乗り込む。車は会場となっている高級料亭を目指して進み出し、車の出発した一時間後に、今度は様々な一般車に一般人の格好をした霞桜の隊員達が乗り込んで後を追った。

 

 

 

数時間後 東京 高級料亭

「婆や、一体どんな殿方なのでしょうね」

 

「そうですねぇ、テレビや雑誌で見る限りでは男前な面構えをしておりますし、立ち振る舞いも気品がありながらも堂々としておられました。きっと正義感溢れる、武人のような方でしょう」

 

「そうだといいわ」

 

一足先に入室していた春香とその付き人である婆やは、今から会う長嶺の性格を予想していた。その数分後、女将さんが着いたことを報告に来てくれて、いよいよお見合い開始となった。

 

「東川様、本日はこの様な場を設けて頂き誠にありがとうございます。大道寺家当主、秀明に代わりまして厚く御礼申し上げます」

 

「いえいえ、天下の大道寺家の御息女との席を持って頂き、此方こそ御礼申し上げます」

 

婆やと途中で合流した東川が挨拶を交わした。一通り挨拶や互いの紹介を終えると、二人は安定の「後はお若い者同士で」と言い残し退室した。

しばしの静寂が部屋を支配する。流石の長嶺も、お見合いで何を話しゃいいのか分からんのである。

 

「あの、雷蔵様。ご趣味はありますか?」

 

「あ?あぁ、趣味と言った趣味は特に。ここ最近は深海棲艦の方も落ち着いて来てはいますが、いつまた襲いかかって来るかもわかりませんし、その正体も全然把握できていません。正直、趣味だ何だと遊んでいる暇はありませんので」

 

「そ、そうですか」

 

流石、超絶鈍感朴念仁男の長嶺。話を振られても、その話を片っ端からへし折る。因みにこれ以外だと

 

「好きな料理は」

「兵士は食える時に食えるものを、文句言わず食えるだけ食べる。ですので、好みはありません」

 

「好きな音楽は」

「軍歌と国家しかわかりません」

 

「好きな動物は」

「軍用犬、ですかね」

 

「好きな芸能人は」

「テレビを見る暇がありませんので、よくわかりません」

 

「好きな本は」

「兵法書、各国の軍事関連の書物ですね」

 

こんな受け答えで、話を振っても全て無にする。ある意味、コミュ症よりもヒドイ。痺れを切らした春香は庭園を散歩する事を提案し、場を変えて話の種を得る作戦に切り替えた。

 

 

「花が綺麗ですわ」

 

「錦鯉か。綺麗だ」

 

二人して別々の物を見るし、なんなら長嶺は目線すら合わせようとしない。一言言ってやろうとした瞬間、ナイフを持った男が走って来た。

 

「はぁ、はぁ。そこどけぇ!!!」

 

「チッ。春香さん、下がって」

 

「え?あ、はい!!」

 

こっちに向かって突撃してくる男。しかし目の前にいるのは、最強の男である。ナイフを向けて刺そうとしてくるが、そのままナイフを払い、腕を掴んで一本背負いで投げ飛ばす。

 

「フンッ!!」

 

「あがぁ!?!?!?!?」

 

「ったく、こんなチンケなナイフで俺を倒せるかよ」

 

投げ飛ばした男は白目を剥いて、泡を拭きながらピクピクしてる。追い掛けていたのか、男の従業員が3人息を切らせながらこっちに来た。

 

「お客様、お怪我は?」

 

「大丈夫だ。それより、このアホを片付けてくれ」

 

「はい」

 

従業員達は男を連行していき、また2人が残された。春香はさっきの姿を見て、完全に長嶺に惚れた。目をハートマークにしながら、長嶺に抱き着く。

 

「うおっ!?」

 

「雷蔵様、私と結婚してくださいまし!!」

 

「は?いやいや、ちょっと待て!!過程をすっ飛ばしすぎだろ!?!?」

 

「そんなの関係ありませんわ。子供は何人にします?12人?24人?36人?」

 

「ダース単位で子供の数を増やすな!!」

 

「初夜は服を着たままします?それとも脱がせますか?服装は?和服?ドレス?スケスケな破廉恥な下着ですか?」

 

「待て待て待て待て!!!!色々飛んでる!!飛んでるから!!!!!!」

 

暴走機関車状態の春香に、負けじと長嶺もツッコミを入れる。しかしこの後、長嶺の逆鱗に触れる事を言った事で一気に形成が長嶺よりになる。

 

「あ、そうだ。結婚したら、ダッチワイフとの縁は切ってくださいね」

 

「だ、ダッチワイフ?」

 

「艦娘、でしたかしら?あんな野蛮な兵器に、雷蔵様の妻は務まりませんもの」

 

この一言で、完全に長嶺はキレた。春香を引っ剥がし、足早に部屋へと戻り始めた。

 

「もう、何するんですの!?」

 

「帰る」

 

「何故ですの!?こんな美女、そうそう居ませんわよ?」

 

「テメェ、俺の家族同然の仲間達になんて言った?ダッチワイフだと?アイツらは確かに書類上や法的には兵器、物さ。だがな、俺の様な現場の、最前線の指揮官ってのはな!!アイツらを物ではなく一人の人間として扱うし、そんな性奴隷や欲望をぶつけるサンドバッグには絶対にしない!!!!苦楽を共にする仲間であり、常に支え支えられの家族同然の奴らだ!!!!それにテメェは、自分を美女だと言ったな?テメェは見てくれは美女だが、中身はそこらの犬のクソ以下の腐った醜い生物以下の存在だ!!!!!!おまけに、艦娘達の方がテメェより見た目も中身も絶世美女だっつーの!!!!!!!!」

 

怒涛の勢いで言いたいこと全部言うと、長嶺は春香をその場に捨てて帰った。

 

 

「で、相手放置で帰ってきたと」

 

「あぁ」

 

「見た目いいのに、中身がクズっすねぇ」

 

本日の運転手兼護衛できていたベアキブルも、長嶺と同じように思った。

 

「だかまあ、お見合いの合否は関係ない。部隊を動かし、尾行させろ」

 

「アイアイサー」

 

料亭周辺に配置してある一般人に偽装した霞桜の隊員達が、春香達の乗る車の跡をつけ出す。長嶺は一度鎮守府に帰還し、尾行している部下達の情報を待つ。

 

 

「総長、情報来た。大道寺の家は赤坂にある豪邸で、これが監視カメラの映像」

 

地下にある霞桜本部の司令室のモニターに、監視カメラの映像が映し出される。

 

「今日の夜、作戦を決行するわ。俺が潜入するから、グリムもレリックは支援よろしく」

 

「了解しました」

「わかった」

 

さてそれでは、そろそろ今回のお見合いの真の目的を説明しよう。春香の父が大道寺コンツェルンの会長なのは、先程書いた通りである。大道寺コンツェルンは主に工業関係の会社であり、大道寺コンツェルンの前身から大道寺グループの親会社だった大道寺重工での兵器密造が最近発覚した。闇に葬るべく大道寺コンツェルンの会長である秀明の暗殺を試みたが、秀明が住む場所は分からず、唯一分かるのは娘の春香と同じ家であることだけであった。

色々探りを入れてる内に、向こうからお見合いの話が来て「この際、お見合い後に後をつけたら一発で家分かるくね?」となり、今回のお見合いを受けたのである。

 

 

 

深夜 赤坂 大道寺邸

「監視は庭に15、外に3。門は監視室の部屋からの操作でしか開かず、屋敷と外をつなぐドアは開けるとブザーが鳴るのか。塀には有刺鉄線まであるし、完全に要塞だな」

 

しかも庭には番犬も3匹程度いるし、警備している人間のスーツの膨らみから銃を隠し持ってる事もわかった。余裕で正面突破もできなくはないが流石に目立ち過ぎるなので、今回はメタルギアみたくステルスする事になった。

 

「レリック、中に入ったら監視カメラの映像で誘導してくれ」

 

『わかった』

 

周りを確認していると、塀のそれも監視カメラの死角にもなっている所の有刺鉄線が断ち切れてるのがわかった。取り敢えず、そこから庭に入る。

 

(お邪魔しまーす)

 

庭に降り立つと、そのまま建物のある方に走る。まずは監視室を占拠するべく、監視室を目指す。中には二人の警備が居たが、後ろから手刀で気絶させて無力化する。

 

「グリム、ハック用のUSBは何処でもいいんだよな?」

 

『はい。場所は選びませんので、バレにくいところに刺してくださいね』

 

「それじゃ、この辺に」

 

カチッ

 

手近のPCにUSBを差し込み、監視システムのコンピューターを本部から遠隔でハッキングする。

 

『全プロテクト解除。システムの全権を奪取しました』

 

「物の40秒か。流石、伝説のハッカーだな」

 

『恐れ入ります。デバイスにマスターキーの機能をするアプリをインストールしましたので、これで何処の扉でも開く筈です』

 

「相変わらず仕事できるねぇ」

 

そう言いながら、長嶺は勝手口に向かって走る。途中、監視を回避しながらレリックの誘導に従って、一番上の秀明の自室へと忍び込む。

 

「さーて、コイツを仕込まねぇとな」

 

そう言って懐から、小瓶を取り出す。中身は長嶺の自作した、暗殺に使える毒としては最高傑作の毒薬である。FOXDIEを元ネタに作り上げたもので、体内のマクロファージを利用してTNFεというサイトカインの一種であるペプチドを生成する。これが血流により心臓に達すると、心筋細胞のTNFレセプターに結合、この刺激により心筋細胞は急激なアポトーシス(細胞自殺)を起こす。その結果、対象は心臓発作を引き起こして最後は死に至る。これにより毒を盛っても毒物とは判別が付かずに、対象を確実に暗殺できる薬物である。

 

(お、この水の瓶。使えるな)

 

そう思いながら手に取ったのは、机に置かれた水の入った瓶にグラスの被せられた物であった。この中にさっきの毒を仕込み、後は念の為、飲んで死に至るのを確認するべく壁際に隠れる。

 

「あぁー!いい湯じゃったわい」

 

そう言いながら禿げたデブ親父が、バスローブ姿で入ってきた。カメラの映像で確認してもらった所、大道寺秀明で間違いなかった。

 

「さーて、水じゃ水」

 

そう言いながら毒入りの水を飲み干す。次の瞬間、急に胸を押さえて苦しみ出し、そのまま倒れた。

 

「対象の死亡を確認。撤収する」

 

そう報告すると、今度は屋根に上がって同じ侵入ポイントから脱出する。そのまま車に乗り込み、鎮守府へと帰還した。鎮守府に帰還し、執務室の前を通ると大和が一人月を見ていた。

 

「大和、何やってんだ」

 

「提督.......」

 

「どした、何か悩みか?」

 

「提督、あなたはずっと家族でいてくれますか?」

 

いきなりの重く意味深な質問に、長嶺焦る。

 

「いや、いきなりどうしたよ」

 

「答えてください!」

 

「そんなの、YESに決まってんだろ」

 

「なら何故、お見合いを受けたのですか!?」

 

「え?そりゃお前、暗殺の手掛かりが向こうからノコノコ来たらOKするだろ普通」

 

「え?」

「え?」

 

なんか謎の空気が流れ出す。取り敢えず、一通り全て説明すると「よかった」と小声で呟き、適当な言い訳を言って部屋に戻っていた。翌日このことは艦娘全員が知る事になり、長嶺が消えるという事態が回避され全員が安堵した。

勿論この事を、長嶺は知るわけが無かった。

 

 

 

 

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