最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第二十九話長嶺の後輩

カルファンの機体が消息を絶った数時間後 「霞桜」地下本部

「状況は?」

 

「レーダー、依然として反応なし」

「各種信号、反応なし」

「偵察機からも発見、或いは機体の残骸などの発見の連絡ありません」

 

「おいおい、マジかよ」

 

現在地下にある霞桜の本部は、いつも以上にピリピリしていた。カルファンが消息を絶ったのもそうだが、何より戦域殲滅VTOL輸送機「黒鮫」が撃墜された事の方が衝撃であった。黒鮫は攻撃力もさることながら、装甲が空対艦ミサイルが直撃しても飛び続けられる程に頑丈である。

簡単な話、普通の対空ミサイルや戦闘機では太刀打ちできないのである。理論上はエンジンと翼の結合部分は装甲が薄く普通に撃ち抜けるが、例えエンジンが1つでも飛び続けられるし、現実的に考えて連続してエンジンを破壊するのは不可能である。

これらの事からわかるのは、敵は恐ろしく威力の高い兵器を使用している可能性が高いという事である。

 

「総隊長殿、どうなさいますか?」

 

「夜明けを待って、全力出撃。だか知っての通り、敵さんはチートレベルの攻撃手段を持っている。偵察中は各隊との連絡を密にし、常に周囲の警戒を行う。その為、単機ではなく3機編隊を原則として、部隊を編成。偵察を行ってもらう」

 

「わかりました。すぐに準備に入ります」

 

数時間後、黒鮫達が寝床を飛び立つ。全機が行方不明となった地点から半径200km範囲を探す。海面への不時着に成功した場合、水陸両用機であるから流されてる可能性もある訳で、流されてるのを前提で探索に入る。

更に長嶺も自らの力を解放する鍵となるF27スーパーフェニックス、子鴉と呼ばれる機体を使って消息を絶った海域を探す。

 

 

(おーい、八咫烏。何かあったか?)

 

(何もない。波と海水、いや待て。クルーザーがあるぞ)

 

(別にクルーザーの一つもあるだろ。海だし)

 

(いや、損傷はないがエンジンが止まってる上、投錨なんかもしていない。波の赴くまま流されてるぞ)

 

(OK、そっち行くわ)

 

操縦桿とラダーペダルを操作して、進路を右側に取る。数分もすると八咫烏のいる場所に到着し、並走飛行に入る。そのまま八咫烏に誘導してもらって、謎のクルーザーの元に行く。

 

「おいおいおいおい!これ絶対面倒なヤツじゃねーかよ。クソッタレ」

 

降り立った辺り一面、9体の死体と血の海で死体の腐臭と血生臭さで慣れてない者なら、確実に吐くであろうキツイ臭いが充満していた。

 

「おう俺だ。グリム、ちょっとばかし船舶の照会を頼む」

 

『わかりました。名前と番号を』

 

「てぇーと、名前は「Raja」、番号は2847-6357154だ」

 

『お待ちを..............出ました、インドネシア船籍の個人所有船ですね。持ち主はフランス人のセバスチャン・ユーゴ氏。男性37歳、職業は実業家。犯罪歴は有りませんが、現地警察機関に奥さんが捜索願いを出していますね』

 

「わかった。そのユーゴって奴、写真を転送してくれ」

 

『今送りました』

 

送られた画像データと、死体の顔を確認していく。4人目くらいで、そのユーゴ氏と思われる男を見つけた。試しに懐やポケットを漁ると財布が出てきて、中の免許証で本人である事を突き止めた。

 

(恐らく、偶々狙撃ポイントに良さそうな場所に居たから、消されたんだろうな。髑髏共に)

 

『総隊長殿、一つ宜しでしょうか?』

 

「どうした」

 

『何故、クルーザーを調べろと?関係ないように思いますが』

 

「いやな、八咫烏が不審なクルーザー発見したって言うから来てみたら、辺り一面血の海でよ。取り敢えず照会頼んだってわけよ。そんでもって多分このクルーザー、カルファンの機体を撃ち落とした兵器を使った場所だ。しかも今回の敵、ちょっとばかし厄介だぜ」

 

神谷は血や死体の腐臭とは別に、ある臭いを感じていた。かつて、自らの戦友であり最初で最後の親友達と戦場を駆け巡っていた頃、何度も嗅いだ「骨」の臭い。忘れようもない、何度も倒して来た軍団の兵士。髑髏兵の臭い、そのものである。

 

『どう言う事ですか?』

 

「国が死に絶え、最早、忠義を誓った国は亡国と成り果てたと言うのに、未だに逃走をやめれぬ哀れな骸骨達。今回の敵は、俺もちょっと本気出さないと死ぬ」

 

『そこまでですか.......』

 

「あぁ。各員に、一層気を引き締めるように指示してくれ」

 

『わかりました』

 

グリムにそう頼み、自分は船内の探索に入る。中も死体があり、安定の血塗れである。また弾痕や、ナイフを刺した跡なんかもあって髑髏兵がやったであろう証拠がジャンジャン出てきた。さらに機関室に進んで行くと、なんか「カチッ、カチッ」という音が聞こえて来る、

 

 

「誰か目覚まし時計でも、いや待てよ。.......ヤバい!!!!」

 

そう言うと神谷は甲板に走り、戦闘機の屋根に飛び乗って上昇させる。次の瞬間、クルーザーは爆炎に包まれた。

さっきの音は時限爆弾のタイマーであり、機関室でカチカチ音が鳴ってて、しかも周りは燃料がたっぷりある上に、入り組んでるから物を隠すには持ってこいの空間。そりゃあ何かある事に気付く訳で、全力で逃げた。

 

「おいおい、先に爆破しときゃバレなかったろうに」

 

『総隊長殿!!総隊長殿!!カルファンら、先遣偵察隊が見つかりました!!!!全員無事だそうです!!!!!!』

 

「そうか、よかった.......」

 

この報告に少し安堵したが、すぐに気持ちを切り替えて撤退するように命じる。神谷もスーパーフェニックスのコックピットに乗り込み、他の6機共合流して鎮守府を目指す。

 

「あの男、髑髏を知っているのなら生かしてはおけぬな。しかし、一体どこの何奴だ」

 

その後ろを真っ赤な強化外骨格に身を包み、その背中に4本の浮遊する剣が控えさせた男が居た。男は神谷の乗るスーパーフェニックスの追尾を始める。

スーパーフェニックスには高性能なレーダーが付いているが、人間サイズのそれも後ろからでは探知できない。流石の長嶺も空中で跡をつけられてるとは思いもしない訳で、完璧に気付いてない。

 

 

「よーし、そろそろ鎮守府だな。機体を式神に戻してっと」

 

そのまま気付かず鎮守府に帰還し、滑走路の上空で機体を式神に戻す。空中で式神に戻すと当然落下するが、普通にジェットパックで威力を減衰させて受け身を取りつつ着地する。

 

「八咫烏、犬神。先に戻っててくれ」

 

「はーい」

 

「いや、我が主。もう少し、側に控えさせてくれ。犬神、お主もだ」

 

「なんでー?」

 

「お前が意見して来るとは、えらく珍しいな。いいぜ、ならもう少し側に控えてもらおう」

 

「感謝する、我が主」

 

珍しく八咫烏が意見してきたので、ここはその意見を尊重しておく。まあ元から居ても居なくてもどっちでも良くて、疲れてもいるだろうから先に休んでて欲しいってだけだったし、問題でも何でもないのだが。

 

「カルファン、無事か?」

 

「えぇ、ボス。奇跡的に死傷者はゼロよ。無傷、とはいかなかったけど。それでも命に関わる怪我はしてないし、機体の損失だけで済んだのはラッキーだったかもしれないわ」

 

「それならよかった。だが、まあ今日明日は一応安静にしてろ。万が一の事も有り得なくは無いしな。あ、これは総隊長としても、医者としてもどっちの立場からの話だ」

 

「わかったわ」

 

カルファンとの話が終わると、ベアキブルの方を向く。

 

「ベアキブル」

 

「はい、何でしょうか親父」

 

「カルファンの側にいてやれ。こう言う時くらい、姉弟でいてもバチは当たらんだろ。お前も今日明日は休暇にするから、たまには一緒にいろ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

実の姉弟であるカルファンとベアキブルを一緒にしておき、不足の事態に備えさせておく。確かに「姉弟水入らずで過ごしてこい」と言うのもあるが、それ以上に容態が急変しても家族なら些細な事でも分かるだろうから、そう言う考えの元からの指示であったりもする。

 

「さーて、カルファン以下、偵察隊の連中も一応無事に生還した訳だ。今日はもう全員休みだ休み!!各大隊長は、隊員達に指示してこい」

 

この指示は長嶺の性格からである。別にそんな深い理由はなく、ただ単に休ませてやろうと思っただけである。その場の全員が「ウェーイ」とでも言おうとした瞬間、八咫烏が「伏せろ!!」と怒鳴った。全員が反射的に屈むと、何かが頭上を通過した。

 

「何だ何だ!?!?」

「うおっ!?」

「危ない」

「ひょえっ!?」

「っと」

「危ないわよ!」

 

「なっ!?」

 

大隊長達は謎の物体が乱入してきた事に驚いていたが、長嶺は乱入してきた事ではなく、謎の物体の方に驚いていた。

 

「我が主、アレは.......」

 

「何でここにあるの.......」

 

八咫烏と犬神も同様に驚いていた。格納庫に飛び込んで来たのは白色のビームで刀身を形成した、言うなれば「ソードビット」とも言える空を飛ぶ剣であった。

しかしこの武器、長嶺はよく知った武器であった。それどころかそれを使って、昔戦場を飛び回っていた。だからこそ、その近くに強敵がいて、その敵は今の霞桜はおろか、能力を使わなかったら長嶺ですら勝算は五分五分。さらには敵に情け容赦なんて考えは脳内に存在せず、必要とあらば霞桜とついでに艦娘&KAN-SENをも皆殺しにする勢いで攻めて来る。だから、長嶺の命じる事は決まっている。

 

「野郎共、艦娘やKAN-SEN達を地下に避難させろ。避難させ終わったら、お前達も扉をロックして絶対に地上には出て来るな」

 

「そ、総隊長殿!?」

 

「いいな!!絶対だ!!もし破ったら、確実に死ぬぞ」

 

今まで聞いたことのない、一番真剣な声に全員がヤバイ敵がいて、自分達では太刀打ち出来ない事を悟った。

長嶺はそんな部下達には目も暮れず、愛刀と阿修羅HG、それから朧影SMGを二挺ずつ装備して格納庫を飛び出す。

 

「何処だ!!何処にいる!?!?姿見せんかい!!!!」

 

「そう吠えるな、知りたがり。貴様が触れているのは、この世の触れてはならぬ物だ。貴様が誰であれ、何であれ、あのクルーザーとそして髑髏兵を知っているのなら生かしてはおけぬ」

 

格納庫から見て左の空に、さっきの白い剣を上下左右の方向に背後で控えさせた白い強化外骨格に身を包んだ男が居た。

 

「そうかよ。だがなガンダム人間、髑髏兵、いや亡霊共を知りたがっているのは他でもねぇ、お前らじゃねーか。あのクソ兵器は俺が昔、何百何千と倒してきたぞ」

 

「戯言を。死ぬがいい、愚かなる知りたがりよ!!」

 

次の瞬間、背後の白い剣が長嶺に襲いかかる。しかしそれは読んでいる。阿修羅で正確に剣の核となる部分を撃ち抜き、迎撃する。

 

「ほう。ソードビットを迎撃するか」

 

「ふん。たかが4本で、この俺を倒そうするだと?お前、アレだろ。そんなに能力や装備に適合はしてない、末席の末席、雑魚中の雑魚だろ?まさか、こんな雑魚が俺のタマ取りに来るとは思わなかったぞ」

 

「き、貴様.......。この新人類とも言える私を、この私を愚弄するか!!!!」

 

「新人類だと?そんなの、新人類どころか人ですら無いわ!!お前が成っているのは、化け物以下の存在だ。俺達は血に飢え、闘争にのみ生き、人の腑を食い破って血と臓物に塗れ、硝煙と血潮の世界でしか生きられぬ化け物。だがお前は、最早それよりも遥かに悍ましい。しかもクソ弱い癖にイキリ散らかして、厨二病を学校で大っぴらげにやってるのと同じくらい恥ずかしいぞ」

 

「一度ならず、二度も愚弄するか。このクズめが!!!!」

 

長嶺さん、敵を煽りに煽る。まあ半分は本当に思ってることを、そのまんま勢いでマシンガンの様に言いまくるだけの簡単なお仕事である。ただ割とガチでこの男、弱い。マジで弱い。

薄々勘づいている読者もいるかも知れないが、この男、いやガンダム人間の所属している組織はかつて長嶺が今はもう死んだ親友達と共に所属していた組織であり、ガンダム人間は長嶺の後輩に当たる。直接の面識が無いから、ガンダム人間は知る由もないが。でもってガンダム人間の使ってる「ビット」と呼んだ白い剣。あれは本来、自らの能力をのせて使う。詳しくは何処かで詳しく書いていくから割愛するが、能力を乗せない場合は白い剣となる。

つまり「半人前程度の能力しか出せていない」と言う訳であり、ガンダム人間の使う強化外骨格の能力を100%引き出せていないのである。因みに長嶺が現役で使っていた頃は、ビット1本が駆逐艦に刺さるだけで機能停止に追い込み、そのビットも遥かに多い数を一度に操り、その上複雑に動かしていた。

 

「オールビット、ビーム!!!!」

 

「っと、あぶねぇじゃねーか」

 

「何故避けきる!?常人には捉えようのない速度だと言うのに!!!!」

 

とても簡単なことである。「長嶺が化け物だから」この理由で事足りる。

 

「その程度か?今度はこちらから行くぞ!!」

 

腰に装備したジェットパックで飛び上がり、ガンダム人間に肉薄する。余りに突然の事でガンダム人間も「な!?」と言っただけで、殆ど反射的に腕で顔の周りを防御するだけだった。

最初は顔面か腹を蹴り飛ばすつもりだったが、防がれそうなので踵落としを頭に叩き込む。

 

ゴスッ!!

 

「グッ!?」

 

鈍い音と共に、ガンダム人間が地面に落ちていく。そのまま滑走路に落下して、周りに土煙とアスファルトの破片を盛大に撒き散らす。勿論この程度で死ぬ程ヤワじゃないのは分かりきっているので、真上から朧影を撃ちまくる。というか踵落としだけで殺れていたら、苦労はしないだろう。

 

「ウグッ、ガッ!ハァ!!」

 

ザンッ!!

 

突如として土煙を破って、赤い斬撃の波動が長嶺目掛けて飛んでくる。寸前のところで避けると、今度も赤いが、斬撃ではなくまっすぐな槍の様な波動が迫って来る。此方は割とギリギリで避ける。

 

《流石にこの位はできるか。だが動きを読めても、それを踏まえた攻撃はできていないな)

 

「やったか!?」

 

「バーカ。そんくらいで、この俺を倒せるか。それに貴様の斬撃はまだまだだ。真の斬撃ってのはな、こうやるんだ!!」

 

ザンッ!!!!

 

青白いビームの様な斬撃と紅蓮の焔の様に赤黒い斬撃が波動となって、ガンダム人間のビットを破壊し尽くし周りのコンクリート諸共、ガンダム人間を吹き飛ばす。どうにか殆どダメージを受けずに乗り切れたが、自分の放った斬撃より高威力で高速の一撃だった事に焦り始める。

 

「まさか、この程度の事で怖気付いちゃいないよな?面白いのはこれからだぞ」

 

「わかっている。さあ、かかって来るがいい!!」

 

「それはこっちのセリフだガンダム人間!!!!」

 

長嶺は愛刀である幻月と閻魔を。ガンダム人間はさっきの斬撃と突きの波動を生み出したハルバードを装備し、長嶺は上から重力とジェットの推力が生み出す強烈な一撃を見舞おうとする。対するガンダム人間は敢えて受け止めて、周りに衝撃波を作り出す。どうやらガンダム人間は接近戦では結構強かったらしく、あの長嶺にしっかり食いつく。

その一進一退の攻防は、監視カメラを通して地下の避難シェルターに逃げ込んでいた八咫烏と犬神、霞桜の隊員達、艦娘、KAN-SENも見ていた。

 

「総長に食らいついてる。コイツ、一体何者だ」

 

「確かにこれじゃ、親父が俺達を地下に避難させる訳だ」

 

「みなさん、これで良いんでしょうか」

 

グリムの一言にその場の全員が振り返る。

 

「私達は総隊長殿、いや。長嶺雷蔵という男に救われ、「霞桜」という居場所を与えて、「例え仲間でも愛する人でも必要なら殺す」と言っておきながらどんな時も味方を見捨てずに敵中のど真ん中だろうが、もしかしたら死んでいるかも知れない状況ですら単身敵地に飛び込む様な、そんな人です。

その人が戦っているのに、我々が指を咥えているだけで本当にいいんでしょうか?」

 

「グリム、確かに貴方の意見は筋が通っている。だが今回は総隊長直々に待機を命じられている上、正直私はあんな高次元の戦闘に参加して役に立つ自信はありません。例え武器を捨て総隊長の肉壁となるとしても、あの動きについていけないでしょう。その辺りはどうするつもりですか?」

 

「.......どうしましょう」

 

「考えてなかったのかよ!!」

 

まさかのグリムあんな大口叩いていたが、まさかの何も対策は考えていなかった。すかさずバルクがツッコむ。なんか謎の空気が場を支配するが、それをベアキブルがぶち破る。

 

「あぁ、今思ったんだが八咫烏と犬神を盾に進むってのはどうだ?残酷だがあの2匹は、攻撃が全く効かないんだし、この際、親父救うためにはこれしかないと思うのだが」

 

「それはできぬ」

 

ベアキブルの意見を、八咫烏が否定した。全員が八咫烏と犬神の方を向き、八咫烏も説明を始める。

 

「お主らは「我らがどんな攻撃でも受け付けない」と思っておるのだろうが、それは違う」

 

「僕達はダメージは受けてるんだよ。でも特殊能力っていうか、パッシブスキルっていうか、とにかくダメージは入った途端に自動的に回復するんだ。無制限にね」

 

「だが今回の敵の使う武器には、特殊な呪いの様な物が付与されておる。この呪いは、その「回復」という機能や行為を阻害してしまうのだ。例えばこの呪いが銃弾に込められていたとして、急所を外れて、腕や足を掠っただけでも傷は永久に治らない。傷口は開きっぱなしだし、縫合や包帯を巻いてもすぐに血は溢れ出て来るし、傷口は塞がらない」

 

「しかもこれって、多分高速修復剤とかも無力化するんだ。だからもし、主様の手脚が切り飛ばされたら、多分そのままになる」

 

2匹の説明に項垂れ諦めるかと思いきや、逆に「総隊長を助けよう」という意見で固まった。幸いガンダム人間は長嶺との戦いに夢中になっているから、うまくすればバレずに部隊を展開できる。そう踏んで、早速行動を開始する。

一方、艦娘とKAN-SENも同様の意見にたどり着いており、その事を大和とエンタープライズが報告しにやってきた。

 

「グリムさん、私達も提督と一緒に戦います」

 

「私達KAN-SENは異世界に飛ばされたが、指揮官は私達の居場所を作ってくれた。その恩返しをしたい。例え止めても、私達は行くぞ」

 

「どうやら私達は、全員同じ考えの様ですね。我々も丁度、総隊長殿の元に馳せ参じようとしてた所です」

 

「そうでしたか」

 

「やはり、皆考える事は同じなのだな」

 

簡単な作戦を立てて、長嶺を助けるべく全員が行動を始める。こういう風な決断を取ってくれたのも、長嶺の日頃の行いからであろう。

近海に速度と雷撃に重きを置いている駆逐艦と軽巡洋艦、それからアウトレンジ攻撃にこそ真価を発揮する空母を展開し、陸には霞桜の隊員達、戦艦、重巡、それから艦娘なら天龍や龍田、KAN-SENなら翔鶴と瑞鶴の様な接近戦のできる者達が配置された。

 

 

「知りたがり男、新人類たる私相手に良くここまでやれた物だ」

 

「悪いな。こちとらテメェみたいに弱っちい奴にやられて上げる程、お優しい性格してねーんだわ」

 

「そうか。なら死ね!!」

 

「おっと死ぬのはアンタだぜ?」

 

キュィィンブォォォォォォォ!!!!!

 

いきなり四方八方からの弾幕射撃に、ガンダム人間も驚く。銃撃だけではない。大小様々な砲弾がいきなり降り注ぎ、爆弾やらロケット弾も降って来る。いきなり横槍が入った事で、ガンダム人間も大混乱に陥る。

 

「お、お前達!」

 

「総隊長殿。やっぱり私達は、地下で総隊長殿が戦ってるのに指咥えて傍観するマネできません。誠に勝手ですが、助太刀させてもらいます」

 

「フ、フフフ。ハハハ、ハハハハハハ!やっぱりお前達は俺の自慢の仲間(かぞく)だ!!行くぞお前達。俺達の家を破壊せんとするクズ野郎を、キッチリあの世に送ってやれ!!!!!!!!」

 

「「「「「オォォォォォ!!!!」」」」」

 

隊員達の雄叫びと銃声が鳴り響く。ガンダム人間は自分の不利を悟ったのか、近くに居たオイゲンに狙いを定めた。

 

「fɔʏər!!」

 

203mmSKC連装砲と105mmSKC連装高角砲を撃ちまくるが、あまり効果がなかった。振り下ろしたハルバートはオイゲンの左側の艤装をぶっ壊し、その破片でオイゲンが負傷する。

 

「女、まずは貴様から屠ってくれる!!」

 

そう叫びながら、ハルバートを振り下ろす。オイゲンは死を覚悟したが、オイゲンの前に長嶺が立ちはだかる。振り下ろされたハルバートはオイゲンではなく、幻月と閻魔によって挟まれていた。

 

「貴様.......!!」

 

テメェ、何晒しとるんじゃ。俺の前で仲間は傷つけさせんぞ!!!!

 

完全にブチギレた長嶺。今までは舐めプでもないが、本気とは言えない位の力加減だった。しかし今度ばかりは、少しばかり本気を出す事にした。

 

炎道!!!!

 

そう叫ぶと周囲から一斉に炎が吹き出し、その炎が長嶺に降り注いでいく。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

長嶺自身が炎と一体化し、炎が消えると体中に炎の紋様が浮かび上がり、いつもの黒い瞳から赤い炎を宿した様な瞳になった長嶺が立っていた。それだけではない。愛刀の閻魔は頭身がマグマの様な赤黒い物に変化し、幻月は青白いままだが刃の部分が金色に輝いている。

 

「その技、その見た目、貴様まさか」

 

遅い!!

 

ザンッ!!!!!!

 

「何が.......起きた.......」

 

一撃で一気に間合いを詰めた上、右脇腹と右腕を切り飛ばす。しかも閻魔の炎を傷口に移し、継続的にダメージを受けさせ続ける。出血こそしない為致命傷にはなりにくいが、その分地獄の業火に焼かれる苦痛は神経を通じて脳に伝わる。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

 

想像絶する激痛に悶える。更に長嶺は追い討ちと言わんばかりに刀を腹に突き刺し、奥義である「炎菫」を使う。この奥義は突き刺した体内にある刀身部分から、炎のバイオレット・カンディルが体内に喰らい付く。カンディルというのはアマゾン川に住む、ナマズの仲間で「ピラニアより恐ろしい魚」として地元民は考えてる程に凶暴な魚である。

身体を中からボリボリむしゃむしゃ食われていき、更に地獄の業火が体内を焼きまくる。

 

「あ’’あ"あ’’あ"あ’’あ"あ’’あ"あ’’あ"!!!!!」

 

最早、半狂乱となり痛みに悶えて転がり回る。周りの隊員や艦娘とKAN-SEN達も「うわぁ.......」という顔で見ていた。長嶺は唯一、悪魔の様な笑みを浮かべながら、まるで「そうだ。もっと、もっと苦しめ」と言わんばかりの雰囲気であった。完璧に油断していた上に、戦闘の疲れもあって注意力が欠けていた長嶺は、最後の力でガンダム人間の放った突き攻撃の波動に反応が遅れ、右腕を吹き飛ばされてしまう。 

 

「ぐおっ!?」

 

「やった!やったぞ.......」

 

最後の力を使い切り、そのまま力無く倒れる。しかしガンダム人間の最後の最後、奥の手はまだ残っていた。

 

ピピピピピピピピピピピピ

 

「お前達、下がれ!!!!自爆するぞ!!!!!!!!」

 

全員がすぐに後ろに下がり、装甲を動かせる者は前に展開し、他の者が下がる中、盾持ちの者は前に出て衝撃を受け止めに入る。丁度展開が終わった時に、起爆。赤く発光しながら爆発し、周りを粉々に吹き飛ばした。

 

「じ、ばく?」

「死んでたよな?」

「えらく非現実的かつお約束な最後っ屁だなおい」

「でもこの威力か?」

 

「エネルギーパックを暴走させたな.......」

 

次の瞬間、長嶺も大の字に倒れた。既に右腕の感覚はなく、血が大量に流れている。

 

「総隊長殿!!」

「総長!!」

「親父!!」

「総隊長!」

「ボス!!」

「「「「「「「「「指揮官!!!!」」」」」」」

 

艦娘以外の全員が長嶺の元に駆け寄る。

 

「みんな大丈夫ですよ。高速修復剤を打てば、すぐに治りますよ」

 

「出来ねぇんだよ!!さっきの奴の攻撃じゃ、回復できねぇ呪いみてぇのが掛かってるんだよ!!!!!」

 

それを聞いた瞬間、血相変えて艦娘達も集まってきた。だが当の本人は、ただ笑っていた。

 

「なーに泣いてんだ、お前ら.......」

 

「なんで、なんで私を守ったのよ!指揮官!!」

 

「お前が攻撃を受けたら死ぬが、俺が受ければ死なないからだ.......。確かに呪いは掛かってるが、意味をなさない。見てろ.......」

 

そう言うと手を口元に持っていき、少し話した位置で吐息が掛かるように手を置いた。

 

「鳳凰の、息吹!」

 

そう唱えてから息を吹くと、赤い煙が吐き出され手に纏わりつく。それを右腕の傷口に持っていくと、そのまま押し当てる。纏わりついていた煙は傷口全体を覆うと、やがて消えた。

 

「よーし、犬神.......」

 

「高速修復剤?」

 

「あぁ.......」

 

口に咥えた注射器を長嶺に渡し、長嶺はそれを打つ。どう言う訳か生えない筈の腕が普通に生えてきて、いつものように復活する。

 

「な?大丈夫だろ。ってか血が減ったから、肉食いてぇ。肉!!オメーら、今日はBBQ大会だ。すぐに用意せぇ!!!!!!!」

 

普通に命じる長嶺に、全員ポカーンである。次の瞬間、全員から武器を向けて長嶺を囲む。

 

「え?何々?反乱ですか?」

 

「総隊長殿、質問に答えてください。さっきの敵、それに総隊長殿が使ってた技。一体何々ですか!?」

 

「教えなーい」

 

余りに巫山戯た答え方に全員の顔が、一気に怒りに染まる。今にも長嶺を撃ち殺しそうな勢いの、ガチギレモードである。

 

「だってよぉ、アイツというかこの一件を全部説明するだろ?それやったら俺は、ここの全員を皆殺しにしないといけない。アイツと俺の力は、この国の闇であって初めて真価を発揮する。正直、KAN-SENとか霞桜とか、そんなのより秘密にしとかねーとヤバいヤツだ。霧島、お前は覚えあるよな?前、防衛省のデータベースに侵入して俺の経歴見ようとした時、見れなかったのが有っただろ?アレが今回の一件に、深く関わっている」

 

このシリーズの最初、「最強提督のブラック鎮守府立て直し」の第五話真珠湾攻撃の冒頭で、霧島と大淀、それから明石が防衛省の機密ファイルに侵入して長嶺の経歴を盗んで来て、その経歴に「天皇陛下、防衛大臣、連合艦隊司令長官、本人以外のアクセスは一切不可能です」と表示されてたのが有ったのを覚えているだろうか?あのデータに書かれている物こそ、長嶺の能力やガンダム人間とガンダム人間、それから長嶺が過去に所属していた組織の情報である。

 

「この情報は天皇、防衛大臣、連合艦隊司令長官、俺以外は誰も知り得ない。それを知ると言う事は、死を意味する。それでも聞きたいか?」

 

この一言で全員が固まった。長嶺がここまでして止める理由を理解し、武器をおろした。

 

「だがまあ、そうだな。たぶんいつか、教える時が来るだろうよ。そん時まで、待っててくれよ?なっ?そん時は俺の過去もひっくるめて、全部教えてやるからよ。それより飯だ飯。腹減った」

 

なんか不完全燃焼感があるが、取り敢えずは全員納得した。因みに長嶺のリクエストでこの後BBQ大会が開催された。

 

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