最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第三十一話鉄底海峡

鎮守府での戦闘より二日後 講堂

「さてさてお前達、いよいよこの時がやってきた。明日、満を侍してソロモン諸島へ殴り込む。既に霞桜第三大隊、それからW明石にヴェスタル、艦娘の夕張の工廠組を先遣隊としてビスマルク諸島のラバウルに送り込んであるのは知っての通りだ。

今回の戦場であるソロモン諸島は、艦娘、それから重桜とユニオンのKAN-SENにとっては因縁の土地だ。多数の艦船、航空機の墓場と化し「鉄底海峡(アイアンボトム・サウンド)」と呼ばれる程だ。それを知ってか知らずか、深海棲艦の皆様も大戦力を配備してくれやがりました。泊地棲鬼に装甲空母姫に飛行場姫、戦艦棲姫と本気で笑えないヤベェ奴らが勢揃いしている。しかも周りには護衛なのか親衛隊なのか知らんが、éliteとflagshipが相当数配備されている事も確認された。勿論その外にも大量の深海棲艦がいる」

 

ここで艦隊の頭脳たる艦娘の霧島が質問する。

 

「司令、この数では如何に物量と練度に自信のある我々でも手に余るのでは?」

 

「だろうな。だから今回は同時攻撃で敵を撹乱しつつ、敵に動揺を誘発させながら各個に殲滅していく。というのも奴らはフロリダ諸島に本拠地を構え、その周辺にあるラッセル諸島、ガダルカナル島、マライタ島、サンタイサベル島に防衛拠点を配置している。多分これ、何処か一方に全戦力で攻め込もうものなら、背後や両側面を突かれてジリ貧は必至。そこで先に周りの4島を攻め、ガラ空きになったところでフロリダ諸島に攻め込む。その為、今いる部隊を四艦隊に大きく分ける。配置に関しては各自で見てもらうが、艦隊旗艦に関してはこの場で発表させてもらう。尚、艦隊旗艦に関しては全員艦娘にやって貰う。理由は勿論、KAN-SENよりもこっちの世界に慣れているからだ。まずラッセル諸島の装甲空母姫を担当する第一艦隊には戦艦『武蔵』、ガダルカナル島の戦艦棲姫を担当する第二艦隊は戦艦『大和』、マライタ島の飛行場姫を担当する第三艦隊は航空母艦『赤城』、そして恐らく一番の激戦区であろうサンタイサベル島の装甲空母姫、飛行場姫、戦艦棲姫はこの俺が担当する。また霞桜の第三大隊を除く第一〜第五大隊は今言った順の艦隊に入り、艦娘とKAN-SENの支援をやって貰う。ラバウルの前線基地(FOB)の防衛は、第三大隊が担当する。以上、何か質問はあるか?」

 

手は上がらない。

 

「質問はないな。では各自解散の上、装備の最終点検をしておけ。以上だ」

 

今までで一番苛烈な戦場を前に、皆の空気は重い。艦娘は自らの提督である長嶺が今回は初めから先頭に立ってくれるし、一応ここに配属されている艦娘の8割は真珠湾とMI攻略作戦、所謂ミッドウェー島開放での一連の戦闘にも参加し、しっかりと誰一人欠けることなく生き残ってきた。

KAN-SENだって同様に、セイレーンとの戦闘やアズールレーンとレッドアクシズによる戦争を経験して来ている。早々死ぬつもりもないし、経験値では艦娘にも遅れを取らない。

霞桜の隊員達に関しては、経験値は全員が一級品の玄人達で戦闘に関してはどんな過酷な状況下であっても、最後の最後まで抗い続け必要とあらば肉弾となりて敵諸共吹っ飛ぶ気概すらある。

しかしそれでも、全員が今まで一番「死」を身近に感じてピリピリしていた。その為、暫くは解散せずに少ししてから自室や工廠に戻って行った。

 

 

 

その夜 長嶺自室

「我が主、今日は早く休むのか?」

 

「流石にな。一応、明日は決戦だ。この程度の戦いで死ぬつもりも無いし、死ぬ事もまず無いが、用心しておいて損はない」

 

「主様って、やっぱり人間辞めてるよねぇ。肉体も精神も」

 

「自分で言うのもなんだが、最近自分が人間じゃなくてなんか別の人型生物に思えてくるんだよなぁ」

 

相棒達とバカ話に花を咲かせていたが、2匹とも何かに勘づいたのか急に話を切り上げて、部屋を出て行ってしまった。するとドアがノックされて、オイゲンが入ってくる。

 

「入るわよ指揮官」

 

「いや、それ入る前に言えよ。もう入ってんじゃん」

 

「細かい事を気にしてちゃダメよ」

 

謎の空気が場を支配する。その様子を影からこっそり伺っていた2匹も「あちゃー」と、完全に落胆していた。

 

「で、こんな夜更けに何のようだ」

 

「あら、男女がこんな満月の素敵な夜に部屋に居るんだから、する事なんて一つじゃない?」

 

「はぁ、冷やかしなら帰れ」

 

いつものように際どい色っぽい事を言うが、長嶺はウザそうに帰れと言う。でもって2匹も「言いやがったよコイツ」という顔で、あわあわしていた。肝心の対応はオイゲンも予想していた様で、少し不機嫌になるだけで済んだ。不機嫌になるのは、ご愛嬌である。

 

「わかった、単刀直入に言うわよ。怖いのよ、明日になるのが」

 

「ほう。あの武名高き鉄血のエース、プリンツ・オイゲン様がねぇ?」

 

「悪かったわね。今回の戦いは、私も経験した事ないのよ。私は生き残れる自信はあるけど.......」

 

「成る程。他を見送り、また自分だけ生還するのが怖いか。ずっとお前が心からの笑顔をせずに、作り物の紛い物の笑顔をしていた理由もこれか」

 

オイゲンは自分の心を見透かされた事に驚いて、少し震えながらまるで化け物を見た様な恐怖と驚愕が同居した表情を見せる。

 

「確か「幸せを呼ぶ船」だったか?これ、言う奴からすれば良い意味だろうよ。要は「福の神」って事だ。だが捉えようによっちゃ、他の艦が沈んでも生き残る。他の艦を見送る。死神と同義だ」

 

「.......っさい」

 

「え?」

 

「うっさいわね!そうよ!!私は死神よ!!!!アンタに言われなくても分かるわよ!!!!!!」

 

そう言って近くのクッションを長嶺にぶん投げる。自分の一番触れられたくない心の傷を、ただ事実を並べる事しか出来ない奴に抉られているのだからキレるのが普通だ。

 

「まあ、俺もその死神だがな」

 

「え?」

 

「もう何年経つかな。昔も昔。俺が霞桜を作るどころか、海軍にすら入ったなかった頃の話だ。それこそ一昨日の事に関係するんだが、俺はある部隊に居た。本当に極秘中の極秘で、三流の都市伝説として流れてる程度だった。所属している奴も少なくてな、俺含めてたった4人しかいない。

ある時、命令が下った。ある国家を消し飛ばす作戦だったんだが、どうにか作戦は成功した。だが、俺以外の奴らは俺を庇って死んだ。ちょうどこんな満月の夜、俺のいた部隊は全滅した。生還した俺は関係者から「幸運の軍神」、「七福神を宿している」とか何とか言われたさ。

だが俺はずっと思っている。俺の幸運は他の3人から吸い上げた運で、俺は唯の簒奪した幸運を振り翳す醜い化け物か何かだと」

 

長嶺の目はいつもの優しい目でも、戦闘時の狂気に満ちた目でもなかった。ただ悲しみに暮れる、年相応の少年の様な目である。オイゲンもまさかここまで壮絶な人生だったとは思ったなかった様で、完全に固まっていた。

 

「なんか湿っぽい空気になっちまったな。折角来たんだ、一杯付き合え」

 

「あなた、よくこの空気で晩酌に誘えるわね」

 

「今日はこの間買った、ヴィンテージのシャルツホーフベルガー・リースリング トロッケン・ベーレン・アウスレーゼを開けようと思ったんだがなぁ。呑まないなら、一人で呑んじまうか」

 

シャルツホーフベルガー・(長いんで省略)アウスレーゼは一本150万近くする、高級ドイツワインである。長嶺は未成年だが大酒豪であり、様々な超高級酒や名酒を持っている。レパートリーもワイン、シャンパン、日本酒、焼酎、ウイスキー等々、酒屋レベルで持っている。

因みに酒の強さは度数70台の酒を、一升瓶で一気飲みしてもピンピンしてる。尚、ご承知の通り現実でやろう物なら、急性アルコール中毒になるなりで召されるので絶対にやらない様に。

いや、やる奴もいないか。

 

「!?」

 

「仕方ねーな。一人で呑むとす」

「ま、待ちなさい」

 

「どうしたのかな、オイゲンくん?」

 

完全に悪人顔の笑顔で、ニヤリとオイゲンの方に向く長嶺。オイゲンはてっきり顔を赤くしているかと思いきや、普通に「呑まない、なんて言ってないわよ」と普通に言いのけた。

このガッツとなんか良い感じの流れに2匹も笑いを堪えながら見守っていた。

 

「お、おう。そうか」

(よく言えたな、そのセリフ)

 

長嶺も内心では、突っ込んでいた。で、出撃前夜に急遽始まる飲み会。最初の方は長嶺に飲みっぷりに煽られる形で、がぶ飲みしていたオイゲン。しかし1時間もすると

 

「ヒック。しきか〜ん、もっと飲みなさいよぉ〜」

 

「お前、酔うと結構アレだな」

 

「なによ〜。女の子を酔わせて、ナニするつもりなのぉ?」

 

「いや何もしないよ?というか、そろそろ止めとけって。マジで明日後悔するぞ」

 

マジでグデングデンに酔っ払っていた。呂律は回ってないし、目は据わってるし、顔どころか全身が赤い。

 

「しきか〜ん、飲ませてあ・げ、ないわぁ」

 

「いや飲ませねぇのかよ。いや、ホントマジで寝ろ。今日はお開き!解散!!もう夜遅いから、そこ使え!!!」

 

「私を酔わせて、ナニするつもりかしらぁ?」

 

「2回目だってそれ」

 

もう埒が開かないし、多分このまま行くと話が堂々巡りするので実力行使に出る。

 

「よい、しょ!」

 

「ヒャッ!」

 

抱き抱えてベッドに強制連行し、布団の中に押し込む。しかしこの状態に移行するとなると、どうしても押し倒した様な格好になってしまう。てっきり支離滅裂な事を言うかと思いきや、顔を酔いからくる物とは別ので赤らめて、潤んだ目で上目遣いしてきた。しかしそこは流石、超弩級朴念仁鈍感男の長嶺。気にも留めてない。もうここまで来たら、新手の病気である。

 

「し、指揮官?」

 

「はよ寝ろ!」

 

そのまま布団被せて放置。自らはソファで寝て、翌朝を迎えた。早朝から戦域殲滅VTOL輸送機「黒鮫」が物資と兵員をピストン輸送し、夜には作戦行動が可能となっていた。準備が完了した部隊から出撃していき、それぞれ所定の配置に着く。

 

 

「グリム、左に回れ。ベアキブルは右だ。タイミングは、此方の銃声が合図だ」

 

「「了解」」

 

今回長嶺の配下には本部大隊と第五大隊の他に、大量のKAN-SENを指揮下に加えてある。今回の作戦を利用して、長嶺への恐怖心を植え付ける作戦である。というのも一部の艦娘には長嶺の力を疑問視する者もいる。そういう奴らを黙らすには長嶺の強さを見せるのが手っ取り早い訳で、この案を考えたグリムが選んできた。そんな訳でメンバーにはローンやネルソン、ヒッパー、ドイッチュラントの様なツンツンしてたり、なんかモラル的にアウトそうな奴を入れてある。勿論、普通の奴もいるが。

 

「八咫烏、桜吹雪を」

 

「心得た、我が主」

 

八咫烏から桜吹雪SRが射出されて長嶺の手に飛んでくる。長嶺はそのまま近くの岩に、バイポッドを立てて銃を固定。自らも狙撃態勢に入る。

 

「下僕、何をしているの?」

 

「.......」

 

「主人であるドイッチュラント様が質問しているのよ?答えなさい、下僕」

 

「.......」

 

完全無視の長嶺。痺れを切らしたのか、ドイッチュラントは適当に長嶺の身体を蹴ったり叩いたりする。しかし怒鳴るどころか、まるで何も感じてないからの様に微動だにしない。

 

「無駄だ小娘。我が主のスコープには何も映ってないが、主の意識は既に10キロ先の深海棲艦の砲身内、或いは魚雷発射管に狙いを定めている。何をしても、攻撃を開始するまで応えることはない」

 

「あなた、カラスの分際で私に意見するのかしら?」

 

「ドイッチュラント、少し黙れ。うるさい」

 

八咫烏が何か言い返そうとしたが、それを長嶺が制するかの様に文句を言う。顔を赤くするドイッチュラントだったが、ローンが宥めてくれたお陰で事なきを得た。

 

「さて、始めよう。初手は楽しい楽しいダンスパーティー、からだ」

 

ズガァン!ズガァン!ズガァン!

 

いきなりの銃声で全員が驚いたが、数秒後には奥の方の海が微かにオレンジ色に輝く。それの意味する所は、何かが爆発した事である。そして爆発するものは深海棲艦以外にはあり得ない訳で、10km先の標的を狙撃で撃ち抜いた事に全員が困惑していた。

 

「前衛の魚雷と砲弾を誘爆させた。多分、アレで全体が混乱する筈だ。戦艦と空母はこの位置から支援攻撃を始めろ。駆逐と軽巡はこのまま前進し、敵に魚雷をお見舞いしてやれ。重巡はこれの援護だ。攻撃開始、行くぞ」

 

そう言うと我先に先陣を切って疾走していく。KAN-SEN達はいきなり始まった戦闘に反応が遅れたが、そこは戦闘用に生み出された存在だけあってすぐに対応し後を追う。その間に長嶺は武装を桜吹雪SRから、風神HMGと雷神HCに持ち替えて、阿修羅HGと安定の幻月と閻魔も装備する。

 

ドオォン!!

 

深海棲艦がワタワタしている所に、120mm榴弾が軽巡ホ級の左側面に突き刺さり爆発する。でもってタイミングいい事に、戦艦の支援砲撃も降り注ぐ。

 

「野郎共、今だ!!」

 

『2分で向かいます!!GO!GO!GO!

 

グリムに指示を出し、霞桜も動かす。これにより左右からは霞桜、前からはKAN-SENと長嶺、背後には深海棲艦が守るべき島という完璧なる包囲網が完成した。これでどこに逃げようと、確実に殲滅できる。

 

キュィィンブォォォォォォォォォォォ!!!!

 

「悪いな深海共。仲間が来るまでは、釘付けにさせてもらうぜ?」

 

風神HMGを使って深海棲艦を牽制しつつ、注意を完全に此方に向かせる。しかし上からは戦艦と援護位置についた重巡からの砲撃で、止まっていては危険な訳で動きたいが動けない状況が続く。

 

(そろそろだな)

 

ブウゥゥン

 

低い唸る様な音が多数空に響く。上を向くと、様々な艦載機が飛来していた。空母艦載機による連合航空隊である。駆逐艦程度であれば、戦闘機の機銃掃射でも倒せるので全機が降下を始める。爆弾と魚雷を落とし、輸送船や駆逐艦の様な装甲の薄い艦には機銃掃射をお見舞いする。

 

「もう指揮官ったら、私達を置いて行くなんて」

 

「ハハ、悪いな。俺がいる限り、一番槍は俺と相場が決まってんのさ」

 

ローンの文句に、戯けて答える。ローンが来たと言う事は、他の艦も来ていると言う事である。しかしここで一つ疑問が浮かぶ。

 

「ってかお前、重巡枠だよな?なんでここにいる?」

 

「だって指揮官は「重巡は援護しろ」って言ってましたよね?私やドイッチュラントちゃんは、重巡ではなくて「超巡」ですよ」

 

「一本取られたな。まあ別に、数隻前衛に出張っても問題はないか」

 

「そうですよぉ〜。それに、私は前線で敵を破壊する方が好きですから」

 

そう言いながら、なんか据わった目で笑うローン。何故か長嶺は同種の匂いを感じたが、今は一応戦闘中なので考えるのをやめる。

 

「破壊するのが好きなら、俺についてこい。今から敵陣のど真ん中に突っ込むし、お前の大好きな破壊が楽しめるぞ?」

 

「ふふふ。指揮官はわかってくださるんですね、この気持ち」

 

「お、おう。だが、突っ込むのもう少し待て。役者が揃ってない」

 

そう言って長嶺はあたりを見回す。既に到着した軽巡と駆逐艦が、魚雷と砲弾を叩き込み前衛を瓦解させている。深海棲艦も後方に下がって体制を立て直す動きを見せているし、恐らく動ける艦で構成したであろう即席の水雷戦隊で両翼を急襲しようという動きを見せている。しかしそれをする前に、此方の動きの方が早かった。

 

ポンポポンポン

 

「騎兵隊、ただいま到着!!」

 

グリム率いる本部大隊と

 

「カチコミだ野郎共!!!!暴れろ!!!!!!!!」

 

ベアキブル率いる第五大隊が両翼から攻撃を始める。目紛しく一瞬で状況が変化して行く戦場に、深海棲艦達の統制は完全に失われた。この状況下ではマトモに連携が取れず、一人で数人のKAN-SENを相手取る羽目となる。しかし駆逐艦や軽巡であっても、彼女達は全員が最強の男である長嶺が育てた一騎当千の戦士達。戦艦であっても遅れは取らない。

因みに長嶺は、時間が許す限り演習に顔を出し戦闘に関するアドバイスを常にしている。顔を出さない時は演習の映像を見て改善点を洗い出しそれを教えるか、新しいやり方を教えて所属する全員の能力を底上げしてきている。

 

「「鬼神」の力、味わうがいい!!!」

 

「努力の成果を試す時です!」

 

「Jクラスの実力見せてあげる!!」

 

「状態良好。行こ!」

 

戦艦タ級eliteに主人公格4人が挑む。eliteは本来、駆逐艦で挑むのは自殺行為に等しい程に強い。しかし、しっかりと連携の取れた4人にはその壁すらも乗り越えてくる。結局タ級は終始翻弄されたまま、一矢報いる事もなく4人に敗北した。

 

「みんな、いい動きするな」

 

「親父!直参隊員、総勢20名。見参!!」

 

「おいおい遅いぞベアキブル。もう先に突撃しようかと、3回位思ったぞ」

 

「そう言わんといてください。我々は準備できてますが、そちらは?」

 

「こっちもOKだ」

 

ベアキブルが何か言おうとした瞬間、謎の女の声が全員の脳裏に走る。

 

———アイアン.......ボトム.......サウンドニ.......シズミナサイ.......

 

「親父、コイツは」

 

「あぁ。間違いない。敵のボス、戦艦棲姫が出張ってきたな。なにが「アイアンボトムサウンドに沈みなさい」だ。誰が沈んでやるか、クソッタレ」

 

「よくわからないですけど、敵ですか?」

 

「それもボスだ。心してかかれ」

 

ローンにそう言うと、ローンはまた怖い笑みを浮かべる。しかも顔が超美人だからか、何か不気味で怖い。

 

「さーて、野郎共。そろそろ行くとしようか?」

 

「「「「「オウ!!!!」」」」」

 

流石、元極道達。声だけで敵を威圧できる。しかしその弊害で、敵どころか味方である一部の駆逐艦も恐怖しちゃっている。何なら半泣きの子すら出る始末だが、そんな事は気にしない。

 

「犬神、八咫烏。テメェらも暴れろ!!!!」

 

「心得た!!」

「やったー!!暴れるー!!!!」

 

「ローン、敵に情けは要らん。好きなように吹き飛ばせ。但し、味方は巻き込まんでくれよ?」

 

「わかってますよ〜」

 

「そんじゃ、突撃!!開始!!!!」

 

長嶺、ローン、犬神と八咫烏、ベアキブル、それからベアキブルの部下達が敵のど真ん中目掛けて突撃する。長嶺も武装を阿修羅HGに変えて、近接戦闘に特化した装備となる。

 

「ドス蹴りの極!!」

 

ベアキブルはドスの名手であり、自分で技を作る。さながら某如くが龍の兄さんである。ドス蹴りの極は空中にドスを投げて、刃が相手の体に向いた瞬間にドスを蹴って、そのまま突き刺す恐ろしい技である。尚、しくじると自分の足にドスが刺さる。

 

「ふふ、私のことを見て逃げようとするなんて、まさか逃げられるとでも思っているんですかぁ~?」

 

一方ローンは謎のスイッチが入っちゃったみたいで、長嶺もビックリな戦闘狂に仕上がっている。

 

「吹雪の術!!」

「突風の術!!」

 

相棒2匹は安定の妖術で全てを破壊し、道を作り出す。

 

「オゥら!!」

「せいやあ!!!!」

「ヒヒヒ、血を見せろや!!」

 

ベアキブル配下の直参隊員達は、ヤクザやチンピラの様な武器で戦っている。ハンマーやら大筒花火やらバットやら、何でもかんでも使って戦っている。

 

「邪魔だ邪魔だ!!!!首置いてけ!!首だけ置いて死に晒せ!!!!!!」

 

どっかの妖怪首置いてけに取り憑かれたのか、首を伐採していくが如く斬り伏せていく我らが長嶺。刀で斬り伏せつつも、体術で首や手足の骨をへし折り戦闘不能にさせたり、阿修羅HGで脳天や心臓をぶち抜きながら戦う。そのせいで長嶺身体は、全身深海棲艦の青い血に塗れている。その姿は「化け物」という言葉が一番合うだろう。

 

「うへぇ」

「完全に総隊長の悪いスイッチ入ったな」

「あー終わったー、深海棲艦終わったー」

 

本部大隊の連中は長嶺の姿を見て深海棲艦に同情し、KAN-SEN達は恐怖の余り泣き出す者や、いつもとは違う姿に戦慄する者など結構カオスであった。

 

「シズミナサイ!!」

 

ズドォォォォン!!

 

戦艦棲姫の16inch砲が火を吹く。対象は長嶺の様だが、たかが正面からの砲撃で殺されるほど弱くない。刀で砲弾を真っ二つに切り裂いて無力化する。

 

「おうおう、危ねぇな。そんなに火遊びしたいなら、あの世で好きなだけしてやがれ!!」

 

そのまま刀を構えて走り出し、飛び上がる。そのまま首目掛けて突進し首を切り落とす。

 

「ダメナノネ.......」

 

「往生しやがれェェェェ!!!!!」

 

次の瞬間、深海棲姫の首は切り落とされ、首のない胴体は血を撒き散らしながら倒れる。

 

「よし。次は飛行場姫と装甲空母姫だな」

 

『指揮官、聞こえるかしら?』

 

「ネルソンか?どうしたよ」

 

『飛行場姫と装甲空母姫とかいう奴、こっちで始末しといたわ。感謝しなさい』

 

まさかの戦艦&空母部隊が、長嶺が一人無双している間に倒しといてくれたらしい。マジでビックリである。

 

「よく倒せたな。それじゃ今からはグリムの指示に従ってくれ。ここからは、この一帯の残敵掃討だ」

 

『了解よ』

 

「グリム、後任せるわ」

 

「了解しました。大ボスの飛行場姫、頼みます」

 

「任せろ」

 

長嶺は懐から7枚の式神を取り出す。もうこれを出したなら、何をするかは予想できるだろう。

 

「空中超戦艦『鴉天狗』、見参!!!!」

 

艦娘化である。本陣であるガダルカナル島に攻め込むべく、空を飛んで上空に向かう。

 

———ナンドデモ.......ミナゾコニ.......シズンデ.......イキナサイ.......

 

飛行場姫も長嶺の存在に気付き、戦闘機を発進させ対空射撃もしてくる。だがその程度で倒せる程、鴉天狗は弱くない。

 

「対空戦闘、正面。攻撃開始」

 

速射砲と機関砲が即座に攻撃を開始し、空をオレンジ色に染め上げる。たかが100機程度では、長嶺の元にすら辿り着けない。

 

「小癪ナ.......」

 

「次はコイツだ。全艦載機、対地装備にて出撃!!」

 

左右の艤装から、F27スーパーフェニックスが次々に発艦していく。その翼には爆弾や巡航ミサイルが満載されている。1機につき26発は装備されており、その機体が300機以上飛来するのだから恐怖以外の何者でもないし、速度も音速を叩き出している。迎撃は不可能であるが、そうとも知らずに対空射撃の弾幕をスーパーフェニックスに浴びせる。

勿論その弾幕を1発も被弾せずに突破し、爆弾と巡航ミサイルの雨が飛行場姫を襲う。

 

「キャァ!!」

 

この攻撃で飛行場姫の滑走路は破壊され、武装も殆ど使い物にならなくなった。その為飛行場姫にできることは、ただ上空に浮かぶ長嶺を睨むことしかない。

 

「素粒子砲、射撃準備」

 

長嶺は「戦闘能力を喪失したことだし、これ以上は可哀想だから攻撃しないであげよう」と考えるなんて優しい事はしない。敵が死に掛けているなら、最後まで殲滅するのみである。

 

「エネルギー充填開始、バイパス接続。エネルギー正常に伝達中」

 

右側の艤装に搭載された巨大な砲身が変形し、正面と左右の砲口がせり出す。エネルギーが充填されている証拠なのか、段々と紫色の光が砲口に宿り出す。

 

「スコープ解放。ターゲティング開始」

 

長嶺の顔の前に、水色の水晶体の様な半透明のディスプレイが現れる。画面には様々な素粒子砲に関する情報、例えばエネルギーの充填率とか各部の破損状況とか様々な情報が列挙されていた。真ん中には照準を定めるためのスコープ画面が映されており、それを飛行場姫に合わせる。

 

「ターゲットロック。素粒子砲、発射!」

 

ギュゴォォォォォォォォォ!!!!!

 

紫色の光が飛行場姫に襲い掛かる。横向きに発射されたビームも少し進むと飛行場姫に向かうビームの方へと集まり、極太の巨大な光の柱のようになり飛行場姫を貫く。

 

「タクサンノテツ.......シズム.......コノ、ウミデ..............ソウ.......」

 

飛行場姫はそのまま前に崩れ落ちると、炎の中に沈んだ。直後、真っ黒な空が一転し南国特有の眩しい日差しに変わった。

 

「総隊長より各部隊。飛行場姫の沈黙を確認。ソロモン諸島は解放された。繰り返す、ソロモン諸島は解放された。以降は残敵掃討に移り、完了次第江ノ島に帰投する。皆、よくやった」

 

次の瞬間、無線から歓声が上がる。ソロモン諸島解放の報は世界中を駆け巡り、以降は各国の海軍と海上自衛隊による海上交通路の保護作業やオーストラリア方面への救援物資輸送の準備が行われたりしていた。

 

 

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