緊急会議より数週間後 江ノ島鎮守府 地下格納庫
「うおぉ、ついに出来たか.......」
感嘆の声を上げる長嶺の前には、1台のレースカーが止まっていた。真っ黒なボディに金のラインがアクセントとして光り、全体的に攻撃的なフォルムをしているレースカー。「レクサスLFA霞桜レースカー仕様」である。
「全長4,855mm、全幅2,000mm、全高1.200mm。エンジンは5.6L直列12気筒と特注の過給機を搭載して783kw、約1050馬力の化け物マシンに仕上げた.......」
今にも死にそうな声で、レリックが解説してくれる。このレースカーは霞桜の技術屋である、安定のレリック作である。改造中は例の別人格によるメカニック・ハイとでも言うべき状態で、ノリノリで魔改造してくれた。
「しかもペイント良い感じだ」
「ボンネットには「極」の文字。右には八咫烏、左には犬神、そして屋根には旭日旗。厳ついけど、総隊長には良く似合.......う.......」ドサッ
「って、おいおい。ここじゃ風邪ひくぞ」
「グー.......グー....... グー.......グー.......」
レリックは体が限界を越えたのか、説明途中に倒れて倉庫の床で寝始める。放置したら確実に風邪ひくので、そのまま担いでソファの上に寝かせる。その上から毛布でも掛けておけば、まあ風邪は引かないと思われる。
起きたら腰とか首は痛いかもしれないが。
「あ、そうだ。レースクイーンの募集結果、確認しとかねーと」
この際なので、あの後呉鎮守府、もとい風間から送られたレースの詳細について簡単に説明しておこう。
・レース方式はスプリントレース。
・レース車両はスポーツカー、スーパーカー、ハイパーカー等の一般に売られてる車、或いはそれを改造した物に限る。
・車両は自前で準備とし、クルーに関しては人員が保証されるが、自前で用意しても構わない。
・コースは呉市内の周回コースであり、5周で決着をつける。
・相手選手、相手マシンへの妨害は無し。
・出場選手は有志の軍関係者のみ。
・提督が参加する場合は、所属の艦娘、KAN-SENをレースクイーンとして参加させる事。
とまあこんな感じである。因みに艦娘とKAN-SENをレースクイーンとして参加させる理由は、艦娘達の株を上げておく為である。艦娘の扱いというのは法令上は船舶、つまり「物」であり、それに則って一部の人間は物として扱っている。コレを打開するための作戦でもあり、レースクイーンとして一般人と触れ合える機会を与えようと言う理由でもある。
決して下心から来るものでは無い。
数分後 執務室
「えぇ.......マジですか.......」
執務室に戻って、レース参加の申請書を確認すると結構大量に居た。割とガチで、予想外の数である。因みにメンバーはこんな感じ
《艦娘》
・戦艦
大和、武蔵、金剛、比叡、榛名、霧島
・空母
雲龍
・重巡
高雄、愛宕、鈴谷、熊野
《KAN-SEN》
・戦艦
プリンス・オブ・ウェールズ、デューク・オブ・ヨーク、ロドニー、ネルソン、天城、ニュージャージー
・空母
エンタープライズ、イラストリアス、フォーミダブル、ヴィクトリアス赤城、加賀、大鳳、翔鶴、瑞鶴、隼鷹
・重巡
ザラ、ポーラ、高雄、愛宕、鈴谷、熊野、プリンツ・オイゲン、ボルチモア、ブレマートン、ローン、プリンツ・ハインリヒ
・軽巡
リノ、チャパエフ、ベルファスト、シリアス、ダイドー、セントルイス、ホノルル
とまあ、こんな感じのメンバーである。え?KAN-SENにレースクイーン衣装が実装されてないキャラが含まれてるって?確かにメタイ話、リアルのアズールレーンにおいて実装されてるのはPoW、ヨーク、エンプラ、鶴姉妹、大鳳、オイゲン、高雄、愛宕だけである。では何故、追加したか。特に理由はない!
もうちょい詳しく言うと、なんか上記のキャラじゃ寂しい気がしたからである。因みに追加メンバーがこうなった理由だが、こんな感じの流れと理由である。
・ロドニー、イラストリアス、フォーミダブル、ヴィクトリアス、チャパエフ、セントルイス、プリンツ・ハインリヒ、ザラ、ポーラ、ニュージャージー、ブレマートン、それから艦娘の空母と重巡勢が「面白そう」という理由で申請。
↓
・それによってネルソンとウェールズはロドニーに。ホノルルとエンプラはセントルイスによって巻き込まれる。ボルチモアはブレマートンの付き合いである。
↓
・レースクイーンなんて物になられては、指揮官様を取られる可能性が出てくるのでヤベンジャーズも申請。
↓
・赤城が申請した事によって、付き合いで加賀も申請。
↓
・ヤベンジャーズが参加した事によって、大和と金剛が焚き付けられる形で申請。
↓
・付き合いで武蔵、金剛以外の金剛型四姉妹も申請。
↓
・赤城の御目付役として天城も申請し、全体の御目付役兼サポート役としてメイド三人衆も申請。
とまあこんな感じの流れである。理由としては、主の勝手な独断と偏見で「なんかノリノリでこういうのやりそう」とか、「絶対コイツが絡んだら、コイツもなんやかんやで行くよなぁ」というのが理由である。
「まあ拠点は呉鎮守府に作るからいいんだが、レースクイーンの衣装をどうするかが問題だなぁ」
そう言いながら長嶺は内線で、購買にいるKAN-SENの明石を呼び出す。
「お呼びかにゃ指揮官。一体、どうしたんだにゃ?」
「例のレースクイーン衣装の事なんだが、思ってたより申請者が多くてな。ホレ、見てみろ」
そう言ってノートPCを明石の方に向ける。名簿を読み進めて行くにつれて、明石も「うわぁ」という面倒臭そうな顔になって行く。
「これ、どうするにゃ?」
「抽選性にしてなかったのが仇となった。流石に今から「やっぱり抽選にします」とは言えねーよ。これ、衣装作り間に合うか?」
「間に合わなくは無いにゃ。ただ予算が足りそうに無いにゃ」
「あ、そこは気にすんな。こうなりゃ、俺のポケットマネーから出す」
この発言に明石は自分の耳を疑った。というのもレースクイーン衣装はオーダーメイド品を使う事になっており、市販の物は着ない、いや着れないのである。その為、タダでさえ結構良いお値段の衣装なのに、オーダーメイド品で長嶺の「出来るだけ良い物を」と言った結果、予算は既にカツカツなのである。そこにこれだけの想定外の人数が来ては、予算はどう足掻いても足りない。普通に考えてポケットマネーを使うのが妥当だが、予算の倍近い値段になってる以上は負担も大きい訳で現実的では無い。
なのに目の前の男は堂々と払うと言ったのだから、耳を疑いもする。因みにオーダーメイドになった理由は、艦娘もKAN-SENも胸や尻が総じて大きく、多分普通のヤツはサイズが合わない可能性が大きかったからである。
「し、指揮官?値段は分かってるのかにゃ?」
「勿論。だが、俺の財力を舐めてもらっちゃ困る。念の為言っておくが、金に糸目は付けんでいい。できるだね一番良いヤツ、最高グレードの物を買え」
「明石は知らないからにゃ!?本当に良いんだにゃ?」
「良いから良いから」
そう言いながら、神谷は何と札束を机の上に置いた。100万円分の現金である。
「こ、これは何にゃ!?」
「え?現金で100万」
「にゃ.......」
余りの驚きに、言葉を失う明石。まあ普通に生活していれば、100万円の札束なんて銀行員とか会計士でも無いと見る事はないだろうし、驚くのが普通というか驚かないとヤバい。少なくとも主は100万なんて見た事ないし、いきなり友達とかが出したらビックリする自信がある。
「ほら、持ってけ。あ、足りないか。そんじゃ」
そう言うと更に札束をドサドサと机の上に置いて行く。いつの間にか、1000万円分の札束に増えた。もう明石も段々と「にゃ!?にゃ!?」としか言わず、完全に猫化していた。
「し、指揮官!もう十分にゃ!!逆にこれ以上は怖いにゃ!!!!」
「え?あ、そう。そんじゃ、持ってけ」
そう言って特別予算(ポケットマネー)を明石に握らせて、レースクイーン衣装の予算が爆上がりした。因みにその結果、他鎮守府のよりも豪華な物になった。
2週間後 呉鎮守府
「車両搬入急げ!」
「間違っても擦るなよ!!」
「オーライ、オーライ、オーライ」
明日にレース本番を控えた呉鎮守府は、まるで大規模作戦の前日の様にピリピリとした空気に包まれていた。今更だが、出場選手を紹介しておこう。
と言っても長嶺と山本、風間、河本の三大将、横山、小清水、海道だけである。
「やぁ、長嶺くん。いよいよだね」
「えぇ。この日の為、霞桜の部下に頼んで車を魔改造してきましたから」
「なぜだろう。君の部下と聞いた瞬間に、君を出場停止にしておきたくなってしまうよ」
風間はこの瞬間、謎の悪寒がしていた。長嶺の部下と言うだけで、良い意味でも悪い意味でも頭のネジが数本吹っ飛んでそうだからである。もしマッドサイエンティスト(多分)がレースカーを作ったりしたら、マジの化け物性能になるか、マシンガンやらミサイルやらを撃てる世紀末みたいな車を作ってきそうだからである。
まあどっちも正解だが。
「ご心配なく。レース用には、レース向けのチューンしかしてませんから」
「君、その言い方なら「他の車はボンドカー仕様です」って、言ってる事になるかもよ?」
「さあ、それはどうでしょうね?まあもしかしたら、トラックとか戦車とかを撃破するスーパーカーがあるかもしれないですね」
この発言で全てを察したが、敢えて何も言わない。というか、言いたくない。気にしたらイケないと、本能が警告し出す始末でもある。
「そう言えば風間提督の車は?」
「あ、あぁ。僕の車はこっちだ」
そう言うと風間は長嶺達に貸し与えられた倉庫の隣、というか併設されてる別の倉庫に案内する。中には既にピカピカになっている赤いレース仕様の日産GTRがあった。
「GTR、ですか」
「あぁ。元々は僕の愛車だったんだけどね、この際だから思い切ってレース用にチューンナップしたんだ。まあGTR自体が元からサーキットを走る前提で造られてるし、チューンって言ってもそこまで弄ってはないけどね」
「それにしては、馬鹿でかいGTウィングがついてるし、バンパーやスカートもカーボン製のレース仕様になってますけど?」
「あ、あはは。まあ、細かい事は気にしないで欲しいな」
風間はこう言っているが、エンジンやトランスミッションを筆頭とした中身も全てしっかり改造してある。
「あ、そうだ。明日のレースまで時間があるだろ?何なら一緒に来てる艦娘と例のKAN-SENの娘は、向こうの屋台にでも行かせてきたらどうだい?」
「屋台が出てるんですか?」
「あぁ。この間も言った通り、このレースの目的はあくまでも町興し。そのついでに僕が勝手に海軍のイメージアップとか、艦娘の地位向上に利用させて貰ってるだけだからね。そんな訳で商店街やら商工会やらが屋台を出すし、なんなら神輿まで出すしで普通の毎年ある夏祭りよりも盛り上がってるんだよ。
僕もレースの準備は部下に任せて、そっちに行くしね」
「一応上官の目の前で、良く堂々と仕事サボり発言できますね」
「うん?僕は仕事よりもイベントが好きなんだよ。それに今回はゲストとして呼ばれてるから、列記とした仕事の内さ」
詭弁以外の何物でも無いが、長嶺自身も結構そう言った詭弁や屁理屈でゴリ押ししたり独断専行したりと色々やってるので、ダメとは言えない。いや、正直言って言うつもりもないのだが。
「物は言いようですが、私も同じスタンスなので全然OKかと」
「これで長官様の太鼓判が付いた。心置きなく祭りに行けるよ。それじゃ、また明日会場で会おうか」
そう言うと風間は足早に祭りの開かれている通りへと向かって行った。因みに現在の時期は冬で、しかも12月である。
(あ、そうだ。折角だし、着物も用意してやろうか)
そう思い立ち、カルファンに頼んで自分が持ってる着物を持ってきて貰った。というのも長嶺が無数の別戸籍を持ってるのは何度か書いたが、その中に大手高級呉服メーカーの社長がある。そこの製品を横流ししたり、プロトタイプのヤツとかボツ品をくすねて来たりしてるので、男女問わずに着物があったりするのである。え?違法だろって?バレなきゃ犯罪じゃ無いから問題ない。(因みに業務上横領罪では10年以下の懲役を課せられるので、絶対にやらないように)
数時間後 祭り会場
「夏祭りとクリスマスが融合しとる.......」
そう、本来なら世間ではクリスマス時期。カップル達がそこらでイチャコラしまくり、非リア達が血涙を流す魔の時期である。
そんな訳で屋台には安定の焼き鳥、焼きそば、たこ焼き、射的、くじ、綿飴、唐揚げ、ポテトの様な「夏祭りの屋台」と聞いて、確実に思い浮かぶ物もあれば、ケーキ屋やらフライドチキンやらビーフシチューの屋台なんかもあるし、何なら神輿と一緒にサンタクロースのコスプレをした奴が練り歩くという、良くわからん光景が広がっていた。
「指揮官様ぁ♡」
「おぉ、赤城。って、珍しいな。加賀も天城も連れてないとは」
「私だけでは不十分、ですか?」
声を掛けてきた時とは打って変わって、一気に低い獲物を威嚇する様な声色になる。普通なら恐怖しそうだが、長嶺の場合は安定の超絶鈍感朴念仁男なのに加えて、普通に肝が座ってるので全く動じない。
「いやいや。ただ何か、お前は加賀なり天城なりと一緒に居るイメージがあったからな」
「なんだ、そうでしたのね。姉様と加賀は向こうの方に行ってますわ。それよりも、指揮官様。私と一緒に周りま」
「指・揮・官・様♡」
今度は背後から大鳳が現れて、腕に抱きつく。そしてKAN-SENの中でも、特大クラスのお胸の間に腕が挟まれる。世の男なら、この時点で1発K.O.だろう。しかし、もう、うん。長嶺はさっきと同じ理由により動じない。
「うおっと、ビックリした」
「大鳳〜!!この、また指揮官様との時間を邪魔してくれたわね?」
「あらら?赤城さんみたいな古い人に、指揮官様は似合いませんわ」
この一言で完全に赤城がキレた。
「何ですって?あぁ、そうか。お邪魔虫には、ソウジをしないとね」
「フフフ、私に勝てると思ってるんですか?私は最新鋭空母。一方、赤城さんは旧式の空母じゃ無いですか?」
「言わせておけば!!」
今にもバトルが始まろうとした瞬間、今度は別の方向から「あぁ、見つけた」という声が聞こえた。振り返るとそこには、自称長嶺のオサナナジミの隼鷹が居た。
「さあ指揮官、
「え?いや廻るのはいいが、祭りは初めてじゃね?」
「(記憶損失もここまで酷いと、さすがに考えものね)」
「え?何、なんか言った?」
「いいえ。さあ、早く行きましょ?」
知っているだろうが念の為、言っておこう。隼鷹と長嶺はオサナナジミどころか、殆ど接点すら無い。記憶損失もしてないし、嘘もついてない。隼鷹がヤバいのである。
「てーーいーーとーーくーーー!!バアアアアニングゥ!ラアアアアブ!!」
「うおっ!今度は金剛か」
安定の突撃を構してきた金剛には、そのままの威力で着地させて回避する。場の状況はドンドンカオスになって行く。
「お邪魔虫が増えてきたわね。でよ私が、指揮官様とお祭りデートするのよ!!」
「いいえ!私ですわ!!」
「違うわよ。オサナナジミである、この私がするべきなの」
「ノンノン、分かってませんネ!テートクは、私とお祭りデートするネ!!」
そのまま言い合いの喧嘩が始まるが、段々と面倒になってきた長嶺は普通に撤収。1人で屋台巡りを始めた。
「あ、おばちゃん。唐揚げ、中カップね」
「はいはい。あら、お兄ちゃんイケメンだねぇ。大盛りにまけとくよ」
「え?マジで?やったぜ」
「はいよ、お待ち!」
持ち前のイケメンフェイスで唐揚げのオマケをゲットし、また別の屋台を物色する。そのまま気の向くままに歩いていると、ブレマートンと艦娘の鈴谷という異色のコンビに出会う。
「あれぇ提督じゃん。チース」
「あ、ホントだ。ヤッホー指揮官」
「鈴谷にブレマートンか。これはまた、えらく珍しいコンビだな」
「あはは、そうでもないよー。ねぇ、ブレマートン」
「そうそう。意外と私達と、重桜の熊野にマーブルヘッド何かで遊んだりしてるし」
実はブレマートン、熊野(KAN-SEN)、マーブルヘッド、鈴谷(艦娘)は同じギャルというのもあって、意外と良く遊んでるのである。因みにLINE上にグループも作ってあったりと、結構今風のJKって感じである。
「所でさ、提督は何してるの?」
「特に何も。フラフラ食べ歩きしてるだけ」
そう言うと2人は顔を見合わせた。空いてるイケメン男が目の前にいるのなら、やる事なんてただ一つ。
「ならさ、指揮官。私達とまわらない?」
「あぁ。構わなっと」
構わないと答えようとした時、肩に衝撃が走り少しよろける。どうやら祭り客の男が、長嶺の肩にぶつかった様だ。謝られなかったが、別に特段気にはしてない。しかし当たった瞬間に、服の裾から拳銃のグリップらしき物が見えた。
「あー、ブレマートン、鈴谷?どうやら、今用事ができたわ」
「え?ちょ」
「指揮官?」
2人を置いて、目の前の男の跡をつける。人混みに紛れて自らの姿を隠し、バレない様に追尾していく。5分くらい経つと、別の男2人と合流してまた歩き出す。
また少し歩くと、いきなり3人が銃を抜いた。別に何かの屋台の前でもなく、ただ人が多いだけの場所である。
「フヒヒヒ」
「くひひ」
「何アレ?おもちゃ?」
「映画の撮影かドッキリじゃね?」
「変なの〜」
日本は銃社会では無いので、一般人にとって銃は遠い存在である。その弊害か、銃を見ても危険とは感じにくい様で周りの人間は本物とは思ってすらいない。
だか長嶺だけは違う。常に銃や死が隣にいる世界の住人であり、一目で3人の銃が本物の実銃である事に気付いた。
「させるかぁ!!!!!」
人混みの中から飛び出して、そのままの勢いで1人の男の足を払う。いきなり現れた長嶺に素人2人の反応は遅れ、その隙を見逃さずに蹴りをもう1人の顎に叩き込む。
「野郎!!」
拳銃を向けてくるが、拳銃の照準を合わせる前に長嶺が一気に懐へ潜り込む。そして鳩尾を力一杯ぶん殴って、吹っ飛ばす。
「クソが!」
「あらら、まだ生きてたか」
足払いした奴がまた拳銃を向けてきたので、頭を踏む。脳震盪を起こしたのか、そのまま失神した。
「ハァ、全く。素人がこんな物を使うんじゃねーよ」
見てみると拳銃はM1911で、しっかり実弾が薬室に入ってた。つまり引き金を引けば、ズドンである。そうこうしていると警備に来ていた警察も来たので、取り調べやらで面倒になる前に早々に退散。ついでに祭りもこんな事が起きたので、急遽中止になった。
翌日 10:00 レース会場
「おぉ、やっぱプロレーサーのレースは迫力あるなぁ」
レース当日となり、沿道にも観客が詰め寄せている。午前中はプロレーサーによるレースとバイクによるレースが開催されて、午後からは目玉となる提督達によるレースが始まる。
それと同時並行で、隣のマシンが展示されるブースでは車の撮影と称した艦娘とKAN-SEN達の撮影会が行われていた。
「こ、こっちに目線を!!」
「ブヒブヒ、体付きエロいでこざる」
「あぁ、あんな美女っていたんでござるなゴエゴエチャンプ氏」
「あ、あれじゃ車を撮ってんだか、レースクイーンを撮ってんだが分かんねーな」
鼻息荒くした男どもが、カメラ片手に必死で撮影している。その結果、艦娘なら金剛、愛宕の辺りが、KAN-SENなら翔鶴、愛宕、ノースカロライナ、セントルイスの辺りが悪ノリというか、サービス精神を発揮したと言うか、なんかよりセクシーなポーズをしだして、また男共の鼻息が荒くなるという、なんか凄い事になっていた。
「ねぇ、指揮官」
「おお、どうしたオイゲン?」
「ちょっと助けてくれない?」
そう言われてオイゲンの周りを見てみると、多分4、5歳くらいの女の子がオイゲンのスカートを掴んでいた。
「あー、迷子かなんか?」
「そうみたい。お兄ちゃんと来たらしいのだけど」
「逸れちまった訳か」
怯えて震えていたので、しゃがんで女の子との目線を同じくらいにする。それから笑顔で「安心しろ。嬢ちゃんの兄貴は俺達が見つけるから、一緒に探そうぜ?な?」といった。その結果、顔を真っ赤にして余計に隠れてしまった。
「アレ?普通この手の場合は、これでイチコロなんだがなぁ」
「いや、本当の意味でイチコロよ」
そう。この女の子、長嶺のイケメンフェイスに照れてるのである。マジの意味でイチコロであった。
「取り敢えず、探すぞ」
「はいはい」
周りを歩き、逸れた場所の辺りを重点的にみて回る。しかし、なかなか見つからない。迷子放送でもしてもらおうかとしていると、翔鶴と瑞鶴が7歳くらいの少年を連れてやってきた。
「お兄ちゃん!!」
「はるか!!」
2人は互いを見た瞬間に駆け寄り、女の子はお兄ちゃんの胸に飛び込んだ。
「もしかして、お前たちもか?」
「そうですよ。私達の所に写真持ってきて、見てないか聞いてきたんです。丁度休憩に入る所だったので、2人で妹ちゃんを探しに」
「妹ちゃん、見つかってよかったね?」
「うん!ありがとうお姉ちゃん達!!」
長嶺が翔鶴と話していると、瑞鶴が少年に声を掛けたりして再会を喜んでいた。再会の嬉しさで飛び跳ねた結果、少年の持っていたデジカメが落ちてしまい、長嶺はそれを拾い上げた。で、画面にたまたま撮影した写真が映っていたのたが。
「あー、こ、これは」
何とカメラには恐らく翔鶴と瑞鶴の写真が映っていた。いや、これだけなら全然問題ない。問題なのは、ズームで胸とか胸の谷間とかお尻なんかを撮影していたのである。
(いや、まあ、うん。男の子だもんな、仕方ないよな。うん。2人とも、常識で考えたら痴女同然の格好だもんな)
なんか見てはいけない闇を見てしまった様な気がして、なんとも言えない気持ちになる。取り敢えず、そっと少年の背負っているリュックに戻した。
ってかあんな格好をまだ無垢な少年が見てしまっては、なんか性癖が歪むか壊れそうな気がするのは私だけだろうか?
「お兄ちゃんにお姉ちゃん達、ありがとう!!」
「バイバーイ」
「あ、2人とも。ちょっと待ちな」
帰ろうとする2人を引き止めて、昨日の祭りでゲットした飴玉をプレゼントする。その時に少年の耳元でそっと「デジカメのエロ写真、バレない様にしとけよ?」とニヤニヤしながら言ってやった。
勿論少年は「え!?」と言う顔でワタワタしていて、結構おもしろかった。
「フフフ、してやったり。2人をエロい目で見た代償だ」
「指揮官、何か言ったかしら?」
「ん?いや、何も。おっと、そろそろ時間だ。レースに行ってくる」
数時間後
『さあ、始まりました!!第一回 提督ピストンカップ!!!!このレースは、日夜深海棲艦を相手に戦っている提督達がレースで勝負する、これから有名になるであろうレースです!!!!
それではレーサー達と、マシンの紹介をしていきましょう!!!!解説のMr.ドリフターズ、お願いしますね』
『はいはい。まずはこの呉を護るナイスガイ!!風間傑!!マシンは日産GTR!!!!
お次は東川防衛大臣と同じく、生ける英雄!!山本権蔵!!マシンはTOYOTA86!!!!
さてさて次は、横山グループの御曹司!!横山冬夜!!マシンは日産フェアレディZ!!!!
今度は帝国海軍の紅一点!!小清水香織!!マシンはランボルギーニアヴェンタドール!!!!
next!!政治家家系生まれの軍人!!海道光喜!!マシンは三菱ランサーエボリューションX!!!!
さあ次は大物!!佐世保の守護神にして男の中の男!!河本山海!!マシンはシボレーコルベット!!!!
最後は飾るは勿論この方!!お待たせしました!!最年少で提督達の頂点に君臨し、真珠湾、珊瑚海、ミッドウェー、ソロモンを解放した知将!!長嶺雷蔵!!!マシンはレクサスLFA!!!!!!』
因みに今マシンは既にコース内に入っており、スタートラインに並んでいる。その中で紹介だったので、提督達は皆名前が上がると手を振ったりしていた。で、風間、山本、小清水とかはキャーキャー言われるのに、残りの男どもは何も言われず、長嶺の時は一際デカい歓声が上がり、歓声の上がらなかった男共から睨まれたのは別の話。
『さて、それではいよいよスタートです!!今シグナルが赤から、青に!!!!!各車一斉にスタート!!!!!』
最初に飛び出したのは河本派閥の4人。しかも地味に順番が河本→海道→小清水→横山と、しっかり派閥の序列になっている。一方、長嶺達は敢えて一歩引いて1周目を流す。コースは分かっているがコースの状況だとか、他のドライバーの走りの癖なんかを見極める為である。
因みに河本派閥はしっかり結託しているのは勿論だが、長嶺達も実は結託している。まあ理由が「河本派閥に負けんのは、何かイラつくくね?」なので、河本達を負かせば後は正々堂々やる事にはなってる。
そんな訳で1周目とついでに2周目も敢えて何もせずに、そのまま流す。勝負が大きく動いたのは、3周目の2本目の直線である。
「さてと。そんじゃ仕掛けますか」
長嶺は一気にスリップストリームを用いて、順位をドベから2位、それも河本のコルベットの真後ろに着ける。
「な!?」
「もういっちょ!!」
今度は右側を浮かせて、片輪走行で右から抜き去る。流石にこの事は、プロである解説も司会も固まっていた。
これに続いて風間も五連続ヘアピンカーブで溝落としを用いて抜き去り、山本もコースの起伏を使って河本のコルベットの真上から抜き去るという、普通のレースじゃあり得ない抜き方を持って長嶺達は河本を完全に打ち負かした。
結果として1位風間、2位長嶺、3位山本、4位から下は河本派閥という形でレースは幕を閉じた。この後Twitterやらニュースやらで、今回のレースが話題になったのは言うまでもない。
えぇ、皆さん。今回の年末年始は、私の投稿している『最強国家 大日本皇国召喚』とコラボさせる事を決定しました!!舞台はあっちの大日本皇国側世界として、深海棲艦と戦って貰います。霞桜、艦娘、KAN-SEN達が大日本皇国軍とカオスな戦争を巻き起こすので、お楽しみに!!