最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第三十九話鎮守府見学

約二週間後 職場見学当日 バス内

(あー、何でこうなったんだよマジで)

 

長嶺は江ノ島鎮守府に向かうバス内で、誰にも気取られないようにため息をついた。吐きたくもなる。正直、秘密特殊部隊の本部でKAN-SENとか言う謎存在の母港という機密の塊みたいな場所に、一般ピーポーのそれも謎の勢力と関係がある奴がいるかもしれない連中は特に、一番入れたくない。

 

(どうにか見学メニューは考えたが、どんだけ長いんだよ!一週間も要らんだろ絶対!!月曜の今日から、金曜の最終日まで持たすの大変なんだぞ!!!!というか何でよりにもよって、葉山含むクラスの全員に加えて別クラスの連中も来てるんだよ!!)

 

前回の段階では葉山が行くとか言い出した結果、クラスのほぼ全員が来る羽目になっていた。だがこの話は何やかんやで他クラスにも広まり、結局学年のほぼ全員が来る事になったのである。

お陰で学校は「もういっその事、今年は全員海軍にしちゃいますか」となってしまい、アンケートで長嶺とオイゲンと比企ヶ谷以外の全員がYESにしてしまったので、今年は学年全員が江ノ島鎮守府に見学に来る事になってしまったのだ。

 

「はぁ、全く。どいつもこいつも、見た目の割には愛国心に満ち溢れてんのかねぇ.......」

 

「なんだ桑田。お前は海軍志望だったんだから、別に構わないだろ?何をそんなに落ち込んでいるんだ?」

 

「んー?あぁ、どうせなら少人数の方が色々融通効くだろうから、出来ればそっちが良かったって話だ」

 

比企ヶ谷が不思議がっているが、流石に「期間中に仕事やりたかったのに、お前達が来やがったせいでできなくなったんじゃボケ」とは言えないので引っ込ませる。

 

「ヒッキーヒッキー!見えて来たよ!!」

 

「わかったわかった。揺らすな由比ヶ浜」

 

比企ヶ谷と話していたら、何故か無駄にテンションの高い由比ヶ浜が比企ヶ谷の肩を揺すっている。

いつの間にやらバスは江ノ島鎮守府に繋がっている沿岸道路に出ていて、鎮守府の敷地内にある森というか林って程でもない、なんか木の生い茂ってる場所と飛行場が見える。勿論長嶺とオイゲンからして見れば見慣れた我が家であるが、他の生徒からしてみればSF映画の秘密基地みたいな物だろう。まあ実際、防衛用の施設とかもあるし、勝敗が国家や世界の命運にも直結してくる事も全然あるので、割りかし間違いではない。

 

(さらば我が貴重な執務時間。こんにちは面倒な職務)

 

 

 

数十分後 江ノ島鎮守府

「で、デケェ!」

「これが鎮守府?」

「なんか思ってたより、結構オシャレなのね」

 

バスから降りるや否や、生徒達は思い思いの感想を言っている。江ノ島鎮守府の外観は他の鎮守府と同じように煉瓦造りの建物だが、それは司令部庁舎のみである。

他にも和風建築も多くあるが、新しく再建された建物というのもあって洋風な建物から現代チックな物まで結構バリエーションは豊富である。

 

「おーい、お前達!持ち物検査を受けろー!」

 

平塚が動きの鈍くなっている生徒達に指示を飛ばし、即席の検査場のテントの前に並ばせる。一応ここは軍事施設。持ち物チェックと身体検査はしておかないと、流石にやばい。

関係者である長嶺とオイゲンとて、今は総武高校の桑田とエミリアである。しっかり検査を受ける。

 

「はーい、次の方ー」

 

「はい」

 

「身分証提示!って、あ」

 

この検査場にいる兵士は全員、霞桜の隊員である。しかも相手は、いつかの視察に連れて行ったガーランである。

 

「どうしました?」

 

「あ、いえ。どうぞ、お通りください」

 

「どうも」

 

そう言って通されたのだが、ガーランは自分の手元にある紙に気がつく。一通りの検査が終わった後開いてみると「ボロ出したら殺す。by長嶺」と書かれた、まあ一種の脅迫文があった。

 

「.......ボロ出さなくてよかった」

 

ただの文字ですら、まるでそこにいるかの様な殺気と凄みを出せる辺り、流石プロと言った所だろう。

一方で生徒達はと言うと、本部庁舎の講堂に通された。ここはいつも大規模作戦の直前に艦娘、KAN-SEN、霞桜の隊員と言った全員を集めて会議や最終チェックする為にも使われており、一学年くらいなら全然余裕で収容できる。

 

『総武高校の皆様、ようこそいらっしゃいました。私は本日の案内役を仰せ付かりました、ロイヤルメイド隊メイド長、ベルファストと申します。どうかお見知り置きくださいませ』

 

そう言ってバッチリ、カーテシーを決める。最前列の男子はその巨大な胸をガン見していたらしい。

彼女は知っての通り艦娘ではなく存在自体機密のKAN-SENであるが、よくよく考えると艦娘自体が余り世間に公表されてる情報がないので、別にこのくらいなら大衆の面前に出しても問題はないのだ。

そんな訳でこの職場見学では、艦娘とKAN-SENの両方から「安パイ」が選ばれている。KAN-SENなら例えばヒッパーとかネルソンみたいなツンツンしてる連中、ローンや赤城の様なヤベンジャーズ、シリアスの様な問題児。艦娘なら電の様な人見知りする奴、金剛や大井の様な何かしら面倒事を引き起こしそうな奴は、案内役から除外してある。逆にしっかり者や物腰が柔らかい奴を案内役にする事によって、イメージアップを狙う作戦である。

 

『それでは江ノ島鎮守府の紹介をする前に、簡単な帝国海軍の紹介を致します。

新・大日本帝国海軍は深海棲艦と唯一、互角に戦える戦力である艦娘を運用している軍事組織であるのは、皆様もご存知の通りです。ですが海軍の職務は、それだけではありません。主に海軍内の職務は支援、参謀、実働の3つに分かれています』

 

因みに今更ではあるが、しっかりパワーポイントを使ってスライドを表示しながら説明している。その辺の準備は幽霊さんことロングアイランドと、サラトガちゃんがやってくれた。

 

『支援。こちらは文字通り、戦闘の後方支援を行う縁の下の力持ちな職務です。戦闘に於いて補給と兵站は、とても地味に見えて実は多大な影響を及ぼします。例えば百戦錬磨の一騎当千、とても強い精鋭部隊でも満足な補給がなければ負けてしまいますし、逆にしっかりとした補給と兵站が出来ていれば、最大限のパフォーマンスを発揮します。

具体的な職務としましては輸送、資源採集、兵器開発、整備、糧食、調達、警備といった物が挙げられます。ご自身に合った職務を選べますが、特別な資格が必要な場合もありますのでご注意ください』

 

今度は防衛省の画像から変わって、真ん中に大きく「参謀」と書かれたスライドになる。

 

『参謀。こちらは主に情報収集や戦略を担当します。陸、海、空自衛隊、各国の軍や諜報機関と協力し、深海棲艦の動きを監視し侵攻や拠点の偵察を行ったり、大まかな作戦の流れを考える職務です。

古来より情報は戦いを左右しますし、策略なしに攻撃するのは戦争をする上で1番の愚策です。言うなれば「帝国海軍の頭脳」、と言った所でしょうか』

 

次は江ノ島鎮守府の画像に変わる。そして書かれた文字は勿論「実働」である。

 

『実働。これは最早、説明も要らないでしょう。艦娘や他の通常戦力を動かして、深海棲艦から奪われた海を取り返す海軍の花形です。日本全国に基地が存在し、各国にも前線基地や補給基地を配置しています。その中でも規模が大きく、配属される司令官も高級将校である基地が「鎮守府」と呼ばれます。

この司令官や提督になるには、ある一つの特別な条件があります。これはどんなに努力しようと、お金を積もうと得ることの出来ない「才能」なのですが、妖精が見えることが絶対条件です』

 

この一言に生徒達はザワついた。一応一般にも公表されてるが、流石に「妖精」と大真面目に言われても反応しづらい。ティンカーベル位しか思い付かないだろう。

 

『艦娘の艤装には、妖精というのが宿っています。妖精というよりは、小人と言った所でしょうか。この妖精というのは本来人の目には見えないのですが、極稀に妖精を見れる者が産まれます。その資質がある者が、指揮官として艦娘を指揮するのです。

その為、海軍内の司令官の年齢は最年少が12歳、最高齢は57歳です。因みに本鎮守府の指揮官である長嶺大将は17歳。皆様の一つ上です』

 

よくテレビや雑誌にその姿が度々映るイケメンの有名人が、まさか自分達の年と殆ど変わっていなかったことに皆驚く。一応これも公開されてる情報なんだが、何故だか皆知らないのだ。

 

『それではこれより皆様には、当鎮守府を見学していただきます。明日からは実際に軍での仕事を体験していただきますので、ある程度の場所を覚えておくことをお勧めいたします。

班ごとに指示を出しますので、案内役の艦娘に従って移動してくださいませ』

 

この鎮守府はトンデモなく広いため、普通に1日丸々使って案内できる。まずはこれで日数を稼ぐのである。

 

 

2日目 指揮管制シュミレータールーム

「よく来たな。お前達にはまずはこの、指揮シュミレーターでトーナメント形式で戦ってもらう」

 

案内役の艦娘の熊野に連れられて入った部屋で待っていたのは、普段は駆逐艦に簡単な授業や戦闘の座学講義を行なっている那智と他の艦娘&KAN-SEN達であった。

因みにいるのは艦娘は那智、長門、足柄、五十鈴。KAN-SENは加賀、レンジャー、エンタープライズである。

 

「艦娘が一人ずつアドバイザーとして付くから、分からなければ質問するといい」

 

艦娘とKAN-SEN達が担当する生徒につく。勿論、指揮官とオイゲンにも。メンバーと対戦相手はこんな感じ。

 

オイゲン&足柄VS材木座&長門

長嶺&レンジャーVSモブ秀才&加賀

葉山&五十鈴VSモブ女子生徒&エンタープライズ

 

「えっと、それじゃあやり方を.......」

 

「レンジャー、いいか?お前の目の前にいる男は、この鎮守府の提督でお前達の指揮官君である長嶺雷蔵じゃない。化け物クラスに強い、ただの総武高校の一生徒にすぎない。よって、このシュミレーターの使い方なんざ知らない。だから、な?」

 

「わかりました!普通に教えます」

 

レンジャー先生に頼んで、色々やり方を教えて貰う。因みにレンジャーは改造済みなので、お胸とお尻が凄い事になっており葉山とモブ秀才くんが、結構アレな目で見ていた。そして教えてもらってる長嶺には、その大きなお胸が当たりまくっている。

 

「うんレンジャー先生。当たってるぞ」

 

「え?あ、えっと///////」

 

「はーい平常心平常心。当たった所で死にはしないでしょ?」

 

そんな結構甘々な様子を、見るからにイラついた様子で見ている人が一人。

 

(指揮官ッ!!!なに胸当てられてるのよ!!言ってくれれば私が当たるし、触らせるのに.......)

 

「オイゲンー。余所見しないで、ちゃんと前を向く」

 

「わかったわよ.......」

 

機嫌が悪い時は姉のヒッパーの様になる。これは多分、姉妹故であろう。身体は全然違うが。おっと、ヒッパー。私が言ったのは髪の色の事だ。決してその慎ましやかな胸(((殴

 

「さて、じゃあ勝負を始めてくれ」

 

「よろしく頼む」

 

「フン。この僕に戦いを挑むなんて、身の程を弁えな」

 

こうモブ秀才くんはいうが、正直負ける気がしない。というか負けてはいけない。総武高校の生徒という建前はあるが、それでも一応は現役バリバリの艦隊指揮のプロである。それが一般人に負けるとか、オリンピック選手が一般人に負ける様なものである。

いざ始まれば、右と左から水雷戦隊を回り込ませて退路を塞ぐ形で包囲しようとしてきた。勿論、何のハッタリやカモフラージュの目標もなく正面から。あまりにお粗末すぎて、開始20分で殲滅してしまった。勿論こちらのダメージはZEROである。

一方でオイゲンの方は、材木座がバカの一つ覚えの様に突撃して来たので片っ端から砲撃と航空機で材木座側は砲弾を1発も撃つ事なく殲滅した。

 

「勝者は、ほう。全員この班か。なら決着の早かった奴は決勝で戦ってもらうとして、そこの男二人。お前達で戦え」

 

そんな訳で今度の対戦は長嶺対葉山である。

試合開始と同時に今回は、どちらも攻撃隊を発艦させた。葉山は何の捻りも無く長嶺の元に向かわせてしまったが為に、爆撃隊と雷撃隊とで到達に長いタイムラグ発生してしまい容易に撃墜されてしまった。一方で長嶺は少し工夫して、雷撃隊と爆撃隊のタイミングを同調させた為、葉山艦隊は対空戦が追いつかなかくなり殲滅された。

 

「負けたのか.......?」

 

「あぁ。お前の負けだぜ、葉山」

 

混乱しすぎて、自分が負けたことも理解できてなかったらしい。

 

「さて、じゃあ最後にその2人で戦ってもらおう」

 

「よろしく頼むよエミリア」

 

「えぇ真也。ボッコボコにしてあげるわ」

 

さっきのレンジャーとの一件があって、オイゲンは結構不機嫌である。この感情は艦隊指揮にも反映されてしまい、いつもより苛烈な攻撃を仕掛けて来る。だが相手である長嶺は、オイゲンの指揮官である。オイゲン含め所属している全ての艦娘、KAN-SEN、パイロット、霞桜の隊員の戦闘時の癖、戦闘スタイルや得意不得意は勿論、司令塔として指揮する時の細かい癖に至るまで頭に入っている。

そんな人間を相手に勝てるはずも無く、弱点である攻撃に専念しすぎる癖を逆手に取って背後から水雷戦隊で奇襲して、ついでに砲撃と航空攻撃による飽和攻撃を持って殲滅した。

 

「チェックメイトだ」

 

「やっぱり、あなたには勝てないわね」

 

「負けてたまるかよ」

 

 

 

3日目 フライトシュミレータールーム

今度は戦闘機パイロットが訓練で使うフライトシュミレーターを使った訓練体験を行う。

勿論講師はメビウス1である。

 

「それじゃあ、ルールを説明します。と言っても特段ルールというルールも無いので、勝利条件だけですけど。

勝利条件はどちらかのチームが殲滅されるか、時間内に多く倒せた方の勝ちというシンプルな物です。それでは用意はいいですか?」

 

因みに今度の対戦相手は由比ヶ浜、三浦、海老名の3人である。

 

「始め!!」

 

このフライトシュミレーターはF22ラプターのコックピットを完全再現しており、様々な状況を再現できる。気候は勿論、一部の翼が使い物にならない状況だとか、AI制御の戦闘機との組み手だとか色々できる。

今回は時間の兼ね合いで、既に離陸済みの状態である程度高度も取ってある状態で、気候は無風の雲もある晴れである。

 

『割り振りはどうするのかしら?』

 

『みんなで連携しながら1機ずつ確実に倒すべきだよ』

 

ここでも葉山の「みんな仲良く」の精神が発揮されているが、別に強敵を相手するわけでも無い以上、全機で寄ってたかって1機を相手しても何のメリットもない。寧ろ攻めすぎて、他の機に背後取られて撃墜される可能性すらある。

 

「いや。ここはで先制を取りつつ、一対一のドッグファイトに持ち込もう。中距離空対空ミサイル、AAM4を使う」

 

『AAM4?』

 

『はいはい、わかったわよ一番機さん。一応聞くけど王子様まさか、さっきの操作説明聞いてなかったのかしら?』

 

一応シュミレーターを使う前にエース級部隊であるメビウス中隊の面々が、1人1人に付いてやり方は勿論、武装についてもある程度教えてある。

だが葉山はオイゲンを見るのに夢中で、殆ど頭に入ってなかったのである。お陰で既に連携はガタガタであり、そうこうしている間に先制を相手方に取られてしまった。

 

「!?ミサイルアラート!!回避する」

 

レーダー上にミサイルを示す光点が6発表示される。射程から考えてAAM4、99式空対空誘導弾である。長嶺とオイゲンはエンジンスロットルを前に叩き込み、操縦桿を手前に引いて回避機動に移る。

葉山は何故かフレアをばら撒き、そのまま直進。見事AAM4が2発、葉山のラプターを貫いた。

 

『アルファ2、ロスト』

 

直後に審判役のメビウス1がアルファ2、つまり葉山が撃墜された事を告げる。今更だが長嶺がアルファ1、オイゲンが3で、三浦がブラボー1、由比ヶ浜が2、海老名が3のコールサインをもらっている。

 

「うげっ、葉山やられた」

 

『さっき見たけど、フレア焚いてたわよ』

 

「アホか!」

 

AAM4の誘導方式は慣性と指令誘導だが、終末誘導時はARH、アクティブ・レーダー・ホーミングに切り替わる。これは米軍のAIM120 AMRAAMと同様の誘導方式なのだが、この誘導方式はミサイル本体が目標にレーダー波を当てて追尾する方式である。

葉山がばら撒いたフレアは赤外線誘導方式の熱源探知に作用する物であり、レーダー系統は電子戦環境下によるジャミングかチャフでもばら撒かないと意味がない。しかも回避方法については、しっかりレクチャー済みのはずなのにである。

 

「はぁ。こうなったら、2人で倒すしかないな。エミリアは右の機を頼む。とりあえず、正面と左のはこっちで引き付けておくから早めに終わらせてくれよ?」

 

『わかったわ。それじゃ、精々堕とされないように』

 

「そっちもな。ブレイク!」

 

2人は分かれて、互いの目標に向かう。2人は知らないがオイゲンが向かっている相手は由比ヶ浜で、長嶺の方は三浦と海老名である。

オイゲンの方は終始オイゲンが圧倒していたが、ヤケクソで由比ヶ浜の放った04式空対空誘導弾、AAM4が命中しオイゲンは撃墜されてしまう。しかし撃墜される前に機銃でパイロットキルに成功しており、結果として相討ちとなった。

 

『アルファ3、ブラボー2、ロスト』

 

「エミリアもやれたのか!?こりゃまずいな」

 

現在の長嶺の状況は片割れに食い付いているが、一方でもう1機に背中を取られている状況で結構ピンチである。だが幸にして、長嶺は戦闘の知識は陸海空、全て理論の部分は履修済み。

ぶっつけ本番だが、マニューバを使えば何とかならなくはない。

 

「まずは背後のだな」

 

そう呟いた瞬間、ミサイルアラートが鳴った。タイミングがいい。このアラートを合図に、推力を下げて操縦桿を手前に引く。機体はその場で宙返りして、背後の機体はそのまま通り過ぎる。

所謂クルビットを決めて、今度は長嶺が背後を取る。

 

「FOX2!」

 

AAM4を放ち撃墜に成功する。

 

『ブラボー3、ロスト』

 

だが元々背後をとっていた残りの奴が、雲を利用して長嶺の背後に忍び寄り不意打ちのミサイル攻撃をしてきた。

 

「チッ。今度はアレだな」

 

一瞬見えた形状とシステムの判断では、誘導方式は赤外線誘導。ならば太陽を使って回避する。機体の針路を太陽に向けてフルスロットルで飛行し、着弾直前でエンジン推力を0にしてそのまま射線上から逃げる。

ミサイルは太陽を目標にしてしまっている為、そのまま真っ直ぐ飛んでいった。

 

「っしゃあ!ミハイ爺さん直伝の回避術だぜ!!」

 

喜んでいるのも束の間。この間に背後へ付かれてしまっていたが、そう何度も攻撃される訳にもいかない。今度はマニューバの中でも王道中の王道、コブラで背後を取りM61バルカン砲の20mm弾を浴びせる。

 

『ブラボー1、ロスト。勝者、アルファ・チーム!』

 

結果としてまたもや長嶺の一人勝ちとも言える戦績を残して、シュミレーター訓練が終わってしまった。一応長嶺の専門は海戦、陸戦、それから戦略面の筈なのに、何故エース級ファイターパイロット顔負けの挙動ができるんだよ.......。

そんなツッコミは置いておいて、シュミレーターから出ればオイゲン以外からは質問の嵐であった。そしてメビウス1からは「是非、空自に入って欲しい!」と言われた。メビウス1は桑田の中身が長嶺なのを知らないので、普通に「高校生のスーパー逸材」にしか思っていない。そしてそんな逸材がいれば、即勧誘に動くのは当然のことである。

4日目は射撃演習が行われた。ペイント弾やBB弾を使い、実戦さながらの訓練を体験した。でもって長嶺がやっぱり暴れたが、いつもよりはかなり手加減されていた。だが最早、神の領域に足を踏み入れた戦闘センスを持っている以上、どんなに落とし込んでもプロ顔負けになってしまう。当然他の生徒達から怪しまれたが例の「こういうのが趣味で、実銃も撃ったことある」というカバーストーリーでねじ伏せた。

 

 

 

5日目 講堂

『それではこれより、提督による戦史・戦闘講義を行います』

 

5日目の内容は、長嶺による戦史と戦闘講義である。これは戦争の歴史を武器や戦略の観点から、わかりやすく解説していい感じに現代戦を知ってもらおうという作戦から生まれた講座である。

 

『あー、初めまして総武高校の諸君。私がこの鎮守府の提督、長嶺雷蔵海軍元帥だ。最後の最後にこんな眠くなりそうな内容だが、まあ少しは面白くなるように努力するから適当に聞いて欲しい。最悪、眠くなったら寝てもいいから』

 

読者の皆も知っての通り「面白くなるように努力する」というのは、大体面白くない時のフラグである。こういう風にいう講演者に限って、クソつまらん上に役に立つこともない。

だが長嶺の場合は違った。普通に面白かったのである。

 

『さーて、それじゃ始めようか。じゃあまず、そこの君!』

 

そう言って指差したのは、目の前に座る雪ノ下である。あ、因みに講壇に立つ長嶺は本物で、今後ろにいる桑田は偽物である。

 

『戦争で必要になる物といえば武器なんだが、常に武器にはある法則があって新たに生まれてくる。それが何かわかるか?』

 

「い、いえ」

 

『まあ普通にシャバで生活してる一般人からすれば、気にすることもないだろう。武器というのは常に、何かに対抗する為に生まれる。

例えば———』

 

こんな感じで始まった講演は最初の方こそつまんなそうにしていたが、30分もすれば生徒達の心をしっかり掴んでいた。彼等にわかりやすいようにゲームやアニメで例えることによって、一気に理解を早めさせたのである。

その後約二時間ぶっ続けで語ったが、終始食い気味に聞いてくれた。この講座を持って職場見学が終わり、総武高校へと帰っていった。

 

 

 

その日の夜 執務室

「にしてもまぁ、こんな事もあるんだな.......」

 

そう呟く長嶺の視線の先には、今回の総武高校の生徒達をランク分けにした報告書があった。今回、その殆どを訓練の体験にしたのは比企ヶ谷の能力を推し量るためでもある。だがどうせなら他の生徒もどの程度の能力があるか気になったので、試しに能力をランク分けしてもらったのである。

 

比企ヶ谷八幡

射撃:S、飛行:A、格闘:B、諜報:S、ネット:S

 

三浦優美子

射撃:B、飛行:S、格闘:C、諜報:B、ネット:S

 

戸塚彩花

射撃:S、飛行:A、格闘:C、諜報:D、ネット:B

 

戸部翔

射撃:A、飛行:A、格闘:B、諜報:C、ネット:B

 

川崎沙希

射撃:B、飛行:C、格闘:S、諜報:E、ネット:A

 

材木座義輝

射撃:C、飛行:E、格闘:S、諜報:C、ネット:S

 

とまあこんな感じで、普通に霞桜の隊員としてやっていけるだろう能力を持った奴らがいたのである。

 

(こうなりゃ、コイツらもこっち側の世界に引き込むとしよう。こんな奴らを、社会に埋もれさせてやるものか)

 

そう言って1人、怪しい笑みを浮かべるのであった。

 

 

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