最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第四十二話江ノ島指輪物語

何だかんだで夏休みを目前に控えたある夏の日、とある2人の客人が執務室を訪れていた。1人は東川で何の問題もないのだが、もう2人は

 

「やあ雷蔵くん」

 

「お元気でしたか?Sir長嶺」

 

「よっ、ハーリングのおっちゃんにエリザベスのばあちゃん。よくもまあ、アメリカとイギリスのトップが一国の軍事基地来れたもんだなぁ」

 

現在のアメリカ大統領、ビンセント・ハーリング。そしてイギリスの女王、エリザベス・アレクサンドラ・メアリーである。何故ここに大統領がいるかと言うと…

 

 

 

一週間前 江ノ島鎮守府 執務室

「指揮官さま、お茶が入りましたよ」

 

「間宮のお菓子もあるわよ」

 

「うぃー」

 

この日、サディアの総旗艦(アンミラーリオ)であるヴィットリオ・ヴェネトと、ビッグ7に名を連ねる戦艦、陸奥(艦娘)が秘書艦だった。午後の執務も滞るどころか、想定よりも早く終わりティータイムが始まった。

 

『次のニュースです。アメリカのハーリング大統領、イギリスのエリザベス女王の来日を3日後に控えた今日、政府は記者会見を開き…』

 

「確かイギリスは、こちらのロイヤルに当る国家でしたよね?イギリスの女王は艦娘がしているのですか?」

 

「まさか。ちゃんとしたロイヤル・ファミリーの系譜を継ぐ、歴とした高貴な家系の家長だ」

 

「それにしても、アメリカ大統領まで来るなんて驚きね」

 

そう。今回はイギリスの女王とアメリカの大統領がダブル来日という、中々に珍しい事例なのである。別に皇族で冠婚葬祭があったとか、日本で何かしらのサミットが開かれる訳ではない。

普通に総理との会談が目的で、絶大な影響力を持つ国家のトップがやって来るのだ。

 

「別に良いさ。こっちに何かある訳でもないし、俺はちょっと2人に顔を出して終わりさ」

 

「まるで知り合いのように言いますね」

 

「ん?エリザベスの婆さんも、ハーリングのおっちゃんも知り合いだけど?」

 

「「.......はい?」」

 

元はヴェネトが突っ込んだのだが、余りに予想出来ない発言に2人共ハモっている。

 

「あれ、言ってなかったか?俺一応、ヴィクトリアクロスと名誉勲章を貰ってるんだ。まあ非公式だから記録には残ってないが」

 

「ヴィクトリアクロスと名誉勲章って確か.......」

 

「こちらでも同じなら、どちらもロイヤルとユニオンに於いて最高位の勲章の筈です.......」

 

2人共カップを持つ手が震えており、カップ内の紅茶も波が出来ている。

因みに他にも特装大十字ドイツ連邦共和国功労勲章(ドイツ)、カヴァリエーレ・ディ・グラン・クローチェ(イタリア)、レジオンドヌール勲章(フランス)と言った各国の最高位勲章、それも本来なら国家元首や自国民以外には授与されない勲章を貰っている。因みに大勲位菊花章頸飾(日本)は3つ、采玉大勲章(新・中華民国)は2つゲットしている。こちらも勿論、最高位の勲章である。

この特例はあくまでも、この授与が全て非公式(・・・)だったから出来たことであり記録上は存在しない。

 

「指揮官さま、一体何をなさったのですか?」

 

「あー、いつだったかな。まだ鎮守府に着任する前、クソ大臣の護衛で会議に出席した時何だが。まあ簡単に言うと、どう言う訳かテロリストと深海棲艦が同時に攻め込んできてな。

全部纏めて殲滅したら、なんか勲章ゲットした」

 

「何故かしら。提督が言うと、まるでそれが普通かのように聞こえるわ.......」

 

「陸奥さん、それ末期症状ですよ」

 

長嶺&その愉快な仲間達からしてみれば、全くもって普通の平常運転である。しかし普通の、極々普通の私含めた人間からしてみれば十分化け物なのである。だって通常兵器を使っても倒せるものの、単艦に数隻で集中砲火を浴びせて初めて撃退できる敵を、たったの1人で10人位殲滅したのだ。これがスタンダードでたまるか。

 

「あ、ハーリングのおっちゃんからだ。もしもーし」

 

「「!?!?」」

 

まるで友達からの電話に出るかのように、何の驚きもせずに長嶺は電話に出た。だかさっきも書いた通り、ハーリングとは現役アメリカ大統領。想像してみて欲しい。目の前の友達や知り合いが、いきなりバイデンさんと電話し始めるカオスを。

もう驚愕を超えた、よくわからん表情すると思う。今のヴェネトと陸奥がその顔である。

 

「おう。ふむ.......。えー、マジ?まあ別に良いけどさ、そっちはそれで良い訳?.......あ、そう。なら待ってるよ」

 

「て、提督?大統領からよね今の.......」

 

「うん。なんか、来日したタイミングで視察がてら遊びに来るって」

 

「そ、そんな軽く.......」

 

とまあこんな感じで来る事が決定し、この3日後に2人が来日。そして更に4日後、つまりヴェネトらとのティータイムの一週間後にやって来たのである。

 

 

「まずは、長嶺司令長官。私の知らぬ事だったとは言え、ムッキンゼイの事、謝罪を受け取って欲しい」

 

「別にいいよ。俺は俺の部下である司令と、その部下であり俺の可愛い可愛い艦娘を攫った奴に鉄槌を下しただけだ。こっちは捨て駒基地とは言えチャップランドを完全破壊しているし、まあ痛み分けでいいだろ?それに俺としても、アンタとは敵対したくない」

 

「そう言って貰えると、私としても救われるよ」

 

「失礼いたします」

 

ハーリングとチャップランドでの事で話していると、ベルファストがお茶と菓子を持って執務室に入ってきた。

配膳とお茶を淹れたのは彼女なのだが、エリザベスはその一挙手一投足を観察している。そして淹れてもらった紅茶を一口飲んだ瞬間、目の色が変わった。

 

「あなた、お名前は?」

 

「私はエディンバラ級軽巡洋艦の、ベルファストに御座います。女王陛下の給仕を担当でき、身に余る光栄に御座います」

 

「エディンバラ級のベルファストという事は、テムズ川に浮かぶあのベルファストなのね?」

 

「左様にございます」

 

自国の、それも現存している艦の魂とも言うべき艦娘(正確にはKAN-SENだけど)を見て、見るからに喜んでいるのが分かる。

 

「う〜ん。やはり、ベルファストの紅茶は格別だ。雷蔵、ベルファストをウチの艦t」

「編入でもさせたら、テメェの首と胴を斬り落とす」

 

「デスヨネー」

 

「ハハハ。やはり2人は仲が良い」

 

エリザベスはベルファストと談笑し、東川は長嶺に脅され、ハーリングはそれを見てにこやかに笑う。文章として書いてみるとカオスであるが、その空気はとても穏やかな物であった。

 

「あ、そうだ。エリザベスの婆さん。見せたい奴がいるんだが、呼んでも良いかい?」

 

「Sir長嶺のご紹介という事は、艦娘なのでしょう?是非お話ししたいわ」

 

「きっと会ったら驚くぜ?ベル、陛下を呼んできてくれ」

 

「畏まりました」

 

勿論、誰か分かるだろう。ロイヤルの旗艦であり、女王。そう、この方。

 

「私を呼んだかしら下僕!?」

 

勢いよく入ってきた金髪の小さな子。クイーン・エリザベスである。

 

「呼んだ。そして下僕呼びはやめろと何度言えば分かる」

 

「そんな事より、高貴な私を呼んだのよ?それ相応の用事なのでしょうね?」

 

「まあ、少なくとも面白いとは思うぞ?紹介しよう。アメリカ合衆国大統領、ビンセント・ハーリングと、イギリス連邦の盟主、エリザベス・アレクサンドラ・メアリー女王陛下だ」

 

「ハーリングです、女王陛下。お目にかかれて光栄だ」

「初めまして。イギリス連邦の女王、エリザベスよ。小さくも偉大な女王(クイーン)

 

2人にはベルファストにエリザベスを呼び行かせている間に、簡単に接し方をレクチャー済みである。特にハーリングには、「エリザベス女王に謁見する様に振る舞え」と言ってある。

 

「そう。貴女もクイーンなのね。何故かしら、初めて会ったのに昔から知り合いだったように感じるわ」

 

「あら、偶然ね。私も同じ思いよクイーン」

 

2人はまるで旧友と再会したかのような、何とも言えない懐かしい雰囲気を漂わせながら談笑している。その内盛り上がっているのか、笑いすら出て来ていた。その間にハーリングにはエンタープライズやワシントンの様なアメリカを代表する武勲艦達と話しており、こちらも時を超えて祖国を守った英雄達に逢えて喜んでいる様子。

一方で東川と長嶺は席を外し、東川がある物を手渡した。

 

「何だこれ。なんか、指輪が入ってそうだな」

 

「これは艦娘のステータスと練度の上限を解放する為の装備だ。お前もステータスと練度、まあ何方も俗称だがこれらの数値には各艦毎に決まっている。これはその上限を解放する装備なのだが、誰でも装備できるわけがない」

 

「指輪なら誰でも良いんじゃないか?」

 

「そう、そこなんだ。これはゲームなんかによくある強化の指輪ではなく、提督との強い絆を結ぶ事で初めて効力を発揮する。有り体に言えば、結婚指輪って事だ。

そのために好感度が100%でないと渡せない。そして練度とステータスも上限一杯まで強化されていないといけない。例えどちらかが少しでも欠けていたら、コイツは強化の指輪から唯の金属の輪っかに成り下がる。一応好感度を測る為のスカウター、それから指輪も大量に置いていく。これで艦隊の強化に努めてくれ」

 

そう言って指輪をダンボールごと渡してきた。どうやら人数分はあるみたいで、結構重い。

 

「まあ重さである程度の量は予測できているだろうが、この箱にはお前のとこの艦娘全員分の指輪が入っている」

 

「因みに何で、結婚指輪なんだ?いくら絆がいるとはいえど、結婚指輪にする必要はないだろう?」

 

「俺も詳しくは知らん。だが技術屋が言うには、指輪の方が都合が良いんだと。で結婚を付けているのは、艦娘には戸籍がないだろ?なら提督と結婚した方が良いじゃん。ってなったんだが、その既成事実を作るために今回の許可アイテムを使ったんだ。

まあ差し詰め、ケッコンカッコカリってとこだな」

 

「ケッコンカッコカリねぇ」

 

正直面倒臭そうなので今すぐ溶かしたい所だが、長嶺の脳裏にある疑問が浮かんだ。いや、アイディアと言った方が良いだろう。

 

(そういや、この技術ってKAN-SENにも適用できるんじゃね?)

 

長嶺指揮下の江ノ島艦隊は、艦娘よりもKAN-SENの方が圧倒的に多い。しかもKAN-SENには『スキル』と呼ばれる能力があるので、この能力を伸ばさない手はない。もしケッコンカッコカリとやらで強化できれば、それは更なる軍事力を手に入れることに繋がる。

 

「それじゃ、頼むぞ」

 

「へいへい」

 

その後ハーリング、エリザベス、東川は鎮守府を見学するとホテルへと帰っていったので、早速長嶺は自分の工作室に指輪を運んで色々調べてみる。

余談だが長嶺は鎮守府内に医療関連の検査や研究が可能な医療研究室、生体技術やウイルス関連の研究を行えるバイオ研究室、武器の整備から物質の解析まで出来る工作室の3つを持っている。勿論中には様々な最新鋭機材が揃っており、例え未知のウイルスを発見しても、ワクチンの開発から散布時のマシンまで制作できてしまう。

 

「そんじゃま、まずは素材構成を」

 

まあ数日間色々と弄り回して調べた結果、ちょっと改良すればKAN-SENにも適応可能である事がわかった。改良も量産もここで可能なので、早速準備に取り掛かる。

 

「これで良いな。後は待つだけだ」

 

 

 

翌日 執務室

「さーて、今日の予定h」

 

次の瞬間、執務室のドアが細切れになった。そして中に何故か凄い気迫のKAN-SENの愛宕、赤城、隼鷹、大鳳、鈴谷、ローン、オイゲン。そして艦娘の大和、鈴谷、金剛、比叡、榛名が現れた。

 

「何だ、また操られてるのか?」

 

「指揮官。結婚とはどう言うことかしら?」

 

「は?あー、アレか。順次する予定だけ」

 

次の瞬間、後ろの壁に数本の刀と式神が刺さり、ついでに各々の艤装まで構えて臨戦態勢を整えている。

 

「私達、重婚なんて許さないわよ?」

 

「重婚って、あれはタダの(ステタースアップの)指輪だろ?別に12個渡そうが24個渡そうが、別によくね?」

 

この一言にブチギレた艦娘&KAN-SEN連合。演習弾装備の上で、長嶺への攻撃を開始した。

 

「おいおいマジか」

 

すぐにガラスを割って下に飛び降り、逃亡を開始する。取り敢えずグリムに連絡するが

 

『あー、総隊長殿?なんか艦娘とKAN-SENが反乱起こしたんですけど』

 

「あー、やっぱり」

 

『なんか全員、見事に拘束されてます』

 

「えぇ!?!?」

 

こんな感じに、霞桜も制圧されてしまった。所謂、四面楚歌状態である。ならばどうするかって?どうせならこの、謎の鬼ごっこを最大限楽しむに決まっている。

江ノ島鎮守府が舞台であり、自分の体力や身体能力に自信があるからこその発想だ。てな訳で、本気で逃亡を開始する。

 

「まずは道具だな。食堂で缶詰めなんかを取らないと」

 

「Hay、テートク!死んでくだサーイ!!!!」

「気合い、入れて!殺します!!」

「榛名、全力で殺します!!」

「私の計算では多分司令は、ここで死ぬ」

 

艦娘の金剛型四姉妹から砲撃を浴びせられるが、そんなのダッシュで肉迫して避ける。

 

「はいはい、砲撃はいいから邪魔!」

 

金剛の股の間をスライディングで通過し、強引に突破する。金剛型四姉妹は予想外の動きについて行けず、誰一人として追加の攻撃は加えられなかった。

 

(一体何なの!!艦娘とKAN-SENが反乱って、いつかのドーランだかドラえもんだが忘れたが、最近静かなシリウス戦闘団の攻撃か?)

 

「提督よ。どうしたのだ、そんなに急いで」

 

角を曲がると、戦闘時は長嶺の右腕となる武蔵が立っていた。こっちは艤装を展開していないので、おそらく味方なのだろう。

 

「武蔵!いやー、なんか一部の艦娘とKAN-SENに追いかけられててな」

 

「そうか。では、気絶してくれ」

 

一気に踏み込んで長嶺の鳩尾に拳を叩き込もうとする。常人では早すぎて避ける事も出来ないし、拳をガードする事も受ける事もできないだろう。だが長嶺にとっては、遅かった。

ジャンプで屋根の上に登り、その上からノリノリでコメントする。

 

「殴る瞬間の殺気の量がわかりやすいんだよ!それじゃ大声で「今から殴りまーす」って、声高らかに宣言しているもんだぜ?」

 

「提督よ、貴様も漢だろう?下に降りて正々堂々、勝負しようではないか!」

 

「悪いな。そんな漢のプライドとか無いし、俺は敵には一切の容赦や加減する事なく、打てる手を全て打って戦う事を武士道と考えている。だから、このまま逃げる!」

 

幸いここは屋根の上。流石の武蔵とは言えど、屋根の上まで一息に飛び上がれる能力はない。となると今の所、屋根の上は安全地帯と言えるだろう。

現在長嶺の居るのは江ノ島の中だと北側に位置する。そして目指すべき食堂は中心部にあり、このまま屋根を伝って行けば近道となる。しかも屋根の上はさっきも言った通り安全地帯だし、地面から見れば屋根の上は基本的に死角にもなる。さらに普通は、屋根を伝うなんて考えないだろう。これを考えるのではなく、全て本能でやってしまってるのが長嶺の恐ろしい所である。

 

「我が主、無事か?」

 

「なんとかな。状況は?」

 

「既に鎮守府の主要区画は艦娘とKAN-SENに抑えられている。この反乱に参加しているのは、ここに所属するほぼ全員なのだが中には参加していない者もいる。だが反乱組と協力関係にはあるみたいだし、言ってしまえば『穏健派』というだけだ。

それにどうやらこの反乱、裏切る為にしているわけじゃないようだ。主を思うからこその、愛故の反乱だろう」

 

ここで足を止めてしまったのが不味かった。次の瞬間、長嶺の周囲に無数の矢が突き刺さった。数十本の矢が飛んできたのだが、その内一本も長嶺の身体は掠ってすらいない。

避けたわけではない。射った奴、いや。射った奴らの腕が良く、これを狙って成功させたのだ。

 

「こんな正確な狙撃を弓矢でしてくる連中は、この鎮守府にも少ない。艦娘の赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴と言った空母艦娘。そしてKAN-SENのエンタープライズとセントーだけだ」

 

「これだけ撃っておきながら、主には傷一つ負わせていない。やはり、我が主の艦隊の練度は高いのだな」

 

「こんな形で証明されたかねーよ。あ、そうだ。練度ついでに、この後の一手を教えてやる。矢で俺の動きを封じた次の一手は、近接武器を持った者達による襲撃だ。艦娘からは——-」

 

次の瞬間、目の前に槍が突き刺さった。紫色の刃を持つ、普通の槍とは明らかに違う形状の槍。そんな武器を持つ奴は、この世に1人しかいない。

 

「あらぁ、提督。こんな所で会うなんて、奇遇ですね〜」

 

「やっぱり天龍&龍田か。で後ろから来てるのは、KAN-SENの翔鶴と瑞鶴だな?バレてんぞ」

 

「バレちゃいましたか」

 

後ろなんて見ていないが、気配でわかってしまうのだ。翔鶴と瑞鶴は背後から長嶺を確保しようとしていたらしいが、足音と気配を消す位で確保できれば、これまで相対してきた敵達は苦労せず簡単に致命傷を負わせられていただろう。

 

「その程度で俺の背後を取れたのなら、俺はもうこの世には居ない。さーて。なんでこんなことになってるかは後から聞くとして、今はお前達とのお遊戯(・・・)を楽しみたいんだ。さあ、何処からでも掛かってくるがいい。あ、後これは返すぜ」

 

目の前に突き刺さったっていた槍を龍田の足元に突き刺さる様に投げて、持ち主に返す。さながら貴族が決闘で手袋をぶん投げるようだが、そんなお上品な物ではない。ルール無用、喧嘩上等の戦いである。

 

「どうした、来ないのか?ならこっちから行くぞ!!」

 

「「「「!?!?」」」」

 

最初に長嶺のターゲットとなったのは天龍。天龍は艦娘の中では近接戦で無類の強さを発揮するが、一つだけ弱点がある。

 

「オラオラオラオラ!!オラァ!!」

 

「ぐっ!?はや!!」

 

連撃に弱いのだ。天龍の戦闘スタイルは重い一撃必殺を確実に相手に叩き込む物で、一撃の攻撃力と精度は高い。だがそれ故に、連撃で攻められると中々攻撃に転じられなくなってしまう。

 

「お前今、連撃だけと思っただろ?」

 

「なに?」

 

「悪いが、こっちは端からデカいのを決めるつもりだ!!!!」

 

だが連撃はフェイク。長嶺だって得意とするのは、デカい一撃を相手に叩き込んで倒す方法だ。だがコイツの場合は連撃であっても、正確に素早く、でも普通に重い連撃を相手に叩き込めてしまうので恐ろしい。

天龍は重い一撃を完全に受けきれず吹き飛ばされる。

 

「あらあら、私を本気にさせるとは悪い子ね。死にたいの?うふふ.......」

 

そう言って槍を構えた龍田が突っ込んでくるが、

 

「はいはい、お前はあっち」

 

槍を掴んで、突っ込んできたエネルギーと遠心力を利用して翔鶴と瑞鶴の方にぶん投げる。

 

「危なっ!」

 

「もう!女の子は大事に扱わないと、嫌われちゃいますよ?」

 

「指揮官を大切に扱わない奴には言われたくないな。その言葉、そっくりそのまんま返す」

 

「え.......」

 

何故か翔鶴が膝から崩れ落ち、顔には絶望の色が浮かんでいる。まるで好きだった片想いの相手が、別の女と歩いている姿を見てしまったような顔である。

 

「指揮官.......グスッ。嫌いにならないでぇ!」

 

「は!?え!?いや、何で泣いてんの!?」

 

でもって瑞鶴は泣き出す。天龍と龍田に関しては、完全にノビていて理由は聞けないし、周りにそれ以外の艦娘かKAN-SENもいない。全く状況が読めず、収集もつきそうにない。

 

「我が主、戦艦達がこちらを狙い始めている。今の内に撤退すべきだ」

 

「あーもー!!フォローは後からするとして、今は逃げる!!三十六計逃げるに如かずだ!」

 

流石の超絶鈍感朴念仁男であっても、目の前で女の子に泣かれては気になる。(というよりは、その域にいかないと気にならないのだが)だが今はこの反乱を止めるのが最優先であり、フォローは後回し。

と思っていたのだが

 

 

「やっほー、提督」

 

「提督、速やかに死んでください」

 

「うん。取り敢えずさ、そのセリフの温度差をどうにかしようか」

 

今度は北上と大井と出会った。北上は比較的フレンドリーだが、相方の大井は殺気を撒き散らしている。

 

「いやー、提督も罪な男だよねー。だからさ、死んで?」

 

「あ、そっちに合わせるのね」

 

「そんじゃ陸上雷撃戦、決めるよ大井っち!!」

 

「はい!!」

 

なんと2人は足につけている魚雷を発射し、そのまま空中で魚雷を蹴って長嶺に当てにきたのだ。

まあ一本目を掴んで、そのまま野球のバットの様に振り回して迎撃しましたけどね。

 

「魚雷は海で撃ちなさいよ」

 

「気にするとこ、他にあるでしょ?」

 

「別に魚雷が地上で使われても、別に驚きはしない」

 

「頭大丈夫ですか?」

 

なんか色々ボロクソに言われつつ、また陸上雷撃してきた。勿論野球のバットの様に一本目を掴んで、今度は一回だけフルスイングで全部破壊する。

 

「はい、いっちょ上がり。じゃ、あまり遊び過ぎんなよ」

 

魚雷投られたお返しに、長嶺はスモークグレネードとスタングレネードをぶん投げる。

 

「あ、逃げるな!!」

 

「逃げるな言われて止まるバカはいねーよ!」

 

そのまま逃げていると、今度はKAN-SENの天城と出会った。これまでのパターンで行くと、攻撃されるヤツだろう。

 

「指揮官様.......」

 

「天城か」

 

流石にそろそろ戦闘にも飽きてきたので、すぐに格闘戦に移れる様に拳を前に出して構える。

 

「指揮官様。指揮官様は、今の状況を理解しておいでですか?」

 

「あぁ。どういう訳か艦娘とKAN-SENが反乱を起こし、鎮守府の至る所で俺を探している。そうだろ?」

 

「仰る通りです。では何故、この様なことになっているかはご存知ですか?」

 

「ご存知ないです」

 

天城は溜息を吐くと、今回の反乱の真実を話してくれた。だがその反乱理由は、何とも怒りにくい物であった。

 

「今この鎮守府には、指揮官様が重婚するとの噂で持ちきりです。そしてそれは広まっていく内に変化し続けてしまい、今では「指揮官が私達を見捨て、一般人女生と重婚する。そして軍人を辞めて、何処かで隠居する」と、この様な物になってしまっています。

この話を聞いた皆は、指揮官様に軍人を続けてもらうべく反乱を起こしたのです」

 

「.......マジかい。てことは何、みんな俺の事が好きとか?」

 

「この反乱が答えかと」

 

流石の超絶鈍感朴念仁男である長嶺であっても、流石に気付いてしまった。普通に考えて結婚するウワサだけで反乱を起こすとか、まあまずありえない。余程好かれていなければ、そんな事はないだろう。

 

「あー、天城?一つだけ、頼みがあるんだけど」

 

「何でしょう?」

 

「今の俺はとてつもなく忙しい。一応高校に在学しているし、高校の中で諜報活動も行なっている。だからせめて、この任務が終わるまでは俺が好意に気付いた事は黙っていてくれないか?」

 

「ではこの反乱は、一体どう鎮めるのですか?」

 

「まあ、やりようはあるさ」

 

長嶺は食堂ではなく、放送室へ走った。道中も屋根やダクトを使用して放送室に向かったのだが、よく見れば普段は比較的冷静な判断のできるロイヤル陣営も血眼になって探している辺り、長嶺の立てた仮説は真実なのだろう。

だが放送室の前には、ユニオン勢が待ち構えていた。

 

「指揮官。悪いが、アタシ達と来てもらうぜ?」

 

「指揮官くん?おいたをする子は、お姉さんがメッ、しちゃうわよ?」

 

「あはは。ちょっと2人は過激だけど、私も同じ想いかな。ねぇ指揮官。悪い事は言わないからさ、私達に大人しく捕まってくれないかな?」

 

待ち構えていたのはワシントン、セントルイス、ブレマートンとユニオン勢の中でも比較的強い部類に入るKAN-SEN達である。

 

「悪いなお前ら。俺は交渉をしに来たわけでも、まして捕まる為に来たわけでもない。その奥の部屋に用があるから来てんだ。それに、お前達如きが俺に勝てるとでも?」

 

「やってみなくちゃ分からないだろ?」

 

「ワシントンらしい答えだ。だがまあ、正直暴れるのは疲れてな。というか飽きた。だから俺ではなく、相棒にカタを付けて貰うさ。犬神!」

 

「3人とも、ごめんね。ワォォォォォォン!!!!」

 

背後から近付いていた犬神の妖術により、3人の動きを完全に封じる。

犬神の妖術は実を言うと、こういう『操り』の類いが得意である。氷や水などの妖術を使って攻撃はしているが、それはあくまで犬神が妖怪としての能力が最上位に位置する最強の部類だからできる力技にすぎない。曰く妖術自体は妖怪ごとの属性とでも言うべき、才能の様な物があって、それがあれば各妖怪は一種類は確実に使える。だがその能力は個体の能力の優劣によって左右されてしまい、ピンからキリまである。稀に複数の才能を持った者もいるが、中途半端に全部使うと弱すぎて使い物にならないらしい。

だが犬神は能力値が高すぎて、最も得意とする操り系の妖術が神レベルに達しており、劣化する筈の水系の妖術も最強の部類なのだと言う。

 

「か、身体が.......」

 

「動かない.......」

 

「なんかまるで、乗っ取られたみたい.......」

 

「おっ、セントルイス。いい勘してるな。今犬神が使った妖術は、本来は完全に対象の意識を操る術だ。だが極めると、こんな風に身体の自由のみを奪うこともできるんだ」

 

因みにこの応用技を編み出したのは、犬神ではなく長嶺である。元は完全に意識を奪って、単なる操り人形にする事しか出来なかった。だが長嶺が「これワンチャン極めれば、応用効くんじゃね?」と思い付き、色々試して訓練させた結果、深層意識内に犬神の意識を介在させて本来の人格を残したまま意のままに操れる技、記憶の閲覧や改竄ができてしまう技、意図的に能力を覚醒させてしまう技、今の様に運動能力にのみ意識を潜り込ませて拘束してしまう技などを編み出してしまった。

今では操る範囲が脳全体になってしまい、元の能力が余りにも原型を留めていない。

 

「主様の頭脳って、ホント天才だよねー」

 

「伊達に総隊長はやってない。さーて、さっさと誤解を解きましょうかね。取り敢えず、そのまま拘束させておいて」

 

「はーい」

 

無力化したし、仮に強い精神で犬神の意識を払っても長嶺の敵ではない。そんな訳で堂々と、ど真ん中を余裕の歩き方で放送室へと向かう。放送室の鍵は忘れたので、艦娘の力を少し解放してパンチでドアを吹き飛ばし中に入る。

 

「えーと、まずは電源入れて、放送先を全島に変えて、ボリューム上げて…」

 

あんまり覚えていない作動手順を頭から絞り出しつつ、色々コンソールを操作する。因みに主は放送部の部長をしてたりする。(特に活動も仕事も無かったし、他の部員も居たけど来る事なくて実質1人でやってたんだけどなグスン)

 

『現在の反乱中の艦娘、KAN-SENに告げる。30分以内に、講堂に集合せよ。さもなくば全員を反乱分子と認識し、貴様らを殲滅した後、責任を取って腹を切る』

 

この放送に艦娘とKAN-SENは震え上がった。震え上がったのは、殺される事ではない。愛している提督、もしくは指揮官が腹を切ると言った事にだ。

何せ長嶺雷蔵という男は、やると決めたら何が何でも実行する男である。どんなに困難な事であっても、何があっても、一度決めたら地獄の底のさらに下だろうが宇宙の果てだろうが、必要とあらば何処までも走り続ける奴だ。そんな奴が今、自殺すると言ったのだ。運が良ければあの世で会えるのかもしれないが、そんな事は彼女達は望んじゃいない。彼女達の願いは長嶺の重婚を阻止(勘違いだけど)し、あわよくば自分達と重婚させて長嶺のハーレムを作り上げる事なのだから。

※ただし後者は、一部の奴のみの計画である。ヤベンジャーズとか、提督LOVE勢の皆さんとか。

 

 

 

30分後 大講堂

「集まった様だな。さてお前達…」

 

どう聞いても怒っている声に、彼女達は震え上がる。何せ想い人である男性から、明らかな敵意と怒りをぶつけられているのだ。しかもその男は今いる全員が束になって掛かっても、確実に返り討ちにされる力を持つ最強の存在。今からどうなるのか、心配でたまらない。

というか大半が解体処分(艦娘、KAN-SENに取っては死を意味する。解体に処されるのは余程のダメージを負って修復できないと判断された場合、若しくは余程の罪を犯した場合のみである)によって、死ぬことを覚悟していた。

 

「マジで楽しかったぞ!」

 

全員が驚愕した。

 

「いやー、ここ最近身体が鈍っててな。どっかで良い感じに深海棲艦が攻めて来ないかなーとか、URとかシリウス戦闘団が戦争しに来ないかなーとか考えてた訳よ。

そしたらお前達が何でか知らんが、なんか暇潰しがわり(・・・・・・)に反乱してくれた。いやー、久しぶりに暴れたわ。楽しかったよ、マジで」

 

未だに全員がフリーズし、意識が全くない。かろうじて呼吸等の生命維持をしているだけで、脳が全く追い付いていなかった。

 

「因みにさ、お前達が反乱した理由な。これが全く分かんないから、それを教えて欲しいんだが。って、あれ?おーい、みんなー?」

 

シーーーーーーーーーーーン

 

「.......あ、深海棲艦」

 

全員が艤装を展開した。お陰で講堂中に重苦しい金属音と、モーターの可動音が響いて一気にうるさくなる。

 

「お帰り。でさ、何で反乱起こしたの?」

 

もう一度全員が黙ってしまう。だが大和が重い口を開いて、理由を説明しだした。

 

「私達は提督が重婚し、この鎮守府を去ると聞いたので、それを止める為に反乱を.......。お願いです!私はどうなっても構いませんから、どうか他の皆さんは見逃してください!!」

 

「待つネ大和。テートク、私も同罪デース。どうか私も、裁いてくだサイ!!」

 

金剛が大和を庇ったのを皮切りに、他の艦娘とKAN-SENも「自分も裁け」や「自分が首謀者」と言い始めた。

 

「あー、なんで裁かにゃいかんの?俺言ったじゃん、楽しかったって」

 

さっきまで庇い合い合戦で騒がしかったのが、やはりまたピタリと静かになった。

 

「だってさ今回の反乱での被害だけど、ちょっとドアやら壁やら屋根やらが壊れただけ。それ以外は死亡者は勿論、大きな怪我は無かっただろ?なら別によくね?

この程度の被害なら後から適当に「深海棲艦の爆撃に合いました」とか何とか言って、どうとでも揉み消せるし。というか何なら、少し俺も鎮守府破壊してるからな。

それからお前達の言っていた重婚は、本当の事だ。お前達が何と言おうと実行する。で肝心の相手なんだが、それはお前達だぞ?」

 

ここで一気にザワついた。本来なら黙らせるべきなんだろうが、今回ばかりは大目に見て東川から聞かされた話をそのまま語る。

 

「この重婚なんだが、別に本当に結婚する訳じゃない。お前達に今度渡す指輪は、お前達の能力を上げる為のアイテムだ。開発の段階で指輪型にするのが一番効率的な形状であることが発覚し、これに防衛省が目をつけた。

この戦争が終わった時、お前達が安心して暮らせる様に「結婚」という形で戸籍を無理矢理作り出す。こうする事によってお前達の社会へ出て行く上での地盤を作るべく、この結婚制度が作られたらしい。因みに『ケッコンカッコカリ』という制度名だ。

元は艦娘にしか適用できなかったんだが、俺が解析したところKAN-SEN用にも転用できる事がわかった。ついでに各部を色々弄くり回して、ちょっとばかし強化したのを現在量産中だ。

だがこのケッコンカッコカリには、艦娘とKAN-SENに特定の条件がいる。この条件が満たされて、指輪も量産できたら随時ケッコンカッコカリを全員して貰う。俺が言った重婚とはこの事で、ここを去ることも今の所そんな予定は無いから安心しろ」

 

そう言うと歓声が上がった。だが今度は今回の処罰に関する話が出始め、大和が質問してこようとした。それを察して、言う前に彼女達に取っては最高の罰が長嶺より言い渡された。

 

「念の為言っておくが、今回の罰としてケッコンカッコカリはお前達に拒否権はない。必ずして貰う。勿論戦争が終われば、その限りじゃ無いがな。その辺は上もまだ決めてないから何とも言えんが、その辺りはまあ、お前達の自由意志に任せる」

 

この一言はつまり、そのまんま結婚しても良いと言う事である。日本では重婚が不可能だという声が聞こえるが、法律上彼女達は人ではない。艦娘は書類や法律上では海軍の保有する艦艇、つまり『物』である。KAN-SENに関しては存在が認知されていないが、仮に認知されても性質上は艦娘と同様の扱いとなるだろう。

その為に戸籍という物がなく、ケッコンカッコカリ制度で無理矢理作ろうとしている。つまり『戸籍がない為婚姻届は出せず法的な結婚はできないが、いわゆる事実婚や内縁状態は可能』という事である。そして今の発言はそれを長嶺が容認した(・・・・・・・)という事になる。それに気付いた一部の艦娘とKAN-SENは喜んだ。

だが一方で、あるKAN-SENは一つの計画を練り始めていた。

 

(甘いわね。ハーレムの場合、『正妻』というのがあるのよ。そのポジションに、絶対なってやる)

 

オイゲンである。今回の一件でヤベンジャーズからの睨みや締め付けは、必ず緩くなる。何せ結婚を容認する様な発言が出たのだから、これを利用し始めるのは分かりきっている。

だがオイゲンの場合、長い時間を共にできるというアドバンテージがある。これを利用する手はない。

 

「必ず、モノにしてやるわ.......」

 

だが彼女はまだ知らない。この後の奉仕部は更なるカオスへと突き進み、高校生のガキの浅知恵と大人の浅知恵が渦巻く面倒事が始まることを。

 

 

 

 

 

 

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