千葉村での戦闘より数週間後 8月7日 江ノ島鎮守府 会議室
「みんな、揃ったわね?」
この日、オイゲンは各陣営のトップKAN-SEN、各艦種の代表艦娘、間宮、ベルファスト、そして珍しい事に霞桜の大隊長を呼び出した。
「えぇ、揃っていますよオイゲンさん。いいえ。ここでは、本部長とお呼びした方がいいですか?」
いつもは長嶺の右腕として、長嶺不在時の江ノ島を取り纏める副長のグリムがオイゲンの右斜め後ろに立っている。
「そう。なら、予定より少し早いけど始めましょうか。指揮官のお誕生日パーティー実行委員会の会議を」
そう。会議室に鎮守府の運営を司る主要幹部メンバー全員が、こうして雁首揃えているのは長嶺の誕生日パーティーをする為である。
時は、今から二ヶ月前の梅雨時期に遡る。
「誇らしきご主人様、お部屋のお掃除に参りました」
「ん?あぁ、ご苦労さん。俺はここで銃の整備やってるから、この辺り一帯はしなくていいよ。向こうのそこから、その辺りくらいまででいい」
「わかりました」
別に何という事もない、雨の日の昼下がり。珍しく仕事が早く片付き、特に無理してやる必要もない仕事しかなかったので、長嶺は自室で愛銃の手入れをしていた。
いつもは部屋に入り浸ってテレビやゲームしてる犬神と八咫烏も、今日は鎮守府の中を散策しているらしく、今部屋にいるのは主たる長嶺と掃除に来たシリアスだけだった。
「キャア!!」
部屋に入って3分もしない内に、背後からシリアスの悲鳴と共に何かが大量に落ちてきた様なデカい音がした。音的に何かやらかしてるので、すぐに後ろを向く。
見れば執務机の後ろに置いてあった本棚の本の殆どが地面へと落ち、その真ん中でシリアスが尻餅をついて涙目になっていた。
「あーあー、また派手にやっちゃったな」
「も、申し訳ありません誇らしきご主人様.......」
「別に本は直せばいいんだから問題ねーよ。ってかそれより、お前の方だ。ケガとかしてないか?」
「大丈夫で、いっ!」
どうやら大丈夫じゃなかったらしい。見れば頭にたんこぶが出来ている。高速修復剤をぶっ掛ければKAN-SENも艦娘と同じ様に治るが、この程度なら使うのは勿体なさすぎる。
となれば普通に、頭を氷で冷やしてやるのが手っ取り早い。その辺は医師免許持ってるだけあって、すぐに用意してシリアスの頭に乗せた。
「ほい、処置完了!」
「あ、ありがとうございます、誇らしきご主人様」
「これでも医者だからな。さーて、それじゃ俺は本を片すから他の掃除でも頼む」
山と化した分厚い色んな分野の専門書を、本棚へと直していく。医学系、料理系、法学系、工学系、生体化学等々。その種類は多岐に渡っているが、その全てがプロが読み込む様な物ばかりである。
「おっと、コイツも落ちていたか」
最後に1つの写真たてを拾い上げて、それを執務机の上に置く。写真立てには何処かの海と夕日をバックに、まだ幼さの残る顔立ちの長嶺が戦闘服を着て写っていた。
「誇らしきご主人様、その写真はどこで撮られたのですか?」
「.......俺だけが知る、秘密の場所さ」
「綺麗.......。いつ取られたのですか?」
「少し前の誕生日だから、多分4、5年前の8月8日だな」
因みにシリアスは後から知るのだが、長嶺の誕生日の情報は長らく謎であった。なのでこの情報は霞桜含める、全ての鎮守府にいる仲間達に広まった。掃除の方は流石にそれ以上は何もしでかす事なく、無事に掃除を終えて部屋を出て行く。
シリアスがいなくなると長嶺は写真立てを手に取り、後ろの板を外して中を見た。中にはまた別の写真があった。長嶺含める4人の少年達が、武器を持って笑っている写真である。そして写真の上には、3枚のドックタグも入っていた。
この写真はかつて、長嶺が元いた部隊での最後の出撃前に撮影した写真である。この写真を撮った後の作戦で、長嶺は最も信頼する3人の友人を亡くしたのだ。
「アイツらが亡くなって、もう10年か.......」
とまあ、こんな具合に偶然誕生日の情報をゲットしたシリアス。これまで霞桜の面々も知らなかった誕生日に、幾つかの思惑が重なって誕生日パーティーが計画され出したのだ。
因みにこの思惑というのが、ヤベンジャーズ&提督・指揮官LOVE勢が「ワンチャン神ってる方まで行き着けるかもしれない」というもので、駆逐艦などの子供組は「みんなで美味しいものが食べれる!」というもので、霞桜の面々が「偶には総隊長の顔真っ赤な姿とか、ハーレムendを見て弄り倒したい!」というもので、残りが「普通に祝ってあげたいor感謝を伝えたい」的な真っ当なものである。
「それじゃあ、最終確認よ。実行日は明日、丸々1日使って行う。朝指揮官を起こして、そのまま海に連行。海で遊んだ後、軽食を食べてプールで遊ぶ。
夜は豪華なパーティーを開き、最後に打ち上げ花火を見る。これでいいわね?」
「それでは、各部門より報告を」
「はい」
まず立ち上がったのは調理担当の間宮。当日は厨房には入らないが、仕込みや妖精達への指示は彼女担当である。
「昼食に関しては食べ易いよう、サンドイッチを準備してあります。夕食の方はビュッフェ形式で、各国の様々な料理を作らせる事にしています。ジュースサーバーは本日夕方までに設置し、酒類に関しては準備が完了次第、順次搬入します」
「ロイヤルメイド隊は会場設営に入っています。一部を通常業務にあたらせカモフラージュしつつの作業ですので当初の予定とは若干の遅延はありますが、本日の昼過ぎから夕方までには完了致します」
間宮、ベルファストが座ると今度は重桜と鉄血のレッドアクシズメンバーが立ち上がる。
「我々がビーチ整備を担当した。パラソル、ビーチバレーコート、ビーチベッドも設置済みだ」
「海の家の準備も完了したわ」
鉄血代表のビスマルク、重桜代表の赤城が座ると、次はユニオンとロイヤルの代表、エンタープライズとプリンス・オブ・ウェールズが立ち上がった。
「私達はプールの準備を担当した。プールも全てピカピカに磨いてあるぞ」
「軽食やドリンクの店も準備済みだ。後は水を張って、動作確認さえすれば完了する」
2人が座ると今度はサディア代表のヴィットリオ・ヴェネトと北方連合代表のソビエツカヤ・ロシアが立ち上がる。
「私達は服と食材の手配を担当しました。皆さんの着る水着とパーティー用の衣装は、こちらでしっかり用意済みです」
「食材についてだが、魚などの生物以外は今日中に全て届く手筈だ。既に続々と到着しつつある」
2人が座ると今度はヴィシアとアイリスのコンビ、そしてバルク、レリックが立ち上がる。代表はジャン・バールとリシュリュー。
「オレ達は霞桜の奴らと協力して、花火の準備を担当した」
「動作チェックまでしていますので、ご安心を」
「発射台と設置済みだぜ!」
「仕掛けは俺、システムはグリム。完璧」
4人が座ると、今度はベアキブルとマーリンが立ち上がる。
「俺達は、水鉄砲なんかの玩具を調達してきた」
「物はレリック、システムはグリムですが、射撃精度などの調整は私が担当しています。ベアキブルには射撃苦手の代表として、意見を色々貰っています」
2人が座り、今度はカルファンが立ち上がる。
「私はボスの部屋に忍びこんで、好みの調査をしておいたわ。まあ、何も収穫がなかったのだけど。ホント、情報が無さすぎるわ」
カルファンの報告に一同、「あー、やっぱり」と言わんばかりの顔をしている。この計画の始動に際して、一応カルファンとその部下達が長嶺の自室とか執務室を探ったのだが、やはり情報は一切出てきていない。
例えば好物が肉なのは分かるが何肉が好きとかは分からないし、好きなタイプなんかも勿論分からない。完全なる骨折り損であった。カルファンが座ると、今度は本部長であるオイゲンが口を開く。
「これなら明日は大丈夫ね。私の方も大臣と、こちら側陣営の提督達に話は通したわ。グリムさんの助言通り、河本陣営?には話を通して無いけど、他の風間提督や山本提督で事足りるわ。
大臣に至っては、是非成功させて欲しいとの命令も来ているしね」
オイゲンの担当は、各方面への根回しである。やはり一日中、実質鎮守府が機能しないのだ。しかもそれが海軍のトップであり最大最強の戦力を保有する鎮守府ともなると、やはり各方面への根回しが必要だった。
しかし敢えて根回しの対象を長嶺の派閥のみに限定しているので、横槍や問題が呼び込まれる事なく根回しは完了した。敵対派閥の河本が、遠く離れた佐世保が拠点だったのが幸いである。
「最後は私ですね。私は主に、総隊長殿の妨害と誘導を行なっています。今のところはバレていませんが、こういう所と戦闘面だけは勘がズバ抜けて効きますのでバレるのも時間の問題となるでしょう。
しかしここまでバレてはいませんので、このまま押し切るつもりです」
「それじゃあ、みんな。明日のパーティー、必ず成功させるわよ?」
「「「「「「「おぉー!!」」」」」」」
会議は終わり、参加者達は拳を掲げる。今回ばかりはヤベンジャーズも「あくまで今回は普通にアピールするだけに留めて、指揮官様に楽しんで貰おう」という、これまでで一番マトモな思考回路になった。
まあ際どい水着や服なんかで誘惑はするつもりだし、タイミングがあれば逆セクハラに近い事はするつもりらしいが。
翌朝 05:00 長嶺自室
「ふわぁ.......」
何も知らぬ長嶺は、いつものように早朝に目を覚まして身体を鍛えるべくトレーニングを始めようと外に出る。だが外に出ようとドアを開けると、外には恐らくノックしようとしてたのだろう。拳をドアの辺りに作ったベルファストが立っていた。
「おはようございます、ご主人様。今朝もお早いお目覚めですね」
「いつも通り、身体を鍛えるからな。さて、今日も執務をしないといけないからもう行くわ」
「お待ちを。東川大臣より、昨夜ご連絡が入りました。『本日の業務は執務ではなく、艦娘、KAN-SENと触れ合え』との事です」
ベルファストはそう言うが、これは少し可笑しい。何故そんな重要な連絡が、何の関係もないベルファストへと行ったのだろう。というかそれ以前に、何故このタイミングでそんな任務が来たのかも謎である。
だがその辺りは、聞く前に全部答えてくれた。
「この連絡は昨夜承ったのですが、私とした事がご主人様へお伝えするのを失念しておりました。申し訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げるベルファスト。勿論、そんな連絡受けてないので嘘である。
だがいつもは嘘どころか、こういうタイプの冗談すら言わないベルファストが頭まで下げたのだ。流石の長嶺も、本当のことと思ってしまいます普通に信じてしまった。
「まあミスくらい誰にでもあるし、結果的に実質休みが増えたんだ。堂々と二度寝させて貰うよ。さあ、ベルファストも業務に戻りな」
「はい、失礼致します」
ならばやる事は決まった。確かに長嶺の1日は早いが、それは仕事のある日のみ。休暇や何も無い日は普通の人間と同じ位に起きるし、普通にダラける。つまり、二度寝をするのだ。
「よーし、寝よ寝よ。とうっ!」
ベッドに飛び込んで、そのまま寝る。その姿は、ベルファストが気を引いてる間に配置しておいたサイレントで捉えられていた。
「完全に寝ましたね」
「えぇ。それでは、我々も始めましょうか」
監視班のグリムとマーリンが、無線を取って各方面に指示を出す。「phase 1、完了。各班はphase 2に移行せよ」と。
この指示を受けて、全員が最後の準備へと動き出す。そんな事も知らず、長嶺はスヤスヤ眠っていた。
「ふわぁ.......、今何時だ?」
枕元にあるスマホに手を伸ばして時間を見れば、07:30と目覚めるには丁度いい時間であった。
「そんじゃ、起きますかね.......」
「あ、起きた」
「phase 3始動!」
勿論監視中の2人が気付き、いよいよ長嶺を巻き込む段階に入った。巻き込みを担当するのは、長嶺とは一番付き合いの長い艦娘である大和。
「失礼します」
「おー、大和じゃん。どうした、朝っぱらから部屋に来るなんて」
「あの、提督。今日は一応、休みなのですよね?」
「らしい」
「それなら、あの、私と海に行きませんか?今から」
大和は最古参の艦娘として、ずっと鎮守府を支え続けてきた。今では艦娘の実質的なリーダーであるし、長嶺が信頼を寄せてる1人でもある。そんな子が「一緒に遊びたい」と頼んでくれば、流石に断る事もできない。
しかも相手がスタイル抜群の美女とくれば、断る理由は全く存在しないどころか寧ろ金を積んででもお願いしたいレベルである。
「まあ、別にいいよ。そんじゃ俺は朝飯食べるわ」
「その、朝ご飯も用意してあります」
「.......準備いいな」
なんかちょっと怪しい気がしなくもないが、偽物という訳でも無さそうだし、もし何か企んでいるのなら仕出かそうとした瞬間に『対処』してしまえば問題ない。それ以前に「まあ大和なら大丈夫だろう」という安心感というか、信頼もあるので大丈夫だろう。うん。
「べ、別に何もないですよ?」
「ほーう?」
なんか、この一言で余計怪しさがあるが、多分大丈夫だろうと踏んで一度奥に下がって着替えようとすると、大和に呼び止められた。
「あの.......、私も着替えていいですか?」
「あー、そういやお前、水着とかじゃないな。それじゃ、そこの部屋使えよ」
長嶺は自室内の執務室、大和はウォークインクローゼットの中で着替えて貰う。
因みに長嶺の水着は黒の海パンで、一応しっかり阿修羅HGを太腿に装備している。そして大和はゲーム版スキンの赤と白のビキニではなく、アニメ版の赤と黒のボーダーとヘソ周りに謎の切り込みが入ったビキニである。
「着替えたな。じゃあ、行くか」
「はい!」
十数分後 鎮守府内ビーチ
「構え!」
グリムの命令で、霞桜の兵士達が一斉にロケットランチャーを上空に向ける。弾頭は実弾ではなく、花火である。
「グリム、大和さんから連絡来ました。後60秒!」
「わかりました。皆さんも準備はいいですね?」
グリムが後ろを振り返ると、クラッカーを装備した艦娘とKAN-SENが居た。勿論、全員水着。
「提督、こっちです」
「はいはい」
長嶺がビーチに足を踏み入れた瞬間、まずは霞桜の隊員達がロケットランチャーを撃った。
急に連続して鳴り響いた破裂音に驚き、すぐに大和の前は出て武器を構える。
「なんだ?」
今度は音楽が鳴り始めて、ワラワラと隊員達が歌を歌いながら出てくる。
「「「「「「「「happy birthday、我らが同志。happy birthday、パーティーだ。happy birthday、おーめーでーとーうー!happy birthday to you」」」」」」」」
3割近くが音程外してるし、偶にふざけてる奴もいる。だが心の籠った霞桜用のバースデーソングに、長嶺は「今日誰の誕生日だっけ?」と困惑していた。
「はい、それでは皆さんご唱和ください!せーの!!」
「「「「「「「「提督(指揮官)(指揮官様)(ご主人様)(司令)(司令官)(総隊長殿)(総隊長)(総長)(ボス)(親父)、お誕生日おめでとう!!!!」」」」」」」
グリムの音頭で、みんながクラッカーを引っ張って紙吹雪と紙テープが降り注ぐ。
「.......あぁ!そういや俺の誕生日今日だ!!」
そしてようやくここで自分が今日誕生日だったのを思い出し、このパーティーは自分への贈り物である事を知った。
「提督、騙してしまってすみません。今日はこの鎮守府のみんなで、提督を癒します!」
「いやまあ騙すのは構わんのだが、これ一体発案だれよ?ってかパーティーは嬉しいが、当直とかはどうする?」
「大丈夫よ指揮官。その辺りは、しっかりこっちで根回し済みよ?」
オイゲンがそう答えた。グリムも「私が補佐してますので、間違いありませんよ」と耳元で言ってきた。
長嶺はまさかオイゲンがこんな事を計画し、しかも人をしっかり巻き込んでここまで大掛かりな物を作り上げた事に只々驚いていた。
「さぁ、総隊長殿。本日の業務は我々が代行致しますし、周辺海域の方はこちら側の他鎮守府が担当してくださいます。ですので今日だけは執務とか任務だとか、そんなのは忘れて遊んでください。
貴方はいつも、みんなの前に立って引っ張ってくださる我等の誇りです。ですが今日くらい、年相応に羽を伸ばしてもバチは当たりませんよ?」
「まあ、そういう事ならお言葉に甘えるとしよう」
そんな訳で、いざ海遊びとはなったのだが、一つ問題があった。それは…
「海って、どうやって遊ぶんだ.......」
そう。遊び方を知らないのだ。長嶺にとっての海は戦場か地獄かの二択であって、遊び場ではない。よって、何をすれば良いのか分からなかった。
ならどうするのか。まずは取り敢えず、
(駆逐艦sは波打ち際で水掛け合いをして、軽巡は砂浜で遊び、重巡は陣営対抗水泳、空母&戦艦は.......なんか自由だな。海眺めてたり、なんか食ってたり、統一性がない)
「どうしたものかね」
そのまま長嶺はビーチチェアに寝転んで、青い空と風に吹かれて何処かに流れて行く雲を眺めていた。
一方の艦娘とKAN-SENはと言うと…
((((((((体付きがエロい!!!!!))))))))
長嶺の体に興奮してました。何せ長嶺、脱ぐと凄い。伊達に霞桜とかいう化け物集団を率いて最前線に立ってるだけあって、ガッシリと並みの軍人よりも筋肉は付いている。かと言ってボディビルダー程にムキムキではなく、言ってしまえば古代ローマの彫刻の様なボディなのだ。
そしてどうやら男が女性のオパーイとかおSiriに目が行く様に、女性も男の首すじとか胸板とか各部の筋肉とかに目が行くものらしい。それは戦う為に生み出された艦娘&KAN-SENも例外では無いらしく、自分のフェチに合う部分をチラチラと視姦している。
(指揮官の体、本当にエロい、です/////)
(指揮官、エロすぎでしょ//////)
(うぅ、提督エロすぎマース/////)
とまあ色々視姦されまくってるのに気付く事なく、そして特段何をする訳でもなく海は終わった。軽食を取って、今度はプールの方に移動して遊び出す。
「へぇー、こんな感じだったのか」
「あら指揮官くん。もしかして、プール初めて?」
セントルイスが声をかけてきた。因みにセントルイスの水着は、イメージカラーでもある青のビキニである。
「あぁ。ここをフル改修した時の点検で来た位だから、本当に遊ぶのは今日が初めてだ。というか、プールで遊ぶのが初めて」
「え!?」
流石に驚いたのか、セントルイスの横にいたホノルルが珍しく表情を表に出した。
「俺に取っちゃ、プール=水中訓練場だからな。少なくとも、娯楽施設って認識ではない」
「なんか、ホント指揮官くんの将来が心配になるわ.......」
「.......否定できないから怖いよ。戦争終わって日常が来ても、俺は、というか霞桜の連中も馴染めないだろうな」
考えてみれば長嶺の周りにいる人間は、ほぼ全員が戦闘にのみ自分の価値を見出すどうしようも無い連中である。戦う為に強大な力を持っている艦娘とKAN-SENも、ある意味では戦場が居場所と言える以上、中には日常に馴染めない者も出て来る可能性はある事に長嶺は今気付いた。
「なら、指揮官はどうするの?」
「なーんも考えてない!でもそうだなぁ、独立国家でも作って戦士達の楽園をこの世に作り出し、ついでに世界を簒奪する魔王ポジになるのも面白いかもな」
何故かコイツが言うと、全くもって冗談に聞こえないのが恐ろしい。というか今の現段階でも、普通に世界を敵に回してもどうにか出来る位には力があるので問題なく世界征服は出来るという。
まあそんな良くわからん未来の話は置いといて、このプールの解説をしよう。恐らく読者諸氏は『25mプールがあるだけでしょ?』とお考えだろう。勿論普通の25mプールもあるが、その程度で終わる程の男では無い。2種類の流水プール(普通の速度と3倍の速さの2つ)、波が出来るプール、幼児用のアスレチックやら巨大バケツやらがついたプール、ウォーターガン、バブルガン、飛び込み台、更にはチューブ型のウォータースライダー、浮き輪がいるタイプのウォータースライダー、巨大な長い滑り台タイプのウォータースライダーまで完備している。しかも全部屋内なので日焼けの心配なしという、リゾート地顔負けのプールなのだ。
「さーて、じゃあまずはスライダー行きますか!」
「指揮官様。あの、私とスライダーに乗りませんか?」
白いビキニを装備したイラストリアスが現れて、ウォータースライダーに誘ってきた。浮き輪タイプのは1人乗りと2人乗りがあるので、一緒に滑るのは可能。なら断る理由は無いので、二つ返事でOKした。
「け、結構高いんですね.......」
「空挺降下に比べりゃ低い低い。さっ!行くぞ」
「それじゃあ総隊長、どうぞ行ってらっしゃい!」
係員役の霞桜の隊員が、浮き輪をスライダーの中に押し込んだ。ガクリと下がると、そのまま一気に加速してチューブの中を滑って行く。
「キャァァァァァァァァ!!!!!!」
「いーーーーーーやっほーーーーーーーー!!HAHAHAHA HAHAHAHA!!!!!!」
チューブの中を一回転しそうな位の勢いでカーブを曲がり、また同じ様にカーブを曲がる。しかも滑り出して10秒くらいすると『光のトンネル』とでも形容すべき幻想的なチューブの中を進み、さらに15秒位経つとチューブの外に飛び出した。
「おっと?これはもしかして」
見れば目の前はジャンプ台の様に上へと飛び出ており、その横には別のチューブへの道がある。
「これはまさか、運が悪いとバックで入るタイプですか.......?」
「そうみたい。しかもこれ、バックだ!」
長嶺は楽しそうな叫びを上げながら、イラストリアスは断末魔にも似た叫びを上げながらチューブの中へとバックで入って行く。今更だがイラストリアスが前で、長嶺が後ろだったのでイラストリアスは直に遠ざかっていくチューブの入口を見ている為、恐怖は倍増だろう。
だが一方で役得もあった。バックで入ると、勿論体重は後ろへと移動する。その後ろには長嶺がいる訳で、期せずして自分の背中を長嶺へと預けられたのだ。まあ、恐怖でそんなの微塵も気付いてないのだが。
「うおっ!」
暫くすると下まで降りきったようで、またガクリと下がり着水した。
「はぁ.......、はぁ.......。あ、ありがとうございました指揮官様.......」
「い、生きてる?」
「ちょっとだけ、危な、あ」
余りの恐怖で体力を使いすぎたのか、はたまた下まで降れて安心したのか、イラストリアスは浮き輪から落ち掛けてしまった。すぐに長嶺が肩、正確にはビキニの紐を引っ張ったので変な落ち方をする事なく綺麗に落ちた。しかしまあ、どうやら結構ギリギリのサイズだったらしくて、あの巨大な胸が溢れてしまい慌てて直したらしい。
勿論!長嶺は気付いてない。
「さーて、他のスライダーも行っとかないと」
今度は普通の生身で滑るスライダーに乗り込んだ。瞬間的に時速180kmまで加速する化け物コースターを降りると、ユニコーンやニーミなどの駆逐艦組に誘われた。
「へぇー、こんなアスレチックなのか」
「指揮官も遊ぶ、です?」
「勿論!」
このアスレチックはどうやら、丸太型の浮き輪を飛んでいくタイプらしい。だが体重をかければあちこち動くので、足場としては相当悪い。
綾波とラフィーはこう言う類は得意らしく、サクサク進んでいく。ジャベリンは可もなく不可もなくと言ったところだろう。だがユニコーンとニーミは苦手だったらしく、動きが少し悪い。
いよいよ長嶺の番となったのだが、コイツはやっぱり規格外だった。
「あー、やっぱり滑り易いな。ならば!」
丸太から丸太へと飛び移り、体重移動と滑り方を瞬時に合わせてスケートで滑るかの様に突破してしまった。本来は天井のネットを使いながらやるのに、一切使わずに突破しやがったのである。
「指揮官、やっぱり可笑しい」
「お兄ちゃんすごい!」
「あはは。やっぱり指揮官は指揮官ですね」
「なんだよ、まるで俺がズルしたみたいじゃん」
「指揮官は存在自体がズルイです」
なんかボロクソにdisられてる気はするが、それは置いといて次なるアスレチックへと進む。今度はハウステンボスなんかにある巨大な浮きに色んなアスレチックがあるタイプで、こちらもしっかり人外モードで突破する。
「指揮官、こっち来て」
「なんだ?」
アスレチックを突破して、南国の秘密基地みたいな場所に出るとラフィーが腕を引っ張ってある場所に連れてきた。
「ここに座って」
「お、おう」
そう言って座らされたのは建物の前であり、特に何もなかった。だが長嶺は気付いていた。壁の奥や近くの塔に、何かを企んだ者達が布陣しているのを。しかもどうやらその企みは、攻撃系の企みのようだ。
そんな事を考えていると、上から轟音が響いてきた。
「あー、これはもしかして」
バッシャーーーーン!!
屋根の上にあった巨大バケツがひっくり返り、大量の水が長嶺の頭に降り注ぐ。
「撃てー!」
間髪入れずに周囲から大量の水と泡が飛んでくる。どうやら建物中に、水鉄砲やら放水銃やらバブルガンを持って潜んでたらしい。
「冷てッ!」
「撃て撃て!指揮官を倒せ!」
「提督に日頃恨みは無いけど、楽しそうだから当てます!」
まあ別に死ぬ訳でもないので、長嶺も楽しみ出す。避けてみたり、投げられた水風船をキャッチして投げ返したり、霞桜の隊員に頼んで水鉄砲を投げて貰い反撃したりと、何とも平和な戦争をしていた。
暫くすると飽き始めたのか攻撃は終わり、長嶺も波のプールでヤベンジャーズの相手をしたり、流水プールで流されて遊んでみたりて楽しんでいた。
19:00 パーティルーム
「わーお。こんな準備までしてたのか」
いつかの歓迎パーティーを開いた巨大ホールの壇上には、態々『㊗︎長嶺雷蔵生誕十八周年』と書いた看板が掲げられている。
しかも周りの壁にも色々飾り付けが施されていて、彼女達の本気度も伝わってくる。
「驚いたかしら?」
「あぁ。にしても、お前にこんな才能があったなんてな。今度、広報の仕事でもしてみるか?」
オイゲンの意外な才能に驚いたが、彼女の才能は何もパーティーの運営ではない。ここまでの事が出来たのは、一重に長嶺雷蔵という男への愛情である。
このパーティー自体、発案自体は彼女だが運営は霞桜が担当だし、準備は艦娘、KAN-SENだし、業務の肩代わりは他鎮守府だし、余興はパイロット達の協力があってこそなしえた事だ。その全てを繋げたのは交渉力でも、資金力でも、まして彼女の美貌や知恵ではない。皆あくまでも、「長嶺雷蔵の為ならば」と協力しただけ。言ってしまえば、長嶺の人徳あってこその物なのだ。
「いやよ。面倒事はごめん被るわ」
「そうか。まあ、お前らしいか」
そんな話をしていると、部屋の明かりが段々と暗くなり始めた。その代わりに壁や床がカラフルに光っており、とても幻想的な空間が広がっていた。
そんな光景に目を奪われていると、奥から蝋燭を立てた四角いケーキがカートに乗って運ばれてくる。
「「「「「「happy birth day to you. happy birth day to you. happy birth day dear 指揮官(提督・提督さん・司令・司令官・司令官さん). happy birth day to you.」」」」」」
「フゥーーーーー!!!!しゃっあ!一発で決まった!」
蝋燭の火を消すと、拍手と「おめでとう」と言う言葉が聞こえて来る。
そのままパーティーが始まり、並べられた料理を思い思いに食べ出す。
パーティーはつつがなく続き、二、三時間程経つと窓の外から轟音が響いた。
「さぁ、提督に俺達もいるって事を教えてやるぞ!」
『『『『ウィルコ!!!!』』』』
最近本編でも出番のないメビウス隊と他の航空隊が、上空を曲芸飛行を始めた。フレアも使った豪華なモノで、最高のプレゼントと言えるだろう。
更にレリックが花火を点火させ、一時間程見事な花火が上がっていた。後に長嶺は、最高の誕生日だったと語ったと言う。