最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第四話真珠湾攻撃

艦娘の反乱から二週間、鎮守府は平静を取り戻しつつあった。しかし一つだけ、大きくこれまでと変わった事がある。それは秘書艦が消え、長嶺が食堂に来なくなったのである。というのも「今回の一件で我々は恐怖の対象となっているだろう。その為、我々は公の場に出来るだけ姿を見せないようにしよう」と霞桜の幹部会議で決まったからである。

そんなある日、『艦隊の頭脳』と形容される霧島と任務娘でも活躍中の大淀、それから2次創作では大体嵐の目である明石の三隻が集まって居た。

「明石さん、できましたか?」

 

「勿論ですとも霧島さん。このスーパーパソコンなら、例え防衛省の機密ファイルでも閲覧可能です」

 

「これで提督の秘密が分かりますね」

 

この3隻の計画とは、防衛省の機密ファイルにあるだろう長嶺のファイルを閲覧し、長嶺の強さや何とも言えない雰囲気の源を探る為である。そんな訳で極秘に明石がスパコンを組み、大淀と霧島がハッキングしてデータを探し出すという作戦が行われようとしていた。

 

「それじゃ、始めますよ!」

 

とんでもない速度で霧島がキーボードを打ち込んでいく。高速戦艦である事は絶対関係ないだろうが、どこぞのオタクロス張りの速さである。セキュリティをどんどん突破していきスピード強盗でデータを盗み出し、コピーして戻す。そのまま撤収し、大淀が操作して逃げる途中にダミーの侵入経路と形跡を数千個配置して、絶対に捜査が及ばない様に細工する。逃亡に成功した後、スパコンのネット接続を物理的にも遮断してデータを別のPCに入れる。因みに所要時間、驚異の3分である。

 

「データの取り込み完了です!表示しますよ」

 

画面には長嶺のデータが映し出される。唯、余りに現実離れしすぎていて信じるのが不可能である。具体的にはこんな感じ。

 

 

氏名 長嶺雷蔵

年齢 16歳

生年月日 2015年8月8日

経歴

令和2年 米ハーバード大学に通う為渡米。生物学、医学、工学を習い全ての過程を一年で歴代最優秀の首席にて卒業。その後同大学院で更に専門的に習い、半年で各部門の博士号を授与される。

 

令和4年 海軍兵学校に入学。すぐに頭角を表し、飛び級を繰り返す。

 

令和5年 海軍兵学校少年校を首席にて卒業し、陸上自衛隊諜報学校に入校する。

 

令和6年 陸上自衛隊諜報学校を歴代最優秀の首席にて卒業。同時に大尉に昇進し、CIAに出向する。

 

令和7年 出向より帰還し、新設された特殊部隊「ーーーー」の隊長に着任。

 

令和8年 ーーーーーー作戦に参加、ーーを率いて成功に導く。

 

令和9年 ーーーーーー作戦に参加、作戦は成功するも部隊が全滅し一度消息を絶つ。

 

同年 奇跡的に生還するも、瀕死の重傷を追う。第603号計画の被験者に立候補し、この計画で一命を取り留める。

 

令和10年 驚異的な回復力で軍務に復帰し、異例の六階級特進で大将になる。同時に特殊海上機動歩兵軍団「霞桜」総隊長に着任する。

 

令和11年 艦娘司令官専修過程に入り、一か月で歴代最優秀の首席で卒業。

 

令和12年 江ノ島鎮守府司令長官として着任

 

資格、き章

・生物学博士号

・医学博士号

・工学博士号

・漢検一級

・英検一級

・秘書検一級

・レンジャーき章

・空挺き章

・潜水員き章

・スキーき章

・格闘き章

etc

 

 

多分、過去一のチートっぷりである。その為艦娘らも( ゚д゚)である。最早、凄すぎてコメントも出てこない。三分程放心状態となり、一足先に現実に戻ってきた大淀が「ーーーー」と「第603号計画」について調べてみる。

 

「何これ.......」

 

全て「天皇陛下、防衛大臣、連合艦隊司令長官、本人以外のアクセスは一切不可能です」と表示され、それより先に行けないのである。明石と霧島が色々弄ってみるも、どうやらデータベースに直接アクセスしないといけないらしく、全く進まない。そうこうしていると、長嶺が銃を持って部屋に入ってくる。

 

「お前ら、動くな」

 

「て、提督」

 

「何故、ここにいるんですか?」

 

「私達、何もしててないでです」

 

「いや明らかに霧島以外動揺してるよな?明石に至っては「て」と「で」が一文字多いし」

 

「あ、あの。一体、どうしたのですか?」

 

大淀が恐る恐る聞く。

 

「ここから防衛省のデータベースに不正アクセスした上、俺のデータをコピーして掻っ攫ったアホ共が居ると聞いて、入ったらお前らが居た。どういう事かな?」

 

顔は笑っているが、目は笑ってない。ついでに背中から阿修羅像が見え隠れしており、結構怒ってらっしゃるのがわかる。この間の一件もあり、三人の顔が真っ青通り越して白くなってる。

 

「ハァ、大方俺の秘密でも調べようとしたんだろ?言ってくれれば、経歴書くらい見せてやったものを」

 

三人が震えながら、何度も頷く。

 

「今回の一件は揉み消すかないように。やったら俺の仕事が増えて面倒なんだから、マジで頼むぞ。で、俺のデータは見たのか?」

 

「「「はい.......」」」

 

「見せてみろ」

 

さっきまで閲覧していたデータを確認する。「ーーー」、ーーーーーー作戦、第603号計画の順にクリックし、「閲覧できません」の表示が出ているのを確認した後、データを消去する。

 

「提督、第603号計画とは何なのですか?」

 

霧島が長嶺に聞く。それに長嶺は、土蜘蛛HGを向けて答える。

 

「それを許可なく知ろうとするのは、コレを意味する。まあ、知らない方が幸せってヤツだ。強いて言うなら、俺の真の力だな」

 

長嶺の敵を見つけた時の喜んでいる様な顔に、三人は何かしらの先頭に役立つ力とわかった。

この翌日、作戦に参加する為の航空機が続々と集結しつつあった。陣容は以下の通りである。

海軍

・零式艦上戦闘機二一型 115機

・雷電二一型 38機

・九六式陸上攻撃機 36機

・一式陸上攻撃機二二型 50機

・十三試陸上攻撃機深山 12機

・九七式飛行艇 15機

・二式飛行艇 21機

 

陸軍

・一式戦闘機隼三型 48機

・二式複座戦闘機屠龍 21機

・二式戦闘機翔一型乙 37機

 

航空自衛隊

・E767早期警戒管制機 1機

・E2C早期警戒機 5機

・KC767 8機

・F15J/DJイーグル 38機

・F2Aヴァイパーゼロ 26機

・F35ライトニングII 28機

・F3心神 80機

・F22ラプター 8機

・C2輸送機 30機

 

海上自衛隊

・US2 38機

 

以上、総数617機の航空隊に加えて、空母艦載機も含まれる。という事は合計だと1000機いかない位の大勢力の航空隊となり、国がどれだけハワイを奪還したいかが分かる。因みに空母艦載機以外は、全て空中給油装置が搭載されている。

 

 

「江ノ島鎮守府司令官に対し、敬礼!!」

 

ザッ!

 

今回の航空隊の総指揮を取る、航空自衛隊の須永空将補が命令を出し、それに従ってパイロットと妖精(MMDモデル程度の大きさ。まあ、成人女性の身長の三分の二〜四分の三くらい?)が綺麗な敬礼をする。それに対して、長嶺も返礼する。

 

「諸君、本作戦の為、遠いところだと北は千歳、南は那覇から遠路遥々よく来てくれた。今回、我々が行う反攻作戦は文字通り国名が掛かっている。作戦の失敗は国の滅亡に直結しているが、逆に言えば成功は平和に一歩近づく。この作戦が成功すれば、アメリカとの海路が限定的だが復活し、太平洋南部での作戦時に中継地点や前線基地としても機能する。

とまあ、こういうのは諸君も耳にタコができるレベルで聞いているだろう。だから、この話はもう終わりだ。というか、俺こういうの苦手なんだよなぁ。まあ、堅苦しいのはここまでにして飯を食おう。飯!」

 

てっきり長々と作戦の重要性について語られたり、最悪自慢話あたりまで聞かされる覚悟だったが、まさかの話は一分足らずで終わり「飯食おう」という、予想の遥か斜め上を行き動揺する。

 

「どうした。俺が作ったカレーは、自分で言うのもアレだが美味いぞ」

 

「司令官殿、普通こういう時は作戦の重要性について説明するのでは?」

 

須永空将補が聞く。普通に考えてこういう場では長ったらしい説明や訓示を聞かされるのがお決まりルートであり、それをしない事に須永も驚きを隠せていない。

 

「まあ普通はそうだろうね。でも俺は、そういうの無駄だと思うからな。だって今いる中で「この作戦のやる意味が分かりません」って人いる?居たら手を上げて」

 

誰も手を上げない。

 

「みんな理解してるのに、その上から同じ内容言われるって無駄を通り越して、飽きてくるだろ?それなら話は訓示の時まで取っておいて、コミュニケーションとか士気を高める為に使うとかした方が、時間も有効に使えるくない?」

 

過去にも「兵士ファースト」な考えの将軍や上官はいたが、それはほんの一握りしか居なかった。そんな訳で唐突に始まった昼食なのだが、

 

「何これうんま!!」

「うぉぉ、辛いのが後から来る〜!」

「ムグッ、ググググ」

「アホ!急いで食い過ぎだ!!誰か、水持ってきて!コイツが三途の河渡る前に!!」

 

なんか約一名死にかけているが、兵士達からは大好評であった。味は兵士曰く「最初は甘くてコクのある味だが、後から甘さを突き破って辛さが突撃してくる。でも何故かその辛さがクセになる」らしい。

この翌日、講堂に作戦参加要員全員が集められ作戦が説明された。因みに作戦名を決める際、東川が「ハワイ大爆発、ぶっちぎりバトルフリートーズ」にしようとしていた。無論、長嶺&側近数名で全力阻止したのは言うまでもない。

 

 

「諸君、今回集まって貰ったのは他でもない。今回の反攻作戦の内容が決行した為だ。作戦はまず、航空自衛隊による強襲攻撃から行ってもらう。目標は敵航空機と飛行場施設、余裕があれば対空砲陣地も破壊していい。粗方の破壊が完了したら、陸海軍の連合航空隊による爆撃だ。これは無差別爆撃でいいから、目につく物全て破壊しろ。石油タンク、ドック、倉庫、対空・砲台陣地、兵舎何でもだ。爆撃が完了次第、速やかに離脱。艦娘達にバトンタッチだ。

艦娘達は空母による艦船攻撃の後、観測射撃による戦艦と重巡の一斉砲撃でボスの泊地棲姫を破壊する。軽巡と駆逐、霞桜は万が一撃ち漏らした敵の掃討や艦隊へ攻撃してくる不届き者を血祭りにあげる事だ。以上、何か質問はあるか?」

 

誰一人として手を上げない

 

「ないようだな。では解散とする」

 

この日から作戦決行日まで、作戦を再現した訓練が行われた。具体的には航空隊と艦隊、それから霞桜の三部隊での大演習である。そして作戦決行日の前日の夜、長嶺は一人埠頭に佇んでいた。

 

「やはり、満月の夜は嫌いだ」

 

普通、満月を見たら「綺麗」と感じるのが大多数だろう。しかし長嶺に取っては、自分のトラウマの一つなのである。

 

「提督?」

 

「大和か。どうした?」

 

「眠れないのですか?」

 

「そのセリフ、そのまま返す」

 

「私は月が綺麗だと思いまして、少し見に来たんです」

 

大和はそう言いながら月を見上げる。その姿は男女関係なく惚れる事間違いなしの、とても美しい姿であった。

 

「そうか」

 

「提督も答えないと不公平ですよ?」

 

「俺は眠れない、いや眠らないだけだ。満月の夜は、睡眠薬を飲んで横になっても、何をしても眠れないんだ。眠れる事もあるが、必ず悪夢を見る。それがわかっているから、敢えて寝ない方が楽なんだ」

 

「提督は昔、何かあったんですか?」

 

大和は意を決して聞いてみた。この手の事は聞かない方が良いのかもしれないが、この時の大和は何故か無性に聞きたくなったのだ。

 

「昔の事だ。俺が記憶してる中でも最大の決戦があって、勝てた物の大きな代償を払わされた。それが満月の夜で、それ以来満月が嫌いになった」

 

「あまり深くは聞きません」

 

「それが一番だ。お互いにな」

 

少し妙な空気になったので、大和はこれまで、というか最近気になっていた事をこの機会に聞く事にした。

 

「提督、貴方は何故そこまでして私達に尽くすのですか?」

 

「いきなりどうした?」

 

「私達は貴方に砲を向け、ダメージはなかったとは言え、操られていたとは言え、確実に死ぬような拷問を繰り返しました。それなのに貴方は許す。一体、何故なのですか?」

 

「そんなの、楽しいからに決まっているだろ?」

 

「は?」

 

「俺はな、戦闘が大好きで仕方ないんだ。人を殺すのはいつまで経っても楽しめることは無いが、弱者や強者が以下にして俺を倒すか試行錯誤を繰り返し、その中で生まれた究極をぶつけてくる。こんなに楽しくておもしろい事はないだろ?」

 

この時の長嶺の顔は、いつもの優しそうな顔でもなく、戦闘時の顔でもない、悪魔が獲物を見つけてほくそ笑む様な顔をしていた。流石の大和も少し恐怖する。

 

「それに俺は死を恐れていない。この国の未来や国民の為なら、どんな拷問にも耐えてやるし、喜んで命くらい差し出してやる」

 

「やはり貴方は無茶苦茶ですね」

 

大和が少し笑って返す。恐ろしい人だが、一方で少し安心した様な嬉しい様な気持ちだった。

 

「無茶苦茶上等だ。さあ、寝ろ寝ろ!明日に響くぞ!!」

 

「はい!お休みなさい」

 

この翌日、艦娘達はUS2に分乗して一路ハワイ真珠湾へ進撃した。この翌日、霞桜がC2で出撃し数時間後には基地航空隊も離陸。ここに初の大規模反攻作戦である「武甕槌作戦」は始動した。

艦隊は真珠湾より500kmの地点に前線基地を構築し、簡単な本部と物資集積用のフロートを設置する。攻撃準備が粗方完了した頃、霞桜を乗せたC2が飛来する。

 

「お前達、行くぞ!!」

 

長嶺を先頭にグリム率いる本部中隊、別の機体からは第一から第三までの各中隊が降下する。更に別の機体からは水上バイクと水上装甲艇が落とされていく。しかし、ここで艦娘達は気付いた。兵器類含め、誰もパラシュートを装備していないのである。基本的に空挺降下する時は、パラシュートなりウィングスーツを着用するのだが、誰一人して何も着けていない。

 

「イヤーーーーーーー!?!?」

「おいおい、マジかよ」

「戻れー!!」

 

しかし当人達はドンドン加速し、真っ逆様に降下して来る。そして体を空中で回転させて、立つ様に姿勢を安定させた瞬間、青白い炎が隊員の足元から上がる。

霞桜は敵地への上空からの潜入をより迅速にする為、戦闘服にスラスターが付いており、パラシュート無しでの空挺降下を可能としている。ボートにも同じ物を搭載しており、迅速かつパラシュートより少ない衝撃で部隊の展開が可能となっている。

 

「着水成功。各中隊長は着水次第、中隊の人員掌握。点呼の後、バイクと装甲艇に分乗。索敵陣形を構築せよ」

 

『『『『了解』』』』

 

「大和、武蔵、状況報告」

 

「はい、既に前線基地の設営は完了。明石さんが移動式工廠を、間宮さんと伊良湖さんが糧食の配給してくれています」

 

「軽空母が索敵機を発艦させている。今の所敵影は捕捉していないそうだから、このまま予定航路を真珠湾ギリギリまで偵察させる」

 

「わかった。ではこれより、侵攻を開始する。全艦、前へ!!」

 

艦娘と霞桜の連合軍が動き出す。陣形は第三警戒航行序列に近い。戦艦と空母を中心に配置し、その外縁に重巡と軽空母を配置。更にそれを取り囲むように駆逐艦と軽巡を配置し、そこから翼を広げる様に鶴翼の陣を霞桜が取っている。因みに長嶺は一番前で艦隊を引っ張っている。

二時間ほど進んだ頃、右翼と左翼に偵察に出ている隊員から連絡が入る。

 

 

『こちら第二バイク隊れハ級elite5、チ級flagship1の艦隊を捕捉‼︎本体に向かっています!!現在位置、艦隊より南東125!!!』  

 

『こちら第三バイク隊。こちらも第二と同じ編成の艦隊を発見した。方位は艦隊より、北西312。至急、迎撃されたし!』

 

 

「艦隊増速!!対水上戦闘用意!艦隊は霞桜からの砲撃指示に合わせて攻撃せよ。霞桜は陣形を鶴翼から袋鼠に変更し、対魚雷戦闘に備え!!」

 

長嶺の指示に霞桜から動き出す。陣形が艦隊を包囲する様に変わり、外縁部に隊員が配置される。これが袋鼠という陣形であり、本来は包囲殲滅の際に使われる。しかし今回は魚雷を破壊する為に敢えて、この陣形を使っている。

 

「戦闘用意!装甲艇は目標の方角に指向せよ。擲弾兵は速やかに展開し、迎撃準備を整えい!!」

「急げ急げ!敵は待ってくれんぞ!!」

「装填完了、いつでもいける」

 

艦娘達も少し遅れて動き出し、戦闘準備を整える。長嶺も八咫烏から大蛇を落として貰い、新作の兵器を装填する。

程なくして、深海棲艦から魚雷が発射される。雷跡を確認するや否や、霞桜が行動を開始する。

 

「グレネード斉射!!!!」

 

グレネードが放物線を描きながら、海面に発射される。今打ち出されているのは普通のグレネードではなく、魚雷を破壊する為に新開発された特殊グレネード、正式名称「対魚雷戦用特殊擲弾」である。このグレネードは海面に当たると、中から超小型のマイクロ徹甲魚雷とマイクロ爆風魚雷を放出する。

鉄鋼魚雷は正面から当たれば信管を作動させて爆破、それ以外の方角だと弾頭と推進部分の分断や水没させて機能停止させる。爆風魚雷は水中で爆発して破壊、もしくは錐揉みにして明後日の方向に飛ばすという物である。

このグレネードが発射されるとどうなるか。答えは簡単、

 

「敵魚雷破壊!」

 

こうなる。

 

『魚雷破壊成功!』

 

「観測射撃開始」

 

長嶺が次なる号令を掛け、隊員がそれに従う。

 

「方位319、相対速度6ノット、上下角27、砲撃されたし!」

 

指示に合わせ近くの艦娘が動き出し、言われた場所に砲弾をバンバン撃ち込む。さらに隊員も狙撃で目や砲身に弾を入れて、敵の攻撃力を削いでいく。

 

『敵影消失!!』

 

「よーし、艦隊進路そのまま。陣形戻せ!!」

 

敵の攻撃を退け少し安堵していたのだが、この後偵察中の八咫烏から無間地獄への片道切符が舞い込んでくる。

 

 

『我が主、大変な事になった。進路上に敵艦、編成は戦艦棲姫1、レ級5だ..............』

 

「一人連合艦隊が5隻も来やがったか」

 

レ級、いわゆる一人連合艦隊は深海棲艦の中でもチート級化け物艦である。通常のカタカナ+級の深海棲艦界では、アーカードとも言える位の艦であり、スペックが通常の状態でボスと同程度のステータスである。普通戦艦は、敵味方問わず砲撃と一部は航空攻撃しか行わない。所がどっこい、コイツは砲撃に加えて空母並みの航空攻撃と島風並の雷撃を行い、それ以外のステータスもボスと同程度とかいうのである。この事から分かる通り、今の艦隊が束になっても勝てるか微妙な艦隊なのである。

 

『幸い勘付かれてはいない様だ。仕掛けるなら、今しかない』

 

「わかった。大和!」

 

「はい」

 

大和を呼びつけて、今後の指示を飛ばす。この中で指揮に長けている艦娘は、大和しかいないからである。

 

「よく聞け、進路上に戦艦棲姫とレ級5隻が現れた」

 

「!?」

 

「知っての通り、この艦隊で攻め込んでも勝てるかどうか微妙な艦であり、確実に半数以上は沈む事になる。だから俺がアイツを深海に返品して来るから、お前に艦隊の指揮を任せたい」

 

「提督お待ちください!死にますよ!?」

 

他の艦娘達も口々に「危険だ!」とか「考え直してください!!」とか「自殺するんですか!?私達を遺して!」とか言っている。しかし当の長嶺はと言うと

 

「ハハハハハハハハ!!」

 

笑っていた。これには艦娘達も「完全に頭か精神が壊れた」と思った。

 

「お前達、まさか俺が死ぬと思っているのか?ナイナイ。ある訳ナイ。あんな化け物共にやられる程、俺は弱くないぞ」

 

「提督よ、流石にレ級5隻と戦艦棲姫が相手は提督でも無理があるぞ!」

 

「お前は確かに強いが、幾らなんでも無理があるだろ?」

 

武蔵と長門も止めに入る。

 

「お前ら、何か勘違いしてないか?俺は例の事件でお前らを倒した時、全力の1割も出してないぞ?」

 

本来艦娘は人間に倒される事なんて、まずあり得ない。余程に強い人間でも、駆逐艦ならまだしも戦艦や空母はまず勝負すら成立しない。そんなレベルなのに、長嶺は全員を討ち倒しそれで尚「全力出してない」と発言したのだから、全員が困惑の表情を浮かべる。

 

「グリム、お前なら分かるだろ?」

 

『えぇ。確かに前回は本気なんて出してませんでしたね。まあ殲滅ではなく、非殺傷の制圧でしたからある意味難しかったですけど。

というか総隊長殿が殲滅目的で前回していたのなら、グーで喉貫通させて殺したりとか、背骨を抜いてそれを相手に突き刺したりとか、人外すぎる攻撃で鎮守府が着任当時より酷い物に早変わりしてますよ』

 

サラッと恐ろしいワードが大量に出てきた事で、一部艦娘の脳がフリーズする。唯、全員が思ったのは「多分、大丈夫」という結論だった。

 

「まあ、こう言うわけだ。それじゃ、少し任せるぞ!」

 

長嶺は八咫烏と犬神を連れて、目的の海域に向かう。その間に土蜘蛛だけだった装備を幻月と閻魔を柄を下、鞘の先端が空に向く様に肩に装備し、手には手持ちの中で最高の攻撃力を誇る龍雷がある。

 

 

「お、アレだな?」

 

龍雷RGを構えて、狙いを定める。

 

「チャージ開始‼︎」

 

銃身が六つに分裂して、加速器が姿を表す。分裂した銃身は、小さな稲妻があちこちから上がって帯電しているのが分かる。

 

「電圧最大、安定値を突破」

 

光が強くなり、稲妻の量もドンドン増える。

 

「エネルギー充填100%!発射!!」

 

ドゥン ドゥン

 

2発の弾丸が低い発射音の後、複従陣の敵艦隊に襲いかかる。レ級三隻が連なっている場所に正確に飛び、レ級の頭と胸の中心を正確に三人抜きで射抜く。声を上げることも無く、何が起きたか理解する間も無く絶命し轟沈に追いやる。

 

「何ガ起キタ?」

 

戦艦棲姫がレ級に問いかける。

 

「高速ノ砲弾デ、頭ト胸ヲ撃タレタミタイ。何処カハワカラナイケド、楽シクナルヨ?」

 

「ソウカ。デハ航空機デ炙リ出ソウ」

 

「ハーイ」

 

2隻のレ級が艦載機を上げる。その間に長嶺は龍雷から、鎌鼬と竜宮を両手に装備する。

程なくして数百機の艦載機が襲いかかってくるが、その全てを避けて踏み台にして艦隊へ肉薄する。

 

「嘘ダロ。アンナ動キハ想定シテイナイ」

 

「凄イ凄イ!!」

 

「往生しろよ?」

 

ズドドドドドドドドドド

 

竜宮ARの弾幕にレ級一隻が蜂の巣にされる。

 

「せい!」

 

そして背中に手を突っ込み、殺したレ級の背骨を抜く。

 

「オ前、何シテル?」

 

「こうするんだ‼︎」

 

抜いた背骨を戦艦棲姫の艤装に突き立てる。今度は二刀の太刀を、ナイフのように構えて技を繰り出す。

 

「行くぞ。奥義、彗星‼︎」

 

知覚不能な速度で刀を動かし、眼前の敵の肉を削ぎ落とし続ける。艤装で防いでくるが、それもお構い無しにぶった斬る。最後は首を落として、フィニッシュである。

血飛沫が首から壊れた水道のように舞い上がり、付近の海を真っ青に染める。

 

「さて、最後はお前だ。レ級ちゃん?」

 

「アハハ、強イネ。人間ノ癖ニ」

 

「そりゃどうも。それじゃ、勝負と行こうぜ!!」

 

長嶺は刀を、レ級は艤装を構える。数刻の後、同時に動き出す。砲弾が撃たれるも、知覚不能な速度で回り込み叩き斬る。演出の割りに盛り上がる事なく、呆気なく終わる。

 

「人間だからと嘗めてる時点で、お前はもう負けているんだ」

 

そう言い残し、犬神を呼びつけて艦隊に合流する為動き出す。

一方その頃、作戦は順調に進み泊地内の対空火器の掃討が行われていた。

 

『こちらゴーストアイ。須永空将補だ。最初の奇襲は確認されている対空火器全ての破壊し、飛行場についても滑走路と一部格納庫を破壊した。後は爆撃隊に譲るぞ』

 

『了解』

 

 

「一航戦、二航戦、五航戦に命じます!全艦載機発艦してください!!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

赤城の号令に空母艦娘達が呼応して、艦載機を続々と発艦させる。発艦が完了した頃には、爆撃隊による縦断爆撃が行われていた。此方も戦果は上々であり、見事に港湾施設等は真っ平らになっていた。

本来であれば、現代戦において縦断爆撃なんてする事はない。現地住民への配慮や軍へのイメージの為であったり、そもそもの戦争形態が違う事も理由に上がる。現代戦は二つに大別でき、ピンポイント爆撃等での一撃で基地を葬り去る物と、ゲリラ戦や不正規戦といった物である。これらの特徴として、周りの無関係な建物へのダメージが少ないと言うのがある。まあロケット弾やら銃弾の跡やらは残るが、爆撃後の悲惨な状況よりかはマシである。

しかし今回ばかりは、話が変わってくる。というのも深海棲艦に占領された結果、バカンス先で有名な我々のイメージの中にある綺麗な場所ではなく「どっかの魔王の国の城下町ですか?」と言いたくなる程の禍々しい建物や、深海棲艦しか使えない機材しかない施設で埋まっている為、爆撃して全部吹っ飛ばした方が整地する手間が省けるのである。そんな訳で完全に港と建築物を破壊し、ついでに適当に機銃掃射して帰投する頃、艦載機隊も現着する。

一応艦船についてる対空砲から弾幕を貼ってくるが、勇猛果敢で一騎当千の熟練パイロットの前には無意味であり止まっている艦船の殆どは火だるまになるか沈没している。大半を深海に返品した時、遂に泊地棲姫が動き出すのだが、

 

「不味い!親玉が動き出したぞ!!艦隊に連絡して、支援砲撃してもらうぞ!!」

 

「打電します!!!!」

 

赤城の攻撃隊の一機が母艦である赤城に連絡し、それを戦艦部隊に伝える。更にタイミングが良いことに長嶺も合流した為、雷神で砲撃に参加する。

 

「全艦撃ち方初め!!」

 

大小様々な砲弾が発射され、泊地内に撃ち込まれる。運が良いことに大半が泊地棲姫の動力部にあたり、泊地棲姫からは攻撃しづらく、逆にこっちは攻撃しやすい位置で止まる。それを見逃さず、長嶺が指示を出す。

 

「全水雷戦隊、霞桜は泊地棲姫へ攻撃を仕掛けよ!」

 

島の影を利用しながら近づき、最大射程から酸素魚雷と砲弾をぶち当てる。霞桜は更に接近して、肉薄距離から対深海棲艦弾をありったけ浴びせる。最後は戦艦と重巡からの砲撃で跡形も無く消し飛び、見事撃破に成功する。

 

「現在時刻を持って、泊地棲姫の撃沈を確認‼︎作戦は成功、我々の勝利だ!!!!」

 

全員が歓喜の声を上げる。しかし未だ知る由がない。この成功が、後に大変な道のりへの片道切符に切り替わる事を。

 

 

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