最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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みなさん、新年あけましておめでとうございます。今年もこのぶっ飛んだ『最強提督物語〜海を駆ける戦士達』と『最強国家 大日本皇国召喚』共々、よろしくお願いします。
新年早々、血みどろですのでご注意ください。


第六十話血みどろの真実

舞鶴鎮守府襲撃より数週間後 総武高校 2ーF

「そろそろ、学校も終わるな」

 

「それで、私はどうするのかしら?」

 

「お前は何かあった時に備えて、俺の後方から周囲を監視してくれ。何かあれば知らせろ」

 

もう間も無く、6限が終わる。そうすれば掃除して、そのまま放課だ。相模の身柄は放課後、彼女が家へと1人で帰る途中で決行する。既に他の拠点については、霞桜の各大隊が分担して同時に襲撃をかけている。恐らく間も無く、終わる頃だろう。

 

「それで、ここの公式についてだが.......。あーっと、もう時間が来るな。ここは次回にやるか」

 

時計は6限終了の3分前を指している。少し早く終わった為、生徒達も伸びをしたり道具を片付けたりしている。

だがそんな日常をぶち壊す者達が現れた。突如、スーツを着た男達が教室に入ってきたのだ。勿論、教師や事務員ではない。彼らは先生の静止を無視して、相模の席の前に立つ。

 

「相模南、だな?」

 

「は、はい。そうですけど.......」

 

「我々は防衛省の者だ。君を特別情報漏洩罪および国家反逆罪の容疑で、身柄を拘束させて貰う」

 

(はぁ!?!?)

 

どういうわけか、防衛省の人間を名乗る男達がターゲットの相模を連れ去ろうとしたのだ。勿論、こんな話は東川からは聞いてないし、こんな作戦ではない。作戦変更の話も出てない。

 

「(ちょっと、どういうこと?)」

 

「(全く分からん。しかも今動けば、色々不味い。取り敢えず様子を)」

 

様子を見るつもりが、相模の頭が消し飛んだ。恐らく対物ライフルで狙撃されたのだろう。

 

(どうなってんだ!?!?!?)

 

流石の長嶺も、怒涛の勢いで起こる謎の事態に困惑しまくりである。だが取り敢えず確かなのは、恐らく別の勢力同士が相模を、いやドッペルゲンガーの身柄を巡って争っているのだろう。実際、相模を連行していた自称防衛省の人間も心底驚いている様子だ。

しかも今度は扉を蹴破って完全武装の、所属不明の兵士が乱入して自称防衛省の人間を撃ち殺し、こちらに銃を突き付けて「全員動くな!!」と叫ぶ。もう生徒達もパニクっているし、長嶺としても脳内は大混乱である。

 

(取り敢えず状況整理だ。相模ことドッペルゲンガーは自称防衛省の男5人連行されそうになったけど、対物ライフルで脳天吹っ飛ばされて、今度は謎のテロリスト軍団が自称防衛省5人を射殺。恐らくこの集団とスナイパーは、味方同士だな。狙撃された位置に居ても撃たれてない。

だがいずれにしろ、何がどうなってるんだ?全く分からんぞ。取り敢えず片方は、ドッペルゲンガーの雇い主だと仮定しても、もう片方が分からん。仮に防衛省もテロリストも味方だとしても、何故このタイミングで殺す?別に特段失敗もしてないだろうが)

 

「(これも作戦の内かしら?)」

 

「(真面目に何が起きてるか分からん)」

 

この状況下であれば、警察が来るまで待つのが得策だろう。だがテロリスト達は「お前達にはこの後死んで貰う。最後の空気を吸っておくんだなぁ!」とか言っている。お陰で全員が震え上がり、泣き出す者までいる始末。

立ち上がって反抗しようという奴とか、啖呵切る奴がいなくて良かった。長嶺としてはそのまま全員、大人しくして貰っていたい。

 

(護衛は2人。気配から察するに、各教室に2人ずつ、廊下には等間隔に10人か。各学年6クラス、18×2で36人。さらに廊下の人数を足して66人。さらに校舎の索敵にあたってる者も相当数いるから、大体の規模は2個小隊100人って所か)

 

普段の長嶺なら、二個小隊位余裕で殲滅できる。しかし今回は生徒という、ハンディキャップを背負っている以上は迂闊に動けない。別に死んでも構わないが、かと言って全員死んで欲しいとも思わない。

だがまあ、正直最近あまり戦っていない。そろそろ暴れたいのだ。なら、もうやる事は決まっている。

 

「(仕掛ける。援護頼む)」

 

「(わかったわ)」

 

まず相手の武器を観察する。武装はAKS74UにサイドアームとしてMP443を装備している。銃を見る辺り、恐らく奴等はRPK74あたりも持っているだろう。取り敢えず向こうのナイフを奪えば、簡単に倒せる。

テロリストの位置も楽で良い。1人が一番前、黒板の辺りを行ったり来たりして、もう1人が各列を回る。実に襲撃しやすい。

 

(来た。腰にマチェット、胸にナイフ。簡単だ)

 

テロリストの1人が長嶺の隣に来た瞬間、素早くかつ全く音を出さずに立ち上がり、胸のナイフを抜いて、首に突き刺す。

 

「ッ!?」

 

(まずは1人)

 

静かに死体を床に置き、そのまま足音も気配もなく静かに前のテロリストへと近付く。生徒達は気が付いているが、テロリストは気づく素振りもない。

 

「おい」

 

「ん?」

 

声を掛けて振り向いた瞬間、口から喉に向けてマチェットを勢いよく突き立てる。余りの威力に貫通して、黒板にマチェットが突き刺さって昆虫標本の様に死体が黒板に張り付いた。

 

「クリア」

 

ワンテンポ置いて、全員が叫んだ。やっぱり、いきなり目の前でテロリストとは言えど、人が死ねば叫ぶらしい。この叫びを聞いて廊下のテロリストが3人ばかし走って来た。

 

「どうした!?!?って、な.......」

 

1人が黒板に貼り付いてる死体を見つけた。抵抗があるはずないと思っていた場所で、まさか仲間がこんな死に方をするなんて考えもしなかったのだろう。だが実戦を経験しているのか、すぐに長嶺に武器を向ける。

 

「貴様が、やったのか!!」

 

「そうだとも。悪いが、俺は用事があるんでね。邪魔者は排除しないと」

 

「貴様ッ!!!!」

 

AKS74Uを長嶺に向かって乱射してくる。だが今の長嶺は、制服姿ではあるがこれは仮の姿。単なる立体映像だ。なのでマガジン1つ分、全部撃ち終わっても普通に立っている。

 

「そんな豆鉄砲が効くかよ」

 

「何者だ貴様!」

 

「それで答える馬鹿は居ねーよ。だが、こうすりゃ少しは分かるだろう?」

 

長嶺が指をパチンと鳴らすと、立体映像で映していた制服が消えていき、本来装備しているいつもの強化外骨格の姿が現れる。

その異様な装甲服、そして太腿の部分にある大口径拳銃を見てテロリスト達は気付いた。

 

「まさか、霞桜総隊長!?」

 

「なっ!?まさか、あの二代目国堕とし!!」

 

「なんでアイツがここにいるんだよ!?!?」

 

「ご名答。じゃあ、ご褒美をプレゼントしよう」

 

次の瞬間、太腿に常に隠し持っている阿修羅HGを残像すら見えない程に、素早く抜いて構える。そしてそのまま3人の脳天目掛けて、引き金を引いた。

拳銃とは思えない程に重く、まるで爆発音の様な大きな音が3回鳴り響き3人の頭が消し飛ぶ。

 

「全く。コイツら実戦は経験してても、ガチの地獄は味わってないな」

 

「いつもながら素早いわね。私の出番ないじゃない」

 

「この程度の規模、普段なら1人で殲滅してるんだ。基本的には助けは要らんよ。まあ今回は荷物が多いからな」

 

そんな事を話していると、またおかわりがやってきた。今度は移動中だが、それでも正確に頭を撃ち抜いて殺す。

 

「ゴールドフォックスより各班。現在、謎の武装勢力により総武高校が襲われている。パッケージについても、狙撃により死亡。作戦を変更し、襲撃が完了次第、各班はこちらの増援に来い。また襲撃中は、第三勢力に十分に留意せよ」

 

無線で各地に散らばっている大隊に報告し、襲撃作戦が完了次第、こちらに来てもらう事にする。

 

「さーて、お前達。別にテメェらが全員死のうが生きようが、俺はどうでも良い。だが目の前で死なれるのは目覚めが悪いから、最低限生かす努力はしてやる。ここに残るも、ついてくるも自由だ。来たい奴は来い」

 

どうやら全員、コイツに着いて行った方が良いと考えたのだろう。教師も含めて、全員が着いてきた。なので武装も防弾シールドの平泉に変更し、右手には朧影SMGを装備する。

 

「取り敢えず、ここにいろ。他の教室を掃討してくる」

 

廊下に飛び出して、そのまま周りのクラスにいる奴を纏めて殲滅する。銃声がなれば頭が飛び出てくるので、そこを正確に朧影で撃ち抜く。

 

「このやろ!!!!」

 

こんな感じで突っ込んでくる、単細胞脳筋バカもいるが…

 

「はーい、バチバチしようねー」

 

平泉で近接攻撃を防ぎつつぶん殴り、ついでに搭載されているスタンガン機能で動きを封じ、意識が残ろうが残ってなかろうが問答無用で顔を力一杯踏んづけて脳みそごと潰す。

 

「偶には盾を使った近接も楽しいな。ちょっと面倒だが」

 

ものの2分でこのフロア一帯を殲滅し、安全を確保した。なら今度は、この荷物を安全な場所に運び込む。しかし現状下では、この学校で安全な場所はない。1人2人の少人数なら隠れる場所はあるが、流石にこの大人数を隠せる場所はない。

となると全員を一塊にして、長嶺が守るのが一番安全だ。とするともう、体育館位しか場所がない。校庭だと周囲が開けているので、校舎から狙い撃ちにされる。十字砲火でも食らったら目も当てられない。

 

「総員傾注!!これより体育館に立て篭もる!!!!俺の指示に従い、落ち着いて迅速に行動しろ!!!いいか!!!!ここはすでに、お前達の生きる平和な世界じゃない!!ここは戦場だ!!!!

戦場でテメェらみていなど素人が生き残るには、玄人である俺の指示に従うしかない!!!!悪いが指示に従わない奴は、もうどうしようも出来ない!!!!死のうが腹に弾丸食らおうが知ったこっちゃない!!!!いいか!!しっかり着いてこい!!!!」

 

流石の長嶺とて、戦場を全く知らないガキを100人以上抱えて、敵中突破するのは流石に無理だ。多分、何人かは死ぬ。というか何処かでパニックでも起きれば、下手をすれば全滅する。だがこうなった以上、1人でも多く生かす努力はしよう。

 

「姿勢を低くし、なるべく教室側の壁に体を付けながら進め!!!!」

 

一応、さっきのスナイパーがある可能性がある。あの威力から見るに、普通に教室の壁とかドアは余裕で貫通する。下手すれば、柱でも貫通してくる。だが姿を少しでも隠す事が出来れば、生存する可能性がほんの少しはあがる。

だがすぐに、1つの関門にぶち当たった。全面ガラス張りの渡り廊下だ。ここを抜けなければ、体育館には辿り着けない。一応階段を上るか下れば、別フロアからいけなくはないが、まだ敵がウヨウヨしているので通りたくはない。かと言って一斉に行けば確実に死人が出るし、1人ずつ行けば時間がかかる。

 

「ここで待て」

 

だが万が一の可能性に賭けて、阿修羅HGのみを装備して渡り廊下へと出てみる。案の定、雑居ビルの方から殺気を感じたのでバックステップで影へと戻る。ほぼ同時にガラスが割れる音が鳴り響き、やはり回避する前の場所には、しっかり弾痕ができた。

 

「やっぱりキルゾーンだな」

 

「ど、どうすんだべ桑田くん!?」

 

「どうするも何も、排除するしかないだろうよ。桜吹雪!」

 

今更だが、既に八咫烏と犬神は近くに潜んで支援に入っている。犬神は建物内に侵入し、特別教室のある棟を掃討してもらっている。八咫烏は上空からの警戒監視をしてもらっているので、追加兵員や敵に動きがあれば通報が来る。

無論、八咫烏にはいつも通り各種兵装も届けてもらう。なので桜吹雪SRについても、いつも通り空を飛んでデリバリーだ。

 

「なんだい、それ?」

 

「俺が一から作り上げた愛銃、スナイパーライフルの桜吹雪だ。20mm弾を撃ち出す超長距離対物スナイパーライフルで、コイツを使えばヘリコプターだって撃ち落とせる」

 

川崎の質問に笑顔でそう答えるが、銃を構えるとすぐに獲物の動きを一切逃さない獰猛な肉食獣の様な目になる。

 

(八咫烏、敵スナイパーの位置は南東の雑居ビル。その屋上にスポッターとスナイパーで間違いないか?)

 

(間違いない。この距離でそこまで分かるとは、流石だな。我が主)

 

敵スナイパーの位置を正確に割り出したら、後は狙撃あるのみ。素早く影から飛び出して、2発連続して撃つ。どちらも正確にスナイパーはスコープ越しに目を。スポッターはレンズ越しに顔を。それぞれ正確に吹き飛ばした。

 

「クリア!行くぞ!!」

 

桜吹雪を八咫烏へと返し、また平泉と朧影を装備して前へと進む。暫く進み、廊下の突き当たりまで進めた。ここを曲がり、少し進むと体育館は続く階段がある。だがしかし、ここで問題があった。

 

「おいおいおいおいマジかよ」

 

「ねぇ、あれ何?」

 

「なんか、映画で車についてるマシンガンみたいっしょ」

 

川崎と戸部がこう言ったが、まさにその通りである。あの機関銃はKord重機関銃という、12.7mm弾を使う歴とした重機関銃だ。あんな物を人に撃てば、死体が肉片にまで加工されてしまう。

 

「なんかもう、盾で防ぐのアホらしくなるわ。エミリアー」

 

「あなた、もう少し緊張感持ちなさいよ。で、どうしたの?」

 

「突撃する。少しの間、ここを頼む」

 

そう言うと今度は、愛刀の弦月と閻魔を呼び出す。その間にこっそり柱の影から覗いたオイゲン。目の前に明らかに重機関銃らしき物があるのに、自分の愛する人は嬉々として突撃の為に刀を装備している。

本来なら全力で止めるだろうが、何せ最愛の人は異次元の強さを誇るのを知っているので呆れ顔で、一応拳銃を出しておくだけであった。

 

「桑田くん?何する気だべ?」

 

「まあ見てろ」

 

今回は流石に本気でやるので、いつかの林間学校の時みたく一刀流ではない。本来の型である、逆手持ちの二刀流スタイルでいく。呼吸を整え、柱の外へと躍り出る。

 

「誰か来る!撃て!!」

 

「肉片になれや!!!!」

 

当たれば即死の弾丸の雨だろうが、長嶺にとっては障害になり得ない。姿勢を低くして、まるで泳ぐかの様に走り、壁を蹴って三次元に動く。当たれば確かに脅威だが、素早い動きの相手には即応できないのが固定式機関銃の弱点だ。それに当たりそうな弾は全部、しっかり刀で斬って迎撃している。

ものの7、8秒で機関銃陣地の懐に入り込み、次々と敵を斬り伏せる。首を、腹を、足や腕を。バッサバッサと枝木を切るかの様に、豪快に斬る。

 

「ば、化け物だ!!!」

 

そう言って1人の敵が逃げ出す。だがその先には、オイゲンがいる。オイゲンは人を殺したことはないが、元いた世界ではセイレーンを。こっちに来てからは深海棲艦を倒している。どちらも人型生命体が居るし訳だし、多分人間とそう変わらない。まして向かってくる相手は、しっかりとした紛う事なき敵。

オイゲンは最愛の長嶺から何度も教えてもらったフォームで、最愛の長嶺がパーツ1つ1つに至るまで手を加えた自分専用のグロック26を構える。そして、引き金を何度か引いた。敵は前のめりに倒れると、ピクリとも動かない。

 

「案外、簡単なのね。人を殺すのって」

 

「エミリア、殺せてないぞ。まだ虫の息だが、舐めちゃいけない。虫の息でも最後の力を絞って、攻撃してくることだってある。だから…」

 

ズドォン!

 

「きっちり殺せ。相手が余程のクズとかなら話は別だが、せめて楽にしてやるのが殺しの礼儀だ」

 

涼しい顔でそうアドバイスするが、普通に下には頭に風穴が開いた死体が転がっている。生徒達はただただ、恐怖の目で見ていた。

だがそんなことはどうでもいい。体育館への道も確保できたし、後は体育館へと駆け込む。この後、3年と1年も回収し、ついでに教師陣も体育館に押し込んだ。そして、運良く1人だけだが例の自称防衛省の職員を捕虜にできた。

 

「親父、俺だ」

 

『雷蔵か。作戦はどうだ?』

 

「その事についてだ。総武高校に例のパッケージが居たんだが、ソイツは防衛省の職員を語る連中に連行された」

 

『そんな命令はだしてないぞ!?』

 

やはり、そんな命令は出ていなかったらしい。当然だ。この手の話は基本的に、霞桜にお鉢が回ってくる。防衛省の職員は守秘義務はあれど、100%ではない。一方こっちはプロ中のプロで、本物の戸籍すらない奴が殆どだ。大半が偽物の戸籍か、何なら持ってない奴もいる。

まあ場合によっては職員を動かすだろうが、今回に限って言えば極秘中の極秘の事案で、しかも存在自体が違反の部隊が動いている。普通に考えて、職員は入れない。

 

「だがな、問題なのはここからだ。そのパッケージと職員は、謎の武装勢力に殺害された。1人を除いてな。今は体育館に立て篭ってる」

 

『わかった。こっちも隠滅の根回しに入る』

 

「さてと。それで、アンタは誰なんだ?防衛省の職員ってのは、真っ赤な嘘だろ?」

 

そう言うと、自称防衛省の職員の生き残りは英語で「あなたはゴールドフォックス。総隊長で間違いないか」と聞かれた。ゴールドフォックスはさっき言ってたから別として、総隊長という単語が出た時点で多分こちらの正体を知っている可能性が高い。

 

「そうだと言ったら?」

 

「わ、私はCIAの工作員です。私達はハーリング大統領の指示で動いています。詳細は私達も聞かされていませんが、ミッションは相模南を誘拐し本国に移送する事です」

 

「CIA?確か、ハーリングのおっちゃんとCIA長官は基本的に仲が悪いだろう?なんでそのCIAが」

 

現在のCIA長官、ウォットシャー・ブラスデンと現アメリカ大統領であるビンセント・ハーリングの仲は悪い。というのもブラスデンは白人至上主義者であり、古き良き強いアメリカをこよなく愛する男なのだ。深海棲艦関連で日本のシーパワーが日増しに増大している事が不愉快であり、日本を敵視している。

かたやハーリングは平和主義かつ現実主義者であり、今はプライドも建前も要らない事と日本に命運を任せる他手段がない事を理解している。その為、国防長官のドーベック・S・フライゼンハワーと共に日本に有利な政策を進めてきた。こんな主義主張が対極の2人なので、極めて仲が悪いのだ。

 

「CIAにも長官派閥と大統領派閥があって、私は大統領派なんです。噂じゃCIA内にいる裏切り者を捕まえる鍵を握ってるのが、その相模南だと」

 

「ドッペルゲンガーという名に聞き覚えは?」

 

「ないです」

 

取り敢えずハーリングに確認を取る必要があるとはいえど、現状では自称防衛省の連中は無害と見て良いだろう。問題なのは、謎のテロリスト集団の方である。

テロリスト集団を雇用主側と仮定したとしても、こんな白昼堂々と殺すだろうか?何も総武高校にいる人間全員を人質に取る必要もないだろうに。最初に狙撃して終わりで良いだろうし、このCIA連中を殺したいなら車か何か押し込まれた後に襲撃すれば良い。ここまでのリスクを侵すのは、流石に考えられない。

 

「あー、桑田真也くん。いいかね?」

 

「なんでしょう、校長先生?」

 

色々考えていると、校長が声を掛けてきた。やはり長嶺が恐ろしいのか、膝がガクガク震えている。

 

「君は一体、何者なんだね?」

 

「それを知る必要はありません。1つ言えるのは、別にアンタらが死のうが生きようが知らないが、何も殺すつもりでもない。これだけ知っていれば、問題ないでしょ?」

 

「それでは説明になってはいないのでは無いかね、総隊長くん」

 

何処からともなく聞こえてきた声だが、この学校にこの独特な声色を持つ者はいない。だがこの声を持つ者を、長嶺は知っている。

次の瞬間、ステージの上にトランプの渦ができる。そのトランプが消え去ると、中から茶色のソフト帽とコートを着こなす紳士風の男が現れた。

 

「なんでこのタイミングでお出ましなんだよ。えぇ!?シリウス戦闘団、トーラス・トバルカイン!!!!」

 

なんと現れたのは、作中序盤で何か強そうな雰囲気出しておきながら結局まだ2、3話位しか出番のない上に、読者から忘れ去られた挙句、主も少し記憶から抜け落ち掛けていたトーラス・トバルカインであった。

因みに最後の登場は去年の6月に投稿した碧き航路開拓編の第七話『髑髏兵の襲撃』(統合版では第十九話)であり、もうかれこれ一年半ぶりの登場である。

 

「ふふふ、寂しかったかね?総隊長。私は君と戦う事ができなくて、とてもヤキモキしていたよ」

 

「そんな奴が、何だってここに来た?何も俺とそんな下らん話をする為じゃないだろう?ってか、ずっと何してやがった?かれこれ一年以上は姿を見せなかったしな」

 

「それを答えるとでも?だが、君達が知らないのも無理はない。この一年ちょっとで、我々は蓄えたのだよ。君達と戦争する為の駒を。

さぁ、開幕の試合といこう。ゴングはもう、鳴っているのだから!!」

 

そう言ってステージから飛び上がり、空中で5枚のカードを投げ付ける。刀で迎撃し、そのままバックステップ。案の定、長嶺の立っていた場所にトバルカインがライダーキックよろしく突っ込んでくる。

 

「まさか、力制限で戦うハメになるなんてな」

 

「そうだったねぇ。君は今、本気じゃない。いや、まだ本気を出した事がないはずだ。君には隠された力があるだろう?」

 

「ッ!?!?」

 

長嶺には確かに、艦娘とは別に生まれ持って授かった特別な能力がある。だがそれを知るのはもう、本人である長嶺と父親である東川を外せば、もう世界中を見ても本当に10人にも満たない筈だ。

 

「図星だねぇ。そんな君に予言してあげよう。今夜の月は、赤い満月となる。というか、私がそうなって欲しいのだよ」

 

「敵の望みを聞くとでも?」

 

「これは君の望みでもあるのだよ。やはり、今日は戦わないでおこう。私はせめて、いつもの力を振るえる様になってから戦いたいんだよ。それにどうやら、タイムオーバーの様だ。さらばだ桑田真也くん。また会おう!」

 

そう言って、トバルカインはまた消えた。本当に嵐の様にやってきて嵐の様に去って行く。*1だが、タイムオーバーとは何なのだろうか。それを考える間もなく、背中に激痛が走った。

 

「刺されたなこりゃ。気配なしの奇襲、それも刃物となりゃ」

 

次の瞬間、目の前に一瞬黒い霧の様なものが現れると、中から目が赤く光る、真っ白なボディスーツに身を包んだ謎の集団が出てくる。

 

「シリウス戦闘団の次は髑髏兵だと?なんだよ今日は。厄日か?ははっ、笑えねぇ」

 

背中から刺されはしたが、反射的に芯を外してある。血も思ったほど出てない。まだ戦える。長嶺はまた刀を構え直し髑髏兵の一挙手一投足を観察し、動きや攻撃に注意を向ける。

 

ビュオン!

 

独特な音共に、一瞬の内に霧に入る。だが知っている。その技は瞬間移動できて、対象の目の前に音もなく現れる事ができる。だがナイフや弾丸を体内にワープさせる事はできないし、ワープ後に刺す、斬るといった攻撃動作を入れないと攻撃できない。なら、そこが相手の隙なのだ。

確かに普通の人間なら、なす術なく攻撃されるだろう。だが長嶺の場合は、その普通に該当しない。コイツは正真正銘の化け物であり、どっちかって言うと人外の部類だ。どうにかできる。

 

「甘い!!」

 

背後から飛び掛かって刺そうとした奴を蹴り飛ばし、右と左から刺そうとした奴は刀で受け流し、正面から突っ込む奴には頭突きを喰らわした。その間、僅か0.6秒。一瞬の内に攻撃の角度や威力、脅威度を判別しそれに合わせたカウンターを加える。人間離れの戦闘である。

 

「今度はこっちから行くぞ!!」

 

蹴り飛ばした奴に追い討ちを仕掛けるべく、床を全力で蹴り飛ばす。床が窪んで、床の板がへし折れるが、そんな事は気にしない。だがやはり、この床の影響か攻撃の届く寸前で黒い霧の中に逃げられた。その上背後から、他の3体が接近してくる。

 

「無理があったか」

 

腕に装備してあるグラップリングフックを手近の床に撃ち込み、そのまま急制動をかけつつ刀で切り付ける。1人の腹が裂けた。

 

「まず1人!」

 

次いでさっき追い討ちを仕掛けた奴が、上からマチェットを構えて突っ込んでくる。それを受け止めて地面に投げ落とし、そのまま持ってるマチェットで首を斬る。

 

「2人!」

 

次に取り掛かろうとした瞬間、八咫烏から念話が入った。曰く、所属不明のV22オスプレイが接近中なのだと言う。だが今の長嶺にとって重要視するのは、目の前の髑髏兵共。CIAの寄越した機体の可能性もある以上、手荒な真似は慎むべきだろう。

 

「次はどっちだ?」

 

そう言って煽ってみるが、残る2人は顔を見合わせるとジャンプして黒い霧に飛び込み、今度は壁にへばりついた。大体、2階にあるギャラリーの手すりの役割を持つ壁の辺りである。

そこから遠距離攻撃を仕掛けるのかと思ったが、今度は出入り口の方で爆発音と何かが崩落する音が聞こえた。そして扉も吹っ飛んだ。

 

(我が主。あのオスプレイだが、渡り廊下を吹き飛ばしおったぞ)

 

(ついでに扉も吹っ飛ばしやがった)

 

生徒も教職員も悲鳴をあげて、ステージ側限界ギリギリにまで下がる。爆発の煙の中から出てきたのは完全武装の兵士達と、とても意外な人間が出てきた。

 

「こんな場所にいたとは、驚きですな。桑田真也くん?いや。第三十三代連合艦隊司令長官にして、非正規特殊部隊『霞桜』の隊長、長嶺雷蔵海軍元帥殿とお呼びした方がよろしいかな?」

 

「なんでテメェが出てくるんだ。それも、完全武装の兵を従えて。まるでクーデターじゃねぇか、えぇ!?佐世保鎮守府提督、河本山海!!」

 

なんと煙の中から出てきたのは、帝国海軍に於いて河本派閥のボスを務める長嶺とは犬猿の仲である河本だったのである。流石にこれには、あの長嶺とて度肝を抜かれた。

 

「何故?馬鹿なことを聞くなぁ。俺はずっと、お前が気に食わなかった。だがら待ち続けた。そして時が来たんだよ!お前から、可愛い艦娘と例のKAN-SENを奪う時がな!!」

 

「貴様、何を言っている?」

 

「本来はお前流で言う髑髏兵、だったか?これを多数動員して、鎮守府を壊滅させるつもりだった。だが聞けば貴様は、高校生になっていると言うじゃないか。こんな好奇、みすみす逃す手はない。

既にお前の鎮守府は、もうボロボロだろうよ。艦娘とKAN-SENは、既に大多数が連行済みだ。その証拠に」

 

河本が指をパチンと鳴らすと、背後から4つの人影が現れた。どうやら2人は拘束されているらしい。嫌な予感がしたが、その予感は悲しいかな的中した。

 

「大和!エンタープライズ!」

 

「すみません提督.......。遠征の子達を除いて、全員捕まりました.......」

 

「私達がいながら、すまない指揮官.......」

 

艦娘では江ノ島一の練度を誇る大和と、KAN-SEN勢ではトップ3に入りユニオンとしてはトップの練度を誇るエンタープライズが捕まった。この2人が捕まっているとなると、本当に江ノ島は襲撃されてボロボロになったのだろう。

だが問題はそこじゃない。壊されたなら直せば良いだけだが、艦娘とKAN-SENは大問題だ。彼女達は扱いこそ物だが、誰もがオンリーワンの存在。一応、艦娘は替えが効くには効く。また建造すればいいが、新たに産まれる艦娘は以前のとは別物だ。指揮官として見ても、長嶺雷蔵という1人の人間として見てもそんなのは容認できない。

 

「無様だなぁ。なぁ今どんな気持ちなんだ?え?え?」

 

「何が目的だ。態々、俺に連れ去った奴を見せたいだけじゃないんだろ?」

 

「よく分かっているじゃないか!俺は貴様をな、絶望の渦に叩き落としたいんだよ。自殺したくなる位に、とびきりなのをな!!この程度では、まだまだ収まらない。そうだな、手始めにまずは武器を全部渡せ。例の烏に持たせてるのも、あの紙切れも含めて」

 

「.......いいだろう」

 

八咫烏に命令して、持っている全ての武器を渡した。阿修羅HG、朧影SMG、鎌鼬SG、竜宮AR、大蛇GL、月華LMG、風神HMG、雷神HC、桜吹雪SR、薫風RL、龍雷RG、幻月、閻魔、そして空中超戦艦『鴉天狗』を呼び出し、艦娘として戦う時に必要な小鴉の式神。その全てが今、体育館の床に置かれた。

周りの兵士達はそれを回収し、オスプレイの中へと押し込む。

 

「次は、そこの後ろにいる銀髪の女。たしか、そうだ。鉄血のプリンツ・オイゲンとか言ったな?ソイツを渡せ」

 

「さもなくば、誘拐した奴を全員殺す。ってか?」

 

「よく分かっているじゃないか」

 

指揮官として考えるなら、渡しておくのが吉だろう。恐らくコイツの性格から考えて、渡しておけば少なくとも(・・・・・)殺しはしない。だが1人の男としては、渡したくなかった。

 

「いいわ、指揮官」

 

「お、オイゲン!」

 

「私が行けば、生存の可能性があるんでしょ?それなら喜んで行くわ。それに、絶対に助けてくれんでしょ?」

 

「.......あぁ。なにがあっても、全員救い出してやる」

 

そう言うとオイゲンはグロック26を捨てて、河本の方へと歩き出した。長嶺の横を通り過ぎた時、静かに耳元でこう囁いた。

 

ich liebe dich mein Schatz.

 

オイゲンの言った言葉は、ドイツ語で「あなたを愛している」という意味の言葉。この瞬間、長嶺は、まるで何かとんでもない取り返しのつかない事をしてしまったと感じたと言う。

 

「ふふふ。よいよいよいよい!!長嶺雷蔵。取り返したければ、1人で佐世保鎮守府にこい。勿論、他の部下を連れてくるのはダメだぞぉ?ふふ、引き揚げだ!!」

 

河本がそう命じると、兵士達が引き上げていく。無論オイゲン、大和、エンタープライズも連れて。

そしてすぐに、霞桜の大隊長達が体育館に入ってきた。

 

「総隊長殿!って、怪我してるじゃないですか!?」

 

「.......グリム、一部を早く鎮守府に戻せ。敵が襲撃したらしい」

 

「なんですって!?!?すぐに向かわせます!!」

 

「ボス、何かあったの?そういえば、オイゲンちゃんの姿が.......」

 

カルファンが長嶺の様子が可笑しい事に気が付いた。ベアキブルが生徒達の方を見るが、オイゲンがいない。オイゲンの髪色は銀髪で、スタイルも抜群だ。例え数百人の中でも普通に目立つ。なのに、全く見当たらない。

 

「姉貴、オイゲンの奴が居ない」

 

「あ、おいお前!」

 

何かを制止しようとするバルクの声が聞こえるが、どうやらそれを無視したらしい。制止を無視した奴は、長嶺に掴みかかった。

 

「どうしてッ!!どうしてエミリアちゃんを見捨てたんだ!!!!人を殺す事しか出来ないのに、大切な人も殺すのか!?!?大体人殺しは犯罪なのに!!お前が!!犯罪者のお前が何故、五体満足でいるんだ!!!!お前が連れ去られれば良かったんだ!!!!!

それにお前はエミリアちゃんに戦うことを!!殺すことを強要した!!!!!そんな外道は死んでしまえ!!!!!」

 

掴みかかった奴は葉山だった。葉山にしてみれば好きな女を目の前で誘拐された挙句、好きな女が好きだった相手が人殺しだったのだ。お陰で何かよく分からないキレ方をしている。

いつもの長嶺なら「あー、はいはい」と適当に受け流すだろう。だが今の長嶺はキレていた。救えなかった自分に対して。守れなかった自分に対して。だから、こんな些細な事であっても過敏に反応してしまう。

葉山の顔を頭蓋に指がめり込まん勢いで引っ掴み、そのまま床に叩き付ける。それも一度二度ではなく、何度も。そしてそのままピアノのある方へぶん投げた。

 

「ガハッ!!」

 

「そこまで言うなら、お前が救い出せば良かっただろう?なぁ、葉山。なんとか答えろよ?喉を掻っ切った覚えはないぞ?」

 

ぶっ壊れて部品やら板があちこち飛び散ったグランドピアノに横たわる葉山に向かって、長嶺はただ淡々と話し続ける。

 

「ふざけるな!!あんな相手に立ち向かえば、死んでしまうだろ!?!?!?」

 

「死んでしまう?それがどうした。よく聞け平和主義者。まずエミリア、オイゲンを見捨てたとか言っているが、それはお前もだろう?武器がない?格闘で倒せば良い。そこら辺のテロリストの死体から武器を奪えばいい。何故それをしない?

それに俺は少なくとも、法的に見れば犯罪者ではない。俺含め、あそこにいる連中は例外的に刑法も民法も適用されない。別に今、この場にいる全員を殺したって犯罪じゃない。仮に犯罪者の定義を法的にではなく、倫理的な話でするのなら、俺をそんな1人2人殺して終わりな奴と一緒にするな。俺は既に万単位、下手すりゃ億単位の人を殺してる。お前が普通の楽しい楽しい人生を送っている時、俺はずっと暗闇の血の海の中を進み、何度も死線をくぐり抜けたんだ。格が違うわ。

そして何故、俺がオイゲンを見捨てたかだが、お前状況見てた?他にも人質が居ただろ。いくら愛してる奴だろうが、単純な天秤だろ?1人を確実に生かして他を確実に殺すか、1人を差し出しつつソイツ含めた他の生存性を上げるか。それをしたにすぎない。

それからさ、部外者がしゃしゃり出んなよ。殺されないだけ、ありがたいと思えクソ野郎」

 

そこまで言うと、最後に腹を力一杯踏んづけた。余りの痛みにゲロを吐きながら、悶絶しつつ葉山は気絶した。

 

「一度、帰還する。一個小隊を残し、他は一緒に帰還しろ。生徒と教職員に関しては、何処かに軟禁する。警察と防衛省に根回しを頼む」

 

淡々と今やるべき事を冷静に命じ、長嶺と他の大隊長達は江ノ島へと帰還した。

 

*1
すまぬトバルカイン。尺的に勝負は今度にしてくれ

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