最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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先に言っておきます。今回、かなり閲覧注意です。見る際は相当の覚悟を持ってご覧ください。グロはありませんが、思想や長嶺が過去に仕出かした事がかなりエグいです。覚悟してください。




















第六十三話東川蔵茂

佐世保鎮守府への襲撃を終えた翌日の夜。グリムとオイゲンが部屋にやって来た。2人の目的は長嶺の過去を聞く事。そろそろ話しても、良いだろう。そう考えた長嶺は2人を自室の中にある応接スペースへと座らせ、自分はその前の1人掛けソファに深く腰を下ろす。

 

「さて、何処から語った物か。あぁ、そうだ。まずは俺の本当の名前から語るとするか」

 

「え、ちょっと待って!?」

 

「本名、長嶺雷蔵じゃないんですか!?!?」

 

開始早々、かなりの爆弾が投下された。なんとこれまで散々語られてきた名前である『長嶺雷蔵』は、本名でないと言うのだ。いきなり驚きのピークになりそうな話題が話の頭に持って来られている辺り、今後は更なる爆弾が投下されるのだろう。

 

「いや。本名っちゃ本名だし、正直昔の俺は既に死んだ。戸籍上は勿論、人格としても。今日話す俺と、現在の俺は全くの別人と言っても良い。物の考え方も違うしな。

俺の本当の名前は蔵茂。東川蔵茂(あずまがわくらしげ)という。名字の示す通り、現防衛大臣である東川宗一郎の息子だ。義理ではあるがな」

 

「あ、だからあの時、大臣を「親父」と呼んでおられたのですね」

 

グリムは佐世保鎮守府で長嶺が自殺しようとして、東川が助けた時に親父と言っていた事を思い出した。あの時は目の前で長嶺が自殺しようとしていたのもあって、全く気にはしてなかったが今になって思えば確かに違和感がある。

 

「ならこれからは、本当の名前の方が良いかしら?」

 

「いや。さっきも言った通り、東川蔵茂は俺の中で死んでいる。今生きているのは、お前達KAN-SENと艦娘の司令官であり、霞桜の総隊長である『長嶺雷蔵』だ。それが俺であり、それこそが俺なんだ。だからこれまで通りでいい」

 

長嶺、いや。東川蔵茂に取っては、長嶺雷蔵こそが自分だと思っている。故に今の蔵茂に取っては、本名である筈の東川蔵茂の名は他人の様に聞こえてしまうのだ。

 

「では、由来は何なのですか?」

 

「長嶺雷蔵とは、彼らから取ったんだ」

 

「彼ら?」

 

「あぁ。俺の戦友にして親友、そして俺と同じ存在であった奴らだ」

 

長嶺はソファから立ち上がり、あの写真立てを取ってきた。その写真立てわ、2人の前に差し出す。

 

「いつも執務机の後ろの本棚に飾ってある写真ですね.......」

 

「そうだ。この写真は本来、俺以外にも人が居た。これを見ろ」

 

写真立てをひっくり返し、後ろのカバーを外す。中には全く同じ場所で撮られた、もう1枚の写真と3枚のドッグタグが入っていた。

 

「4人の少年?この右から2番目は指揮官かしら?」

 

「その通りだ。右の十文字槍が『極雷の覇者ナルカミ・ミツ』俺の左の大太刀の奴が『冥府の王イザナミ・ヒデ』。一番左の棍棒持ちが『烈風の貴公子シナツヒコ・ノブ』だ。

長嶺雷蔵ってのは、4人の名前を組み合わせた物だ。長はミツの本名である『長義』、嶺はヒデの本名『仁嶺』、雷はノブの『兜雷』から取った。蔵は勿論、俺の『蔵茂』からだ。俺達4人は天皇直下に極秘に存在する秘密結社『八咫烏』の実動部隊。通称『鴉天狗』の人間として育てられ、戦っていたんだ」

 

「まさか指揮官の『鴉天狗』って」

 

「.......オイゲンの言う通りだ。俺は常に3人の影を求め、ずっと独りで彷徨い歩いていた。『長嶺雷蔵』も『鴉天狗』も、全てはアイツらの影を少しでも感じたい。せめて少しでも近くにいたい。そう思って名付けた」

 

オイゲンの気づきに答えた長嶺の声は、何処か震えていて寂しさを感じる物であった。オイゲンは勿論、付き合いの長いグリムだって初めて聞いた声色である。

 

「あの、総隊長殿。その『八咫烏』や『鴉天狗』について、聞いてもよろしいですか?」

 

「良いぞ。八咫烏の歴史は古い。初代天皇の神武天皇即位後に組織された世界最古の秘密結社だ。結成以来、この日本の闇の中で暗躍し続けて来た。八咫烏ってのはかなりデカい上に、組織の全容は俺も全く分からない。元々は神道や陰陽道の儀式をしつつ、今の宮内庁の様に天皇及び宮城に住まう皇族の身の回り世話をしていた。一方で皇宮警察の様に宮城の警備を行い、有事の際には各地の神社や寺をセーフハウスとして活用して吉野へと逃すのが仕事だったらしい。

だが明治時代に於ける政治体制の変化で危うく滅びかけるも首の皮一枚で生き残るが、今度は第二次大戦後のGHQ統治で影響力の殆どは失われた。という風に表向きはされている。実際の所は今も権力を残してるし、天皇直属の組織として存続している」

 

「なんかその話、前にテレビの都市伝説特集で見たわ」

 

「偶に取り上げられる八咫烏と、俺の所属していたヤツは同じだ。情報はちょいちょい違うがな」

 

気になった読者諸氏は、そのままGoogleとかで「八咫烏 秘密結社」と検索しよう。過去に大体どんな事をしていたのかは、それで分かる。

 

「そして鴉天狗は『神授才』と呼ばれる、特別な能力を持つ者だけが所属する組織だ。この能力を持つ者は『神童』と呼ばれ、この能力を持つ者だけが入る事を許される。この神授才ってのが、俺のあの能力って訳だ。

神授才ってのは、正直俺自身よく分かってない。数十年或いは数百年に一度産まれてくる謎の存在で、何が出来るかも分からない。俺と俺の仲間達は戦闘向けだったが、全部が全部そうだった訳じゃないらしい。記録によれば植物を手から生やす事しか出来ない奴とか、謎の悪臭放つ事しか出来ない奴とか、他よりちょっと頭が良くてスポーツ出来る位の奴しか居ないなんてのもあったそうだ」

 

「その神授才の能力って、完全なランダムな訳?」

 

「まあな。神授才の解釈は八咫烏の中でも割れてるが、要は『神々の気まぐれ』って発想らしい。その気まぐれに振り回されるのが俺達で、俺達はどうやら気まぐれの中でも相当の大当たりを引き当てたらしい。だから中には相当のハズレを引いた奴も居て、それがさっき言った連中だ」

 

因みに他には飲むと力が少し湧く代わりに翌日筋肉痛になる謎の水を生成する能力だったり、砂を生成する能力もあったらしい。結構バラエティ豊かな才能があったのだ。

 

「ついでだ、俺と他の仲間達の能力も教えておこう。まず俺は見た通り炎系統を操る。炎は勿論、溶岩なんかも操れる。ミツは雷系統、ノブは風系統だ。ヒデはちょっと特殊で、死者や怪物を操る」

 

「怪物、ですか?」

 

「妖怪、幽霊の類いだ。よくファンタジーにネクロマンサーって、死霊魔法使いがいるだろ?アレに近い」

 

簡単に解説してくれた訳だが、グリムはある事に気付いた。なら、あの能力を使った時に出てきた謎の鬼は何なのだと。

 

「なら、あの鬼は何なのですか?」

 

「分からん。アレこそ一番分からん。記録にも記載がないし、あの鬼と会話できるんだが聞いても答えてくれなかった。俺は勝手に炎の根源とか炎の大精霊的な謎の鬼っぽい何か、という事にしている」

 

思ってたよりもアバウトすぎる回答に、グリムは苦笑した。つまり目の前の男は何が何やら分からない謎の能力を、何が何やら分からないまま行使していたという事なのだ。元々ぶっ飛んでいると思っていたが、思ってたよりもぶっ飛んでいた。

 

「よく使おうと思ったわね.......」

 

「使う使わないの意思決定は俺に無かったからな。鴉天狗の連中曰く「神授才があるなら、必ず使わなければならない」だそうで。使わなかったら殺す、らしい。

それに由来とか鬼とかは分からずとも、能力は使いこなせる。例えば今の普通の状態でも能力は使えるが威力は落ちるし、発動と再発動には時間が掛かる。発動にはMP的な数値が存在し、使用時にはそれを代価として支払う。数値が底を尽きる、もしくは保有量以上の代価が必要な能力は行使できない。MP的な何かは時間経過で回復する。

これら全てのデメリット無しで扱うには、あのアーマーがいる。しかしアーマーを使うには時間制限が存在し、それを超えると一時的に能力は基本的に使用できなくなる。とまあこんな具合に、しっかり能力を把握してるから問題ない」

 

こんな風に言っているが、実情は結構な賭けであったのは間違いない。というのも能力の全容は、長嶺自身が戦場や訓練の中で知っていた事なのだ。無論、最初は右も左も分からないまま、いきなり訓練に放り込まれてるので死にかけた事も何度もある。

 

「それじゃそろそろ、話すとするか。俺の過去を」

 

 

 

11年前 東京 宮内庁

「おいテメェ!俺のポテチ返せよ!!」

 

「あ、あれテメェの?もう腹の中だ返せないよーん」

 

「んだとテメェ!?!?」

「やんのか、あぁん!?」

 

「ふ、2人とも喧嘩はやめなよ」

 

「そうだよ!喧嘩は良くないよ!!」

 

——あの頃の鴉天狗はチームワークなんざ、在って無い様な物だった。仲間ってより、共犯の単独犯四人衆って感じでな。ミツとヒデが大体バトって、俺かノブが毎回止めてた。ミツは良くヒデの菓子を盗んでたし、逆にヒデは良くミツのお宝であるエロ本を隠したり破り捨てたりしていたよ。何度か俺とノブも巻き込まれてな、四つ巴の戦争もしていた。

毎日訓練で結構な頻度で何処かの紛争地帯で勢力とか関係無しに、武装した奴らを襲って、時には少年兵に扮して戦闘もしていた。偶に国内で暗殺をしたりもして、世間一般から見れば歪も歪、というか犯罪なんだが、それが日常だった。なんだかんだ言って楽しかったし、ずっと4人で一緒に居ると思っていたさ。だが、運命とやらは残酷だった。

 

「お前達、仕事だ」

 

——声が聞こえた瞬間、ミツとヒデは喧嘩をピタリと止めた。そりゃそうだ。部屋のドアの前に、俺達の飼い主(・・・)が現れたんだからな

 

「き、気を付け!」

 

「本来であれば懲罰を課す所であったが、今回はそれどころでは無い。天皇陛下が暗殺されかけた」

 

「「「「ッ!?!?」」」」

 

——八咫烏の統括を務める虎杖高弥からの報せの衝撃は、今でも鮮明に覚えてる。この数時間前、天皇は毒を盛られたらしい。毒味役の侍従が飲んで、すぐに倒れて逝ったんだと。

だが何より驚いたのは、この暗殺の絵を描いたのが韓国政府の連中だった事だ。そんなのすれば宣戦布告だ。本来なら俺達ではなく、自衛隊辺りに話が行く。にも関わらず、初っ端で俺達だ。この辺りで全員察していたが、虎杖から下された命令は驚きの物だったよ。

 

「この事件の裏にいるのは韓国だ。お前達、韓国を滅ぼせ。ついでだ、隣の北朝鮮も滅ぼせ」

 

——本当に軽かった。国一つ滅ぼすってのに、この言い様だぞ。信じられるか?しかもこの後に続く命令、というか指示は「やり方はお前達が勝手に考えろ。ただし、この国には迷惑を掛けるな」だった。考えてもみろ。たかだか小学1年か2年のガキに、いきなり「国滅ぼす算段を考えろ」って言われて、考えつくか?無理だろ。だがやるしか無かった。

俺たちは直ぐに韓国へと潜入し、作戦を色々練った。幸い語学は全員鍛えられてたからな、ハングルも余裕で読めた。顔も近いから変に目立たない上に、小学生のガキだ。まさかそんなガキが本気で国を滅ぼす策を練ってるなんて、誰が思う。そして生まれた策って言うのが『全面戦争作戦』だ。俺発案の作戦なんだが、今思えばトチ狂ってるとしか思えない作戦だった。簡単に言えば北朝鮮の核ミサイルを奪って、韓国の都市部に向けてミサイルを発射。そのまま戦争状態に移行させて、互いを疲弊させるって作戦だ。

 

 

 

作戦決行日 北朝鮮 ユサンニ・ミサイル作戦基地

「お前達、作戦を始めるぞ」

 

「なら、嵐を起こそう。ミツ、合わせろ」

 

「言われなくても合わせてやる。行くぞ!」

 

「迅雷!!」

「風魔!!」

 

——作戦開始の号砲は、ミツとノブの融合技だった。ノブが近くの水源から水を巻き上げて基地中に雨を降らし、ミツが雷を落として兵士達をパニックにさせた。

 

「それじゃ、やりますか。焔波!!」

 

——俺も焔波って技で意図的に太陽フレアを生成し、一体の電子システムをダウンさせた。通信はこれで遮断できる。ここからは、文字通りの蹂躙だった。

 

「オールビット、ビーム!!」

 

「オールビット、ソード!!」

 

「死群!!」

 

「土柱!!」

 

——もうビームとソードは飛び交うわ、ゾンビで溢れかえるわ、土の柱が地面から出てくるわ、無茶苦茶だった。ものの5分程度で敵を殲滅し、ミサイルサイロを手に入れた。だがな、ここで問題が発生した。

 

「あ、おい!」

 

「どうした変態ドスケベ野郎」

 

「本当ならテメェの顔面を焦がしてやりたいが、それどころじゃねえ。シン、お前の技は電子機器を全部使えなくさせるんだよな?」

 

「そうだよ?」

 

「なら、ミサイルサイロのシステムも使えないんじゃないか?」

 

——ノブとヒデの視線が、同時に俺に刺さったのを覚えてる。多分、あん時の顔は凄かっただろうな。

今なら言うまでもなく分かることだが、あの時はミサイルが無事かを考える発想は無かった。敵を殲滅し、敵の通信インフラを麻痺させる事しか考えてなかった。焔波でミサイルシステムごと破壊するなんて、思考の隅に浮かびもしなかったさ。あの時は、マジで焦った。人生で1番焦ったかもしれん。

 

「ヤベェ、どうしよう.......」

 

「シン、間違いは誰にでもあると思う。だから気にしなくていいよ」

 

「そうだ。そこの変態ドスケベ野郎なら殺しているが、シンなら許せる」

 

「んだとノブ!?だがまあ、許せるの部分だけは同意だ。それ以外は聞き捨てならんがな」

 

——仲間からの許しは得たが、それで事態が好転する訳じゃない。一縷の望みを持ってサイロのコントロールルームに行ったんだが、まあ案の定発射できなくなっていた。

 

「さて、どうするリーダー?」

 

「どうしよう.......。流石に壊れたテレビみたく、叩く訳には」

 

ガンッ!ゴンッ!

 

「うん、ダメだな」

 

「ミーツー!内部の回線がやられてるのに、叩いて治るわけないよ」

 

——無駄とは分かっていたが、念には念を入れて制御版のスイッチを片っ端から押してみたり、レバーを引いてみたり、適当にぶん殴って蹴り飛ばしてと、考えられる事はやり尽くしたがやっぱりダメだった。

だが収穫もあった。たまたまヒデの回したハンドルで、サイロの発射口ハッチを開く事には成功したんだ。

 

「凄いよヒデ!!」

 

「なんか回したらできたよ。もしかしたら、ミサイルも何とかできるかもしれない!」

 

「いや、無理だと思うぜ」

 

「ノブ?」

 

「さっき、制御板のパネルを外してみた。中の回路とか配線、全部焼き切れてた」

 

「オマケに焦げ臭ぇのなんのって。アレじゃ叩こうがスイッチ押しまくろうが、全く反応しない訳だ」

 

——一応ノブとミツが他に辛うじて生き残ってる配線がないか見てくれたが、無かったらしい。ハッチが開いても、ミサイルが撃てないんじゃ意味がない。また振り出しに戻り、4人で考えた。

だが所詮はガキの浅知恵。何か思い浮かぶ訳でもなく、時だけが過ぎていった。

 

「いっそ花火みたいに導火線でも付いててくれりゃ楽なのに」

 

「変態ドスケベ野郎は頭まで馬鹿になったのか?」

 

「んだとぉ!?!?」

 

「いや!その手があった!!」

 

——ヒデの考えた発射方法は、中々にぶっ飛んだ物だったさ。今でも何で成功したのか、全然分からん。奇跡ってヤツだった。奴の考えた策は、俺の能力で直接燃料に点火させる方法だった。狂ってるだろ?だがそれしか無いなら、やるしか無い。

 

「シン、お前が今考えた事を代弁してやるよ。これ、成功すんのかよ」

 

「今回ばかりは、俺もミツに同意だ」

 

「.......ごめん、僕も怖くなってきた。弾頭に引火して、俺達ごと爆発とか無いよね?」

 

——あの時の雰囲気は、多分もう味わう事は無いだろうな。尤も、味わいたいとも思わないがな。

 

「それじゃ、いくよ!!焔槍!!!!」

 

長嶺の投げた焔槍が、正確に点火玉に当たった。次の瞬間、ノズルから炎と煙が巻き上がり長嶺を吹き飛ばす。

 

「うおぉぉ!?!?」

 

「シーン!!!!!!!!」

 

「シンが死んだ!!!!」

 

「勝手に殺すな!!神童が簡単に死ぬか!!!!」

 

——あんな飛び方は二度とごめんだ。世界が真っ白になったと思ったら、熱風が身体中に纏わりつきやがる。クソ熱いし、気付けば空の上だ。マジで死んだかと思ったが、無事にミサイルは打ち上がった。

だが、あくまで飛んだだけ。誘導はできない。そこで、ミツとノブが能力を駆使して無理矢理進路を捻じ曲げたんだ。

 

「電磁!!!!」

 

「風壁!!!!」

 

——ミツは雷系の能力だから、電磁力も操れる。ミサイルは金属で出来てるから、磁石にも反応する訳で、電磁力で大まかにミサイルの進路を決定させる。微調整は風系の能力を持つノブが、あちこちに風を当て続けて合わせた。そんな事をやって数分、目標の釜山までミサイルが飛んだ。後は起爆させれば、終わりだ。

 

「起爆させるぞ!!」

 

「オッケー!!こっちで起爆させる!!ノブは離れろ!!!!」

 

——その日、釜山は核の炎に包まれた。世に言う『第二次朝鮮戦争』の勃発だ。釜山攻撃後、俺達は二手に分かれた。ミツと俺、ヒデとノブがそれぞれ北朝鮮の平壌、韓国のソウルへと向かったんだ。目的は指導者層の抹殺。これで一気に、戦争は泥沼化するからな。俺の考えた作戦は、勝手に潰しあって貰おうって作戦だ。なら泥沼化するのは、俺としても好都合だった。と思ってたんだが、別れる段になってヒデが面白い策を思い付いた。

 

「俺達はソウル」

 

「俺達は平壌だ。終わったら、また会おう」

 

「いや、ちょっと待って。ここは僕の能力を使わない?」

 

「おいおいヒデ、何か思い付いちゃったか?」

 

「茶化すなミツ。ヒデ、言ってみろ」

 

「うん。僕の能力で、指導者層を僕の傀儡に入れ替えるんだ。そうすれば、自在に戦争を操れるでしょ?」

 

——ヒデの提案に、俺達は二つ返事でOKした。ついでに他にも傀儡を作って、裏組織連中にも忍ばせてカオスになる様に仕向ける事も決まった。

あぁ、そうだ。今の朝鮮半島の地獄の原因は、俺達、いや。正確に言えば俺が考えた作戦の成れの果てだ。あの時も今も罪悪感が無い訳じゃない。だが正直、もうどうでも良いような気がしてる。あの頃は「任務の為の必要な犠牲なんだ。それが国家の、日本のためなんだ」って言い聞かせてた。ぶっちゃけ、地獄を作るのを楽しいと感じたこともあった。だがアイツらが居なくなってからは、なんかもう心底どうでも良くなった。精々、偶にふとした時に自己嫌悪に陥って終わりだ。ガキが黒歴史を唐突に思い出して、ベッドをバシバシやるのと同じ様な感じ位にしか感じてない。

 

「それじゃ、地獄を作ろう」

 

「ならまずは、韓国に行った方が良いな。あそこはシビリアンコントロールがあるから、意思統一に時間がかかる」

 

「それなぁ。でもあそこ、ぶっちゃけ大統領抑えれば何とかなるだろ」

 

「それもそうだね。行こう!」

 

4人が韓国の首都、ソウルへと飛び立つ。空は既に夕焼けで、もうすぐ夜になろうとしている時間帯。地獄を作り出す4人は、空を飛ぶ。

一方その頃、韓国の大統領が閣僚達を集めて地下で会議を行っていた。

 

「諸君!!我々は今、国家存亡の危機に直面している。知っての通り、先程、釜山に北朝鮮のノドンと思しき核ミサイルが飛来。釜山を瓦礫の山に変えた。外務大臣、北朝鮮からの声明は?」

 

「向こうからは何の声明も出ておらず、先程ふざけた事に「あの爆発は何なのだ?」という質問が非公式ではありますが、送られてきました」

 

「国防大臣、軍の状況は?」

 

「釜山近郊の部隊には救援に向かってもらっています。米軍からも支援の申し出が出ております。

他の部隊に関しましては臨戦態勢を取らせており、いつでも出動可能です」

 

いつもは賄賂だ何だと汚職やスキャンダルの多い閣僚達も、今回ばかりは自分の職務を全うしている。色々対策を練っていた時、突然地下指令室のドアが開いた。

 

「な、なんだ君達は!!」

 

「あの、皆さんは韓国の首脳陣であってますか?」

 

「それがどうしたと言うのだ!警備兵!!」

 

国防大臣が叫ぶが、このドアの前や他にも沢山いる筈の警備兵が誰もいない。それどころか、錆びた鉄の様な生臭い臭いまでする。

 

「あ、無駄だぜ?アンタらの警備兵は全員、死んでるから」

 

「我々が殺した。助けは来ない」

 

「そんな訳なんで、おっさん達さ操り人形になってよ。ヒデー!」

 

「何をふざけ」

「屍人」

 

——ヒデの能力は、さっき死者や怪物を操ると言ったな。だが、厳密には少し違う。ヒデの能力は正確には死者を怪物にして操ったり、生者を殺して操ったり、怪物を呼び出して操ったりするんだ。この『屍人』も、生者を殺して精神を奪う技の1つだ。

 

「あ.......が.......」

 

「いけた?」

 

「いけた。これで僕の支配下だ。それじゃ、頑張って戦争してね、大統領閣下?」

 

「はイ。諸諸諸君!せせ戦争をヲを、始zじメよゥ」

 

——我が友の能力ながら、気持ち悪いと思ったよ。人間がいきなり目も虚になって、口の端から涎を垂らして、段々と目の動きもおかしくなるんだよ。眼球が別々に動き出すんだ。カメレオンみたいに。マジでキモかった。

 

「なぁこれ、ホントに大丈夫なの?」

 

「いやこれで大丈夫じゃなかったら、色々ヤバいぞ」

 

「ノブ、驚いたな。これも同意見だわ」

 

「変態ドスケベ野郎と同じなのは癪だが、やはりそうだよな」

 

「ホントに大丈夫だって!さっ、今度は平壌だ。行こ行こ」

 

大統領を筆頭とする韓国首脳陣は、完全なる傀儡へと姿を変えた。北朝鮮でも全く同じ事をやって、4人は一度済州島へと向かった。ここで戦争を指揮する為である。

 

「それじゃ、やりますか。取り敢えず、北緯38度線に両軍集結させて戦争開始っと」

 

「そういや、裏社会系はどうするんだ?リーダー、作戦でもあんの?」

 

「あれはもっと後にやるつもりだよ。その内、軍が瓦解して軍閥だらけになる。そこに裏社会系の人間を投入して、更に泥沼化させるんだ。そうすれば、後は勝手に崩壊する。

それに崩壊後は如何なる国も立ち入らない場所になる筈だから、俺達も何かあったら使えると思うよ」

 

「シン、お前.......」

 

「末恐ろしいな.......」

 

ノブとミツは、引き気味の声でそう言った。小学生でここまで考えられる辺り、末恐ろしすぎる。というか将来が危ぶまれるだろう。

実際、現在に至るまでマトモな人生を歩んでない。世界の影に生き、闇と闇を自在に飛び越えて進む。そんな人生しか歩んでないのだから。

 

「なぁなぁ、俺一個面白い事思いついた!」

 

「特別に聞いてやる、話せ」

 

「いや、ノブに決定権ないだろ。まあいいや。この際、俺達もここで経験を積めばいいんじゃね?」

 

——またミツが適当な事を抜かしたかと思ったが、聞いてみれば結構理に適ってる物だった。曰く「どうせなら、俺達も戦場に出て戦争に参加しようぜ。そうすりゃ、能力に磨きが掛かるだろ」だと。一理あるので、俺達の韓国滞在は延びた。

戦争の方も1週間もすれば両軍共に軍隊としては壊滅状態に陥り、敗残兵があちこちで略奪やら各個に戦闘して泥沼化し、軍閥も生まれてカオスになった。ここいらで裏社会の連中も解き放ち、今の地獄が完成した訳だ。俺達はそこから1ヶ月くらい残って、神授才を使った戦闘も含めた実戦を積んでスキルアップして祖国に帰還した。だが帰還寸前でヒデが偶然、傀儡を通してヤバいものを見つけたんだ。

 

「え、何これ.......」

 

「どしたよヒデ」

 

「ミツ、ちょっとみんなを呼んできて。これ、本気でヤバいよ」

 

——アレは帰還を翌日に控えた朝だった。朝早くにミツの馬鹿でかい声に叩き起こされて、拠点にしてる部屋の一室に全員が集められた。

 

「ねぇ、みんな。僕達の任務、覚えてる?」

 

「勿論だ。天皇陛下を暗殺しようとした韓国を滅ぼし、ついでに隣の北朝鮮も滅ぼす、だろ?」

 

「それなんだけど、どうやら天皇暗殺を目論んだのは韓国じゃないんだ。実行は韓国だけど、大元の計画を練ったのは中国だ!」

 

——あの時は、最初「コイツ頭やられたか?」って思ったな。いきなり脈略もなく言われたからな。だが奴は傀儡を通して、極秘文書を見つけたらしい。その極秘文書には、例の暗殺作戦の概要やら何やらがビッシリ書かれていたんだ。流石に拠点に持って来てもらう訳にもいかないので、航空便で日本に届けて貰う事にした。

 

「なぁ、どうするリーダー?」

 

「どうするって?」

 

「俺達の任務は天皇暗殺未遂を企てた韓国を滅ぼす事だ。だがその首謀国は、韓国ではなく中国だった。目標を変えるか?」

 

「.......いや、一度帰還する。虎杖の判断を仰ごう」

 

——流石にこんな大事になっては、俺達の独断でどうこう出来る問題じゃない。ここは大人の判断に任せるべきと、あの時判断した。もしあそこで攻め込んでいれば、未来は変わったかもしれないがな。

 

 

 

 

「—————とまぁ、これが俺の過去話だ」

 

「なんというか.......」

 

「すごく壮絶よね.......」

 

もう凄すぎて、2人とも理解が追いついてない。だがそれでも目の前の男が正真正銘の化け物である事と、明らかに常人では耐えられない状況を生き抜いて来たという事は分かった。

 

「帰還後、俺達を待っていたのは凱旋ではなく懲罰だった。虎杖の奴は「やりすぎだ」と、俺達に懲罰と称して暴力を振るおうとしてきた。だが戦場で鍛えてスキルアップし、更に奴には日頃の恨みもあったのでボコボコにして返り討ちにしてやった。

だがこの一件も含めて、俺達の運命は最悪へと突き進んで行ったんだ。さぁ、続きを話そうか。10年前の、あの忌々しい作戦について」

 

夜はまだ続く。韓国での一件はあくまで、歴史の序章なのだ。今から話される作戦こそ、鴉天狗の親友達と東川蔵茂が死に、長嶺雷蔵が始まった話なのだから。

 

 

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