最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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約一年続いた、この『やはり最強提督の青春ラブコメはまちがいまくっている。』も本日最終回です。次回からは新章が始まります!!


第六十四話長嶺雷蔵

10年前 あの写真の場所

「にしてもまぁ、まさか俺達が出るハメになるなんてな」

 

「僕は公安とかその辺が行くかと思ってたよ」

 

「俺は特戦群」

 

「俺も公安だな」

 

——あの時の景色は今でもよく覚えてる。夕陽が綺麗な場所で、あそこで4人、今回の任務に対する愚痴を言い合った。無論、この任務が八咫烏としての最後の任務になるなんて思いもよらなかったさ。

 

「さーてみんな!アレを渡すよ」

 

そう言いながらヒデが、大きなケースを持ってきた。まるでロケットランチャーでも入ってそうな細長い形状のケースだったり、なんか明らかに3m近くあるケースだったり、様々なタイプがある。

 

「まずはミツ。ミツには十文字槍ね。名前は『桜吹雪』。刃長30cm、柄の長さは150cmあるよ」

 

「おぉ!!!良いじゃねぇか!!!!!!イメージ通り、いい槍だ!!!」

 

次にヒデがケースから出したのは、明らかに人の身長よりも長い超大型の日本刀だった。それをノブに渡す。

 

「ノブのは大太刀。名前は『月華』。刃渡り348cm、重量87kgのスーパーヘビー級だけど…」

 

「あぁ。俺なら問題なく、頑張れば片手でも振り回せる。ありがとう」

 

「次はリーダー。リーダーのは日本刀。こっちの蒼白いのが『幻月』で、こっちのが『閻魔』ね」

 

——初めて愛刀を手にした、あの時の感覚は今でも鮮明に覚えてる。手に取った瞬間に、まるで自分と刀の神経とか感覚とか血管とか、そういうのが繋がった気がするんだ。文字通り、刀と自分が一体化したような感覚、と言えばイメージしやすいと思う。

 

「で、最後は僕。僕のはこの『土蜘蛛』。棍棒だけど、スイッチで棘を出したり刃を出したり出来て、極め付けは大砲にもなるんだ」

 

「マジでヒデの能力は汎用性が高いのな」

 

「確か戦車なんかの兵器も操れるんだよな?敵に回したら1番厄介だな」

 

——俺の愛刀も、仲間達の持つ十文字槍、大太刀、棍棒も全てヒデが能力を使って作った物だ。いや、正確には作らせたという方が正しいか。ヒデの能力はさっきも言った通り、死者もしくは化け物を操り、死者を化け物に変えたりする能力だ。化け物の中には、そういうのが得意な職人系の化け物が居たらしい。ソイツらに頼んで作ってもらったのが、俺達の使う武器だ。

俺たちが使う武器ってのは、自身に宿る鬼達を元にしている。お前達も見た筈だ。オロチとの戦闘の時、それから俺が佐世保に襲撃を仕掛けた時に、刀を持った炎の鬼を見ただろ?アレだ。俺が纏うアーマーも、言うなれば鬼の身を纏ってる事になるらしい。この辺も詳しい所は分からないし、理解するつもりはないがな。

 

「武器も持ったし、そろそろ行くか」

 

「そうだな!」

 

「行こう!」

 

「行っちゃいましょうかねぇ!」

 

4人はそれぞれの黒い札を取り出す。長嶺は赤黒、ミツは白金、ノブは緑銀、ヒデは至極で文字や紋様が描かれている。

 

「我願うは、大和民族の火焔なり。この身は火焔と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が火焔は止められず。この火焔は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを焼き尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、火焔と成り、例え果てようと悔いは無し」

 

「我願うは、大和民族の雷光なり。この身は雷光と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が雷光は止められず。この雷光は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを貫き通す。我、眼前敵を排するその時まで、稲妻と成り、例え果てようと悔いは無し」

 

「我願うは、大和民族の烈風なり。この身は烈風と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が烈風は止められず。この烈風は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを飛ばし尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、猛風と成り、例え果てようと悔いは無し」

 

「我願うは、大和民族の冥界の軍勢なり。この身は軍勢と一体となり、冥界全てを支配せし王となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が軍勢は止められず。この軍勢は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを破壊の限りを尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、死霊と成り、例え果てようと悔いは無し」

 

札が空に舞い上がると、それぞれ東西南北から巨大な鬼が現れる。その鬼達は4人の身体に吸い込まれるようにして消えると、4人は空中に浮かび上がり、長嶺は炎、ミツは稲妻、ノブは風、ヒデはドス黒い何かに包まれて、それが晴れるとアーマーを纏った姿となった。

 

「行くぞ野郎共!!あの政権をぶっ潰そう!!!!」

 

——今回の俺達の任務は『国』ではなく『国家』を滅ぼす事だった。つまりあの頃の共産党政権を潰せ、という事だな。流石に世界の韓国と北朝鮮はやり過ぎだったからな。上でも結構揉めて、なんか大変だったらしい。こっちは完全に独立して、命令には従うが気に入らない相手は適当に潰してたからな。あの頃の上層部は、胃が痛くなっただろうよ。

話を戻そう。共産党政権を潰すとなると、流石に4人じゃ埒が開かない。というのも中国共産党ってのは、とにかく組織としてはデカい。何せ末端の党員まで含めりゃ、9200万人。その家族も含めると日本の総人口クラスの人数がいる。これだけの大所帯となると、トップ及びその周りを殺して「はい終わり」とはならねぇ。そこで今回の任務では、反乱軍に一構成員として加わる事になった。それも日本からの非公式とは言え、正式な支援としてな。

 

 

 

数時間後 中華人民共和国 上海

「ここが上海だな」

 

「なぁなぁ!ならさ、先に腹拵えしようぜ!!」

 

——上海に到着して街に到着した瞬間、ミツは速攻でこう言った。ノブは安定で突っ掛かったが、俺とヒデも腹は減ってたからな。適当な店で小籠包とか五目炒飯とか豚の角煮とかを食べた。丁度食べ終わったタイミングで、その店に武装警察が入って来やがった。

 

「全員動くな!!」

 

「な、何だ?何だ?」

 

「来て早々に武装警察かよ.......」

 

盾と警棒で完全武装状態の警官隊が10人ばかし店に押し入った。てっきり片っ端からボコボコにするのかと思いきや、隊長格の男が店主と話をしている。

 

「い、一体何の御用でしょうか?まさかお食事に来たわけではない、ですよね?」

 

「勿論だ。この店に反乱軍の構成員ないし、その協力者がいるという情報が入った。店を改めさせてもらう」

 

「は、はいぃ!」

 

——あの状況は非常に不味かった、なんて言うシーン何だろうが備えはあったんだなこれが。あの頃は丁度、上海やら香港やらがゴタゴタしててな。各地で小規模のデモが散発的に発生してた物だから、入り込みやすかったんだ。入り込んだら込んだで、色々あるだろうが入っちまえばこっちの物。子供という身分を最大限利用するまでって発想で、回避方法は既に策定済みだった。

 

「次は君達だ」

 

「僕達、旅行者」

 

「旅行者?」

 

「旅行者!3人、中国語、話せない。僕、話せる」

 

——本当は3人ともペラペラだが、会話する者を1人だけに絞ることで話の矛盾が生まれにくくなる。リーダーだった俺がこの演技をする事になったが、かなり面倒だったのを覚えてる。

 

「何処から来たんだい?親は?」

 

「日本!親、いない。僕達、パパの仕事場、見に行く」

 

「パパは上海にいるんだね?連絡は取れる?」

 

「取ったらダメ。これ、サプライズ」

 

武装警察の1人は頭を掻くと、隊長格の男に報告した。どうやらどうしようか、話し合ってるらしい。今度は隊長が来て、こちらに話しかけて来た。

 

「僕達、おじさんと話そうか。パスポート、持ってるかい?」

 

「パスポート?これ?」

 

「そうそう!えっと.......特段問題はない、な」

 

「僕達、捕まる?」

 

「大丈夫大丈夫!おじさん達のお仕事は、ここにいるかもしれない悪い人達の仲間を捕まえる事。君達は捕まえないよ。でも、もし悪い人とか変な人を見つけたら、すぐにお巡りさんとか近くの大人に伝えてね。これは返すよ。それじゃ、楽しい旅行をね」

 

——隊長格の男はすぐに店を去って行った。だが、隊長格の男はこちら側(・・・・)の男だったらしい。奴は俺に返したパスポートの中に、メモを仕込んでいたんだ。その通りの場所に行くと、例の隊長が待っていた。

 

「メモを読んで来たって事は、君達は日本の賛同者だね?」

 

「だとしたら?」

 

「いやいや、捕まえはしないよ。歓迎しよう、小さな同志達。私は革命軍第二行動隊、隊長の李王芳だ」

 

「鴉天狗、それが俺達の部隊名だ。俺はリーダーの、そうだな。煉獄とでも呼んでくれ」

 

——とまあ、こんな感じで革命軍と合流したんだ。すぐに本拠地に連れてかれて、そこで劉雨江と張趙雲と会った。劉のじいさんは今の中華民国首相、張のおっちゃんは中華民国軍総司令だ。

 

「君達が日本からの同志じゃな?歓迎しよう。私はこの中華民族解放戦線の司令官、劉雨江じゃ。こっちは行動総隊長、つまりここのナンバー2である…」

 

「張趙雲だ」

 

「早速じゃが、君達には明日の作戦に参加して貰う。この上海にある政府施設、警察署、軍事基地を襲撃。同時にこちら側についている部隊が蜂起し、中国全土で革命の狼煙が上がる寸法じゃ。君達には沿岸部に作られている、海軍の秘密基地を奪取してもらいたい。詳しくは趙雲に聞いとくれ」

 

——この後、張のおっちゃんから簡単に基地の全容を聞いた。どうやら、094型核搭載型原潜の秘密ドックらしい。この基地を奪取し潜水艦を潰す訳だが、普通に俺達だけでやれる規模だった。勿論、神授才に頼らずにな。だがまあ流石に却下されて、おっちゃんと俺達の混成部隊で突っ込む事になった。

 

 

 

翌日深夜 上海秘密地下ドック

「ここが、ドックへの入り口だ」

 

「いやいや。これどう見ても、単なるショッピングモールじゃん」

 

「この地下にあるのか?」

 

「あぁ、そうだ。付いてこい、こっちだ」

 

——中国軍もかなりぶっ飛んでいてな、単なる普通のショッピングモールが秘密基地への入り口だった。驚いたよ。スタッフ専用の出入り口から商品倉庫へと向かい、その一画の壁が入り口だった。その入り口の中に入ると、階段が続いていて、下り切ると潜水艦のドックが眼下に広がっていた。

 

「それじゃ手筈通r」

「あのー、ここは僕達がやっても良いですか?」

 

「え?」

 

「いや、なので、僕達だけで制圧してみても良いですか?その方がそちらも、僕達の力が分かるし」

 

ヒデの提案には一理あるが、それ以上に子供が戦ってる時点で思う所もある。だが無言を肯定と受け取った鴉天狗は、勝手に攻撃をおっ始めたのだった。

 

「行くぞ野郎共!!」

 

「っしゃぁ!!!!」

 

「暴れるとしよう」

 

「さーて、まずは誰から殺そうかな?」

 

——扉を蹴破って、中に有りったけの鉛玉を流し込んだ。この頃から、俺の戦闘スタイルは確立していたからな。今と似たような火力で捩じ伏せる戦法を好んで使ってた。というか、それは他のみんなも同じだったがな。

 

「お、おい!警報を鳴らせ!!」

 

「お、何々?警報鳴らしてくれんの!?」

 

「あぁ!!鳴らしてやるとも!!!!」

 

中国兵が警報器のスイッチを押して、警報が作動した瞬間、ミツは警報を押した奴を撃った。

 

「なら、アンタ用済み」

 

「コイツら子供だぞ!?!?」

 

「子供だからと、侮っては足元を掬われるぞ。こんな風に」

 

「コイツ、ショットガンを持ってる!!近くによるn」

 

ノブはノブでショットガンを両手に、子供故の身軽さを武器にして敵の懐から至近距離の散弾を警備兵共に食らわせていく。お陰でノブの通った道は、肉片が散らばってグロい。

 

「ねぇ、おじさん。死んで?」

 

「が、ガキが調子こいてんじゃねぇぞ!!!!」

 

「そう言うのは三下って、相場が決まってるんだよ?」

 

ヒデは虫も殺さなそうな顔をしながら、至近距離でサブマシンガンの弾丸をばら撒き手数で敵を圧倒していく。では、長嶺はというと…

 

「ヒャッハー!!!!皆殺しだぁ!!!!!!」

 

「こ、コイツが1番やばいぞ!!」、

 

「素早く死ぬ中国兵は雑魚の中国兵だ!!!!ちょっと抵抗するのは、ちょっと勇敢かと思いきややっぱり雑魚な中国兵だ!!!!」

 

軽機関銃を両手に持って、あっちこっち飛び回りながらフルサイズのライフル弾をばら撒き続ける殺戮装置と化していた。いつの間にやら中国兵は大多数が死に絶え、抵抗も散発的になり始めた。

 

「おーいシン!これ、使おうぜ!!」

 

「魚雷とクレーン、成る程!面白そうじゃん!!」

 

「そんじゃ行くぜ?えーっと、ここをこうして。おぉ、動いた動いた」

 

ミツは魚雷積載用のクレーンを動かして、魚雷を潜水艦の上まで運んだ。そこを長嶺がマシンガンで撃ち、クレーンと魚雷の接続を無理矢理分離。魚雷は潜水艦に命中し、大爆発を起こした。

 

「フッ、汚ねぇ花火だぜ」

 

「ミツにしては良い考えだね。ノブ、僕達も」

 

「あぁ。だが、アイツと一緒では芸がない。魚雷を水面に落とし、船首を破壊して沈めよう」

 

「あ、それ面白そう。ならクレーンは僕が動かすから、接続解除は頼むね」

 

「任せろ」

 

ノブとヒデは魚雷を一度水中に落とし、その後起爆させて潜水艦の船首を破壊。浸水させて沈めた。だが、それを見たミツは対抗意識を燃やす。

 

「野郎!!おいシン!!ならこっちは、魚雷を撃つぞ!!!!」

 

「は!?撃つって、どうすんだよ!!」

 

「1番最後尾のヤツの魚雷を、真ん中のにぶち込むんだよ!!!!」

 

「ここまで来たら付き合うよ。どうすりゃいい、キャプテン・ミツ」

 

どうやら『キャプテン・ミツ』がお気に召したのか、更にテンションの上がるミツ。艦長っぽい手振りで、シンに指示を出す。

 

「よーし、シン水兵!!これより、敵潜水艦を撃沈する。潜水艦に乗り込み、魚雷を装填するのだ」

 

「アイアイ・サー。キャプテン」

 

2人は潜水艦に乗り込んだのだが、勿論魚雷発射のやり方なんて知らない。気合いであれこれボタンを押すと、どうやら成功したらしい。船首の方から炭酸が抜けるような「ボシュッ」という音がなると、すぐに爆発が起きた。

 

「キャプテーン、戦果の程は如何ですか?」

 

「うーむ.......。む!敵潜水艦は火山の如し!!よくやったぞ、シン水兵。君を水兵から、鬼軍曹に昇格してやる」

 

「鬼軍曹って階級なのか?」

 

「.......なら軍曹に昇格だ!!」

 

この一部始終を見ていたノブは、今度はミツに対抗心を燃やして別の手段で潜水艦を潰した。こっちは潜水艦を前の炎上中の潜水艦にぶつけて沈めるという、結構な脳筋作戦であった。

 

「てっめぇ!俺の作戦をパクりやがって!!」

 

「パクってなどいない。言い掛かりも大概にしてもらおう」

 

「んだと、やんのかゴラァ!?!?」

 

「やってやろうじゃないか変態ドスケベ野郎!!!!」

 

——こんな敵陣のど真ん中で言い争いを、それもしょうもない内容でやってるなら敵からも突っ込まれるのがお約束というヤツだ。ここでもお約束が適用されて、すぐに兵士達が集まって来た。

 

「動くな!!」

 

「銃を捨てろ!!」

 

「人が話してるのか分からないのか?目玉ついてるのか?」

 

「テメェら、人の話を遮るなって習わなかったのか!?皆殺しだ!!!!」

 

「俺達もー」

「手伝うよー」

 

——まあ、それで兵士達が来ても即刻この世から永久退場させるがな。その後生き残った潜水艦2隻を、ハッチ開けたまま急速潜航させて水没させて、使える情報と物資は根こそぎ頂いて、秘密ドックを完全に制圧したんだ。張のおっちゃん?ずっと異次元の戦闘に見惚れてたぞ。

その後、2週間くらい上海の各地で戦い続けて、更に3週間くらい他の地方でも戦った。その頃になると、中国が北と南で完全に分断されてな。南は民主派、北は従来通りの共産党の支配地域って感じになった。この頃、俺達は中国軍の生物兵器研究施設に行ったんだ。そこで、俺はアイツと出会った。

 

 

 

革命開始より5週間後 中国人民解放軍 秘密研究所

「それで、ここが例の秘密研究所なんですか?」

 

「そうだ。と言っても今は放棄されてるから、問題は無いんだがな」

 

「.......あー、その割には歩哨いるけど?」

 

——俺達、鴉天狗と中華人民解放戦線、もう長いから今後はCNLFでいいや。そのCNLFからは張のおっちゃんと李のおっちゃん、それから元学者のCNLF構成員を数人で秘密研究所に向かった。

放棄されたって話だったんだが、歩哨が居たんだ。普通にな。しかもその内1人は、どういう訳か施設の方から逃げ出してきたのか血相変えて走ってきたんだ。取り敢えず、ソイツをとっ捕まえて情報を聞き出すことになった。

 

「あ、アンタらCNLFか?」

 

「だとしたら?助けを呼ぶか?」

 

「トンデモない!!寧ろ、俺を仲間にして欲しいくらいだ。俺は傭兵で、つい2日前にここに来たんだ。そこで俺は知っちまったんだよ.......。この研究所、単なる研究所なんかじゃねぇ。ここで行われてるのは、身の毛もよだつ極悪非道の研究だ.......」

 

「お、おいみんな。コイツ、何処かで見た事あると思ったら、あのガルム隊の2番機、ピクシーのラリー・フォルクだぞ!!」

 

——あぁ、そうか。オイゲンはそう言われても分からないよな。ラリー・フォルク。EU内乱という、ヨーロッパでの戦争に参加した凄腕の傭兵パイロットだ。右主翼が大破した状態で基地に生還した事と、TAGネームの『ピクシー』から取って『片翼の妖精』って呼ばれてる。今は1番機だったサイファーこと『円卓の鬼神』と共に、呉鎮守府に所属しているぞ。

 

「あぁ!ホントだ!!」

 

「煉獄、よく気付いたな」

 

「元々、飛行機に興味があったから雑誌を見てただけだ」

 

——まさか目の前の捕虜にした歩哨が、あのEU内乱で名を挙げたガルム隊の2番機様だったなんて誰も思っちゃいなかった。だが捕虜として、ここまで有益なことはない。傭兵ってのは、金で自分を売り込む兵士。金を積めば寝返る奴だっているし、主人が余りに非道を重ねたらこんな具合に裏切る。国への忠義なんて元から無い兵士は、情報も簡単に喋ってくれる。さらに言えば『片翼の妖精』だの『ガルム隊2番機』だのと、色々名声もあるから余計に嘘はつかない。

ピクシーからの情報によると、この施設はまだ稼働している事。中には新種の生物兵器が開発されていて、既に実戦投入間近まで迫っている事。その生物兵器はバイオハザードのゾンビウイルスみたく、人に感染させると突然変異を引き起こして様々な能力を発現させる事。このウイルスを劣化させた物もある事。後は警備の配置とか施設の構造とか、その辺も教えてくれた。このウイルスってのが例の髑髏兵で、劣化版がバーサーカーだ。

 

「それじゃ、行くぞ野郎共」

 

「俺達も行こう!」

 

張と李を筆頭とするCNLFに続き、鴉天狗達も研究所の中へと入る。研究所の中自体は警備も少ない上にピクシーがいるので、誰とも会わずにすんなりとサーバールームへと入ることが出来た。

 

「では、データ回収を開始します」

 

「頼む」

 

「趙雲、一応データを見てもいいか?何かあるかもしれない」

 

「いいだろう」

 

——CNLFのメンバーがサーバーからデータを抜き取ってる間、俺達とピクシー、張のおっちゃんは警戒に当たっていた。まあ「多分警備は来ない」とピクシーは言っていたが、念には念を入れて警戒していた。暫くすると李のおっちゃんが、俺達を呼んできた。「ヤベェのが出てきた」ってな。

 

「この記録、どうやらウイルス研究所はここだけじゃないらしい。他にも中国全土に4箇所ある上に、ここが1番小規模だ」

 

「なんて事だ.......」

 

「む?おい李!またメールが来たぞ」

 

ノブがメールに気付き、サーバーに直結しているPCを操作している李に伝える。すぐにメールを開いたのだが、そこには更に最悪の文章が綴られていた。

 

「.............おい趙雲、どうやら他の研究所のウイルスは既にロールアウトしてるっぽいぞ」

 

「なんて事だ.......。ならせめて、ここを破壊するぞ。念の為、爆薬を持ってきて良かった」

 

——今更だが、俺達の任務は研究所の調査が目的だった。と言っても、どんな研究を行なわれていたのかと、何か使える物や利用価値のある物は眠ってないかを調査するって物なんだがな。だがこうなった以上、ここを破壊してしまった方が良い。と思ってたんだが、基地の警報が鳴ってな。俺達は取り敢えず、出口目指して逃げた。

 

「こっちだ!!」

 

「おっちゃん上!!!!」

 

「ッ!?」

 

ミツが叫んだ瞬間、張の真上から灰色のボディスーツを着た男、髑髏兵がマチェットを構えながら振ってきた。どうにか張も背中に背負っている青龍刀を抜いて、間一髪の所でマチェットを防ぐ。

髑髏兵は攻撃が通らない事を悟ると、黒い霧に紛れてこちらの進路を塞ぐ形でワープ。さらに周囲に別の髑髏兵もワープしてきて、完全に進路を塞がれてしまった。

 

「コイツらが、例のウイルスに感染した連中か?」

 

「ワープするとか、どんなチートだ.......」

 

「だがやるしか無いだろ、お前達!!」

 

——初めて髑髏兵とエンカウントした時の戦闘は、とにかく大変だった。今みたいに経験がないから、動きの法則とか予備動作とかも分からなくてな。常に後手後手の攻撃か、どうにか間一髪の防御しかできなかった。その内、CNLFのメンバーが全員喰われて、李のおっちゃんも呆気なくやられた。生き残ったのは俺達と、ピクシー、張のおっちゃんだけになったな。

 

「クソッ!!奴等、何なんだよ!!!!」

 

「ワープするとか、どんな技術なんだ」

 

「リーダー、もうアレを使おうよ」

 

「俺も思ってた。お前達、アレを使うぞ!!!!おっちゃん、ピクシー!!30秒時間を稼いでくれ!!!!」

 

「ウィルコ!!!!」

「どうにか持たせる!!!!」

 

ピクシーと張に戦闘を任せてる間に、鴉天狗の面々は懐から札を取り出して呪文を唱える。そして鬼を呼び出しアーマーを纏い、あの武器を構えた。

 

「なんだそりゃ!?!?」

 

「お前達一体何者なんだ.......」

 

「話は後!!下がって!!!!」

 

驚く張とピクシーを尻目に、鴉天狗達が2人と入れ替わるように前衛に出る。何も知らない髑髏兵達は、無謀にも鴉天狗に戦いを挑むが神授才の前には無力だ。

 

「冥口!!!!」

 

「龍雷!!!!」

 

「鎌鼬!!!!」

 

「焔槌!!!!」

 

四者四様の能力を使い、一撃で全ての髑髏兵を殲滅してみせた。さっきまであんなに手こずり、殆ど全滅という被害を出した髑髏兵相手にである。

 

「お前達、本当に何者なんだ.......」

 

「「「「我ら四人、日出る皇国の盾にして、矛なり。我ら身命を燃やして、この皇国の権化とならん。我ら、ここに誓いて、古より続きし盟約に従いて、その力の全てを継承せん。それこそが我ら鴉天狗の使命なり」」」」

 

かつて鴉天狗に入った時に言わされた、祝詞に近い何か。これこそが鴉天狗の真髄にして、元々の使命。2人にそう語ると、どうやら深く詮索しない方が良い事を分かってくれたのか、それ以上聞こうとはしなかった。

 

「.......お前達、同志達の遺体の回収を手伝ってくれ」

 

「それなら心配すんな。電磁!!」

 

——ミツの能力で死体を手早く回収し、ついでに髑髏兵の死体も回収して俺達は拠点に帰還した。ここからさらに1ヶ月、各戦線で俺達は時にバラバラに、時に一緒に戦闘を続けた。ピクシーもCNLFに入って、一緒に戦闘機に乗ってドッグ・ファイトした事もあったな。

だが早い物で、遂に北京への大規模攻勢を行う事となった。俺達はこれの囮として、天津と唐山の境にある万里と呼ばれる要塞を攻めることになった。この戦闘が、俺達にとっての最後の戦闘となる。

 

 

 

研究所襲撃より1ヶ月後 大要塞『万里』 上空

「あれが万里か。にしても安直だよなぁ、ネーミング」

 

「ふん、シンプル・イズ・ベストという事を知らんのか」

 

「ほぉ。なら、そう言うノブはなんでつけるんだ」

 

「.......劉備曹操孔明関羽張飛呂布」

 

「有名な三国志キャラの名前全部並べただけじゃねぇか!!!!万里よりネーミングセンスねーわ!!!!」

 

「う、うるさい!!!!」

 

どうやらノブのネーミングセンスは、壊滅的に無いらしい。因みにミツの場合は「万里長城」という名前にする、とか言ってた。いずれにしろネーミングセンス皆無である。

 

「はいはい、お前達。仕事の時間ですよー」

 

——手始めに、比較的威力の強い技を放った。それで要塞の砲台とか機関銃陣地とかを破壊して、ついでにヒデの技で警備兵も殲滅してくれた。だがこの要塞、中が1番厄介でな。中に入ったは良いが、迷路みたく路が入り組んでてすぐに迷った。

 

「なぁこれ.......」

 

「完全に迷ったな.......」

 

「どうする?」

 

「.......焦ったい。全部破壊しちまえ!!!!」

 

——流石にこの意見はヤベェと思う。ノブは勿論、俺とヒデも普通なら止める。だけど、この時の俺達には時間が無かった。神授才のタイムリミットが迫ってたんだ。神授才はさっきも言った通り、アーマーを纏うと威力とかは上がるが、時間制限がある。その制限が来たらアーマーを再度使うまで時間が掛かる上に、神授才自体使えなくなる。どの程度の人数がいるか分からない以上、今は出来るだけ敵の頭数を減らしておきたい。それが俺達の本音だった。だから、使った。

 

「大光空斬!!!!」

 

「闇夜乱れ打ち!!!!」

 

「彗星斬撃群!!!!」

 

「千本突き!!!!」

 

——念の為、威力は高いがMP消費の少ない、武器の技を出した。そうそう、俺が使う奥義って言うのも、この神授才を用いた技の劣化版だ。彗星以外にも色々ある。

 

「壁もろいね」

 

「これがチャイナクオリティってか?」

 

「チャイナクオリティというより、こっちの技が強いんじゃないのか?」

 

「俺もノブの意見に賛成だ。にしてもまあ、大穴が空いた上に大半の兵士を消したくさいな」

 

——大方、火薬庫にでも技が命中したんだろう。大爆発を起こしてクレーターが出来上がった。当然、大半というか恐らく守備兵は全滅。消し飛ばした。もうここに用は無いんで、俺達は上に上がった。

上に上がった俺達を出迎えたのは、大きな満月と奴だった。

 

「中々に暴れてくれるじゃ無いか八咫烏。これは報酬上乗せして貰わなくてはな」

 

「誰だテメェ.......」

 

「ふふふ、ははは。我こそ死神、極東の死神だ!!」

 

——極東の死神と名乗った男は、ジェットパックか何かで空に浮いていた。手にはミニガンとロケットランチャーを装備し、背中には日本の刀を持っていた。一目で分かった、コイツはヤバいと。

 

「時間もないしな。始めようぜ?」

 

そう極東の死神が言った瞬間、奴はミニガンを乱射してきた。長嶺がすぐにシールドビットで弾丸を防ぎ、その間に3人が同時に極東の死神に襲い掛かる。

 

「甘いねぇ」

 

「ッ!?」

 

「嘘ぉ!?!?」

 

「マジか!!」

 

だが攻撃が当たる寸前に極東の死神は避けて、危うく3人の攻撃がお互いに当たりそうになった。

 

「まだまだ!!ヒデ、動きを抑えるぞ!!!焔槌!!!!」

 

「大蛇!!!!」

 

——俺達は戦った。とにかく戦った。全員が持てる全ての神授才を用いてな。だが段々とタイムリミットが近づいて来て、アレは確かヒデが『冥軍』を使った時だったか?丁度その時、アーマーの時間制限がきた。タイムアップだ。

 

「このタイミングかよクソッ!!」

 

「頼みのアーマーも時間切れでは、何の役にも立たないのでは無いかね?」

 

「あぁ、そうさ。だがな、俺達はまだ諦めちゃいねーんだわ!!」

 

——神童には神授才とは別にもう1つ、特殊な能力がある。能力って程パッとしちゃいないが、頭脳とフィジカルが他の一般人より格段に上になるんだ。俺が120mmの大砲とか、25mmとかの大口径拳銃を扱えるのも、ハーバード大学行く超天才的な頭脳を持ってるのも、それが理由なんだ。

この能力があるから、他の一般兵よりも善戦できると思ってた。だが現実はそう甘くなくてな、奴には一向に攻撃が当たらない。逆に向こうは的確にこっちの動きを防いでくる。

 

「おいリーダー!どうするよ、このままじゃジリ貧だ!!」

 

「わかってる!!だけど、気合いで戦うしかねぇだろ!!神授才が使えるまで、頑張って耐えるぞ」

 

「やるしかないか!」

 

「早く神授才が使いたいよ!」

 

神授才が使えずとも、近くの武器を手に取って戦い続ける4人。それを見て何を思ったのかは知らないが、極東の死神が徐に話し出した。

 

「君達も憐れだねぇ。まさか、飼い主に裏切られるなんて」

 

「.......極東の死神さんよぉ、ちょっとそれ詳しく話せ」

 

「君達は君達の上に裏切られたのだよ。私がここにいるのだって、君達の上層部からの依頼さ。確か虎杖高弥、とか言ったかな?君達はその辺の人間に疎まれているのさ。

おっと、どうやら時間切れのようだね。今の話は冥土の土産とでも、思ってくれたまえ。ここからは、彼らに任せよう」

 

——奴は俺達にそう言い残すと、忽然と姿を消した。その代わりに、今度は見た事も無い超大型の戦車が出て来た。SF映画とかに出て来そうな、大口径マシンガンなんかも付けた巨大戦車だ。こちらの手持ちは、マシンガンとかの対歩兵装備。対戦車兵器はおろか、グレネード類も持ってない。どう足掻いても、勝てない相手だ。

だから俺は1番に、前に飛び出した。

 

「俺がアイツを引き受ける!!みんな逃げろ!!!!」

 

——アーマー使用後の神授才が使えなくなる間でも、1つだけ例外的に使える技がある。MPを暴走させて、自爆する技だ。それなら戦車であっても吹っ飛ばせるからな。だがそれをしようとした時、ミツが俺にタグを投げ渡して前に飛び出した。

 

「シン!!お前は日本に必要な野郎だ!生きろ!!!!」

 

ミツは戦車に牽制射撃を加えながら飛びつき、能力を解放してMPを暴走させて戦車諸共自爆した。戦車は跡形もなく爆発し、ミツも遺体や遺留品すら残ってなかった。

3人は呆気に取られていたが、長嶺はこちらに接近してくるヘッドライトの群れを見つけて、一足先に現実に戻った。

 

「クソッ!!!!逃げるぞ!!!!!!」

 

——そこからは地獄だ。とにかく逃げた。田畑を越え、山を越え、森を越えた。とっくに神授才が使えるようになる筈なのに、何故か使えなくなっていたしな。俺達は東へ東へと逃げた。途中、大規模な戦闘に巻き込まれて残った俺達も被弾して、俺は確か足と腕、それから肩にも食らった。ノブも両腕と太腿と脇腹をやられて、ヒデは腹に派手に食らって生きてるのが不思議なくらいだった。

どうにか港まで出て来れて、そのまま適当な漁船をパクって日本を目指したんだ。だが海に出て数時間、ヒデの限界が来た。

 

「ごめん、僕は.......ここまでみたい.......。じゃあね、シン、ノブ」

 

——ヒデはタグを外して、止める間も無く海へと身を投げた。しかも態々、適当な工具箱か何かを抱えてな。飛び込もうとも思ったが、俺達も怪我で動けなかった。それから数日が経つと、ノブの太腿の傷が壊死し出したんだ。

 

「おいノブ!!大丈夫か!!!!」

 

「いや.......多分これダメなヤツだ.......。頼む、やってくれ」

 

「分かった.......。行くぞ!!」

 

長嶺は船の奥から持ってきた、魚解体用のナタを壊死してる部分と生き残って部分の境界辺りに刃を押し当てる。そしてそれを、引いていった。

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!いでぇ、いでぇよぉぉぉ!!!!!!」

 

——普段冷静でクールなノブが、痛い痛いって言いながら泣き叫ぶんだ。俺もナタを引きながら泣いた。泣きながら、ナタを引き続けた。切り落とした脚を海に投げ捨てて、傷口はすぐに布とロープで止血した。だがな、その翌日、俺達の乗る漁船はサメに襲われた。

武器はもう、ノブの脚を切り落としたナタ位しか無くてな。銃はそれまでの戦闘で弾切れになったり、弾詰まり起こしたりで捨ててんだ。俺達は危うくサメに食われそうになったんだが、今度はノブがタグを置いてサメのいる方に身を投げた。

 

「お前は生きろ!生きて、日本を守ってくれ!!」

 

——そう言って自爆したんだ。俺はそれからずっと泣いた。3人が遺したタグを見ては、懺悔するかのように泣いた。だがいつしか、哀しみは怒りに変わっていった。

 

(そうか.......。悪いのは、弱い俺じゃねぇか。もし俺がもっと強ければ、もっと知識があれば、もっと勇気があれば、みんな救えたかもしれない。そうか、そうだったんだ。ならもう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東川蔵茂なんて殺してしまおう

 

 

 

 

「—————そこからの事は、俺もよく覚えていない。気付くと俺は日本の病院にいた。親父の話によれば、俺は偶々、訓練中だった海上自衛隊のUS2に拾われて日本に帰還。生きてるのが不思議な位の状態で、実際ほぼ死にかけだったらしい。もう普通の方法じゃ生き返らないらしくて、僅かな希望に掛けるべく第603号計画の被験者に登録。実験は成功し、俺は艦娘の力を手に入れたんだ」

 

全ての話を終えた時、グリムとオイゲンはただ黙っていた。いや、オイゲンは声を押し殺して泣いている。

 

「それが総隊長殿の過去なのですね.......」

 

「あぁ、そうだ。復活後は取り敢えず、裏切り者全員を血祭りに挙げてビジネスを始めて、提督になったり霞桜を作ったりして今に至る。

さーて、それじゃグリム。後は頼むぞ」

 

「頼むって、どういう事ですか.......?」

 

「俺は暫く、ここから離れる。恐らく今回の一件、真に狙われているのは艦娘やKAN-SENではなく俺だ。俺はこのまま世界中を旅しながら情報を集める」

 

長嶺がそう言った瞬間、グリムは勢いよく立ち上がり長嶺の胸ぐらを掴んで壁に叩きつけた。

 

「またそうやって1人で戦うんですかッ!!!!貴方に取って私達は!!霞桜!!艦娘!!KAN-SENは!!邪魔者なんですか!?!?共に戦う価値もないんですかッ!!!!何故、共に戦えと仰ってくれないのですかッ!!!!!!!!」

 

「.......俺が今日、こうして話したのは決別の為だ。別に死にに行くわけじゃない。別ルートを進むってだけで、目指す目的地は同じだ。だから離せ」

 

「嫌ですッ!!!!!」

 

即答するグリム。それを聞いた長嶺は「そうか」と短く返すと、無理矢理腕を解いて部屋を出ようとした。だがそれを、八咫烏と犬神が止める。

 

「どうした、行くぞ」

 

「嫌だ!!ねぇ主様、考え直そうよ!!」

 

「我が主、我々はこれまで命令に逆らった事はない筈だ。だが今回のこの命令ばかりは、承服しかねるぞ」

 

「いいから!」

 

「怖いのだろう?また家族が、目の前で殺されるのが」

 

八咫烏の言葉に、長嶺は黙った。

 

「主は佐世保鎮守府の一件で艦娘とKAN-SENが攫われて、あの時の事がフラッシュバックした。また殺されるかもしれない。また守れないかもしれない。そう考えてしまっているのだろ?また殺されてしまう所や、死んでいく様を見たくないのだろう?だから、情報収集を口実に逃げようとしている。

我が主よ、主の家族は強い。主が思う以上にな。だから、家族達を信じてやろうではないか。主は家族にとっての大黒柱であり灯台。主が消えれば忽ち、家族は崩壊し散り散りとなる。一方の主も、家族が必要な筈。故に、ここに残るべきだ」

 

「そうだよ主様。主様が思ってる以上に、主様の家族は主様を必要としているんだよ。これまで何度も、家族のピンチを救ってきたのは誰?主様でしょ?それが無ければ、少なからず数が減っている筈だよ。だから、残ろう?」

 

八咫烏と犬神がそう説得すると、長嶺は少し考えてから溜め息を吐いた。こうなった以上、逃げるのは骨だ。ここに残った方がリスクあるが、家族がいるのは心強い。

 

「.......ねぇ、指揮官。外を見て」

 

「は?外?」

 

オイゲンにそう言われたので、カーテンを開けて外を見る。そこに居たのは艦娘とKAN-SEN、そして霞桜の隊員達が居たのだ。

 

「実はさっきまでの話、これで全部放送してたのよ」

 

そう言ってオイゲンは、犬神の顎の下に仕込んであった小型マイクを外して長嶺に見せる。つまり、長嶺の過去話は全部聞かれていたらしい。

 

「それに、これ見て」

 

「こちらのも、どうぞ見てください」

 

2人が見せたスマホの画面には、爆速でメッセージが投稿されている。その全てが簡潔にいうと「この鎮守府にいて欲しい」という物だった。これが、ここにいる自慢の家族達の総意なのだ。

 

「.......どうやら、ここを出て行くには全員をボコボコにするか殺すかしないといけないようだな。やめやめ。おう、オイゲン。それ貸せ」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「おう、聞こえてるな。我が親愛なる仲間達。これが、これこそが俺の過去であり、俺を俺たらしめる物だ。幻滅した者、嫌悪感を抱いた者、色々いるだろう。去りたければ去っていい。止めはしない。生活も保障しよう。

だがもし、俺の過去を知っても尚、俺について来るというのなら、今までと同じように付いてこい。俺がお前達の先頭で道を照らし続け、お前達が集う灯台になってやる」

 

次の瞬間、外から様々な声が響いた。何を言ってるのかは、正直声が重なりすぎて分からない。だが聞いている感じ、どうやら長嶺に付いていくと決めたらしい。

 

「総隊長殿、これが答えなのでは?」

 

「指揮官。私達、これ位であんたを見限る程、諦めの良い連中じゃないわよ?少なくとも、私は指揮官が行き着く先までついて行くから」

 

2人の家族からそう言われた時、長嶺は目頭が熱くなるのを感じた。咄嗟に顔を上げて、空を見る。いつの間にか月は沈み、朝日が東の空を染め始めている。

 

(.......お前達、どうやら俺はまだそっちには行けそうにないらしいよ。でも、俺は、最高の家族が出来た。コイツらと生きてみるわ。だからまあ、死ぬその時まで、少し待ってくれ)

 

「さーて、野郎共!!仕事はまだまだ山積みだ。鎮守府を再建しねーと、深海棲艦やその他大勢の敵を出迎えてやれないからな。今日も江ノ島鎮守府、お仕事開始だ!!!!」

 

長嶺は漸く、真の意味での家族を得た。それも1,000人以上の大所帯。ある意味、ここが彼らの物語のスタートラインなのかもしれない。

 

 

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