最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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もう知っている方もいるかもしれませんが、今週は最強国家の方も投稿しております。良ければぜひ、ご覧ください。


第六十七話ハンティング

同時刻 総武高校 体育館

「開始早々でこれとか、この学校は呪われてんのか.......」

 

「長嶺さん達、今も戦ってるのかな?」

 

「多分そうっしょ。きっと、あの人達なら守ってくれる筈っしょ!」

 

昨日、総武高校は再び開校した。襲撃で色々壊されたが、幸いそれは体育館のみであり、残りは精々ガラス割れたとか、血糊で汚れたとか、その程度だったので再建工事は案外早く終わったのだ。さらに娘の雪乃によるやらかしで権威が失墜した雪ノ下家が、全面協力して再建工事に取り組んでくれたのもあって予定より早かった。

生徒と教職員は襲撃後、1週間程はホテル軟禁であったが以降は自宅待機となった。だがその間も事情聴取は続けられており、更には公安等による機密保持の講習なんかも受けさせられており、ようやく昨日、マトモに外を出歩ける様になったのだ。だが、このザマなのである。

取り敢えず今は学校の体育館に全校生徒が待機している状態であり、今後、ここに近隣住民が避難してくる事になっている。

 

「みんな!大丈夫!!きっと自衛隊が助けに来てくれるさ!!」

 

みんなの王子様(笑)の葉山が、みんなを元気付けようとそう叫ぶ。だが知っての通り、普通の兵器では深海棲艦はどうにもできない。駆逐艦や航空機なら頑張れば倒せるのだが、巡洋艦以上の艦級は恐らく核でも使わなければ倒せない。故に艦娘がいる。これは全世界の国民レベルの共通認識であり、それを知っている以上、葉山の意見に耳を貸す馬鹿はいない。

 

「ねぇ、何か聞こえない?」

 

誰かが、そう呟いた瞬間だった。体育館に爆弾が落下し、爆発したのだ。この爆発で生徒が一気に30人は吹き飛び、負傷者も出た。勿論、体育館の中は大パニックである。

 

「爆弾が降ってきたぞ!!!!」

 

「逃げろ!!逃げるんだ!!!!!!」

 

一斉に体育館のドアへと殺到し、我先に出ようと殴ったり叩いたりして、終いにはドミノ倒しになるわで大惨事である。

 

「やべーっしょ!逃げるしか無いっしょこれ!!」

 

「待て戸部!!」

 

「何!?さっさと逃げないと、みんな死ぬっしょ!!」

 

比企ヶ谷はこのホテル軟禁の間も、実はちゃっかり鎮守府にいた。その時、興味本位で長嶺に聞いていた事を思い出したのだ。

 

 

「なぁ長嶺?」

 

「どしたよ比企ヶ谷」

 

「学校の体育館とかにみんなが避難してる所に爆弾降って来たら、一体どうなるんだ?」

 

「おぉ、いきなりだな。そうだなぁ、多分みんな大慌てで逃げようとする。死の恐怖の前に冷静な判断なんざ、まず無理だろうよ。戦場を知らん奴は特にだ。だから多分、落ちて何十人か吹き飛んだ瞬間、一斉に我先に出口を目指す。そこで混乱が起きて、乱闘になったりもするだろう。

だからそんな時は落ち着いて、別の出口を探せ。初動で冷静じゃ無い大人数について行くのは、逆に危険だ。どうせ死が間近に迫ってるなら、自分の意思で道を切り拓いたほうが良い。死んだ時も胸張って死ねる。それに案外、そういう時に働く勘ってのは案外当たるからな。

『戦場では冷静さを欠いた者から死ぬ』これは戦場での絶対ルールだ。爆弾なり砲弾なり、そんなのが落ちて来た瞬間、いつもの平和で楽しい日常は終いだ。落ちた瞬間、そこは既に戦場。常に冷静に、例えどんな屈辱を味わおうと、血の海の中を進もうと、生を諦めなかった者達が生き残る世界。命を全ベットして、全力のギャンブルをする場所だ」

 

 

「『戦場では冷静さを欠いた者から死ぬ』いいか、ここはもう戦場なんだ!落ち着け!!あそこに飛び込んでも死ぬだけだ!!」

 

比企ヶ谷は落ち着いて周りを見渡し、自分の記憶と体育館を照らし合わせた。ふと、1つの扉が目に入った。あそこは体育館倉庫で、主にボールだとか得点表だとかの小物が入っている。そしてその奥に、そのまま教室棟に続く通路があるのだ。しかも、あそこの鍵は掛けないことになっていた筈。

 

「みんな、こっちだ!!」

 

いつの間にか集まって行った生徒会の面々や一部の生徒を引き連れて、教室棟へと逃げ込む。その道中、街の姿が見えたのだが既に大惨事だった。あちこちから煙が上がり、爆発音が鳴り響き、サイレンがそこら中で鳴り響いている。まるで映画の紛争地域の様であった。

 

「アンタ、宛はある訳!?」

 

「鎮守府だ。三浦も分かるだろ?あそこなら、きっとどうにかなる」

 

僅かな希望だが、今のこの状況では賭けるには十分である。生徒会のメンバーを先頭に、駐車場のマイクロバスまで走る。ここの学校は警備がザルなので、マイクロバスもキーが差し込みっぱなしなのだ。因みにこれは遠征にも行くサッカー部だった、戸部からの情報なので信憑性は高い。

 

「みんな乗るんだ!早く!!」

 

「みんなー!急いでー!!」

 

こういう時の葉山と由比ヶ浜は、サクッと人を纏められるので案外有能らしい。比企ヶ谷達がどうやって動かすか試行錯誤してる間に、葉山と由比ヶ浜がその辺にいた生徒をバスに乗せていた。

 

「先輩、どいてください!」

 

「うおっ!?」

 

「あ、アンタ運転できんの?」

 

「俺の家、車の修理工なんで!」

 

顔も名前も知らない一年生が運転席に滑り込み、素早くバスを動かす。

 

「行きますよ!!」

 

アクセルを踏み込み、バスを急発進させ校門を目指す。車用の門は引き戸ではなく、前後に稼働するタイプのヤツなので多分車でも突破できるだろう。

 

「何かに掴まるんだ!!!!」

 

葉山が叫び、全員が椅子の前についてる手摺りを掴んで、衝撃に備える。バスは門を突破し、市街地へと出て行く。

 

「所で、行き先は?」

 

「避難所だ!!」

 

「葉山先輩、避難所って何処にあるんですかぁ?」

 

「そ、それは.......」

 

一色の指摘に黙る葉山。一応の避難所は今さっき門をぶち破って逃げて来た総武高校なのだが、バスの中にいる生徒達は誰1人として覚えちゃいない。

 

「お前、江ノ島は分かるか?」

 

「江ノ島っすか?分からなくは無いっすけど」

 

「取り敢えず、東京方面に向かってくれ。東京経由で神奈川に入り、江ノ島を目指す。長嶺提督なら、多分どうにかしてくれんだろ」

 

他の者達は希望である避難場所の候補が見つかったことで安堵しているが、葉山だけはその限りでは無かった。

 

「ふざけるな!!あんな、あんな奴を頼るなんて!!」

 

「そうね。それに関しては私も同感よ」

 

「そうだよ!!クワタンの手は借りたく無い!!!!」

 

自業自得なのだが自身の中では「桑田が悪い」になってる雪ノ下と由比ヶ浜もそれに同調し、バスの中が一気に凍り付く。

 

「あんさぁ、アンタ達何言ってるのか分かってんの?今の状況で、確実に助かるのは江ノ島しかないっしょ?」

 

「アンタらの個人的怨恨で、私達の命まで危険に晒すの辞めてくれる?アタシもさ、妹と弟の安否わからなくてピリピリしてんの。マジでそういうのイラつくんだけど」

 

三浦と川崎が反発するが、却って火に油を注ぐ結果となり車内は大荒れである。その後もヒートアップして大喧嘩になるが、バスが急停車した事でそれも止まった。

 

「あー、先輩先輩。これ、どうしましょう.......?」

 

「なっ.......」

 

目の前に真っ黒な女性が居たのだ。しかも周りには黒い魚みたいのもあるし、女性自体、腕が大砲の様になっている。初めて見るが、恐らく深海棲艦なのだろう。

 

「に、逃げろ.......。逃げるんだ!!」

 

「はい!!!!」

 

バスを急いでバックさせるが、すぐに気付かれて砲弾が近くに命中してバスが何回転かして、最終的に横転して止まった。シートベルトを締めていなかった者は、何人かが車外に放り出されてしまった。

 

「い.......イテェ.......」

 

比企ヶ谷を鈍い痛みが襲う。どうにかシートベルトを外そうと奮闘していると、窓枠の外にさっきの深海棲艦が飛び乗って来た。

 

「死ネ。人間」

 

砲を向けて、こちらを覗き込む。もうダメだと思ったその時、その深海棲艦の頭が青い血を撒き散らしながら消し飛んだ。

 

「おいおい。生徒会長を筆頭に学校のバスをパクって集団脱走とは、全く恐れ入るな。しかもこんなタイミングで。なんで呼ばないかな、そんな面白い事するなら喜んで力貸すぞ?それとも何か?桑田真也は、いつの間にか生徒会クビになったってか?」

 

深海棲艦が居たその場所には、不適な笑みを浮かべる男が立っていた。長嶺雷蔵である。

 

「長嶺?なんでここに.......」

 

「説明は後だ。さっさと逃げねぇと、奴らが来る。今出してやる」

 

長嶺は愛刀の幻月と閻魔を抜き、バスの屋根をぶった斬る。そのままシートベルトを外し、取り敢えず出せる奴から順に引っぱり出して行く。

 

「むむ!?おぉい長嶺よ!!!!また敵が迫っておるぞ!!!!!!」

 

「心配すんな材木座。敵の動き、装備、戦術、全て感じ取ってる。それに、アイツらに出番をやらないと俺がシバかれちまう。

と、いう訳で。野郎共、やーっておしまい!!」

 

次の瞬間、上空を霞桜の隊員達が竜宮ARを乱射しながら通り過ぎて行く。それだけではない。各大隊長達もビルの屋上から降って来た。

 

「プライマスの試し撃ちにはもってこいです!!」

 

「落下中だとはいえど、狙撃はできるのだよ諸君!」

 

「素材一杯。狩る」

 

「ハウンドも唸るぜ!!!!」

 

「ワイヤーって、便利なのよ、ね!!」

 

「オラオラオラオラァ!!!!紫電一閃じゃ!!!!!!!」

 

それぞれの獲物を使いながら攻撃を加え、下にいたイ級éliteを殲滅。豪快に着地する。その後方にいるハ級だって、コイツらが狩る。

 

「吹雪の術!!」

 

「翼扇!!」

 

犬神と八咫烏だって、何だかんだ久しぶりの戦闘だ。大暴れである。

 

「あら。私達の分、取られちゃった」

 

「え、エミリアちゃん!!」

 

生徒達が戦闘を見ている間に、いつの間にかオイゲンが後ろにいた。オイゲンだけではない。長嶺の部下である艦娘とKAN-SENの一部もいた。

 

「心配すんな。まだいっぱい後方にいるさ。これから嫌って程戦わせてやるから、今位はアイツらに譲ってやってくれ」

 

「ふぅん。楽しめそうじゃない」

 

「あぁ。楽しめるとも。よーし、野郎共傾注!これより状況を説明する。現在房総半島の沿岸部、取り分け東京湾側から深海棲艦が大量に上陸してきている。俺達の任務は、全部狩る事だ。間も無く千葉県一帯は、無菌室状態になる。そうなれば、もう俺達の世界だ。自衛隊の偵察隊によれば、姫級の存在も多数確認されている。いつもの様に霞桜はハウンド(猟犬)、艦娘とKAN-SENはハンター(狩人)として動け。

輸送隊は一度帰還し、車両を持ってこい。霞桜は艦娘とKAN-SENの各隊と協力し、狩りを開始しろ。艦娘とKAN-SENは各隊旗艦が、自身の仲間を纏めろ。あ、そうだ。一個分隊ばかり俺に付いてくれ。では行くぞ、出撃!!」

 

この命令が出ると霞桜の面々はグラップリングフックかジェットパックで飛び上がり、後ろの艦娘とKAN-SENの面々も動き出した。

 

「総長、うちの分隊を使ってくだせぇ」

 

「あぁ。ありがとう」

 

バルクの第三大隊から第八分隊を借り受け、指揮権を譲渡して貰う。まだバスに挟まってる連中を引っ張り出して貰う様頼み、長嶺は一帯の偵察にでも出ようかと思っていた時だった。

 

「指揮官。私もそっちに行っていいかしら?」

 

「俺は構わんが、ヒッパーはなんて言ってる?」

 

『そっちで引き取ってちょうだい。こっちじゃ面倒見きれそうにないわ』

 

「あー.......。大変ね、そっちも」

 

ヒッパーから悲痛そうな声で許可も出たので、オイゲンはこちらについて貰う。

 

「総長!!」

 

「メタルバック、どうした?」

 

「あの、この子どうっすかね?」

 

第八分隊の分隊長であるメタルバックに連れてこられたのは、バスの運転席であった。横転した時にでも刺さったのだろう。無数の釘が右胸に刺さっていたのだ。

 

「うっ.......あ.......」

 

「無理だなコイツは」

 

「無理って、なにが無理なんだ?」

 

比企ヶ谷がそう聞いて来た。血もあんまり出てないし、素人目にはそこまでの大事には見えないのだろう。だが、この後輩はもう助からない。

 

「そのまんまさ。おう兄ちゃん、首は動かせるな」

 

コクリと頷く後輩。だが声は出さないらしい。

 

「悪いが、お前さんは助けられそうにない。胸に刺さった釘が、肺に穴を開けている。既に息苦しいと思うが、今後更に苦しくなっていく。恐らく最終的には窒息か、血圧低下によるショックで死ぬ事になる。悪いが助けられそうにない。

だが幸い、楽にはしてやれる。もうこれ以上、苦しまなくてもいい。お前が選べ。楽になりたいのなら、2回首を振れ」

 

そう言うと後輩は静かに、2回、確かに首を振った。もう楽になりない、そう願った。

 

「よし。メタルバック、銃を。俺の銃じゃ威力デカくて、頭を消し飛ばす。お前ので撃たせてくれ」

 

「へい」

 

「.......お前、名前は」

 

「.......えな.......み..............か.......ける.......」

 

「江南翔。いい名前だ。お前は、あそこにいるだけの人を生かした。お前は英雄だ。歴史には名は残らないが、俺達はその名前、覚えておくぞ。23名の生徒を救った、若き英雄の名を。ご苦労だった」

 

パン!

 

頭に9mm弾を撃ち込んだ。すぐに衛生兵のギャラワンが脈を確認する。

 

「.......死亡確認」

 

「お、お前今、殺したのか.......。後輩くんを殺したのか!?」

 

葉山が背後から掴み掛かってくるが、反射的に素早く別方向に投げ飛ばす。だが葉山すぐに起き上がり、長嶺に対して色々文句を言ってくる。

 

「人殺し!!!!この悪魔!!!!」

 

「そうさ。俺が殺した。それの何が悪い?俺は死を提案し、江南翔は死を望み、それを叶えた。何も悪かねぇーよ。

それに、悪いがここはもう戦場だ。ここでは甘ったれた事言った瞬間、死ぬぞ」

 

「医者でもないのに人の生き死にを認めるなんて間違ってる!!!!」

 

「あ、なに。そんな事?それなら問題ねーよ。偽造身分だったし公式記録にも残っちゃいないが、一応これでもハーバードの医学部卒業してるし。証拠は何もないがな」

 

長嶺の場合、大体の反論は全て正攻法で捩じ伏せれるだけの経験がある。さっきの診断も、医者としての判断なのだから文句言われる筋合いはない。

 

「に、日本では安楽死は認められてない!!それに君がやったのは、委託殺人だ!!!」

 

「葉山ー、お前俺の言った事忘れてんのか?俺達は法律が適用されないんだわ。別にこの場でテメェら纏めてぶっ殺そうが、銀行で金を盗もうが、国会議事堂に爆弾投げ込もうが、ホコ天に車で突っ込んで機関銃乱射しようが、全く罪にならねーの」

 

「そんなの間違ってる!!!!」

 

「それは俺じゃなくて、国に言ってくれ。俺達は国に存在されて欲しいと願われたから、今こうして存在してる。まあとにかくアレだ。俺達の邪魔はするな。

テメェら、いいか!別に俺達はお前ら一般国民が30人死のうが、30兆人死のうが知ったこっちゃない!!だが目の前で死なれるのも目覚め悪いから助けてやる。ただし、俺達の言う事は絶対服従だ!!別に自分で好きに逃げて貰っても構いはしない。付いてくる付いてこないかは、好きに決めろ。だが付いてくるなら命令に従え!!」

 

長嶺が声高に叫ぶ。だがどうやら、全員が長嶺に従うしか道しか無いと理解していた。葉山、雪ノ下、由比ヶ浜も何だかんだ言っているが、これしか道が無いと分かっている。この状況で1人逃げても、すぐに死ぬ。ならまだ、固まった群れで動いた方がマシだということだ。

 

「.......良いだろう。付いてこい。それじゃ移動開始、と言いたいが敵が来た」

 

長嶺は素早く阿修羅HGを引き抜き、構える。オイゲンもすぐに艤装を構えた。

 

「総長、敵は?」

 

「.......おぉっと、コイツは姫級が混じってる。いきなり猟犬の出番、お預けだ」

 

「なら俺達は、ガキ共の肉壁でもやってますよ」

 

生徒達を路地の奥に連れ込み、その前を隊員達が平泉を展開して固める。今、通りには長嶺とオイゲンしかいない。

 

「そういや、俺達がガチの共闘って初めてだな」

 

「ふふふ。愛の共同作業、ってヤツかしら?」

 

「戦闘でか?愛の共同作業ってなら、ケーキ入刀だろ普通」

 

「あら、なら敵に入刀すれば良いわ」

 

「グロいわ!」

 

一応今、戦闘前なのだがこの緩さ、流石としか言いようが無い。こんなバカ話をしていると、敵が目視範囲に到達した。編成は駆逐棲姫2、リ級élite4、イ級élite8。取り敢えず、半々で分ければちょうど良い。

 

「それじゃま、好きに暴れてくださいな。鉄血のエリートさん」

 

「そうさせて貰うわ」

 

次の瞬間、長嶺は飛び出して、オイゲンは反重力装置で空を飛ぶ。オイゲンは上空から、203mmSKC連装砲を乱射し弾幕を展開。敵を釘付けにして周りの取り巻きを削る。

 

「火力全開!Feuer!」

 

一方の長嶺は八咫烏から風神HMGと雷神雷神HCを受け取り、弾を避けつつビルの壁を走る。

 

「悪いな!陸は俺のホームグラウンドなんだわ!!」

 

そして走りながら、風神の弾幕を浴びせてこちらも雑魚を優先して削り取る。

 

「ヤラセハ.......シナイ.......ヨ..............ッ!」

 

そう言って駆逐棲姫の1人が、オイゲンに魚雷を投げた。まるでミサイルかの様に飛んでいく魚雷に、オイゲンは気付くのが遅れた。

 

「ッ!?」

 

「そのまま」

 

だが勿論、自らの愛する女を目の前で傷付けさせる事なんて許さない長嶺が、しっかり風神の弾幕で魚雷を迎撃する。

 

「ありがと、指揮官」

 

「ははっ、良いってことよ!」

 

その後も着実に敵の数を減らし続けていくのだが、生徒達、正確には葉山が飛び出そうとして大変だった。

 

「エミリアちゃんが危ない!!助けなきゃ!!!!」

 

「はーい、坊主。ストーップ」

 

「止めないでください!!でないとエミリアちゃんが!!!!」

 

隊員のナバラが葉山を羽交締めにして動きを止めるが、それでも尚どうにか抜け出そうと踠く。

 

「兄ちゃん、心配せんでも愛しのエミリアちゃんは死なねーよ」

 

「深海棲艦相手に1人で戦ってるんですよ!!!!しかも長嶺のヤツ、エミリアちゃんの足を引っ張るに決まってる!!!!」

 

それを聞いた分隊の隊員達は思わず吹き出し、そのまま大笑いした。ある物は壁や地面を叩いて、またある者は笑い転げ、終いには笑いすぎて軽く呼吸困難になってる者までいた。

 

「な、何が可笑しいんですか!!!!」

 

「いや、だってねぇwww」

「長嶺がエミリアちゃんの足を引っ張るってwww」

「は、腹痛ぇwww」

 

「はいはいお前達www。その、あったwwwりにwww」

 

「分隊長もダメじゃ無いっすかwww」

 

「あーwww、ごめん無理止まらんwww」

 

顔を真っ赤にして必死に訴えかけてくる葉山が、余計に笑いを誘ってくるのだ。流石に周りの生徒達も困惑している。

 

「はぁー、笑った笑った。久しぶりにここまで笑った。

それでえっと、総長がエミリアちゃんの足を引っ張るだっけ?まずエミリアちゃん、オイゲンちゃんの強さから言っておこうか。あんな可愛らしい形の美女だが、その強さは彼女の陣営である鉄血でも指折りで、江ノ島にいる重巡の中でも単純な個体性能こそ中の上だが、その練度はトップ10に食い込む。姫級相手に1人でも立ち回れる、数少ない存在だ。

さて、それで我らの総長だが、あの人はもう強い弱いの次元が烏滸がましいレベルの方だ。例え江ノ島にいる全員、艦娘と我々が全力で襲い掛かろうとも、余裕で打ち負かす。君達が楽しい人生を歩んでいる間、総長は常に戦場にいた。そう、冗談抜きで文字通り国を滅ぼしたお方だ。練度云々で考えるなら、足引っ張るとしたら寧ろエミリアちゃんの方だ」

 

「そんなバカな.......」

 

「だったら見てみるかい?エンプティ!」

 

「ドローン、行きまーす!」

 

地味に1年ぶりの登場、ドローンの『サイレント』を使って2人の戦闘を撮影する。詳しくは第三十六話『二足の草鞋』を見よう。

サイレントが2人の上空に差し掛かった時、ちょうど戦闘は駆逐棲姫との対決であった。まずはオイゲンの方から見てみよう。

 

「オチロ!オチロッ!」

 

「効かないわよ、そんな攻撃」

 

オイゲンはスキル『破られぬ盾』を使い、敵弾を完全に無効化する。逆に至近距離で魚雷を撃ち込み、ついでに艤装で齧ってもらう。

 

「ウグゥ!!!!」

 

「これでチェックメイトね」

 

最後は至近距離で203mmSKC連装砲の一斉射で絶命した。一方の長嶺は、いつも通りであった。

 

「化ケ物メ!!!!」

 

「化け物舐めんな!!」

 

空中から風神を乱射して弾幕を張り、雷神でダメージを与える。そして最後、着地した瞬間に刀を抜く。

 

「終わりだ」

 

そのまま刀で首を刈り取り、一刀で仕留めた。刀を勢いよく振ると、綺麗に青い血が地面へと飛び散る。その姿は、美しいとすら思える。

 

「相変わらず、恐ろしい戦い方ね」

 

「いつもの事だろ?」

 

2人や隊員達は涼しそうだが、生徒達はそうではなかった。目の前で繰り広げられた戦闘に、恐怖した。だが、唯一この7人は違った。

 

(これが長嶺の戦い方.......スゲェ.......)

 

(長嶺くん、怖い筈なのにカッコいいっしょ!)

 

(何だろう、戦い方が綺麗.......)

 

(これが、これこそ我の求めていた侍だぞ!!よし、これから長嶺は師匠と呼ぶぞ!!!!)

 

(長嶺のヤツ強すぎだし。でも、何だろう。怖くない。寧ろ、何か憧れるっつーか、うぅー分かんないし!!)

 

(これが長嶺の本気。ふぅん、良いじゃん。確かにコイツになら命預けられるわ)

 

(先輩の戦い方、ぶっ飛んでるのに、怖いのに、美しいです.......)

 

そう。比企ヶ谷を筆頭とした、生徒会の面々である。彼らは「怖い」や「恐ろしい」ではなく「美しい」や「かっこいい」という、真反対の感想を抱いた。これだけでも、霞桜の隊員に迎えるだけの素質がある。

 

「お前達、もう大丈夫.......って盗み見してたのかよ」

 

自身の上空を飛ぶサイレントを見て、初めて盗み見されてた事に気付いた。別に見られて減る物でもないし、構いはしないが生徒に何かあったら面倒である。

 

「いやー、すみません。この金髪兄ちゃん、葉山とかいう奴がエミリアちゃんエミリアちゃんとうるさくてねぇ。黙らす為に見せた次第です」

 

「あら、王子様ったら、まだ私の事を気にしてくれてたの?」

 

「ぼ、僕はあの時に君に言った筈だよ。君が俺を好きというまで、自分を磨き続けるって」

 

「.......そう。嬉しいわ」

 

勿論このオイゲンの発言は、あくまで社交辞令。身も心もしっかり長嶺がゲッチュしてるので、付け入る隙はない。のだが、哀れな王子様は本気でオイゲンが肯定してくれていると思ってしまったらしく舞い上がってる。

 

「お前達、そろそろ行くぞ」

 

「あのー先輩?」

 

「ん?どうした一色」

 

「行くって、どこに行くんですか?」

 

「流石に陸をタラタラ歩いて行く訳にもいかないし、何より俺達は特性上、他の公僕に見つかるのは避けたい。そこで、空路でお前達を安全な場所まで輸送する。

だが生憎と、この辺り一帯は攻撃でボロボロになっちまってLlanding Zone、つまり着陸場所が少ない。だが幸い、3500m前方のホテル『ROYAL OKURA』の屋上にヘリポートがあるから、そこまで行くぞ。無論歩きだが、頑張れ」

 

一応他にも色々公園なんかはあったりするのだが、遊具が邪魔だったりで降下できないのだ。更に今は輸送機が鎮守府に帰還して、色々装備を輸送して貰っている最中なので呼んでもすぐには来られない。何処かに籠城するより、移動した方が安全なのだ。本来なら移動は逆に危険かもしれないが、今回は戦の玄人が大量にいるので移動しても問題ない。

という訳で戦場と化した都市を、一団はホテル目指して歩く。途中、何度か深海棲艦の偵察機に遭遇したが上手くやり過ごし、また動き出す。

 

『指揮官!』

 

「エンタープライズ、どうした?」

 

『敵の数が予想よりも多い!飛行場姫が2体いる!応援をこっちに回せないか?』

 

「少し待て。赤城、聞こえるか?」

 

『こちら赤城!提督、どうされました?』

 

「エンプラが焦げ付いた。恐らくその海域の敵は、後3分も攻撃を続ければ撤退する筈だ。撤退が確認され次第、一航戦は直ちにエンプラの応援に迎え」

 

『わかりました』

 

移動の最中であっても、無線で戦場の様々な情報が飛び込んでくる。その全てを素早く判断し、指示を出して行く。何なら音だけで戦場の状況を把握したりと、人間離れのチート技を繰り出していた。

 

「ねぇ、あれ何してるの?」

 

「あー、多分遠隔地の味方と交信して戦闘の指揮してるわね」

 

「え、そんな事できるん?」

 

「指揮自体は私でも出来るとは思うけど、指揮官は異なる場所の戦闘を並行して同時に何十も指揮してるわ。そんな事できるのなんて、AIか指揮官位の物よ。戦場ってね、川の水みたいに常に動き続けてるの。

普通なら何十個も同時に指揮なんてしたら、すぐに情報が混じって機能不全を起こすわ。でも指揮官はそれをやってのける。それに今、そうやって指揮をしながらも周囲に気を配って、進路を監視してるわ」

 

そんな事を川崎と三浦に話していると、急に長嶺が拳を掲げた。「止まれ」のハンドサインである。そのままハンドサインで指示を出す。

ハンドサインの意味は「敵と思われる。数10。この先20m。指揮官は捕らえる。残りは静かに殺す。続け」である。

 

اللعنة في أعماق البحار| ، (深海のクソ共め) لماذا يحدث هذا」(何でこうなるんだよ)

 

(アラビア語?)

 

.لا تكن قاتما جدا(そうボヤくな)فقدان تشيبا يؤلم ،(千葉を失うのは痛いが、)ونتيجة لهذا(これが原因では) لن يتم لومك(お咎め無しだろう) أسرع - بسرعة!(それより先を急ぐぞ!)

 

URの本拠地があるアフリカの北東部では、主にアラビア語が話されている。それに武装もAK47と、URの末端に配備されている銃。というか幾ら今が世紀末状態とは言え、アフリカ系の男が集団で軍用アサルトライフル担いでる時点で明らかに異常である。

 

「殺れ」

 

影から素早く飛び出し、指揮官と思われる戦闘の男以外は全員頸動脈を切って殺す。指揮官だけは平泉の電気色機能でビリビリして貰った。

 

「クリア」

 

「奴らを漁れ。何か情報があるかもしれん」

 

隊員達に死体漁りして貰ってる間に生徒達は前進。死体とご対面する事となった。

 

「し、死体だ!!」

 

「うわぁぁぁ!!!!!」

 

「人間の死体だぞ!!!!」

 

初めてみる戦場の死体なので、それは騒ぐ騒ぐ。中には祖父母とか親戚の葬式で棺桶に入った死体は見た事がある奴もいるかもしれないが、首から血を流す死体なんざ見た事ないだろう。

 

「ねぇ、貴方達が殺したの?」

 

「そうだが?」

 

「人殺し。人間のクズね」

 

雪ノ下が蔑みの目を持って、そう言ってきた。由比ヶ浜もそれに同調している。

 

「そうさ、俺達はクズだ。戦争屋さ。だがな、それはコイツらも同じ。手元をよく見ろ。その銃はAK47っていう、歴とした軍用アサルトライフルだ。コイツらはレジャー目的の、アフリカからやってきた観光客なんかじゃねぇ。URの末端構成員、ないし末端組織の使いっ走りだ。

コイツらは観光地に金を落とす代わりに、ヤクやら何やら危険な物をばら撒く害虫。害虫を駆除して何が悪い」

 

「この人達にも家族がいるのに!!!!」

 

「おう嬢ちゃん、まだ道徳の授業続けるか?俺達は一応アンタらが総長の知り合いだから、こうやって大人しくしてんだ。あんまりイラつく事言ってると、テメェのマンコを脳天に増やす事になるぞ」

 

「抑えろガット」

 

今にも由比ヶ浜に襲い掛からんとする隊員のガットを、上司であるメタルバックが止める。

 

「由比ヶ浜、それに雪ノ下と葉山。俺達はお前達がこれまで出会ってきた奴らとは、根本から違う。俺達は戦争屋、戦う事でのみテメェの存在価値を見出すロクでなしだ。

部隊の中には元は表の職だった者もいるが、中には暗殺者やテロリストだった奴だっている。そんな狂犬をあくまで俺は抑えてるだけで、支配はしていない。狂犬が収まる檻の目の前で高級肉振られたら、その内飛び掛かるぞ」

 

霞桜の隊員は誰もが、経歴に何かしらの傷を持っている者が殆どだ。長嶺とて、それを完全に支配している訳ではない。寧ろある程度自由にやらせて、不味いところだけ止める様な感じだ。

故にこういう輩がいると、止め切れる自信がない。いや、この3人に限っては止める気も起きない。

 

「総長、奴ら、こんな物を隠し持ってました」

 

「.......避難プランと、拠点の位置か。よし、お前達はこのまま前進。この拠点を探ってくれ」

 

メタルバックと隊員達10名にそう命じ、生徒達は長嶺とオイゲンの他、ガット、ナバラ、エンプティ、ジャーロの6人で護衛する事になった。生徒達の旅は、まだまだ続く。

 

 

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