数十分後 ホテル『ROYAL OKURA』
「ここで待機しろ。俺は黒鮫を呼んでくる」
長嶺が連絡すると、どうやらまだ積載に手間取ってるらしく時間がかかるらしい。
「どうします?」
「それなら先に、例の捕虜の尋問でもやるか。取り敢えず、そこの部屋でやるぞ。あ、そうだ。お前達は、絶対入ってくんなよ?見たら多分、一生物のトラウマになるぞ」
捕虜を適当な空き部屋の中に入れ、椅子に縛り上げる。そのまま叩き起こして、話を聞く。
「日本語、喋れるな?」
「何者だ!?!?」
「俺たちが誰だろうと、何であろうと、お前には関係ない。お前の生殺与奪は今、我々が握っている。死ぬか、生きるか、選べ」
ジャーロの問いに、案の定捕虜は吠える。「ふざけるな」とか「違法だろ」とか色々言うが、いつものパターンなので対処法も分かってる。
「おいジャーロ、やるぜ?」
「あぁ。頼むよエンプティ」
エンプティがナイフを爪の間に突き刺して、まずは右手の親指の爪を剥がす。そこから小指まで、じわじわ剥がしていく。想像を絶する痛みに、捕虜は泣き叫びながら顔から出せる汁を全部出しながら踠いている。
「まあ、言うこと聞かなければこうなる。それで、お前は何者だ?」
「URの戦士だ.......」
「そうか。で、お前達は何が目的でここに来た?どのくらいの人数で、どのくらいの装備を日本に配備している?」
「人数は関東のしか知らないんだ!他の地区にもいるが、その辺の連中と関わる事はねーんだよ.......。それはもっと上の、パラディン長階級じゃないと関わらない」
「では関東圏の人数と装備、それからエルダーについて話せ」
最初の爪剥ぎが効いたのか、そこからはペラペラ喋ってくれた。まずURの勢力は大きく9つの地方に別れている。九州、中国、四国、関西、中部、関東、東北、北海道北部、南部と別れている。各県に支部があり、この男は東京支部の長らしい。パラディン長とは各地方の長であり、東京はパラディン長の代わりにセンチネルという役職の者がいるらしい。
目的は分かっていたが、薬をバラ撒いて日本の裏社会を支配し、ゆくゆくは日本自体を支配すること。URの思想自体、URによる世界統治が目標なので案の定ではある。因みに東京のセンチネルは、アフリカに一時帰還してるらしく今は留守だという。
「総隊長、どうします?」
「吐く物吐いたし、殺せ」
「了解」
捕虜はもう用済みなので、殺して死体袋に収納。そのまま生徒達と一緒に、江ノ島に送って処分する。
そうこうしていると連絡が入ったので、生徒達をヘリポートに上げる。丁度そのタイミングで戦域殲滅VTOL輸送機『黒鮫』が、着陸体制に入っていた。
だがその時、砲弾が命中し姿勢が崩れた。
「敵襲ー!!!!!!!!」
『退避する!!』
「安全確保!!前進!!!!」
ガットの命令に従い、ナバラとジャーロが生徒達を階段に押し戻す。そしてガットとエンプティ、それから長嶺がヘリポートの淵まで前進して警戒に当たる。
(我が主、敵は防空棲姫だ。防空棲姫以下、レ級3、タ級élite2、リ級15、ネ級23、イ級45の編成だ。そちらに前進している)
(一度帰還しろ)
(心得た)
一度、最上階のバーまで生徒も含め全員後退し、そのまま状況説明と作戦を練る。
「ヤバいですねコイツは」
「俺達の装備で姫級は無理だってのに、雑魚艦もこの数。幾らオイゲンの嬢ちゃんがいるって言ってもな」
「分かっている。お前達の任務はあくまで時間稼ぎ。恐らく、他戦区の戦闘も後30分程で肩が付く場所が出てくる。その部隊を当てる」
迎撃作戦は決まった。第八分隊全員が最前線に立ち、それをオイゲン、犬神、八咫烏が援護。長嶺がここから狙撃による支援を行い、味方部隊の到達を待つ。要は遅滞戦闘だ。
長嶺が前線に行っても良いのだが、流石にこれだけの人間の前で能力を見せるのは避けたい。何より要注意人物3人のお守りをするハメにもなるので、ここは長嶺1人で受け持つ。
「お前達、くれぐれも無茶はするな。行け!」
長嶺は彼らを送り出し、自分は八咫烏から降ろした全ての武器を狙撃ポイントに運び込んで待機する。
「長嶺よ、お主の部下やオイゲン女史は何処に行ったのだ?」
「そうだな、テメェらにも説明しないと。
テメェらよく聞け。今、ここに深海棲艦の、それも防空に特化した個体が前進してきている。これを排除しない事には、輸送機を降ろせない。さっきの砲撃で輸送機は一度、鎮守府に帰還した。よって、今から俺達は遅滞戦闘を展開する。具体的には時間を稼ぎ、他部隊の合流を待つ。それまで、決して俺の邪魔をするな。邪魔した瞬間に、問答無用で排除する」
戦闘モードに入った長嶺を前に、全員が気後れする。殺気を纏うという表現が1番近い、そんな状態の人間を見た事なんて無いのだ。無理もない。
「ゴールドフォックスより各員。配置に着いた、いつでも行ける」
『ゴールドフォックス、ショーを始めます。援護、頼んますよ』
「了解だ、任せてくれ」
桜吹雪SRにマガジンを込めてスライドを引き、初弾を薬室に装填。スコープには攻撃位置に前進する隊員達を捉えている。
『攻撃開始!!』
ガット、エンプティ、ナバラがセミオートで攻撃を開始。ジャーロは軽機関銃での弾幕射撃を開始する。これに合わせてオイゲンら支援組も攻撃を開始し、深海棲艦にも隙が生まれてしまう。隙を見せてしまえば、コイツが刈り取る。
「スゥ.......ハァ.......」
ズドォン!ズドォン!ズドォン!
正確な狙撃で相手の指揮役を潰せる限り潰し、混乱をさらに助長させる。それだけでは無い。狙撃以外でも大蛇GLによるグレネード投射や、龍雷RGによる狙撃も交える事で攻撃に種類が生まれる。相手はどれだけの狙撃手がいるのか、全くわからなくなるのだ。
「な、なぁ!僕にも何か手伝わせてくれないか?一応ゲームで狙撃はやったことがある」
「素人が出しゃばるな。本物の狙撃は湿度、気温、風向き、戦場の状況等の諸々を考慮して撃つ。ゲームみたくスコープの真ん中にターゲットを捉えて撃つなんて、そんな簡単なモンじゃ無い。引っ込んでろ!」
葉山に邪魔されつつも攻撃を続けていると、下に深海棲艦の別働隊が回り込んでいる事を察知した。外壁を登って来られるのも面倒なので、対処する他ない。
「下にも客が来やがった。一時的に支援を中止、対処に回る」
『なる早で頼んますよ!!』
「任せろ」
長嶺はそのまま、狙撃位置を離れ迎撃に向かってしまった。これがいけなかった。今ここには生徒達しかおらず、銃はそのまま。セーフティは掛けているが、解除さえしてしまえば誰でも撃ててしまう。
なんと葉山、そのまま桜吹雪を構えて勝手に攻撃を始めやがったのだ。
「ここから先に行かせるな!!撃て!!!!」
パシュン!!
「な、なんだ!?」
なんとエンプティの進もうとした位置に、桜吹雪の20mm弾が飛んできたのだ。後1秒行動が早ければ、頭を撃ち抜かれている所だった。
後方からの攻撃に現場は混乱。さっき長嶺は離れると言っていたのに、大口径の弾丸が飛んでくる。しかも仮に長嶺なら、間違えてもこんな狙撃はしない。だが位置的に、恐らく長嶺の居た位置なのだ。何がどうなってるのか色々考えていたら、更に何発も等間隔に飛んで来た。そのどれもが、隊員達を撃ち抜かん物ばかりで身動きが取れなくなってしまった。
「クソッ!!総長は俺達に恨みでもあんのか!?」
「ガット、ここはまず連絡しましょう!なんか嫌な予感がします」
ナバラに促され、一応長嶺に通信をかける。だが勿論、長嶺は下で戦ってるので「何だと!?」という答えが返ってくる。流石にこんな話を聞いては嫌な予感しかしないので、すぐに上へと駆け戻る。
「クソッ!クソッ!なんで当たらないんだ!!」
「葉山やめなよ!!!!」
「マジでやめろよ隼人くん!!!!!」
「すぐやめろ!!!!!」
こんな具合に他の生徒達の制止も虚しく、葉山は撃ち続けた。その時、扉を破ってレ級が入ってきた。生徒達は逃げ惑うが、比企ヶ谷だけは違った。たまたま逃げた先に、竜宮ARが転がっていたのだ。
「やるしか.......ない!!」
映画で見た様にコッキングレバーを弾いて、初弾を装填する。どうやら既に入っていたらしく、弾薬が排出される。ストックを肩にピッタリと押し当て、セレクターをフルオートにし、レ級に銃口を向けて、トリガーを引く。
「うおぉぉぉぉ!!!!!」
ズドドドドドドドドドドドド!!
フルオート射撃をレ級に見舞うが、弾が全く当たらない。反動制御が全くできておらず、弾が明後日の弾道を描いてしまっているのだ。しかもすぐに1マガジン使い切ってしまって、トリガーを引いても「カチッカチッ」としか言わない。
「強イカト思ッタケド、弱インダネ。ジャア、死ノウカ?」
「やっぱりダメか.......」
「いいや、ダメじゃないさ」
次の瞬間、レ級の背中に何かがタックルした。レ級は前のめりにずっこけて、床に顔面をぶつけている。その前に立っていたのは、長嶺だった。
「まさか竜宮で時間稼ぐとはな。良くやるわ。良い機会だ、本当の撃ち方を見せてやる」
長嶺は竜宮を受け取ると、素早くマガジンを込めてコッキングレバーを引く。準備に掛ける時間も短く、構え方も一目で玄人と分かる。
「オ前—」
ズドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
二の句を言わせる前にトリガーを引いて、全弾キッチリ叩き込む。だがそれでも、レ級は倒れない。
「ク、クソガ.......」
「はいはい。クソでもウンコでもいいから、さっさと死ね」
刀を抜いて、そのまま踏み込み素早く切り捨てる。格の違いに全員が驚き、長嶺は涼しい顔で刀を鞘に納める。だが、その中でも射撃を続ける馬鹿が居た。葉山である。
今の今まで葉山はずっと桜吹雪を撃ち続けていたのだ。その状況を見るなり、長嶺は即葉山の頭を掴んで壁へと叩きつける。
「グッ!!!!」
「テメ——」
長嶺が怒鳴ろうとした時、隊員達のいる位置で爆発が起きた。葉山が放った弾丸が、弾薬を入れたカバンに命中し爆発。破片をジャーロが浴びて、負傷してしまったのだ。
『エマージェンシー!!ジャーロが負傷した!!!!!』
「ケガの具合は!?!?」
『.......右半身に破片が大量に刺さってます』
「了解した。すぐにその場を離れ、ここまで退け。もう逃げ隠れして、ここで狙撃するのも飽きてきた。アイツら、全部俺が倒す」
そう言うと、長嶺は御札を取り出した。艦娘化ではなく、神授才を使う気なのだ。
「我願うは、大和民族の火焔なり。この身は火焔と一体となり、全てを破壊し尽くす破壊者となり、全てを滅さん。八百万の神々とて、我が火焔は止められず。この火焔は天に、地に、海に、山に巡りて、全てを焼き尽くす。我、眼前敵を排するその時まで、火焔と成り、例え果てようと悔いは無し」
あのアーマーを装着し、窓から外へ飛び出す。まずは雑魚敵の掃討からだ。
「焔舞」
佐世保鎮守府襲撃の時、地下オークション会場で使った技を覚えているだろうか?あの炎が踊り狂う、あの技。その技を使う。炎舞は単一目標にも使えるが、その真価は対多数戦闘でこそだ。逃げ惑う深海棲艦を炎の波が追いかけ回し、追いつかれた瞬間に炎に飲み込まれて行く。
そればかりか炎で壁を形成して、意図的に進路を誘導したりと使い方は様々で、さっきまで手こずっていた雑魚をたった3分で殲滅してみせた。
「ヤッタナァ.......オマエモ イタクシテヤル!!」
「そうかい。俺の部下をなんだかんだ可愛がってくれてんだ。テメェはもっと痛くしてやるから、心配しなくていいぞ。あぁ、お礼はいらない。それじゃ、ソードビット」
素早く後方のソードビットが群れを成して防空棲姫の艤装に襲い掛かり、艤装をズタズタに引き裂きつつ切り離す。
「これでお前はもう、単なる女だな。艤装無しじゃ、もうどうにもなるまい?」
防空棲姫の頭を掴み、そのまま地面に擦り付けながらホテル目掛けて突進。そのまま屋上まで、フロアの天井と床を防空棲姫を押し当てながらテッペンまで飛ぶ。
「モウ、ヤメ」
「飛びやがれ!!!!!」
そして仕上げと言わんばかりに明後日の方向に放り投げ、ビームビットの弾幕で穴だらけにする。防空棲姫はそのまま、地面へと堕ちていった。
これで一先ずは戦闘が終わったわけだが、次はジャーロの治療しなくてはならない。
「ガット、ジャーロの状態は?」
「大半が装甲服で止まっててくれましたんで、ほぼ擦り傷程度です。なんですが、コイツだけは流石にヤバいっすね」
ジャーロの右脇腹に、破片が深々と突き刺さっている。恐らく内臓にまで届いてる可能性があるが、付着している材質が問題だった。
「これ、鉛じゃないか?」
「やっぱ、そうですよね。これ中毒になったら.......」
「あぁ。流石に摘出しないと不味い。ガット、エンプティ、ナバラ、後は材木座と戸部!ジャーロの四肢を抑えろ。オイゲン、40°くらいのお湯を沸かして、ナイフを火で炙ってくれ。残りの生徒は綺麗な布をありったけ持ってこい!!」
その間に長嶺はベッド代わりのテーブルを準備し、そこにジャーロを寝かせる。更に縫合用に、銃の火薬を抜いて準備しておく。
「そ、総長.......俺、たす.......かり.......ますか?」
「あぁ。必ず助けてやる。だが、これからお前はこれまで味わった痛みを超える、想像を絶する痛みを味わう。先輩として、1つアドバイスだ。気絶しそうになったら、迷わずしていい。寧ろ積極的に気絶しろ。無理はするな」
「頼.......み.......ま」
「もう喋るな。少しでも体力を温存するんだ。正直、テメェの体力でどうにかしてもらう部分もある。いいな?」
暫くすると、頼んでいた物が全部揃った。5人にそれぞれ四肢を抑えてもらい、ジャーロが暴れないように固定。まずはお湯で濡らした布で傷口を拭き、血と汚れを軽く落とす。
「始めるぞ、ジャーロ踏ん張れ!!」
熱したナイフで傷口を切り開く。勿論、麻酔なんて物はないのだから痛みはダイレクトに伝わる。幾ら訓練を積み重ねた猛者と言えど、身体を切り開かれる痛みは想像を絶する痛みだ。その痛みから逃れようと、叫びながら身体をバタつかせる。
「ジャーロ頑張れ!!!!!!!」
「負けるなジャーロ!!!!!!!」
「今日、飲みにくい約束だったろ!!!!!!酒だ!!宴会を思い出せ!!!!!!!」
「ジャーロ殿、辛抱だ!!!!!!」
「ジャーロさん、頑張ってください!!!!!!」
仲間達が声を掛け続け、それに釣られて材木座と戸部も声を掛ける。
「よし!!摘出成功だ!縫合に入る!!」
火薬を傷口にセットし、着火。シューという音と、肉が焼けるような匂いが立ち込め、今までで1番の叫びを上げる。火薬の燃焼が終わる数秒後、ジャーロは静かになった。
「取り敢えずはOKだ、よく頑張ったなジャーロ」
後は鎮守府で検査の上、手術が必要であれば新たに手術をすれば良い。あくまでこれは応急処置だが、恐らく破片の刺さり具合から見て内臓までは届いてないだろう。
数分後、別の『黒鮫』が飛来し、生徒達と捕虜、ジャーロと付き添いのエンプティが乗り込んで半島を離脱。一時的に江ノ島鎮守府で保護する事になった。そして約9時間後、千葉に上陸した深海棲艦の殲滅が完了した。
10時間後 江ノ島鎮守府 地下 格納庫
「任務で疲れているのに、皆を集めてすまないな」
長嶺は任務から帰還した隊員達を、よく宴会とかでも使う巨大な格納庫に全員を集めた。
「知っている者も居るかもしれないが、今日の戦闘でジャーロが負傷した!この負傷は奴がミスした訳でも、敵にやられた訳でも無い!!コイツの放った弾丸が、弾薬を積めたバックパックに命中し爆発。その破片を諸に受けた!!
コイツの名は葉山隼人!!総武高校の潜入中に何度も厄介事を増やし、常に俺にイチャモンを付けてきた馬鹿だ。この馬鹿が勝手に俺の銃を使い、下手くそな狙撃に巻き込まれてジャーロは負傷した!!葉山、何か反論は?」
「ぼ、僕はただ、エミリアちゃんを守りたかっただけだ!!それにお前だってアレだけ強いのに、先頭で戦ってない卑怯者じゃないか!!!!エミリアちゃんを戦わせるなんて!!そりゃ僕だってあんな事になるなんて思わなかったし、それを狙った訳じゃ無い!!初めてだったんだ、仕方ないだろ!?!?」
葉山は開き直り、トンデモ理論による反論で抵抗してくる。こんな事を言われては、どんなに温厚な者でもキレるだろう。
「もう黙れ。あー、言わすんじゃなかったわ。
とまあ、コイツのバカな妄言理論は以上だ。知っての通り、我々に法は適用されない。従って、法は存在しない。馬鹿やらかした不始末、どう付ける?」
次の瞬間、全員が口々にこう叫んだ。
「殺せ!!!!」
「そうだ殺せ!!!!!!」
「殺せぇ!!!」
「死ね!!!!!」
「「「「「殺せ!!殺せ!!殺せ!!殺せ!!」」」」」
わかりきっている事であるが、やはり全員がこう言った。とは言え、葉山は腐っても表の人間で微妙に親が権力者なので、殺すと後が面倒になる。
「お前達の気持ちは良く分かった!!!!!だがな、コイツは表の人間だ!それにジャーロは死んでない上、意識も取り戻している。ジャーロからは「殺さなくて良い」とも言われている。だがお咎め無しでは、俺含め皆の気持ちは収まらんだろう?だから、コイツには地獄を見て貰う!!!!オイゲン!!!!!!!!!!」
「え、エミリアちゃん!!」
「プリンツ・オイゲン!!俺達の仲間である彼女はエミリア・フォン・ヒッパーとして、総武高校にいた。この馬鹿はエミリアに恋している。まずは、その恋の結果を見ようじゃないか。
葉山、今ここでオイゲンに告白しろ。そうだなぁ、もしOKだったら、ここから何もせずに出してやるよ。それにオイゲンも付けよう。オイゲンをエミリア・フォン・ヒッパーとしての戸籍にしてやるから、結婚でもSEXでも何でもすりゃ良い」
葉山はいきなりの告白チャンスに困惑するも、女が絡むと判断力が低下して馬鹿になるのか知らないが、この見え見えの罠に引っ掛かり告白する事にした。
「えっと、エミリアちゃん。こんな状況で締まらないけど、貴女の事が好きです。貴女の事だけを愛します。僕と、付き合ってください」
まあこの答えなんて、決まりきってる。だが、その振られた方は中々に痛烈な物だった。まず葉山をビンタする。そしてボロクソに貶したのだ。
「まず私、何度も指揮官とかが言ってる通りエミリア・フォン・ヒッパーじゃなくてプリンツ・オイゲンなの。それを何度も何度もエミリアちゃんなんて呼ばれちゃ、溜まった物じゃないわ。それにね、アンタ臭いのよ。常に香水包まれてて、香害よ香害。後、私に初めて告白した時も断ったのに「私に似合う人になる」とか言ってて、正直気持ち悪いわ。よくあんな事言えたわね。もしかして厨二病なの?
それに学校で何度も何度も私と指揮官の邪魔をして、ストーカーみたいに付き纏ってみたり、何かやっても後始末は他に押し付けて、それに私達も巻き込んで、何より指揮官を貶して、なんでそんな人と付き合わないといけない訳?ホント、目の前から消えてくれる?目障りなんだけど?」
もう雪ノ下ばりの罵倒である。ここまでボコボコに振られては、隊員達も笑ってしまう。格納庫中は笑い声に包まれた。
「.......が..............しい」
「なんだって?」
「何がそんなに可笑しいんだッ!!!!!!!!」
そう言って長嶺に殴り掛かる。だがそれを普通に回避して、そのまま固める。
「おーおー、フラれた八つ当たりか?ダセェな王子様」
なんか面白くなりそうなので、自力で抜けられる程度に力を弱めてやると葉山はすぐに抜け出した。そして、文句を言いまくる。
「僕はオイゲンちゃんを愛してるんだ!!!!なのに何でお前みたいな、顔と権力位しか魅力のない奴に惹かれるんだ!!!!!!僕は、スポーツも勉強も顔も良くて、オイゲンちゃんの事を1番に考えてる!!!!!なのに何故、君は身を引かないんだ!!!!!!!!身の程を、弁えろよ!!!!!!!!!!!!!!」
あまりの言いように、全員がポカーンとしていた。こんな事言われても、すんなり理解はできない。
「.......愛してる、ねぇ。それ単なるお前の独り善がりじゃん。確かに恋愛なんざ独り善がりが基本だろうが、少なくとも周囲にフラれた理由を付けるのは間違ってるだろ。別に理由付けて自分を誤魔化すだけなら誰も構いはしないがな、それを言い分に女の前でそう言うのは男としてダセェ。
それに身の程云々言うなら、そのセリフ吐くべきは俺だ。お前は高校の中じゃキングでも、一歩外に出れば単なる一般人。平民だ。にも関わらず、さも自分中心で事が回ると思ってんのは馬鹿のする事だろうよ」
「う、うるさいうるさい!!!!というか何でお前が提督なんだ!!どうせ色んな奴に手を出したり、権力濫用したりしてんだろ!?!?その地位になったのも、どうせ親のコネだ!!!!!!」
凄いぞ葉山、その通りだ。これまでこの作品を見てくださっている読者諸氏なら知っていると思うが、今回ばかりは葉山の言ってる事は間違ってはいない。東川のコネで提督と長官になり、所属艦娘&KAN-SENにケッコン宣言して、権力も濫用してるのは確かだ。
だが根本的な部分が違う。私利私欲ではなく、あくまで仲間、いや。江ノ島にいる家族の為にやった事。それをこんな風に言われれば、全員黙っていない。次の瞬間には、全員が反射的に銃を構えていた。
「お前達」
「総隊長殿、止めないでください。今回ばかりは私も、みんなに同意見です」
「隊員の皆さんだけじゃないですよ提督!」
「私達だって同じ思いだ」
振り返れば隊員達の背後に、大和とエンタープライズを先頭に、艦娘とKAN-SEN達が艤装を装備した状態でいるではないか。しかも全員、武器を構えてピッタリ葉山に狙いを定めている。
「なんで、なんでお前の周りにはそんなに人がいるんだよ.......」
「葉山、とか言いましたね。提督は常に己の事を顧みず、仲間の為に尽くします。ここに所属する艦娘の半数以上が、提督に絶望の中から救い出して貰った者達なんです」
「私達だって、指揮官には借りがある。本来この世界には、私達の居場所は無い筈だったんだ。指揮官はそんな私達全員を受け入れてくれて、ここに置いてくれている。仲間として、家族として、日々を過ごしてくれるんだ」
「我々だってそうです。我々は全員が表に居場所を無くした、世界のはみ出し者達。野垂れ死んで地獄に堕ちるしか無いような連中です。生まれてからずっと戦火の中で過ごした者も、元は敵同士だった者もいます。
ですが総隊長殿がその全てを受け入れてくださり、私達が何かやらかしてくれても笑って一緒に混じってくださって火消しをしてくださり、我々1人1人を気に掛けて常に見守ってくださっている。まだ18のガキですよ、総隊長殿は。でもね、私達は長嶺雷蔵という男に命賭けてるんですよ!!!それを馬鹿にする者は、誰であろうと容赦しない」
全員が撃とうとした時だった。長嶺が天井に銃を撃った。
「あのね、お前達。何か忘れてないか?今回はジャーロに対する不始末を処理すべきであって、アイツの意思を汲むべきだろう?お前達が俺の事を思って怒り狂ってくれるのは嬉しい限りなんだかな、流石に殺すと面倒なのよ。
それにさ、お前達ホント肝心な所で抜けてるよな。俺なら殺さず、ゆっーくり時間をかけて痛ぶるぜ?」
この後、長嶺が葉山に言い渡した罰はトンデモない物だった。葉山を何日もかけてリンチするという物だったのだ。だが1番タチが悪いのは、衛生兵の指示に従ってリンチすると言う点だ。簡単に言うとリンチでボコボコにするのだが、その度に治療してヤバい時はストップを掛けて、生かさず殺さずで精神を殺していくスタイルにしたのだ。
翌日から葉山の地獄が始まるかと思ったのだが、それよりも先に最もヤバい拷問が始まったのだ。
「ねぇ、カルファン」
「オイゲンちゃん、どうかしたの?」
「私、面白い事思い付いちゃったんだけど協力してくれないかしら?」
オイゲンが考え付いた事、それはベッドインの写真を撮るという物である。自分の顔は良い感じに隠しつつ、さも葉山が女2人と寝たかの様な写真を撮影し葉山が今後、女性と恋愛関係になる度に相手に送りつけるのだ。
この案を書いたカルファンは、もうノリノリだった。ベッドメイクからカメラの位置は勿論、服やベッドの乱れまで精巧に調節し、更にAV撮影なんかで使われる擬似精液まで準備して、それをコンドームに詰めたり身体に掛けたりして、写真を撮った。
「こんな感じでどうかしら?」
「流石ねカルファン!これで相手をボコボコにできるわ」
「あ、そうそう。なら、こんなサービスを使うと良いわよ」
最近のネットには何でもあるというが、こんなサービスまである。そのサービスというのが特定の人間の周囲を監視し、その情報を元に相手が最も困る事をしてくれるサービスだ。今回の場合なら葉山の周りを監視し、恋愛関係に発展すると写真が相手の方に郵送される。そういう代行サービスもあるのだ。
「最近のネットって、凄いのね.......」
「何度かこういうのを利用して情報集めたし、ここのリーダーは私の古い知り合いで信頼も出来るわ。それにビジネスの立ち上げ時は私も手伝ったから、私が頼めば無料なの」
こういう時のカルファンは本当に恐ろしい。この後、更に何パターンかウィッグを付けて撮影して、それも送られる様にしたので、これで葉山は「不特定多数の女性と行為に及ぶ変態ヤリチン野郎」というレッテルが貼られるだろう。
撮影が終わると、その足でオイゲンは長嶺の元に行った。
「ねぇ指揮官」
「どうしたよオイゲン。まさかお前、今からシようなんて言わないよな?」
「んー、まあ近いわね。私ね、1つ面白い拷問考え付いたの。協力してくれないかしら?」
「.......詳しく話せ」
オイゲンが考え付いたもう一つの拷問。その案の詳細を聞いた長嶺は、ニヤリと笑うとこう言った。
「お前も恐いわ。だが、おもしれぇ。確かにアイツには俺も少なからず恨みがあるし、あくまで聞こえたり見ちまうのは、
そうだ、どうせやるなら徹底的に行こうや」
オイゲンの考えた拷問。それは視点を葉山に切り替えて、その全貌を見て頂こう。因みに葉山は現在、地下の牢屋に拘束されている。牢屋自体は幾つもあるが、この階には葉山しかいない。そしてこれは、あれから3日後の話である。
「俺.......出られるのかな.......」
長嶺のクズによって、俺は全てを失った。愛するオイゲンちゃんも、僕の王国だってアイツが壊した。もしアイツが居なければ、俺は今もきっと高校生活を満喫しているだろう。俺の俺による俺の為だけの王国で。
アイツが来て良かった事なんて、オイゲンちゃんと会えたことくらいだ。
それにもう身体もボロボロで、鈍痛がずっと抜けない。長嶺の部下は悪魔だらけだ。みんな、嬉々として俺を殴ってくる。殴るどころか蹴りを入れてくる場合もあるし、一度銃で撃たれそうになった事もある。
「出ろ」
「また.......殴られるのか.......」
「それがお前への罰だ。だが、今回は違う。檻を別の場所に移す」
そう言って連れてこられたのは、海が綺麗な場所だった。隣には白を基調とした建物があって、檻さえ無ければリゾート地にいる気分を味わえるだろう。檻さえ、無ければ。
「お前、良かったな。ここで過ごせるのは、総隊長意外にはいない。隣の建物は総隊長の住む部屋だ。オーシャンビューの監獄とは、お前さんも贅沢だな。
そうだ、コイツをやろう」
そう言って目の前の男は、高倍率の双眼鏡を渡してきた。何故かイヤフォンも付いている。
「それは集音器付きの双眼鏡だ。それで海を眺めるなり、波のせせらぎを聞くなり、自由にするが良い」
試しに使ってみると倍率も結構ある上に音もよく聞き取れて、良い暇つぶしになると思う。双眼鏡を渡すと、男はさっさと帰っていく。折角こんな綺麗な場所にいるのだから、あんな邪魔者、さっさと消えてもらいたい。
俺はそのまま、適当に双眼鏡であちこち眺めていた。その時、間違えて長嶺の家を画角に入れてしまった。移るのは当然、真っ白な壁。だが、集音器が妙な音を拾った。水が滴るかの様なピチャピチャという、小さな音だ。多分、長嶺のバカが蛇口を閉めきれてないだけだ。でも、何だかそれが気になって、更に音を拾ってみる。すると今度は、より明瞭に聞こえてきた。
『んっ.......はぁ.......❤️❤️。ふふ、どう指揮官。私のキスの味は?』
気が狂いそうになった。俺の、俺だけのオイゲンちゃんが、他の奴とキスしてたんだ。
しかも相手は、あのクソ野郎の長嶺だ。こんな事、あっていい筈がない。彼女は俺の物なのに!!
『にしてもお前、キスが上手になったな』
『そう言ってくれるなんて嬉しいわ❤️さぁ、夜は長いわよ?だ・ん・な・さ・ま❤️』
こんな甘ったるいオイゲンちゃんの声は聞いたことが無い。まるで砂糖と蜂蜜に、練乳をかけた様な甘い声だ。その時、チラリと部屋の中が見えた。少し身体の位置を動かすと、カーテンか何かの隙間から部屋が見えたんだ。
心の何処かで今部屋にいるのはオイゲンちゃんの声に良く似たデリヘル嬢か何かで長嶺はその人と行為に及んでると、そう考えていた。いや、そう考えていたかったんだ。部屋の中には人が2人いるのは分かるが、女の方は相手が分からない。男の方は長嶺だ。
『暑くなってきたな』
そう言うと長嶺は、服を脱ぎ始めた。上半身が露わになったが、その身体付きは彫刻そのもの。筋肉がついて引き締まった、彫刻の様に美しい身体。同じ男でも、振り返ってしまう様な完璧な身体だった。
そして少しだが、アッチの方も見えてしまった。明らかに自分のを遥かに凌駕する大きさで、何だか見ていて悲しくなってきた。さらにその奥で、長嶺のソレをうっとりと見つめて膝立ちになっているオイゲンちゃんがいた。
「や、やめろ.......。やめろやめろやめろ!!!!!!!!」
そのまま長嶺はオイゲンちゃんの顔の前で、腰を勢いよく突き出した。マイクからは何かを吸い出す様な音もなっているし、所々の荒い息遣いも甘ったるい物だった。
奪われたのだ、長嶺に。オイゲンちゃんは穢されたんだ.......。
『ホント.......、デカ.......すぎよ.......❤️』
『まあな。まさかここまで、神授才で強化されてんのかな?知らねーし、知るつもりもねーが。それより、ホラ。初手はお前が好きなヤツでキメてやるよ』
『は、はい❤️』
命じられるままに、ふらふらと立ち上がるオイゲンちゃん。そしてあのエロい服を脱ぎ捨てて、黒い下着も外すと、長嶺の首にその細くて雪の様に白い腕を絡ませた。
『優しくしてね❤️?』
『OK、いつもの様に激しくいくぞー』
そこからは地獄だった。何度も何度もオイゲンちゃんは長嶺に蹂躙されて、その度に「好き」とか「愛してる」と耳元で囁いて、キスをしまくって、それが長い事続けられていたんだ。
何でアイツはオイゲンちゃんを選び、オイゲンちゃんは長嶺を選んだんだ.......。あの2人はいつから、こんな事をしていたんだ。そんな事を考えていると、気が付けば朝になっていてまた殴られる1日がくる。そして夜はまた、2人の情事を見せられる。
「俺は.......ただ.......オイゲンちゃんを愛してただけなのに.......」
この日、葉山は壊れた。殴られてる間も、常時を見ている時も、ただぼーっと殆ど反応を示さない肉人形になっていたのだ。
「うへぇ、エゲつな.......」
「でも、燃えるでしょ?」
「やめて。人様に迷惑かけかねん変な方向に性癖が向かうから」
オイゲンが考えた拷問というのが、自分と長嶺の情事を葉山に見せるという物だった。それも監獄の前でやるのではなく、たまたま見られてしまうという体の物。
簡単に言うと寝取るみたいな物だ。知っての通り寝取るのは、相手を裏切る事。流石にこれはフィクションの世界や当人が望むのなら良しとして、ふざけ半分でやっていい所業では無い。危うく長嶺は、そっち方面の『寝取られる』ではなく『寝取る』方向の性癖を開花する所だったのだ。
「私は興奮したわ。きっと魔王から救い出される姫って、こんな気持ちなのね。これで漸く、葉山の臭いを全てアナタの匂いに染められた気がするわ。いいえ、雷蔵って呼んだ方がいいかしら?」
「それはお前の好きに呼べば良い。公では指揮官で呼んでもらわないと困るが、別にプライベートでは雷蔵でも良いぞ」
「ふふふ、ならこれからは雷蔵って呼ぶわ。よろしくね、雷蔵?」
「こちらこそ、オイゲン」
因みに寝取りの方法を考えたのはオイゲンだが、当初は監獄の前で堂々とやるつもりだった。だが流石にそれは後に色々面倒というか、誰かに見られでもしたら不味いので、長嶺発案のチラ見せ作戦にしたのだ。
この初寝取りから約2週間後、ジャーロが退院したのもあって葉山は解放される事となった。
「葉山隼人。現時刻を持って貴様を解放する。ここからは、今後についての契約や宣誓、それからこれを破った場合の我々の対処について説明する。マーリン、後任せた」
「はい、お任せください」
今日はグリムも長嶺も忙しいので、代わりにマーリンが色々と担当する。
「.......俺はどうなるんですか?」
「多分、今日中には解放されると思うよ。別に解放した後に、ここで見聞きした事を口外したりしなければ『霞桜』の名義でどうこうは無い。勿論君がここの事をネットでも直接でも口外すれば、その瞬間に君に飲ませた薬で死ぬ事になる」
今回葉山には、ここで見聞きした事を外へ漏らさない様に特殊な毒を飲ませてある。この毒は脳に作用し、言おうと思考した瞬間に神経を刺激して身体全体に痛みが走る様になっている。連続して3回、思考した場合は尋問されてるとして毒が機能して心臓発作を誘発させる仕組みになっている。
「.......2つ、教えてください。オイゲンちゃんはいつから付き合っているんですか?」
「あの2人は確か、そっちの学校の生徒会選挙後に付き合い始めた筈だよ。総隊長は「超絶鈍感朴念仁男」とか「下手なラノベ主人公より鈍感」とか言われてたんだけどね、見事にオイゲンさんが射とめたんだよ。
まあ、あの人の過去を知ってからは気持ちも分からなくも無いがね」
「もう1つ、アイツはどの位強くて僕には何が足りなかったんですか?」
「そうだねぇ。全てが君を凌駕しているよ。あの人は凡ゆる兵器を易々と使いこなし、戦場では頭脳として指揮をとる事も、最前線で戦う事も、前線の後方で衛生兵や工兵としても活躍できる。ワンマンアーミーとして1人で戦況をひっくり返す事ができる一方で、仲間との連携を取りながらの戦闘もできる。例えワンマンアーミーやっている最中でも意識は常に戦場を巡り、敵と味方の動きを完璧に把握して戦闘を有利に進める事ができる。
そして人間性も天下一品だ。我々の様なはみ出しモノを纏め上げるカリスマ性は勿論、基本的に仲間を最優先で動く。口では見捨てる発言はするが、口では見捨てても実際は個人で動いて問題を解決してしまう。何より私利私欲で適度に権力を使いつつも、基本は誰かの為に使う事ができる男だよ。性格も優しく仲間に対しては甘すぎる程に甘く、何かあればすぐに「宴会だー」って騒ぐ。誰かがバカをやってれば自分も混じる、少年の様なお人だ。でも何か仲間を傷付ける様な事態があれば、身命を賭して戦う。例え果てようと、それを厭わずに助け出す。それこそ君の言うオイゲンちゃんが連行された時に、あの人はたった1人で全員を救い出したんだ。1人の死傷者も出さず、逆に相手には死の報復をしてね。きみにそんな事、できるかい?」
これは所謂「いい警官と悪い警官作戦」である。これまでリンチという鞭を与えられ、今は飴となるマーリンの優しさを与えた。こうする事によりオイゲンを呪縛から解放しようと思ったんだが、果たして…
「そうか。なら俺は国を滅ぼして、人を殺せば良いのか」
「え、はい?」
「ありがとうございます、お陰で道が見えた気がします」
「ちょ!待って、そっちの方向に進んではダ——」
「親っさん、時間です。お前を千葉まで送る」
「待って!もう少し話を!!」
なんかまた、ここに物凄い嵐を持ってきそうな気がするのだがどうなるのやら。だがまあ、取り敢えずこれで葉山は当分はここに近付く事はないだろう。因みにこの後、マーリンからの報告を受けた長嶺とオイゲンはというと…
「「アレで懲りないってヤバイだろ(わね).......」」
本気で葉山に恐怖を抱いた。目の前で寝取られて尚、ここまでの事を言えるのだ。恐ろしい以外の何者でも無い。