最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第七十話ちびっ子現象

「なぁ、グリム?俺、現実逃避がてらハワイ行ってくるわ」

 

「やめてください!!この状況下で貴方が現実逃避したら、誰が収拾つけるんですかこれ!!!!」

 

「知るかよ!!そもそも何だよこの状況!!!!こんなカオスのごった煮、何をどうやって収拾つけんだよ!?!?!?予測以前に思考が追いつかんわ!!!!!!」

 

「それをどうにかするのが総隊長殿でしょう!?」

 

「どうにか出来るか!!!!」

 

長嶺とグリムがギャーギャー言っているのも仕方がない。事は、本日の朝にまで遡る。

 

 

 

朝 江ノ島鎮守府 長嶺自室

「ふわぁ.......。あー、今日は1日休みだし、望月とか綾波とか信濃とか、あの辺のゲーマー&ヒッキー共を誘ってゲーム大会でもするか?いや、W夕立とかフォックスハウンド辺りを誘って外遊びもいいな。あー、そういやビスマルクといつか技術関連の談義するとか約束もしてたっけな。やべー、どうしよ」

 

会議やの翌日、今日は非番で特にやる事もない。いつもなら朝方に起きて忍者走を筆頭としたトレーニングをしたりするが、今日は無しだ。偶にはゆったりするのも良い。

多分そろそろ、ベルファストが起こしにやってくるのでそれまではゴロゴロしている。因みに最近は、艦娘とKAN-SENの夜這いモドキも鳴りを潜め、たまーに数人布団の中に居たりする位で済んでいる。そのまま抱いてみたりする事もあれば、スルーして寝る事もある。尚、今日は居ない。

 

コンコン

 

「失礼します、誇らしきご主人様。起床のお時間です」

 

「あれ、シリアス?今日の当番はベルじゃなかった?」

 

「それが、メイド長から当番を代わってほしいと連絡が入りまして。ご不満でしたか?」

 

「いや、ご不満は無いぞ?ただ、あのベルが仕事を休むとは中々に珍しいからな?」

 

あのベルファストが仕事を休むのは本当に珍しい。知っての通りベルファストはロイヤルメイド隊のメイド長であり、とても真面目な性格で仕事や任務にはストイックである。ストイック通り越して、一種の完璧主義の様にすら思える位にキッチリやる。そのベルファストが仕事を休む辺り、何かあったのかもしれない。今日1番にやる事は決まった。

 

「指揮官様大変です!!」

 

「今度はダイドーか。どうしたどうした?」

 

「め、メイド長に隠し子が居ました!!!!!」

 

「.......ごめん、もう一回言おうか?」

 

「メイド長に隠し子が居ました!!!!!」

 

「.......」

 

長嶺は両手で顔を覆った。さよなら、楽しい休暇。こんにちは、クソ傍迷惑な厄介事。だが、明らかに聞き捨てならない。ベルファストに隠し子とは、一体何がどうなっているのやら。

 

「ダイドー姉様。あの、本当にメイド長にお子様が?」

 

「そうですよシリアス!!メイド長と瓜二つな、子供が居たんです!!!!」

 

一瞬、長嶺は自分とベルファストの子かと思った。一応、2人は関係を持っている。何度か致してはいるが、それは全てここ一月前後の事であり、明らかに違う。では、一体誰の子なのだろう?

 

「取り敢えず、本人に会うぞ。もう着替えるのも面倒だ、いくぞ」

 

まあ何を言っても始まらないので、まずはベルファスト本人に話を聞くのが手っ取り早い。シリアスとダイドーを引き連れて、ベルファストの自室へと行く。で、行った結果…

 

「あー、てっきり赤ちゃんかと思ってたんだけど.......」

 

最初は赤ちゃんがいきなり居たのかと思っていた。いや、この時点で可笑しいのだが。とにかく、イメージとは違っていた。ベルファストの部屋に居たのは、メイド服を着た少女。それも多分、小学校ていがくねんとか幼稚園レベルの所謂幼女枠である。

 

「私はメイドのベルファスト、よろしくお願いします」

 

「あ、カーテシーはしっかり決めれるのね。ベールこれどうなってんの?」

 

「申し訳ありませんご主人様。私としましても、全く持って判りかねます。朝目を覚ますと、隣にこの子が眠っていまして.......」

 

「にしても、こうもそっくりな物かねぇ。なんか娘とか隠し子ってより、ベルをそのまんまちっちゃくした感じだし」

 

この謎の少女の見た目は、割とベルファストと瓜二つである。「多分ベルファストに子供時代があれば、こんな感じだったんだろうな」という見た目で、どちらかというとコナンよろしく幼児化した感じである。

 

ピコピコ

 

「あ、オイゲンからLINEだ。.......What fack」

 

オイゲンからのLINEにはこうあった。『私、娘が出来ちゃったみたいよ;)』である。しかも写真付き。しかもしかも、またベルファストみたいな幼児化タイプである。

 

「頭痛くなってきた.......」

 

「あ、あの指揮官様?他のメイド達から、何人かのKAN-SENの方々にも同じ様な事が起きていると報告が.......」

 

「聞きたくねぇ。その報告はマジで聞きたくねぇ。なぁ、俺今から聴覚遮断すっから。もう俺、今日部屋に引き篭もるから。いやだー、絶対これ処理面倒なヤツじゃん!あーーあーーあーーあーー、やりたくなーーーーい!!!!休みたーい!!!!」

 

心無しか、今度は長嶺の精神が幼児化しかけている。だが、こればかりは仕方ないだろう。ゆっくりしたかった筈が。また待っていた休日が。見事なまでに厄介事が始まり、もう対処法すら思い付かないレベルの事態になってしまっているのだ。無理もない。

 

「誇らしきご主人様。どうか、私共にご指示を」

 

「ご命令を指揮官様!」

 

シリアスとダイドーはそう聞いてくるが、長嶺とて何をどうすりゃ良いのか皆目検討付かない。これが戦闘ならいざ知らず、いきなり複数人に妊娠課程無しで子供というか幼児化というか、とにかくそういう現象が起きるとか予想もした事ないし、そもそも何がどうなってるのか。何をどうすれば良いのか。それすら分からないというのに、指示出しもへったくれもない。

 

「あのねぇ、お二人さん。俺は別に完全無欠、全知全能の人間じゃないのよ。この状況下でどうすれば良いのかなんざ、それこそ神位しか分からんだろ?電話一本で神に繋がるなら良いが、そんか事はできないし。

そもそも生物学的に妊娠期間ゼロで子供できるとか、遺伝子バグりまくってるからな?一応これでも医学知識あるが、聞いたことないぞ」

 

「しかし!」

 

「しかしも何もなぁ。あー、取り敢えずその幼児化した奴と幼児化したちびっ子を1カ所に集めておけ。後、ビスマルクとヴェスタル、パーシュース、チカロフ、W明石、艦娘の夕張を連れて来い。そうだ。グリムとレリック、ついでに大和も連れてくるか」

 

もうこうなったら『三人寄れば文殊の知恵』理論で、いつもの様に頼れる仲間を呼ぶしかない。で、会議室には呼ばれた連中が全員揃った。揃ったのだ。長嶺は当初、精々4、5人位しか居ないだろうと思っていた。のだが蓋を開けてみれば、まさかの15人も居たのだ。

そして、話は冒頭に戻る。

 

「はぁーぁ。分かった分かった。正直言って聞きたくないし、速攻で現実逃避かましてエスケープしたいが、全員に聞く。心当たりも無いし、朝起きたら居たって事でいいな?」

 

ちびっ子を連れている者、全員が頷いた。今回この謎のちびっ子が居たのは全員KAN-SENであり、ベルファストとオイゲンの他、グラーフ・ツェッペリン、比叡、赤城、天城、アドミラル・グラーフ・シュペー、サンディエゴ、ヘレナ、クリーブランド、レナウン、イラストリアス、エンタープライズ、チェシャー、フォーミダブルである。

 

「あの、ビスマルクさん。そもそもKAN-SENは、子供を宿す事は可能なのですか?」

 

「.......造られた存在とは言え、一応KAN-SENも生物学の分類では哺乳類のメスに当たるし、子宮等の生殖機能は備えているわ。だけどどういう訳か、機能は常に不活性だから機能してないも同然。子供は宿さない筈よ。勿論、体外受精とかなら可能性はあるけれど。

でも、何でそんな事を聞くのかしら?」

 

「艦娘も子供、作れない。提督の素質ある者と行為に臨めば理論上、できる。けど確率、天文学的確率で実質ない」

 

ついでに言うと、この中には長嶺と関係を持つ者も持ってない者も含まれている。オイゲンは知っての通り、ベルファストも先述の通りだが、他にもこの中なら赤城、イラストリアス、エンタープライズとは関係を持っている。

だが一方で、関係を持っているにも関わらず子供が居ない者もいる。例えば愛宕、大鳳、隼鷹、鈴谷、ローンに代表されるヤベンジャーズ、セントルイス、ボルチモア、ブレマートン、ダイドー、シリアス、インプラカブル、熊野、加賀、翔鶴、瑞鶴、エムデン、プリンツ・ハインリヒ、エーギル、ザラ、ポーラ、ヴィットリオ・ヴェネト、チャパエフとは関係を持っている。こんなに居るにも関わらず、子供が出来たのはたった5人。恐らく少なくとも長嶺との子では無いだろう。そもそも誰かしら、男性の遺伝子が入ってるのかも怪しい。

 

「お前達、正直セクハラ紛いの事を聞くぞ。お前達、ぶっちゃけ心当たりあるか?ちびっ子共の年齢から見て、大体5〜7年前後。誰かと関係を持ったとかは無い、よな?」

 

「それは全員ない筈だぞ指揮官」

 

「そうですわ!指揮官様以外の男性には、行為どころか肌に指一本触れさせません!!」

 

エンタープライズと赤城の否定を筆頭に、他の面々からも否定の声が上がる。もし仮に眠ってる間とかに行為に及ばれてたとしても、受精後にはお腹が大きくなるし、何より出産すれば記憶喪失にでもならない限り確実に覚えてる。

それにこの江ノ島鎮守府に来て、彼女達は丁度2年程度。彼女達を迎えた時にちびっ子共はいなかったのは確認済みだし、仮にこっちに来てから作ったにしても先述の理由の他、人間の成長速度ではこの域まで到達できない。

 

「まあ、分かっちゃいたよ。うん。だが、いよいよ持って訳がわからんな。聖母マリアよろしく、処女受胎でもしたか?それも集団で。キリスト教の中では最大の奇跡であり、そもそも生物学的にはあり得ない現象が、こんな大量に起きるとか、もうこれ奇跡超えだぞ。

ぶっちゃけ、誰か父親が居たら話は簡単なんだが。マジで訳わからん」

 

「託児所、作る?」

 

「託児所、ねぇ」

 

もしかしなくても、この施設に1番似合わない設備である。ここは深海棲艦という世界滅ぼしそうな存在に唯一対抗できる存在の本拠地であり、同時にこの世界の闇を生き闇から闇へ、影から影へ赴くアンダーグラウンダーの巣窟。世界の光と影が共存する不思議な場所。そんな所に託児施設とか、もう絶望的に似合わない。

 

「指揮官、まずは検査でもしてみたらどうかしら?」

 

「あー、DNA鑑定な。それじゃ、準備を…」

 

多分、チカロフの『検査』という言葉にでも反応したのだろう。ちびっ子どもが一斉に立ち上がり、外へ逃げ出した。

 

「ちょっと!」

 

「待ちなさい!!」

 

「.......総隊長殿、これどうします?」

 

「どうやら、かなり楽しそうな休日になるな。鎮守府全域で隠れんぼだ!!」

 

てっきりまたブルーというか面倒臭そうにするかと思っていたが、どうやら長嶺的には逃亡は有りだったらしい。

 

「今度はハンティングですか?全く、忙しい人

「いやっほおぉぉぉぉ!!!!!!」

「なんだからって、居ませんし」

 

「ここ、一応5階なんですけどね.......」

 

「天城さん、指揮官様ですから」

 

「ダンナさまだからで片付くダンナさまも、結構アレだにゃ」

 

「今更気にするだけ無駄、ってヤツかな?」

 

長嶺はまさかの5階から飛び降りて、下まで一気に降る。それを見て他の皆は、もういつもの事なので気にしてない。多分、長嶺ならエレベストとかISSから飛び降りても生還する。生命力は両津勘吉並みなのだから。

因みにちびっ子達は、玄関から出ると目の前に先回りした長嶺が居たことで、敢え無く御用となった。そのまま研究室に連れて行き、サクッと口内の粘膜を採取したり、簡単に血液検査やレントゲンなんかを撮って手早く終わらせた。

 

 

 

数時間後 ビスマルクの研究室

「指揮官、これ見て」

 

「どした?」

 

「これ、サンディエゴとその幼体のDNAなんだけと.......」

 

パソコンの画面にはよく映画とかで見るDNAの図が2つ映っており、2つの図がすすーっとピッタリ重なった。これが意味する所はつまり…

 

「丸っ切り一緒だ.......」

 

「ならこれ、子供じゃなくてクローンになるんですかね?」

 

「でもクローンなら、これの説明がつかないわよ?」

 

ヴェスタルの仮説に、パーシュースが待ったをかけた。パーシュースの手には、体内の血管図と指紋のデータが映されたタブレットを握っている。

 

「これを見て。もし仮にクローンなら、発生生物学的にこんな事あり得ないわ」

 

今度は2人の指紋と幼体の成長シュミレートした血管配列が一致しているのが図で分かったのだが、確かにこれは可笑しい。何が可笑しいかというと、発生生物学上に於いては血管の配置構造や指紋は後天的な影響で形成される為、例えクローンだとしても同じになる事はない。

よく映画なんかでは「クローンを使って、生体認証を突破してやる」とかのシーンがあるが、アレは現実的には不可能な芸当なのだ。だが2人はそれが一致している。これはかなり可笑しい。

 

「こうなってくると、KAN-SEN特有の原因だろうな」

 

「そうね。チカロフ達のアプローチに期待しましょう」

 

「なら、今からどうします?」

 

「よし、コーヒーでも淹れるか」

 

やる事もないし、何よりビスマルク、パーシュース、ヴェスタルという面子が揃うのも中々に珍しいので、どうせ暇ならこの時間を楽しんだってバチは当たらない。それに昨日、知り合いからコーヒー豆が届いたので丁度良い。

長嶺は一度部屋に戻り、部屋からコーヒー豆とサイフォン等の淹れる為の道具一式を持ってきた。

 

「し、指揮官!これ、ブルーマウンテンの最上位物かしら?」

 

「おぉ、よく知ってるな」

 

「ビスマルクさんって、コーヒー好きなんですか?」

 

「あ、いや、ちが/////」

 

「鉄血宰相も好きな物の前には目がないのかしら?」

 

いつものクールな顔が崩れたビスマルクを、パーシュースがここぞとばかりに弄る。見ていて微笑ましい。

 

「んっんん!指揮官、それで何でそんな物を?」

 

「.......」

 

「指揮官、どうかしたのかしら?」

 

「いや、ねぇ?」

 

「クールな顔が崩れたのに」

 

「そのスタンスを押し通すのはちょっと無理かなぁと.......」

 

更に攻撃を仕掛ける3人。ビスマルクがこんな感じにキャラが壊れる事ないのだから、逃す手はない。

 

「〜〜〜〜〜/////////」

 

何か声が出てるんだか出てないんだか、よく分からん悲鳴を上げて顔を真っ赤にしてやる。なんかこれ以上やると、いよいよビスマルクが可哀想なのでこの辺りで弄りはやめてあげよう。

 

「とまあ戯れはこの辺にしといて、サクッとコーヒーを淹れちまおう」

 

「にしてもこれ、何処から仕入れたの?それにこれ、英語じゃないわよね?」

 

「ポルトガル語だ。俺の知り合いに、南米全土にシマを持つ、カラーギャングのボスをしている奴がいてな。ソイツが贈ってくれたんだ」

 

「カラーギャングですか?」

 

「ギャングを自称しちゃいるが、実質はカルテルだ。メキシコ、ブラジル、コロンビア、チリ、ペルー、ボリビア。南米の麻薬、売春、誘拐、暗殺、賭博等々、あの辺りの組織的な違法な行為にはソイツの組織が関与してる」

 

普通に考えて、こういう行為をしている者とは関わりを断つべきだろう。それが極一般的な感性だ。だが長嶺他、霞桜の面々は「自分達が安全ならそれで良い」という考えであり、別に見ず知らずの奴がどんな目にあおうが知った事ではない、というスタンスを取っている。勿論仲間にその危害が及ぶなら全力で止めるし、目の前で事が起きれば少しどうにかしようとしたりするかもしれない。だがそれだけで、積極介入はしない。

特に長嶺の場合、世界中の人間とのコネを持っているが普通に犯罪者とも繋がっている。というか大半が脛に傷を持つ者ばかりで、普通の人間の方が割合的には少ない。因みにこのコーヒーを贈ってきたのは、いつかのドッペルゲンガーを探す時に名前が出て来た『ボス・ラーチ』の事である。

 

「そ、それ法的には問題ないの?」

 

「いや、普通にあるよ?でもまあ、常時超法規的措置適用されてる俺達がどうこう言われる筋合いはないだろ?」

 

「(ここぞとばかりに権力使うわね)」

 

「(これが指揮官ですから)」

 

「与えられた権力を使って何が悪い?」

 

これである。正直、このくらいの図太さがなければ個性とはみ出し物の巣窟の秘密特殊部隊の長なんて務まらないのだが、にしてもかなりぶっ飛んでいる。

 

「ほーれ、出来たぞ」

 

そうこうしている内にコーヒーが淹れ終わり、4人は少し早いティータイムとなった。適当に雑談していると艦娘の明石が、報告の為に入ってきた。尚、その時にコーヒーをせがまれたのは別の話。

 

「検査の結果、幼体の艤装は問題なく運用できる事がわかりました。また固有スキルについても、基本的には元となっているであろうKAN-SENの物と一致しています」

 

今更だが、KAN-SENには固有スキルというのが艤装に宿っている。例えば浮遊する盾を出して自身の周りを堅めたり、全自動で弾幕を展開してくれたり、一時的に攻撃力を上げたり、逆に敵の防御力や攻撃力をダウンさせたりと様々である。

現在は艦娘にも適用できるように研究しているが、中々結果は芳しくない。

 

「スキルまで使えるのか。原因の方は?」

 

「これといった物は何も。ですが少し、気になる点が見つかりました」

 

「気になる点?」

 

「KAN-SENにはキューブと呼ばれる核があるでしょう?あの核に本来無いはずの乱れがあり、幼体と幼体化現象を起こしたKAN-SENには同じ乱れがありました。

今はこの原因を探っていますが、明石やチカロフさんにも初めての事だったらしく、正直お手上げ状態です」

 

これで完全に八方塞がりに逆戻りだ。生物学でも、工学でもわからなければ原因究明は無理だ。となれば、取るべき手段は一つ。

 

「よし、もう放置だ」

 

「「「「え?」」」」

 

「いやだって、原因不明かつそのアプローチ方法から分からない。それ以前にキューブとかいう俺達の世界じゃ預かり知らぬ、超技術の問題である可能性が高いんだろ?ならもう、放置しかねーじゃん」

 

そう、放置である。別にとって食われる訳でもなければ、鎮守府の機能に問題が生じる訳でも無い。これが何かしらの敵の攻撃である可能性があるならまだしも、今回はそれが考えられる出来事もそういう兆候も無かった。であれば、放置しても問題にはならないだろう。

 

「て、提督!正気ですか!?」

 

「あぁ、正気だ。取り敢えずその波長とやらに関しては調査を続けつつ、残りはもう通常業務に戻す。別に敵の攻撃じゃないんだから、そう身構える必要も無かろうよ」

 

それに仮にあのちびっ子達が敵の手先であるのなら、それが分かった瞬間に殺すまで。今更「相手が子供だから」とか「仲間に姿形が似てるから」程度で殺すのを臆する思考回路じゃないし、霞桜の面々だって同様だ。というかアフリカとかで少年兵相手に戦った事も、テロリストを倒した後に武器を持って攻撃しようとしてきた子供を殺した事だって何度もある。問題ない。

 

「提督がそう仰るなら、分かりました。提督の判断に従います」

 

「本当に大丈夫でしょうか.......」

 

「私も個人的には心配ね.......」

 

「指揮官らしいとは思うけど.......」

 

ヴェスタル、パーシュース、ビスマルクも心配ではある。だが心のどこかで「指揮官が言うのなら間違いない」という、安心感もあったので指示には従った。

長嶺は明石を見送ると、せめてなけなしに残った休みを有意義に使うべく自室へ戻ろうとする。だが廊下を出てすぐ、赤城以外のヤベンジャーズに捕まった。

 

「「「「「指揮官(くん)(様)?」」」」」

 

「.......いつからここは重力特異点になりやがった。で、何だお前達?」

 

「どうした、じゃないわよね指揮官くん。お姉さん、とってもとっても悲しいわ」

 

「指揮官様。私という者がありながら、よりにもよってあんな女狐と子供を作るなんて!私の何がいけなかったんですの!!」

 

「指揮官。私にあれだけシセンを送っていながら、何故赤城さんとだけ子供を作ったんですか?」

 

「冗談じゃないわ!指揮官、思い出して!私たちは『ずっと前から」一緒にいたのよ!?」

 

「指揮官.......許さないッ!!!!」

 

もう地獄である。この空間だけ空気が地面に押し潰されているかの如く息苦しく身体も重い。そして何より瞬間冷凍できそうなくらい、超極寒気温かの様に空気が寒い。流石の長嶺を持ってしても少したじろいでしまうが、すぐに堂々と胸を張りいつもの様に持ち直す。

 

「あー、あれは赤城と俺の子供じゃないぞ?原因不明かつ、何でちびっ子ができたかは知らんが一種のクローンだと思ってくれ」

 

「そんな事でお姉さん達は騙せないわよ?」

 

「なら証拠を見せてやる」

 

タブレットで赤城と赤城の幼体のDNA、指紋、血管構造なんかを見せてわかりやすい様に噛み砕いて説明しながら、どうにか理解得てもらう様に語りかける。

 

「…という感じで、俺とあのちびっ子どもには血縁関係はない。というかそもそも、元ネタのKAN-SENとも血縁というのが存在しない」

 

「血縁が無いのは分かりました。なら、そういう行為はしてたんですか?」

 

ここで鈴谷、爆弾をぶっ込みやがった。さっきまで取り敢えずは落ち着いて、この話も終わりそうな空気感だったのに、この「ヤッたんですか?」発言により、空気感はさっきまでの極寒地獄へと逆戻りしてしまった。それどころか他の4人の目が、完全に獲物を狙う肉食獣のソレになっていて、余計に事態が悪化している。

 

「いや、お前ら考えてみろ。ヤッてたの知ってるだろ?テメェらが集団で襲ってきてんだから」

 

だが、それも回避できる。何せ赤城に限り、今いる5人と一緒に襲われた事がある。そのまま同時に相手したので、実は赤城の方は見ていたりする。

 

「お姉さん達が聞きたいのは、赤城以外との話よ?答えなさい?」

 

「何が悲しくて俺の性事情を暴露しなきゃならん。黙秘だ黙秘」

 

次の瞬間、5人の目の色が更に怖い物になった。普通の男なら、この時点でなす術なく食われるだろう。だがコイツの場合、そんな状況でも問題ない。

一先ず目の前にいる愛宕の肩に手を置き、そのまま全力で自分の方に引き寄せる。引き寄せつつ自分は横に避けて、逃走経路を構築。愛宕が前に少しでもバランスを崩せば、その隙に包囲を突破できる。

 

「はいはい、俺はゆっくりしたいから帰るぞー」

 

「お待ちになって〜!!」

 

「私から逃げるなんて、許さない!!」

 

「指揮官?どうして、逃げるの?オサナナジミから逃げるって、犯罪よ?」

 

愛宕と鈴谷は動けないが、残る大鳳、ローン、隼鷹は動ける。追いかけてはくるが、もうここまでくれば捕まることはない。窓から飛び降りて、近くにあった木を使って減速。そのまま着地して雲隠れだ。

 

「はい、いっちょ上がりと」

 

そのまま遠回りで部屋へと戻っていると、例のちびっ子達が遊んでいるのが見えた。しかも、珍しくバルクがいる。

 

「おじちゃんすごーい!!!!」

 

「おじちゃんはハルクだからな!!そーら、4人まとめて持ち上げてやる!!!!!」

 

バルクは知っての通り、部隊内一の力持ち。重機関銃をぶん回す怪力を誇るのだから、子供4,5人を同時に持ち上げる位造作もない。

しかもその周りにはイラストリアスとフリードリヒ・デア・グローセ、艦娘からは大和、天龍、第6駆逐隊が一緒に遊んでいる。まるで保育園だ。

 

「なんかまあ、あんな感じで受け入れられているのなら良いか。いざとなりゃ戦えるらしいし」

 

と思っていたのだが、翌朝、ちびっ子達は突如として消えた。そして、その代わりに…

 

「いやなんで俺!?!?!?」

 

朝起きると、今度は長嶺が幼児化してました。まあ何故か5分後には元に戻ったのだが。とにかくこの、よく分からない原因不明の幼児化現象はこうして幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

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