翌日 江ノ島鎮守府 執務室
「なぁ長嶺?」
「なんだ?」
「これって訓練なのか?」
「書類仕事の訓練だ」
翌日から早速訓練が始まったのだが、比企ヶ谷は訓練の名目で長嶺に書類仕事を手伝わされている。他は戦闘訓練や基礎訓練を行っているのに、なんか自分だけ疎外感があった。
「心配すんな。これが終わりゃ、すぐに訓練に移る」
「へーへー」
(あ?なんだこれ)
暫くして比企ヶ谷の目に、小さい小人の様なセーラー服姿の女の子が映った。こんな少女趣味の置物なんてない筈だし、疲れで幻覚が見えたのかと思ってしまう。だが何だか嫌な予感がしたので、長嶺に聞いてみる事にした。
「長嶺ー」
「なんだ?」
「この置物って、いつから置いてたんだ?」
「置物?」
「ほら、このセーラー服の小人」
それを聞いた瞬間、サッと長嶺の表情が真剣な物に変わった。
「お前には、それが視えるのか?」
「なんだよ、幽霊とか言うのか?」
「その小人は妖精と言って、艦娘にしか本来視えない。だが極稀に、日本人で視える者が存在する。その素質を持つ者のみ、帝国海軍で提督として働くことになる」
つまり今の比企ヶ谷は、半ば提督もしくは司令官として艦娘を率いて戦う事を運命付けられたも同然なのである。だが基本的に比企ヶ谷は、極度の面倒臭がり。「専業主夫になりたい」と豪語する程だ。霞桜に入ったのも、あくまで長嶺の神がかかったまでの空気演出と長嶺という人物に惹かれたからにすぎない。
「.......なぁ、それって絶対なのか?」
「絶対だ」
「いやでも、基地司令ってもういるだろ?新たに作るのか?」
「2カ所。現状で鎮守府と基地が一つずつ、合計2カ所も提督、司令官が居ない状況だ」
現在、横山冬夜の指揮していた釧路基地、河本山海の指揮していた佐世保鎮守府には指揮官が居ない。というのも妖精が視える人間は、兎に角少ない。原因も分からないし、視える様になるタイミングもまちまちで、言うなれば目が覚醒して視える様になる。だが覚醒のタイミングも不明な以上「取り敢えず視える奴を片っ端から提督or司令官に」というのが、現在の帝国海軍の方針なのだ。
この方針の結果、河本とか横山とか酒虫とか安倍川餅とかのクソ提督が生まれたのだが、こうしないと成り手がいない以上はどうしようもなかったのだ。霞桜が設立されたのも上記4人の様に権力を傘に私利私欲に走り、やりたい放題する者が出てくる事が予測されたからである。何せ大半が元・一般人だったのだ。いきなり絶大な権力を与えられれば、その権力に酔いしれる者も出てくる。死を持って報復するのも、正直、見せしめの要素が大きい。
因みに何故他の非正規作戦もやっているかというと、任務の特性上、秘匿性が高くなるので「どうせなら、秘密特殊部隊らしくブラックオプスにも従事可能な物にしよう」となったからである。
「それなら、俺はどうしたら良いんだよ」
「そうだなぁ、まずは親父に会いに行くか。行くぞ付いてこい!」
「ちょ、おま!」
いきなり出て来た『親父』ワードに驚きつつも、比企ヶ谷は長嶺の後に付いていく。外であったベルファストに頼んで執務を代行して貰い、駐車場に置いてあるフェラーリSF90に乗り込んで防衛省を目指す。
「で、親父って誰だ?」
「防衛大臣」
「はぁ!?」
「現職の防衛大臣、東川宗一郎は俺の義理の父親、養父ってヤツだ。あのクソ親父が防衛大臣になりやがったから、半強制的に今のポストに座らされたんだよ。あー、今思い出しただけでも腹立つ。俺を過労死にでもさせたいんか」
比企ヶ谷自身、コネ入社とかを気にするタチではない。寧ろ楽できるなら良いじゃない位に思っているが、こういう嫌なコネ入社というか親の七光りもあるのかと思った。そして、自分もそういうのに巻き込まれ.......いや、現在進行形で巻き込まれているか。
まあ何はともあれ、1時間ほどで市ヶ谷の防衛省に到着。顔パスで中に入り、大臣室の扉を蹴破って中に入る。
「いつになく豪快な入り方だな、雷蔵よ」
「こんな嬉しい自体が起きたんだ、豪快にもなるさ」
「なんだ、嬉しいことって?」
「新たな提督の卵を持ってきたぞ。比企ヶ谷八幡。例の総武高校の生徒だ」
長嶺が隣に立つ比企ヶ谷を指差す。今の比企ヶ谷は前までの死んだ魚の様な腐った目ではなく、普通の目になっている。更に服装もカルファンとか一部のギャル系KAN-SENとか、オシャレ好きの艦娘によって魔改造を施されており、髪型もしっかり整えられていて、普通にかっこよくなっている。
「え、えっと、比企ヶ谷八幡、です」
「これはまた、かなりイケメンだな。防衛大臣の東川宗一郎だ。そこにいる雷蔵の父親でもある。早速だが君は、妖精が見えるという事で良いのかね?」
「は、はい。多分その妖精?が視えるらしいです」
「そうか。では君には、すぐにでも任を渡したいが、まずは雷蔵の元で仕事を覚えるといい。雷蔵の仕事は我が息子ながら、かなり優秀だ。後の事は雷蔵に丸投げするから、任せたぞ」
「またそれかよ。特別ボーナス位用意しやがれ」
「はいはい」
明らかに防衛大臣と連合艦隊司令長官の会話ではなく、普通のダメ親父としっかり者の息子の会話なのに、中身は紛う事なき前者の会話。違和感ありまくりだが、一つ分かったのは長嶺も自分も苦労が増える事だ。
「あ、そうそう」
「比企ヶ谷ー、なんか面倒になりそうだから帰るぞー」
「待て待て!仕事が増える話だけど、お前が好きな部類だから!!」
「.......はぁ。で、どんな仕事が増えるんだ?」
「最近、どっかのバカ河本とか横山とかが色々やったじゃん?アレのお陰で海軍のイメージに、また陰りが見えてきている。そこで、基地祭をお前の所で開いてくれ!」
長嶺含め、霞桜の面々は祭り好き。特に第四、第五大隊は元が極道の割合が高く、テキ屋系の連中も多い。その為、屋台出したりするのは問題ない。
だが一方で、問題もある。現在江ノ島には戦艦棲姫と港湾棲姫という歴とした、深海棲艦の大ボスがいる。KAN-SENは艦娘という事で誤魔化せるが、こっちは誤魔化しようがない。地下とかに閉じ込めれば良いだけかもしれないが、戦艦棲姫辺りは嬉々として参加したがるだろうし、それを止めるのも一苦労。かなり面倒なのだ。
「俺以外でやりゃ良いだろ。それにウチ、爆弾抱えてるからな?霞桜、KAN-SEN。それに深海棲艦だっている」
「深海棲艦がいるぅ!?」
「あ、言ってなかった?ウチの鎮守府、深海棲艦が2隻いるぞ。しかも姫級が」
今目の前の男は、人類が憎んで憎んで仕方がない、世界共通の敵である深海棲艦の、それもボス級である姫級の深海棲艦がいると言った。言われてみれば病的なまでに白い肌を持ち、ツノが生えたのが食堂にいた気がする。てっきり艦娘かKAN-SENかと思ったが、多分アレが深海棲艦なのだろう。
「そうなんだけどな、お前ってほら、対外的イメージが良いじゃん?帝国海軍の顔じゃん?だからさぁ、頼むよ。この通り!」
「別にやるのは良いよ?個人的にはそういうの大好きだから。でも、だからといって起爆したら核爆弾並みの被害をもたらす爆弾抱えてまで参加する道理は無い」
「わ、分かった!ならこうしよう!!お前がやりたい様に基地祭をやり、その費用は全て防衛省が持つ」
「それだけじゃま」
「さらに!ここにかかった費用の総額10%と同額の特別ボーナスを支給する!!これならどうだ!!!!」
「.......乗った!!」
東川と長嶺の2人はガッシリと握手を交わして、完全に2人だけの世界に突入している。それを見ていた比企ヶ谷はこう呟いた。
「ナニコレ」
翌日 江ノ島鎮守府 会議室
「ってな訳で、今度基地祭やる事になりました!」
翌日、例によっていつもの代表者組が会議室に集められた。勿論議題は、昨日決まった基地祭についてである。
「提督、そうは言いますけど、いつ頃開催するのですか?」
「分からん。クソ親父に聞いても「別に日程とかも決めてない。お前達の好きにやれ」だそうだ。だがまあ、早いに越した事はない。2〜3ヶ月を目処にやろうと思う。勿論、状況や要望があれば早めたり遅くしたりするがな」
「なら予算も自由な感じかしら?」
「フッフッフッ、いい質問ですねぇオイゲン君。なんと!今回の基地祭に掛かる予算は全て、防衛省持ちなのであーる!!!しかもしかも、かかった費用の10%がボーナスという形でキャッシュバックしてくる!!」
「つまり?」
「金は糸目つけず、じゃんじゃん湯水の如く使え野郎共!!使えば使うだけ、俺のボーナスが増えるんだ!!!!増えた分だけ、お前達にも何らかの形で還元してやる!!!!!!」
長嶺からこの言葉が出た瞬間、会議室にいた全員の目つきが変わった。長嶺に毒されたからか、はたまた元からの性格かは分からないが、長嶺の家族は全員祭り好きかつ、こういう時の協力は惜しまない。この基地祭、良い意味で大荒れとなるだろう。
「なら早速、中身を決めますか?」
「そうだな。なら言い出しっぺのグリム、書記よろしく」
「あちゃー、言うんじゃありませんでした。みなさん、字が汚くても許してくださいよ?」
一応の保険を掛けて、グリムがホワイトボードの前に立つ。因みにグリムは字は綺麗なのだが、黒板とかホワイトボードに文字を書くと何故か急に下手くそになる。
「はい、それじゃやりたい事ある人ー、挙手!!」
ズバババと一斉に手が上がる。しかも全員が手を挙げたので、もうマーリンから順番に言って貰ったほうが早いだろう。で、出た意見というのがこちら。
「射的なら老若男女楽しめますよ!」byマーリン
「.......物作り体験講座」byレリック
「銃乱射講座!!弾幕・オブ・パワー!!火力・オブ・ジャスティス!!」byバルク
「キャバクラ!男共の財布を搾り取りましょう♡?」byカルファン
「我が大隊の十八番、屋台!!」byベアキブル
「レストランを開いて、ここのご飯を振る舞いましょう!」by大和
「何かみんなで盛り上がれるのはどうだ?ビンゴゲームとか」byエンタープライズ
「ティータイムが味わえる様、カフェをやってみないか?インスタ映えもする筈だ」byウェールズ
「お化け屋敷なんて如何ですか指揮官様?」by赤城
「またレースするのも良いんじゃない?」byオイゲン
「中華街を作ってみたいな。華やかで見ていて楽しいぞ!」byハルピン
「テルマエ風の温泉なんてどうでしょう?日本の皆さんもお風呂好きですから、きっと楽しんでくれますよ!」byヴェネト
「ライブとかはどうだ?」
「芸術作品を飾るのはどうかしら?アートは心を豊かにしますよ」byリシュリュー
「宝探しとかどうだ?」byジャン・バール
とまあ、中々に個性豊かな案が出た。なんか二つ程、採用したら大変な事になりそうなのがあるが。
「さーて、それじゃ今度は意見の統廃合をしていこう。まずマーリンの射的、カフェ、お化け屋敷、大和のレストランは、あーまあ微妙だが取り敢えずベアキブルの屋台に纏めよう。ハルピンの中華街の案は、デザインのコンセプトとして屋台に入れる。物作り体験講座、宝探しは子供向けになりそうだから、ここも纏める。残りは完全に独立してるから、そのまんまで。
で、問題は銃乱射講座とキャバクラだよ。これどうすんの?」
そう。このふたつだけ、明らかに基地祭でやる内容じゃない。銃乱射講座なんてテロリスト養成課程のある学校じゃ無いと出来ないし、というかそもそもテロリスト養成課程のある学校なんざある訳ない。そしてキャバクラなんてやろう物なら各方面からお叱りを受ける事になる。
「何言ってるんですかい総長!!銃乱射講座を開き、火力と弾幕を布教すれば、世界中で弾丸の雨が降るんですよ!!!!」
「お前は世界中の人間をテロリスト予備軍にするつもりか.......」
「ねぇボス?お金、欲しいでしょ?なら馬鹿な男、そう。チンポと脳が直結してる連中から巻き上げれば良いのよ!」
「カルファン、風営法って知ってるか?」
この後、カルファンからは代案としてカジノというのが出てきたが、これも普通に法律違反なので却下された。結果的にどうにかコンセプトカフェという事で落ち着いたが、ここに落着するまで結構苦労した。
2ヶ月後 江ノ島鎮守府 大ホール
「にしてもまあ、我ながら大規模な物になったな」
「雷蔵らしくて良いじゃない。あなた、こういうの好きでしょう?」
「あぁ。超大好きだ。この空気感、吸ってるだけで楽しめる」
あの会議から2ヶ月、この『江ノ島祭』の名前が付いた基地祭は史上類を見ない、大規模な祭りへと変貌を遂げた。この祭りは2日間開催され、鎮守府内で行われる前夜祭も含めれば3日間もある。
常設展示として各種屋台及び中華街、イタリア、フランス、イギリス等の各国をイメージした屋台、基地警備隊の装備展示及び防弾チョッキの試着、車両の試乗会、バニーガールカフェ、メイドカフェ、食堂の解放、艦娘、KAN-SENのレストラン、艦娘とKAN-SENのアート&フォト展、簡単なペーパークラフト講座なんかが行われる。
これとは別に特別展示としてメビウス中隊による航空ショーが2日間で4回予定されており、1日目は艦娘、KAN-SENによるライブと豪華賞品を賭けたビンゴゲーム、2日目は芽ヶ崎、藤沢、鎌倉の三市でプロレーサーを招き、公道をクローズしてのレースが行われる。勿論ここにはレースクイーンとして艦娘とKAN-SENが参加する。
「そろそろ出番なんじゃない?」
「ん?あー、じゃあ行くか」
「しっかり決めなさいよ?」
「俺を誰だと思ってる?この鎮守府の大黒柱、長嶺雷蔵様だぜ。こんな挨拶、ビシッと決めてやる」
オイゲンに見送られ、長嶺は大ホールのステージに立つ。今夜は前夜祭。明日から2日間の祭りに来る人を楽しませるために、楽しませる側の気持ちを祭りが楽しめる様にする為の祭りだ。
『楽しむ準備は良いか野郎共!!!!!明日から2日間、お前達は来る奴ら以上に楽しまなくちゃならん!!この基地祭は何だかんだ、物凄くデカいものになった。楽しむ場はある!!テメェらはどうだ!!!!!!!』
次の瞬間、全員がワッと声を挙げる。どうやら楽しむ準備は出来ているらしい。
『だったら俺から命じる事はただ一つ!!楽しめ!!!!!そして多いに盛り上がれ!!!!!!さぁ、楽しい楽しい祭りの時間だ!!!!!!!!!』
「「「「「ウオォォォォ!!!!!」」」」」
『グラスを持て!!この楽しき祭りの輝かしい前夜と、我が最高の仲間達と開ける祭りの成功を祈って、乾杯!!!!!』
「「「「「かんぱーーーい!!!!!」」」」」
シャンパン、ワイン、ビール、日本酒、或いはソフトドリンク。各自思い思いの飲み物、と言っても大半は酒だが、それを掲げて乾杯に応える。因みに長嶺は取り敢えず、シャンパンを選んだ。
「指揮官様〜❤️」
「あれ、大鳳。どうした?」
「大鳳もレースクイーンに出ても、よろしいですかぁ❤️?」
「あ、あぁ。向こうは美女が増えるのに、NOとは言わんだろうよ。衣装も確か、前回のがあるよな?」
「はい!所で指揮官様は、当日は如何なさるのですか?」
「レース当日は、一応ゲストとして放送席に座る予定だ。特等席からレースを観覧させてもらうよ」
前回の呉でのレースとは違い、今回は最初からプロのガチンコ勝負。そこにアマチュアが入る訳にもいかないので、長嶺はゲストとして放送席に入る事になったのだ。実はオファーもあったのだが、面倒なので断っている。
まあレースのスポンサーからは「気が向いたら飛び入りでも参加させてあげられるから、気が変わったらスタートまでに連絡してね」とも言われてるので、もし気分が変われば参加するかもしれない、というのは内緒。
「そ・れ・な・ら、大鳳とそれまで一緒にいませんかぁ❤️?」
「魅力的だが、生憎と始まる前は色々やる事が多くてな。各レースチームへの挨拶回りとか、プロトカーを展示する各社への挨拶回りとか、まあ面倒臭いけどやらないとならない仕事が多くて、正直、誰かと回るなんて暇なんて、とてもとても」
「むぅ.......」
「むくれてもダメな物はダメ。それよりも俺は、お前が車の宣伝して、ここに来る哀れな男どもを手玉に取ってる姿が見たいよ」
最近、ヤベンジャーズを上手くかわす手段も会得してきた。基本的にこっちが何かを望めば、後は向こうが勝手にやってくれる。唯一、ローンは要求が通らない場合、破壊衝動にスライドする可能性があるので適度に破壊させて、ガス抜きさせれば案外自由に使える。
「そういう事なら、男どもの視線を釘付けにしてやりますわ」
あ、そうそう。レースクイーンとして活躍するKAN-SEN&艦娘、それからステージでアイドル系で攻める予定のKAN-SEN&艦娘は、漏れなく全員カルファンの指導を受けている。世界有数のハニートラップマスターである彼女のテクニックは、一撃で会場の男どもを手玉に取れるだろう。
因みにその様子を見ていた長嶺曰く、「このまま暗殺者として送り出しても、相手がホモじゃない限りベッドまで誘導できる」らしい。そこから先、殺せるかどうかは分からん、とも言っていた。
「あ、提督じゃん。ちーっす」
「お、鈴谷か。どうだ、パーティー楽しんでるか?」
「もっちろん!それよりさ、明日か明後日、空いてる時に大和さんのレストラン来てよ!」
「なんだ、なんか面白い物でも作ったか?」
「それは来てからのお楽しみ〜!」
そうは言うが、長嶺は知っている。ここ最近、鈴谷もそうだが第六駆逐隊のみんな、ユニコーン、ラフィー、綾波、ニーミ等の一部の子達が、夜な夜なキッチンで何やら試作をしていた。恐らく、何かスイーツでも作ったのだろう。これでまた一つ、楽しみが増えた。
翌日 特設大ステージ
『ご来場の皆さん、長らくお待たせしました。これより開演です』
アナウンスの直後、ステージの中心から白煙が勢いよく上がる。その中から出てきたのは、白地に黒い文字で正面に「江ノ島」と書かれ、背中には旭日旗がデザインされたTシャツを着た長嶺だった。このライブのMCは、長嶺が担当するのである。
『レディィィィィィィス、エンド、ジェントルメェェェン!!!!さぁ、始まりました江ノ島祭!!本日は1日目!!!!盛り上がる準備できてるかぁぁぁ!?!?!?!?』
観客席から「おぉぉぉ!!!!」という、大きな声が響いてくる。しかも手に持つタオルを振り回してアピールする者もチラホラ。盛り上がりは充分だろう。
『まずは一曲、派手に盛り上がりましょう!!!!我が鎮守府のヤベェ奴、大鳳と、破壊の女神ローンがタッグが組んじゃいました!!曲名は『艦上LOYALITY』!!』
本来ならライブの様子をお送りしたいのだが、著作権の兼ね合いで不可能なので適当に妄想で補完していただきたい。因みに歌う順番は2人の後から順に
・ル・マラン『祈りノウタ』
・那珂『恋の2-4-11』
・サンディエゴ『私はNo.1』
・サラトガ『壮絶激昂』
・島風『自由の暁』
・駿河『海へ捧げるレミニセンス』
・ベルファスト『Pro Tanto Quid Retribuamus』『クラダリングの誓い』
・加賀『加賀岬』
・エンタープライズ『Pledge of liberation』『Phantom 9』
・赤城『クリムゾン・ブルーミング』
・加賀『愛し桜花よ散るなかれ』
・クリーブランド『コンプレックス・シューティング』『BRIGHT BATTLE STARS』
・ユニコーン『エール・フォー・オール』『My Night』
・第六駆逐隊『鎮守府の朝』
・Z23『Wissen ist Macht!!』
・綾波『ニアー・ユアー・サイド』
・ジャベリン『じゃすと・べりー・くいっくりー!』
・赤城、翔鶴『暁の水平線に』
・ラフィー『スリーピング・ワンダーランド』
・エンタープライズ、赤城『Re:frain』
・霞桜の有志一同30人(大隊長&長嶺含む)『インドダンス立ち上がリーヨ』『ナートゥ』
・愛宕、高雄『逆転乱舞!!』
・川内、神通、那珂『華の二水戦』
・クイーン・エリザベス、ウォースパイト『ウェルカム トゥ ブリリアントパーティ☆』
・クリーブランド、コロンビア、モントピリア、デンバー『ALL 4 SISTER!!!!』
・オイゲン、ウェールズ『Dance In The Naval Engagement 〜運命の舞踏海〜』
・綾波、ジャベリン、ラフィー、Z23『WISHNESS』
・ガスコーニュ、赤城、シェフィールド、クリーブランド、ヒッパー『cœur』
・ラフィー、ユニコーン、Z23、シュペー『Standing By You』
・イラストリアス、ボルチモア、ダイドー、タシュケント、アルバコア『Blue Sprit』
・オイゲン、長嶺『アスノヨゾラ哨戒班』『ロキ』『KING』
『さぁ、最後はMCたるこの私と、鉄血のエース、プリンツ・オイゲン!!!!』
次の瞬間、長嶺はシャツを龍脱ぎの様に脱ぎ捨てた。下には黒地に金の刺繍が入った改造甚兵衛を着ていて、奥から出てきたオイゲンも改造和服、イメージ的にはFGOの武蔵、霊基再臨3の服装で色が赤と黒に置き換わった物を着ていた。尚、ここからは台本形式である。ただし、アスノヨゾラとロキは既に文化祭にてやっているので、今回は割愛させて頂く。N00913753
長嶺『幽閉、利口、逝く前に。ユーヘイじゃ利口に、難儀ダーリン』
オイゲン『幽閉、ストップ。知ってないし。勘弁にしといて、なんて惨忍』
長嶺『人様願う欠片のアイロニ。だれもが願う、無機質なような。一足先に始めてたいような、先が見えない ヴァージン ハッピー ショー』
オイゲン『無いの新たにお願い一つ。愛も変わらずおまけにワーニング ワーニング、無いのあなたにお願い一つ。張り詰めた思い込め…』
『『レフトサイド、ライトサイド、歯をむき出してパッ パッ パッ 照れくさいね。レフトサイド、ライトサイド、歯を突き出してパッ パッ パッ HAHA。YOU ARE KING!YOU ARE KING!』』
長嶺『無邪気に遊ぶ、期待期待のダーリン ダーリン。健気に笑う、痛い痛いの消える。無様に〇ねる、苦い思いもなくなってラ ラ ラ ブウ ラッ タッ タ嫌い嫌いの最低泣いてダウン』
オイゲン『毎度新たにお願い一つ、愛も変わらずピックアップのワーニングワーニング。無いのあなたにお願い一つ、張り詰めた思い込め…』
『『レフトサイド、ライトサイド、歯をむき出してパッ パッ パッ 邪魔くさいね。レフトサイド、ライトサイド、歯を突き出してパッ パッ パッ HAHA。YOU ARE KING』』
長嶺『YOU ARE KING』
オイゲン『YOU ARE KING』
まあ、安定の上手さであった。長嶺の低音ボイスにオイゲンの絶妙な高音ボイスが合わさって、耳に心地よい物になっている。更にダンスは常にオイゲンの肢体、特に胸を強調する物になっていた。オマケに媚薬をキメてんのかと思えるくらいに常に潤んだ瞳で踊っているので、なんかまあ一言で言うとエロに拍車が掛かっていた。
『さぁ皆さん!ぶっ通し240分ライブ、お疲れ様でした!!!!楽しかった?』
長嶺の問いに、全員がまたワッと声を挙げる。もうクライマックスなのには変わらないが、更に爆弾を仕掛けてある。最後に今回歌を歌った奴ら全員で『悠久のカタルシス』を歌う事で、このライブは終わるのだ。
『では最後、皆さんにこの曲をお送りして終わりにしましょう!!曲名は『悠久のカタルシス』!それでは、どうぞ!!』
最後に合唱という形で悠久のカタルシスを歌い終え、ライブは大興奮のまま幕を下ろした。だがこれはまだ、1日目の前半戦。まだまだ終わらない。
この後、長嶺は1人プラプラ屋台巡りをして、鈴谷の言う面白い物こと巨大パフェを1人で平らげたり、射的で子供に銃の撃ち方を教えたりと色々やっていた。
翌日 江ノ島鎮守府 滑走路
「おぉ、すげー眺め」
2日目になると、基地祭と言いつつ一種のモーターショーの様相を呈していた。というのも前回の呉レースの宣伝効果が凄まじかったらしく、前回はあくまで国内車の一部だけだったのだが、今回は国内車全車+ベンツ、フェラーリ、ランボルギーニ、アウディ、BMW、マクラーレン、シボレー等の主要な外国車メーカーまで参加しているのだ。
これを受けてレースクイーンも艦娘からは扶桑、山城、アイオワ、サラトガ。KAN-SENからはアクィラ、エーギル、ヴィットリオ、リットリオ、信濃、武蔵、ホーネット、ヴァシーロフ、サン・ルイ、ハルピン、プリマス、ヨークタウン、インドミダブルが追加参加している。
「提督。それは車ですか?それとも、私たちに対してですか?」
ジトーとした目で大和が聞いてくる。正直意味合い的には両方なのだが、多分これどっちに転んでも地獄見るのは明らか。さてどうしたものか。
「なぁ、大和。それ、俺はどちらに転んでも地獄なのよね。だから俺は言うぞ。女の子に見惚れてました」
「.......てっきり、はぐらかすかと思ってました」
「まあ前までの俺ならそうしてただろうが、今の俺は違う。今の俺はアイツら全員を嫁として受け入れる覚悟を持ってるからな。好きなだけ誘惑なり何なりするが良い。仕事モードとかじゃなければ、真正面から受けるさ」
「奇襲はズルいです/////」
そう言いながら照れる大和を横目に、長嶺は車の方に近付く。プロトタイプカーから、既製品の改造車、今では見ることも無くなった名車まで幅広く展示されている。
お陰で車の周りには車好きとレースクイーンを撮りにきたカメコでごった返していて、正直お目当ての車はよく見えない。
「またあんなエロい身体を見れるなんて、生きてて良かったですなゴエゴエチャンプ氏!!」
「全くでござるコポォ!」
「ハァ.......ハァ.......お姉ちゃん達、エロすぎるよ.......」
「お兄ちゃん?なんで顔が赤いの?」
なんか呉で見た事ある奴ら数人が居た気がするが、多分気のせいだろう。うん。それにしても、我が仲間ながら末恐ろしい。全員、自分の身体の魅せ方を熟知していて、太陽光や車の反射、パーツの影、周りのカメコ達の位置や影すらも利用して、艶かしく美しく魅せている。流石カルファン直伝、と言った所だろう。
「どう、雷蔵。楽しんでる?」
「あぁ。楽しんでるよ。オイゲンの担当は確か…」
「私はレース場の担当よ。会場で、レーサー達の接待とでも言うのかしら?レーサー達の周りで、彩を添える華担当よ」
「ならその華とやらは、ここで油売ってていいのか?」
もうすぐ予選が始まる。多分そろそろオイゲンも移動しないといけない筈だ。こんな所で油売ってる暇はない。
「それもそうね。なら、一緒に行きましょ?」
「いや、俺はもう少し車を見たいんだが.......」
「しっかり私の手綱を握ってないと、他の男に取られるわよ?」
明らかな安い挑発。だが生憎と、この間の河本の一件があった以上、長嶺にはよく効く。その一方で、一種の自信もあった。
「無いな。オイゲン、君は俺に惚れている。それは絶対にあり得ない」
「偶には口直しや趣向を変えるわ。もしかしたら、ね?」
「お前の言う通り好きな物ばっかりでは、いずれ飽きが来るだろう。だがな、本物ってのは麻薬みたいな物だ。一度味わったが最後、その事しか考えられなくなる。
俺との日々、及びソッチの方は、お前にとっては正にこれだった筈だ。もし仮に他の男と遊んだとしても、どうせ不完全燃焼で終わるだけだろ?」
オイゲンは長嶺に惚れていて、長嶺もオイゲンに愛を注いでいる。故にそれが崩れることはないのだ。加えてオイゲンは、なんだかんだ誘惑してくる魔性の女だが身持ちは意外と固いし、何より一途なのだ。浮気、不倫、絶対にあり得ない。
「私のこと、よく見てるのね」
「そりゃ一応、色んな意味で初めての相手なんだ。お前の事はお前の姉妹と同等か、それ以上に知っているさ」
「全く、その素直さをもっと早くに出してくれたら良かったのに」
「でも、そっちの方が楽しかったんだろ?」
返事の代わりに、脇腹にパンチが飛んできた。地味に痛い。こんな馬鹿話をしていると、ピットに着いた。現在ここにはレースに参加するドライバーとそのクルーで溢れている。
「それじゃ俺は放送席に行くわ。そっちも適当に頑張れ」
「はいはい。男どもの視線を独占してやるわよ」
オイゲン本人もノリノリらしく、ウィンクしながら舌をペロリと出している。予選レースを特等席で観覧しつつ、適当に司会者に相槌を打っているとすぐに終わった。
また少し時間が空いたので、ピットの方を視察に行ってみる。そんな中、長嶺は見てしまった。それはオイゲンが決勝進出を決めた、ある1人のレーサーに声を掛けた時だった。そのレーサー、事もあろうにオイゲンを口説き始めたのだ。
「ヘイガール、お前、よほど退屈な人生を過ごしてきたらしいな。目を見れば分かる。真の熱狂を忘れ、カビ臭い日常に嫌気がさしてるんじゃ無いか?」
「.......あら、言ってくれるじゃない。それならあなたの目には私が何を欲している様に見えるのかしら?」
「熱い夜だろ?」
「レースを終えたばかりなのにずいぶんと元気が有り余ってるみたいね。この調子なら次のレースにも期待できそう」
「ちょうどエンジンが温まってきたところだ。試してみるか?」
下半身を指さして笑うチャンピオン。臨戦状態の膨らみを見てオイゲンの目の色が変わった。あの目、完全に軽蔑の目である。だがあくまで、それは一瞬。適当にこのノリに合わせる気らしい。
「興味はあるけど、期待し過ぎてガッカリするのは嫌よ。私を乗りこなせる男なんてめったにいないから」
「あの男のようにか?」
不意にレーサーの視線が、こちらを向いた。オイゲンもそれに釣られて、こちらを見る。オイゲンの顔にはバツの悪そうな顔色だったが、すぐに何かを思いついたかの様にレーサーに向き直る。
「残念、勘が外れたわね。私を楽しませることにかけて彼の右に出る者はいないわ。それに彼、とっても情熱的よ?」
「本気でそう考えているなら向こうでよろしくやっていればいい。違うか?」
「あくまでこれは仕事。プライベートは彼だけよ」
「そうか。ならお前にはトロフィーになってもらうぜ!」
そう言いながら、レーサーはオイゲンの唇を奪いやがった。しかもその、大きな双丘を揉みしだきながら。
だが次の瞬間には、レーサーの側頭部は壁に衝突していた。
「おいレイプ魔、よく聞けよ?ソイツは俺の物だ。スラム街の浮浪者如きが、俺だけの宝石に唾つけてんじゃねーよ」
「.......へいへい、スマートじゃないな。ここは神聖なサーキット。暴力を最も嫌う。お前、俺と一騎打ちでレースしろ。勝った方が、あの女を好きにする。どうだ?」
本来なら乗るわけない。というか神聖なサーキットでレイプ紛いのことをやりやがった奴に言われたくないが、こうなった以上は後に引きたくない。
「良いだろう。すぐに運営に電話する」
すぐに運営に連絡し、まずこのまま普通に決勝をして貰う。そしてもし決勝で目の前のレーサーが勝った時、一騎打ちで長嶺とレースする運びとなった。
「表彰台で待ってろよ、仔猫ちゃん!」
そう言いながら、レーサーは黒のランボルギーニに乗ってピットを出ていく。オイゲンはそれを見送ると、すぐにトイレに駆け込んで口を濯ぎまくった。
「.......はぁ、最悪」
「大丈夫かオイゲン」
「えぇ。キスされて、胸を揉まれただけだから。ただ…」
「ただ?」
「アイツ、タバコ吸ってるのか知らないけど、息が臭くて仕方が無かったわ。正直、今にも吐きそう.......」
こんな事言えるなら、多分大丈夫だろう。だがオイゲンは長嶺に抱き付いて来て、耳元でこう囁いた。
「auf jeden Fall gewinnen. mein einziger geliebter Prinz」
意味は「絶対に勝って。私のたった1人の最愛の王子様」という物。こんな事言われては、ますます負けられない。
「あぁ。任せろ」
すぐにグリムに連絡し、今回はガチの車とクルーを用意して貰う。車はマスターシロン、ピットクルーにはレリックを筆頭とする技術陣を呼んだ。これで問題ない。
こうして長嶺が車の準備をしていると、どうやら決勝が終わったらしい。勝ったのは、あのレイプ魔レーサー。
「ははっ。ヘイ、イエローモンキー!車は乳母車か?」
「どうしたレイプ魔。テメェはレイプ魔にしちゃ、立派な車乗ってるな。てっきりパトカーのリアシートに乗ってるのかと思ったぜ?」
「.......テメェ、俺を侮辱するのか?イエローモンキーの分際で」
「そういうお前は、たかがレーサーだろ?お前がどんなレーサーだろうと、お前はさっき、江ノ島鎮守府司令にして連合艦隊司令長官である俺に喧嘩売ったんだ。その意味が分かるか?」
ピット上で喧嘩していると、レースの時間となってしまった。車をスタートラインに移動させるべく、運転席に滑り込む。
「雷蔵」
「ん?なん」
チュッ❤️
「頑張りなさい」
「.......あぁ。よし出すぞ!」
マスターシロンに火が灯る。レイプ魔レーサーの乗るアヴェンタドール以上に攻撃的で、何処か軽やかだが重厚感のあるエキゾヒートがレース会場に鳴り響く。
『3、2、1、GO!!!!!』
一瞬だった。互いに同じタイミングでスタートしたにも関わらず、車がアヴェンタドールだったにも関わらず、まるで止まってるかの様な錯覚を覚えさせるほどの加速を持ってマスターシロンは飛び出した。
マスターシロンはシロンの皮を被った、正真正銘の化け物マシン。エンジンからボディに至るまで、長嶺とレリックが調整や組立を行った機体。その最高時速は620kmを叩き出すのだから、アヴェンタドールと言えど太刀打ちできない。マスターシロンはそのままコースを2周し、レイプ魔レーサーのアヴェンタドールが2周目の半分位で追い越されるという屈辱も味合わせた上でゴールした。
「まあ、ざっとこんなもんよ」
「流石ね雷蔵!」
「お前の為なら何処までも、ってな」
暫くすると周回遅れのアヴェンタドールがゴールし、そのまま表彰となった。トロフィーはオイゲンによって渡されたのだが、レイプ魔レーサーは勝負に納得が行かないと喚き出し、オイゲンごとトロフィーをひったくろうとした。だが…
「俺に対して暴力で訴えるのは、最も無意味な行動だっての!」
そのまま足を引っ掛けて、地面にキスさせて固めた。現役特殊部隊の総隊長に暴力で訴えるのは、一番の自爆行為である。
「所でさアンタ、さっきオイゲンに無理矢理キスしたよな?暴行罪って事で、警察に通報したから。後、レースの委員会?ちょっと名前忘れたけど、まあその委員会っつうか協会っつうか、そこにも連絡したから、多分お前、ライセンス剥奪されるぞ」
「う、ウソ!?」
「おめでとうレイプ魔。これで君はスラム街の浮浪者に晴れて仲間入りだ」
この後、本当に警察が来て連行されていき、余罪もゴロゴロ出て来た結果、しっかり実刑判決頂いた上にライセンスも剥奪されて、完全に無価値な人間になった。
数時間後 江ノ島鎮守府 グランド
『二日間お疲れ様!!長い挨拶は抜きだ、ここからは俺達だけで楽しむぞかんぱーーーい!!!!!!!』
江ノ島祭が終わった今、次にすべきことなんて決まってる。後夜祭だ。残った食い物を肴に、酒を飲み干し、踊って歌って、ちょっと季節的に早いが花火も上げて。そんなドンちゃん騒ぎの幕が開く。
「竜神チャレーーンジ!!!!」
「「「「「ウェーーイ!!!!」」」」」
「一番、ガーラン。入りました!!」
「「「「「発射ぁ!!!!!」」」」
ボオォォォォォォ!!!!
こういう時の霞桜の隊員は、大体狂う。この竜神チャレンジというのも、度数の高いカクテルを口一杯に含んで吹き出し、着火して火遁の術の様に炎を吐くという中々に危険な代物。他にも…
「ナートゥ、ナートゥナートゥナートゥ、ナートゥ」
「「「「「「「ナートゥ、ナートゥナートゥナートゥ、ナートゥ」」」」」」」
歌詞がわからないから無理矢理「ナートゥ」という言葉だけで歌詞を形成し、そのまま踊り出す馬鹿80人。初日にライブやってた組に頼み込んでライブをして貰い、全力オタゲーを披露してるアホ2、300人。平和的にとっとこハム太郎で円陣組みながら、歌い踊るアレをやってる集団。余物の食材でツマミや追加を作る第四第五大隊の元テキ屋隊員と、即席賭博場で酒、ツマミ、余りのおもちゃを掛けて遊び出す元博徒系の隊員&駆逐艦s。酒呑み共は艦娘もKAN-SENも隊員も関係なく呑み明かし、既に出来上がって潰れてる者もいる。
一言で言うなら、かなりのカオスである。
「賑やかですね〜。総隊長殿」
「あぁ。こうやって見てると、常々思う。俺はアイツらを守らねーとってな」
「.......若いのに背負い込みすぎですよ。偶には私達にも、大人らしい事、させてくださいよ。あなたはまだ、20にみたないガキなんですから」
「そのガキに好き好んで付いてくるお前達も、かなりの傾奇者だがな」
「それ言われちゃ、私達は何も言えませんよ」
こんな風にみんなで飲んで食って、歌って踊って、ドンちゃん騒ぎできるのはこれが最後かもしれない。彼らの生きる世界は明日生きているのが奇跡という、そんな歪な世界。もし明日、戦闘が発生したら、この中の半分が死ぬかもしれない。だからこそ、みんな一様に心の底から楽しんでいるのだ。なんかちょいちょい教育に悪い事をしてる、悪い隊員もいるが気にするだけ野暮という物だろう。
このドンちゃん騒ぎは朝まで続き、いつの間にか雑魚寝で寝ていた。尚次の日、二日酔いやら腰やら背中やらを痛める者が続出したのは言うまでもない。