最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第七十五話卒業の試練

翌日 江ノ島鎮守府 執務棟

「あれ?はちまーん!」

 

「おー、戸塚。どうしたんだ、こんな所で。訓練は?」

 

「そういう八幡こそ。今日は提督になる為の講義じゃなくて、霞桜の訓練でしょ?」

 

「俺は朝起きたら、執務室に来る様にってメッセージが入ってたからな」

 

「実は僕もなんだ。マーリンさんの所に行ったら「今日は総隊長の元に行きなさい」って。何か知ってる?」

 

「いや、知らん」

 

てっきりこの2人にだけ、何か特別な任務でもあるのかと思っていたが、そうでもないらしい。執務室に近付くに連れて材木座、一色、川崎と三浦、戸部と全員揃ってしまった。

 

「おぉ、来たな。入れ入れ」

 

部屋に着くと、執務机のモニターからひょっこり顔を出した長嶺がいる。取り敢えず中に入ると、長嶺も席を立ち机の前に立った。多分これ、何かある。

 

「ケプコンケプコン。それで長嶺よ、何故我らを参集したのだ?」

 

「お前達を今日ここに呼んだのは、他でもない。そろそろお前達がシャバに出る日が近づいて来た今、お前達にこれまでの訓練の成果を見せて欲しい」

 

「具体的にはどうするんですか?」

 

「試験は2つ。最初の試験は、俺と戦う事だ。勝つ必要はない。あくまで戦闘の中で、お前達がどう成長したのか。どんな素質をどの程度まで開花させられているか。そういった点を、直接見せて貰いたい」

 

「それはまた、昨日みたいにあらゆる手段(・・・・・・・)を使っていいのか?」

 

比企ヶ谷は昨日、長嶺と模擬戦を行なっている。その際、新入りの艦娘を仲間に引き込んで戦わせたのだ。流石に同じ物は使わず、今回は今回で別手段を考えるつもりだが、一応言質は取っておきたい。

 

「それはもちろん、と言いたいが、今回はあくまで純粋な戦闘力やお前達のチームワークなんかもみたい。今回ばかりはお前達6人で、どうにかして貰いたい」

 

「分かった」

 

「それで、試験は何時から始めるわけ?」

 

「そうだなぁ、14:00から始めるとしよう。それまでに腹拵えも含めて、しっかり準備してこい。では解散」

 

これだけ伝達し終えると、長嶺はまた自分の作業に戻った。比企ヶ谷達は早速武器庫に足を運び、装備を選ぶ。そんな中、川崎が比企ヶ谷に質問してきた。

 

「ねぇ。アンタもしかして、長嶺と戦った事があんの?」

 

「昨日戦った」

 

「負けたん?」

 

「あぁ。俺は例の新たに入ってきた艦娘を動員してみたんだが、長嶺は更にその上を行っていた。鎮守府内でも高いレベルを誇る精鋭の艦娘とKAN-SENを動員し、更には基地航空隊まで動かしたんだ。オマケに俺が使う銃を予測された上で、そこにトラップまで仕掛けられていた」

 

「え、エゲツないね」

 

一応、これまで2ヶ月間訓練はしてきた。その中で戦闘技術を叩き込まれ、ある程度の戦術立案も出来るようにはなっている。とは言えど、流石に長嶺は別格だ。何せ自分よりも遥か高みにいる他の隊員達、そしてそれを取りまとめる大隊長クラスの人間が、口を揃えて「俺たちが束になっても絶対に勝てない」と豪語させる存在なのだから。

さらに言えば、無知故の恐怖もここに合わさっていた。実は長嶺、これまで本気で戦った場面というのを見せたことがない。何なら殆ど戦っている姿も見せてないのだ。総武高校襲撃時、それから日本本土攻撃時に見せてはいるが、しっかり見れたわけでは無かったのだ。現状の長嶺には、戦闘時に幾つかの顔がある。連合艦隊司令長官や提督という『司令官』や『戦略家』としての顔。霞桜の総隊長として前線で直接指揮を執る『現場指揮官』としての顔。単純に戦場で暴れ回る『兵士』としての顔。第603号計画で手に入れた『艦娘』としての顔。そして唯一無二の能力を秘め本気モードである『煉獄の主 アマテラス・シン』としての顔である。いずれも強力であり、完璧に近い。とは言え、それを見せてない以上、イメージがつかないのだ。

これがもし仮に葉山とかなら、楽観的に考えて「大丈夫に決まってる!きっと僕達なら勝てる!!」とかほざきそうだが、比企ヶ谷達は違う。未知の存在や能力が推し量れない敵には、細心の注意を持って観察し、弱点を見付けなくてはならないと習っているのだ。その教えをガン無視することは無い。

 

「作戦とかないんですか?」

 

「情報が少なすぎる。俺達は長嶺雷蔵という男を知らなさすぎる。俺達の上官であり、ここの主。それ以外に知っている事、お前達にあるか?無いだろ?」

 

「でもさー比企ヶ谷くん。戦ったらなんか、少しでもなんかあるっしょ?例えば、武器がどんなのとか」

 

「あの時は刀2本とSMG、拳銃、グレネードランチャー、アサルトライフル、ショットガンだった。だが使ってたのはSMGと拳銃位で、それも牽制程度にばら撒いてただけだ」

 

これでは作戦の立てようが無い。ならばもう、戦いながら作戦を決めていく他ない。となれば武器はなるべく、使い慣れた物を使う方が良いだろう。

という訳で武器は比企ヶ谷がHK416とVP9、材木座が日本刀とM1911、戸塚がHK417とM9、戸部がMk48とMk23、川崎がVz61スコーピオン、一色がMP5とグロック26である。三浦は戦域殲滅VTOL輸送機『黒鮫』を操縦するので、今回は武器なしである。この他、各種グレネード等の装備も準備し、食事もしっかり摂って訓練に備える。訓練開始2時間前には、グリムが比企ヶ谷達に訓練の説明を始め、いよいよ最終試験が開かれようとしていた。

 

「皆さん、これからの訓練について簡単に私の方から説明しますね。今回の訓練は君達の訓練の成果、訓練の結果発現させられた才能を確認する物です。ですので勝ち負けよりも、自分の全力を出す事に注力してください。勝利すれば無条件で合格ですが、負けたからといって余程変な負け方をしない限り、ペナルティ等が与えられる事はありませんのでご心配なく。

訓練はまず、『黒鮫』によるヘリボーンから始めます。ヘリボーン終了後、『黒鮫』は部隊の援護に入ってください。訓練で使われる砲弾薬は全て、ペイント弾を用いています。ですので好きに撃ってもらって構いませんよ。それでは、準備に入ってください」

 

言われた通りすぐに準備して、『黒鮫』に乗り込む。三浦はそれを確認すると、訓練海域に向けて動かし出した。

 

「こちらグリム。演習、開始」

 

飛行し出して数分。いきなりコックピット内に、ミサイルアラートが鳴り響く。だがこの『黒鮫』、最高時速マッハ6を誇る高性能機。故にフルスロットル掛ければ、そのまま振り切る事はできる。

 

「あれ?」

 

だが普通のジェットエンジンからスクラムジェットへの切り替えスイッチを何度押しても、全然加速が起きない。その代わり、HUDに「スクラムジェット無しでミサイルを避けてみろ。勿論、被弾すればそれでアウトだ。頑張れ。by長嶺」という文字が出てきた。

 

「あーもー.......。カーゴ聞こえる?多分、今から凄い揺れるから覚悟するし!!」

 

三浦のこの宣言に、貨物スペースにいる比企ヶ谷達は身構える。もう一度シートベルトを確認し、そのまま座席の手すりにしがみ付いていた。三浦はその間に呼吸を整えて落ち着き、操縦桿を握り直す。

 

「メビウス1の言ってた事、飛び方、全てしっかり思い出すし.......」

 

なんて事を言っていると、すぐに直撃コースに入ってしまう。しかし着弾直前で機体をロールさせて回避し、そのままやり過ごす。だがそれで終わるはずもなく、更に多数のミサイルが飛来。三浦への試験が本格的に開始された。

 

「多すぎだし.......。でも、燃えるじゃん!」

 

そこからはまあ凄かった。『黒鮫』には4つのエンジンがあるのだが、それぞれが独立して回転させられる。例えば右ロールするなら左側エンジンを上に、右側エンジンを下に回転させる。これにより高い機動性を確保しているのだが、これを利用して全弾手動で避けたのだ。

 

「うわぁぁぁぁ!!!???」

 

「ちょーーーー!!!!!」

 

「丁寧に操縦しなよぉぉぉ!?!?!?」

 

「アピャーーーーーー!!!!!」

 

「優美子先輩荒すぎですぅ!!!!!!」

 

「酔うわ!!!!!」

 

当然貨物スペースにいる比企ヶ谷達は、シートベルトしているとは言え避ける度に生じるGで体に負荷がかかる。常人が乗ったらかなりの確率で酔いそうな物だが、比企ヶ谷達はそれですら酔わない。とは言えど、かなりキツイ。

 

『ミサイルは全弾避け終わった。多分もう、大丈夫だと思う』

 

「うっ、酔いそうだった.......」

 

「俺も。割とマジで、後数分長ければキラキラ放出するとこだった.......」

 

酔ってはないにしても、気分がいい物でもなかった。死にかけなのをどうにか気合いで押し込んでいたにすぎず、気分は悪い。だが、次の一言でスイッチが入った。

 

『長嶺をレーダーで捉えたし!!』

 

「戸塚!!」

 

「任せて八幡!!!!」

 

この報告を受けて、まずは戸塚を下ろす。すぐ後に残りも降り立ち、長嶺の前に立ちはだかった。

 

「しっかりミサイルは避けられてたみたいだな。それじゃ、始めようか」

 

今の長嶺の武器はロケットランチャー、拳銃、それから刀のみ。互いに睨み合うが、まずは比企ヶ谷達が先に動いた。川崎と材木座が近接戦を挑み、その後方から戸部と比企ヶ谷が援護。戸塚は狙撃よりも長嶺の観察に注力し、一色はロケットランチャーのハッキングを開始する。

 

「ハァッ!!!!!!」

 

「甘い甘い!!」

 

「こっちがお留守だよ!!!!」

 

「見えてるわ!!!!!」

 

左では材木座による上段からの斬りつけを否しつつ、右では腕で川崎の蹴り技を防ぐ。だがこのままだと戸部とか比企ヶ谷あたりから撃たれそうなので、1秒経たないうちに2人をそのまま捌く。

 

「おー、危ないねぇ」

 

「やはりまだ余裕、か。まだまだゆくぞ長嶺!!!!」

 

ここで材木座、連続技に入る。下からの切り上げからの、左右や斜めからの斬撃を合わせて、威力よりスピードで長嶺を攻撃し続ける。

 

「私も忘れてもらっちゃ困るんだけど!」

 

川崎もスピードタイプの格闘術に切り替えて、威力は落ちるがスピードを上げる、ラッシュ攻撃で長嶺を削るつもりらしい。だが…

 

「まあ悪くない手だが、そんなんじゃ俺には勝てんよ」

 

刀は刀、格闘は素手でいなして、更に敢えて変則的にオーバーな動きをする事で銃撃させる暇も与えない。2ヶ月訓練したとは言え、軍人として遥か高みに到達している訳ではない。恐らく普通の兵士とかなら互角の戦闘を見せるだろうが、長嶺どころか霞桜の一般隊員が相手なら負けてしまうだろう。

 

「セイッ!!!!!!ヤァっ!!!!!!!」

 

(材木座、刀の動き自体は悪くないな。だが少し、動きが単調だ。今回は高速連撃だから良しとして、威力が小さい以上は強敵相手には通用しない。初撃は悪くなかったがな)

 

「エヤッ!!!!オリャッ!!!!!」

 

(川崎は格闘の重心が少しブレてるな。3回に1回は良い重心だが、それでもまだまだなのは変わりない。だが恐らくこれは、ラッシュ攻撃特有だな。普通の格闘なら、まあ悪くない重心で攻撃できている。だがそれでも、まだ意外性や変則的な攻撃が欲しいな。今の攻撃なら、時間が経てば経つほど対処しやすくなる)

 

こんな感じで戦闘中ではあるが、しっかり2人の動きを観察し今後の訓練内容なんかも練っていく。

そんな中、後方で司令塔として動いていた比企ヶ谷は、多分このままだと勝てない事を理解した。

 

「比企ヶ谷くん、これ、やばいっしょ!」

 

「戸塚、何か弱点は見つかったか?」

 

『いや、わからない!ずっと狙撃のタイミングを見計ってるけど、一向に来ないよ!!』

 

「一色、ハッキングの方は?」

 

「もう少し待ってくださいよ.......。やった!できました!!」

 

現状では弱点という弱点がなく、強いて言えば一色が封じたロケットランチャー位しかない。しかし既に材木座と川崎にも疲れが見え始めている以上、取り敢えずの打てる手を打つしかない。

 

「戸部、一色、戸塚。射撃準備だ。一旦、2人を離脱させる」

 

「「『了解!』」」

 

「川崎、材木座。任意のタイミングで同時に離脱しろ」

 

『『了解!!』』

 

「三浦、そっちは待機だ。指示を出し次第、すぐに弾幕を張ってくれ」

 

『了解』

 

指揮官として比企ヶ谷が仲間達に指示を伝達し、作戦に備える。数秒後、材木座と川崎が後方に飛び退いた。

 

「今だ撃て!!」

 

すかさず比企ヶ谷が叫び、4人は一斉に射撃を始める。だが、その動きは既に長嶺が見切っている。全弾避けるのは簡単だが、それでは意味がない。敢えて食らってみる。勿論、平泉でガードするので問題ない。

 

(この弾幕、戸部が大まかにしっかり貼りつつ、一色と比企ヶ谷がしっかり細かい部分をカバーしている。理想的な拘束射撃だ。でもって頭を少しでも出すと…)

 

ガキュン!!

 

(戸塚がしっかり決めに来る。いい仕上がりだな。さらにこの配置、そして各員を有機的に活用した戦術。比企ヶ谷の指揮能力も、しっかり育っているな。そろそろ、三浦を動かすか?)

 

案の定、比企ヶ谷は三浦に指示を出し攻撃が始まった。『黒鮫』自体、多数の機関砲を装備した強襲機。流石にキツい。

 

「まぁ、評価項目も終わったしな。遊びますか」

 

そう呟くと、長嶺は平泉を捨てた。ここからは防御ではなく、ただ攻めるのみ。盾なんざ邪魔で仕方ない。

まずは『黒鮫』からだ。『黒鮫』の機関砲は門数も多ければ口径も大きいが、所謂ガトリング砲とかバルカン砲と呼ばれる多重身機関砲。銃身の束を高速回転させて、銃身の加熱を防ぐ仕組みだ。だがこの回転は、もし軸を壊されると途端に止まる。しかも銃身の間は装甲が薄く、阿修羅HGであれば十分に貫徹可能なのだ。

 

「機関砲にエラー?なんで?」

 

貫通した弾丸はそのまま基部の破壊判定を取り、少しずつ機関砲を破壊して行く。ある程度破壊が完了すれば、いよいよ仕上げに入って行く。

 

「な、長嶺ぇ!?!?!?」

 

『よぉ三浦!!取り敢えず、いっぺん死んどこうか!!!!!』

 

なんと長嶺、上空の『黒鮫』のフロントガラスにへばり付き、そのまま拳でガラスを割って操縦桿を奪ったのだ。

 

「し、死ぬって!!!!マジやめろし!!!!!!!」

 

「心配すんな、死ぬ時は俺も諸共だ!!!!!」

 

「答えになってないし!!!!!」

 

そのまま『黒鮫』はバランスを崩していき、海面に豪快に不時着。普通ならそのまま沈むが、この機体の場合、水上機としても運用できるので水に浮かぶ。沈みはしない。だがそれでも、三浦はしっかり戦死判定だ。

 

「はーい、三浦キル。あー、そういやまだ、お前達に俺が暴れてる所、まだしっかりは見せた事は無かったな。良い機会だ、今日見せてやる。さぁ、何処からでもかかって来い」

 

瞬間、6人の前に立ちはだかる長嶺の纏う雰囲気が変わった。それと同時に演習場全域の空気も一変する。まるで真上からプレス機で押し潰されているかの様な、そんな感覚が5人を襲った。

 

「は、ははは、八幡よ!!にゃ、にゃんにゃのだこれは!!!!!」

 

「俺にも分かるかよ。ただ、一個だけ分かるのは……」

 

「多分、確実に俺達を殺しにくるっしょ.......」

 

「あんな漫画みたいな事、ほんとに出来んだね.......」

 

「人間業じゃないですよアレ.......」

 

『取り敢えず、後ろは任せて。牽制くらいは、してみせるから.......』

 

恐らく長嶺には勝てない。どうやったって、絶対に勝てない。それはまだ戦場を知らない、ズブの素人たる自分達でも良く分かる。だがそれでも、立ち向かわなければならない。

次の瞬間、全員が一斉に動き出した。戸部が援護射撃の為に弾幕を貼り、その援護を受けながら川崎と材木座が前進。さらに2人の背後に、一色と比企ヶ谷が付いて、直掩に周る。

 

「ほぉ、おもしれーな。その陣形、かなり難しいんだけど良くやるわ。だけどまあ、まだまだだな」

 

長嶺は風神HMGと雷神HCを呼び出し、構える。風神で戸部の弾幕を迎撃するという、常人離れしたスキルを用いて初手とする。

 

「はぁぁ!?!?バルクさんでも無理な芸当っしょ!!!!!」

 

『というかそもそも、弾丸を弾丸で迎撃するって人間技じゃないよ!!!!』

 

「悪いが俺は、世界最強なんでな!!」

 

そう言いながら、今度は雷神を接近する4人に対して砲撃。しかし当てずに進路上の水面に撃ち込んで、巨大な水柱を形成させる。その時できる死角に飛び込み、一旦身を隠す。

 

「何も見えないんだけど!!」

 

「気配も感じぬ!!!」

 

「これが霞桜総隊長、長嶺雷蔵か.......」

 

「まるで戦場を操っているみたい.......」

 

「いいねぇ!差し詰め、戦場の指揮者。Battlefield Conductorって所か!!!!」

 

いつの間にか長嶺は一色の目の前に居た。しかも武器が鎌鼬SGに切り替わっている。長嶺はそのまま銃口を一色の腹に押し当て、ゼロ距離で連射。幾らペイント弾の非殺傷弾とは言えど、実銃から放たれる弾丸の威力はガスガンよりもある。それを腹の、正確には鳩尾に連続して、おまけに12ゲージという大きめの弾丸が当たれば、流石にキツい。

 

「カハッ.......ケホッケホッ!」

 

「まずは1人」

 

「横がガラ空きだよ!!!!」

 

そう叫びながら、川崎の蹴りが側頭部目掛けて飛んでくる。だがそれを左腕で掴み取り、そのまま握り込む。

 

「あ、あれ?ふぬぬぬぬぬぬ!.......ぬ、抜けない!!」

 

「チェーーーーストーーーーー!!!!!」

 

川崎を助ける為か、材木座が上から斬り掛かってくる。確かに上からなら、川崎を使ってガードできない。よく考えている。だがそれは、長嶺以外の話だ。

 

「甘ちゃんだでぇ!!!!」

 

なんと長嶺、左腕で軽々と川崎を材木座目掛けてぶん投げた。確かに空中から斬りかかるのは悪くないのだが、元来空中では何も身動きが取れない。例え振り下ろすのをやめても、重力で勝手に降りて行く以上、高確率で川崎に当たる。案の定、材木座は川崎を避けきれず川崎ごと長嶺を斬ることとなってしまった。

まあ、腕甲代わりのグラップリングフックでガードしているので、攻撃として当たる事は無かったが。

 

「あらー、仲間切るとか剣豪将軍的にどうなんすか?」

 

「戯け!!!!貴様が我にそうさせたのではないか!!!!!!!」

 

「まあ、あの状況ならそのまんま振り下ろし続けるが吉だ。良い判断だった、よ!!!!」

 

「のわぁ!?!?!?」

 

材木座はシールドバッシュの要領で、後方に飛ばされてしまう。ここで戸部が援護射撃を開始し、前衛に取り残された2人を下げる為に奮闘する。

 

「弾幕はっから、今の内に下がるべ!!!!!」

 

「見事だ。だが、まだまだ周りが見えてないな」

 

弾幕が張られてる以上、本来なら遮蔽物に身を隠すのが定石。だがここは海上。身を隠せる遮蔽物は、そうそうあるものではない。ではどうするか。死体を盾にすれば良い。

という訳で、さっき材木座のフレンドリーファイアで戦死判定になった川崎を利用させてもらう。

 

「川崎、悪いが盾になってもらうぞ」

 

「は?」

 

「ちょっと失礼」

 

川崎を前屈みに倒し、鳩尾辺りを支えて盾にする。長嶺はその前でしゃがみ込み、攻撃の準備に掛かる。

 

「は、恥ずかしいんだけど//////」

 

「死体に羞恥心は無い」

 

あくまで川崎は死体。羞恥心なんざ、死んだ時点で魂と一緒に浄土に渡る。普通ならセクハラだろうが、当の長嶺は完全なる戦闘モードなので冷酷に利用できるものを利用しているに過ぎない。

 

「きったねぇ!!!!!!!」

 

「川崎さん盾にするとかヤバイっしょ!!!!」

 

「アレ、アリなのかな?」

 

「戦場ではアリなのであろうな.......」

 

なんて言っていると、長嶺が川崎の太腿辺りから阿修羅を二挺拳銃で撃った。放たれた弾丸は戸部と比企ヶ谷の銃に命中し、そのまま銃を破壊。弾丸は跳弾し、戸部の方の弾丸は比企ヶ谷に。比企ヶ谷の方の弾丸は戸部に進路を変え、綺麗に頭を撃ち抜いた。

 

「は?え?」

 

「な、何が起きた.......」

 

「何今の.......」

 

「跳弾させて、八幡らを倒した.......?」

 

「アンタ、マジで何者なの.......」

 

撃たれた戸部と比企ヶ谷は何が起きたか理解できず、川崎からも困惑とも怯えとも取れる質問が出てくる。だが長嶺はそれを無視し、次なる目標の材木座を狩る為に動く。

だが材木座は目の前で起きた事態に目を奪われて、まだ現実に戻ってきてない。その隙を突かれてしまい、反応が遅れた。

 

「ぬおぉぉぉ!!!!!」

 

だが、それでもしっかり対応は出来ていた。ガードできる姿勢は取っていたのだが、相手が悪すぎだ。今回、長嶺も材木座も刀は模造刀。頑張れば撲殺で人を殺せるかもしれないが、斬撃で人を殺すことは不可能に近い。にも関わらず、ガードした材木座の刀を破壊し、そのまま材木座の首を切ったのだ。

 

「な、何故.......」

 

「目に入れてやれば、大抵の物は案外簡単に壊せる。さーて、じゃあ最後の戸塚を狩ろうか」

 

残るは戸塚。それは戸塚本人も分かっている。HK417をフルオートにして弾をばら撒くが、全く当たらない。そればかりか一色が無力化したはずの薫風を肩に担ぎ、照準を此方に合わせてきた。

 

「あれ壊れてなかったの!?」

 

壊れてはいる。ハッキングにより、照準装置は使い物にならない。だが単純なロケットランチャーとしての機能は生き残っているので、トリガーを引いてやれば無誘導ではあるがしっかり撃てる。それを水面に撃ち込んで水飛沫を作り出し、状況を一気に変える。

 

(また同じ手!?どこ!?!?)

 

戸塚は後方から援護していた為、他の6人の戦闘を後方から全部見ていた。この水飛沫攻撃は、さっきも一色に対して行なっている。また何処かから長嶺が襲いかかってくると、そう思っていた。

 

「ッ!!!」

 

結論として、長嶺は襲いかかって来なかった。だが代わりに、長嶺の刀が飛んでくる。それをギリギリのところでHK417で弾き、どうにか攻撃は防御できた。

 

「や、やった!」

 

『油断大敵だぜ?』

 

次の瞬間、刀の柄の部分が爆発した。柄の先に手榴弾が結ばれていたのだ。

 

「戸塚もキル完了と。はーい、演習終わりー。さっさと鎮守府に帰るぞー」

 

そのまま全員を『黒鮫』に押し込み、帰りは長嶺が操縦して鎮守府に帰還する。今更だが長嶺は車の他、飛行機、ヘリコプター、船舶と大体の乗り物は操縦できる。

ものの数分で鎮守府に帰還し、7人を降ろす。7人が降りるとそこには、霞桜の面々が立っていた。それも口々に「おめでとう」と言いながら、拍手している。

 

「お前達。第一の試験、全員突破だ。まずはおめでとうと言っておこう。この後、夕食と風呂の後、20:00までに第8会議室に集合。以降の事はグリムに任せてるから、まあ頑張れ」

 

とはいうが、まだ時間は17時にすらなってない。流石に夕食には早い。だが装備の整備とかしていると、何だかんだでその20:00前にになった。第8会議室には、既にグリムがいてプロジェクターの準備をしている。

 

「さて、皆さん。まずは第一の試験、お疲れ様でした。そして、突破おめでとうございます。早速ですが、第二の試験について話しましょう。第二の試験は、今からあるビデオを見てもらいます。このビデオを見る事が、最後の試験です」

 

そう言うとグリムは部屋の電気を消し、プロジェクターでビデオを再生しだした。そのビデオの内容は、この間の長嶺が自らの過去を語ってる時の映像である。数時間にも及ぶ大長編であったが、彼らは全員、それを最後まで見た。

 

「.......あのー、グリムさん?」

 

「何でしょう、三浦さん」

 

「えっと、つまり、長嶺って何者なんですか?」

 

「総隊長殿は我々、霞桜のトップであり、ここの鎮守府の提督であり、連合艦隊司令長官であり、KAN-SEN達の指揮官です。そしてそれと同時に、今の大陸の混乱を招いた張本人であり、その身に神授才というチート能力と艦娘の力を宿した、正真正銘の『怪物』という事ですよ。

ここまで試験を受けるくらいには成長してきた君達ですが、今後君達が上官として仰ぐのは、その怪物たる総隊長殿です。君達がこの映像を見ても尚、総隊長殿を信じられるのなら、また我々と共に世界を股に暴れたいのなら、正式に我々の仲間となれるでしょう。しかしもし、今の考えに少しでも思うところがあるのなら、悪い事は言いません。入るのはおやめなさい」

 

第二の試験は試験というより、ここまでやってきた彼らを仲間と認める為の通過儀礼の様な物なのだ。霞桜の任務は死が隣にある任務だ。幾ら長嶺雷蔵という戦場の申し子が居たとしても、死ぬ時は死ぬ。ここ数年くらいは戦死者も劇的に減っているが、それでも0ではない。死んだ者もいれば、兵士として戦えない者もいた。

そういう世界に生きる以上、一番重要になるのは信頼なのだ。もし少しでも信頼に揺らぎがあれば、それは個人は勿論、部隊としても弱点となる。故に敢えて現実を見せ、長嶺への信頼度を推し量るのだ。

 

「もし辞めると言うのなら、どうぞ部屋から出て行ってください。止めはしません。殺しは勿論、危害は一切加えない事はお約束しますよ」

 

そう言われるが、全員その場から動こうとはしない。怖く、恐ろしい。だがそれでも、一応彼らは約一年間、共に学校生活を送っていた。いくら『桑田真也』という偽物だったとしても、常に『長嶺雷蔵』と別人だった訳では無い。どこかで本音っぽい部分も出していた。だからこそわかる。長嶺雷蔵は無茶苦茶で破天荒で、何より敵に回したら最悪の存在。でも一方で、仲間思いの優しい男である。ならばもう、答えは決まっている。

 

「俺は、アイツに付いていく。そもそもここに住んでるんだ、YESと言うまで追い掛けられそうだ」

 

「私も付いて行くね。ここにいるの結構気に入ってるし」

 

「無論、我もだ!我はもっと剣を修行し、いつか極めたい!!」

 

「俺も!ぶっちゃけ艦娘とKAN-SENのみんな可愛いし、ここは天国っしょ!!!!」

 

「僕もここの生活は嫌いじゃないし、隊員の人達も面白い人ばかりだから、ここに残るかな」

 

「私も残りまーす!今度、ダンケルクさんとお菓子作りしますし!!」

 

「アタシも残る。正直、こっちの世界の方が気が楽だし」

 

全員が残ると答えた。翌日、正式に7名は霞桜に入隊。ただ戦闘能力が他よりも劣っているのと、霞桜では初となる表社会の住人、つまり高校生としての生活がある事も考慮して、本部大隊隷下に『独立遊撃隊』として部隊を設立。ここに全員放り込んで、長嶺や各大隊長が運用する事になった。

そしてこの1週間後、比企ヶ谷は提督としての試験をパスし、晴れて新・大日本帝国海軍大佐の地位を得たのである。

 

 

 

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