最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第七十六話恐怖の江ノ島鎮守府(前編)

『こ、ここまで来れば大丈夫な筈だ.......。なぁ、キャシー?』

 

『ゥゥゥゥ.......』

 

『おい、キャシー?キャシー!』

 

『ウガァァァァ!!!!!!!』

 

「「「「キャーーーーー!!!!!!!」」」」

 

卒業試験を終えて早1ヶ月。比企ヶ谷達は総武高校の再建が終わった事で日常に戻ったものの、比企ヶ谷は釧路基地の司令官に任命され高校生をしながら基地司令をやる日々を送っている。今や学校が終わればすぐに釧路基地へと飛び、翌朝にはまた飛行機で千葉に戻る生活をしている。一方の江ノ島では来る北方海域攻略作戦の為の演習が日夜行われており、それと同時に第二次装備改修・艤装改造計画が行われ、更に霞桜の新装備の制作も進んでおり、こちらもこちらで忙しい日々である。

そんな日々の中、今夜はどういう訳か数人の艦娘とKAN-SENが長嶺の自室に集まりDVDを見ていた。その理由は数時間前に遡る。

 

 

 

数時間前 江ノ島鎮守府 執務室

「やっほー指揮官」

 

「おう、どうしたブレマートン?」

 

「ふっふっふっ、アタシ遂に手に入れたよ.......。じゃじゃーーん!!」

 

そう言いながらブレマートンは背中に隠していたDVDのパッケージを勢いよく取り出し、勢いそのまま長嶺に見せてくる。DVDのパッケージには『ザ・ハウス 暗黒森の館 』とある。

 

「おぉ、最新のヤツか!」

 

「先行予約でポチッとね!」

 

「お前、ザ・ハウスシリーズ好きだもんな」

 

「1人で見られないくらい怖いんだけど、なんか見ちゃうんだよねぇ」

 

ブレマートンと言えば艦船通信のお悩み相談をやっていたり、テニス部のキャプテンをやっていたりと、今時のギャルといった感じである。だがその一方で、大のオカルト好きでもあるのだ。都市伝説系も好きだし、単純なホラーも好きで、映画やドラマのみならずゲームも好きだったりする。実際、艦娘なら望月とか川内、KAN-SENなら綾波とかロングアイランドがゲーマーなのだが、この辺りを唸らせる腕前を持つ位にはやり込んでいる。

 

「じゃあ何だ。今日もリノとかボルチモア辺り呼んで、部屋で見る.......いや見れないか」

 

「そうなんだよねぇ。2人とも今度の作戦の為の遠征で、帰ってくるの3日後でさ」

 

「それまで待て.......そうにないな。うん」

 

「という訳で指揮官!一緒に見ない?他の子も誘っていいから」

 

「よし、見ちゃうか!」

 

という事で、急遽、ホラー映画視聴会の開催が決まったのである。この呼び掛けに集まったのが艦娘からは大和、五十鈴、長波。KAN-SENからは高雄、愛宕、ブレマートン、エンタープライズ、オイゲン、ヴィットリオ・ヴェネトである。

最初はブレマートンの部屋で見ようと言っていた。艦娘、KAN-SEN、霞桜の人員には必ず個室が割り振られる。とは言え流石に10人も収容する事は不可能であり、寮には各部隊や姉妹で使える大部屋もあるのだが、これも結構ギリギリである。という訳で鎮守府内のプライベートルームとしては最大級の面積を誇る、長嶺の自室で見る事になった。

 

「何これ何これ!」

 

「スゲーだろ。110インチの巨大テレビモニターに、一流のアーティストや映画なんかの音響担当が太鼓判を押す最高級のオーディオ設備だ。本来は過去の作戦や偵察情報の映像ログの分析で使う為に用意したんだが、最近はもっぱらテレビやらゲームやら映画鑑賞やらに使っている」

 

「こんな凄いの持ってたの!?」

 

「あぁ。昔、任務とかじゃなくて単純に変装技術や演技のスキルを伸ばす為に、ハリウッドに入ってた事がある。といってもバイト感覚だし、偽造身分だがな。その中で世界的に有名な製作陣とか監督とかプロデューサーとか俳優、女優と仲良くなってな。その伝手で教えてもらったのさ」

 

現在の長嶺が有する変装技術は、3から4割はハリウッドの中で会得した物なのだ。芸能界というのは様々な業界と結び付きやすいのは、ニュースを見れば分かると思う。それがハリウッドともなれば、その規模は世界中にもなる。今持っている伝手の表の部分は、この頃に下地を築き上げたのだ。

 

「ホント、指揮官って規格外だよね」

 

「そりゃ俺だもの」

 

「う〜ん、それで片付けちゃっていいのかにゃ?」

 

「いいんじゃないのかにゃ?だって俺だし」

 

そういってお互い笑い合う。因みにブレマートンと長嶺は、結構仲良しである。恐らくギャル系との相性がいいのか、ブレマートン以外にも艦娘なら鈴谷とか、KAN-SENなら熊野とかマーブルヘッドとかと仲が良い。

 

「あー、夜が楽しみー!!」

 

「おいおいブレマートン、まさかこれで終わりだと思っているのか?」

 

「え?」

 

「最高のテレビモニター、最高のオーディオ機器、そしてお前のBlu-rayに収まっている最新のホラー映画、更には世界でもトップクラスの美女までもが揃っているな。だがしかーし!映画を見る上で最も重要な物が欠落しているだろ!!」

 

「最も重要な物?」

 

「ここを映画館だと思え。さすれば見えて来る.......」

 

ブレマートン、考える。映画館ならスクリーンとプロジェクターだが、今回は110インチの巨大テレビモニターがあるし、音響も最高級の物がある。映画の本編映像もある。座席だって見るからに高そうで、尚且つ座り心地抜群そうな巨大ソファーがある。他に足りない物なんて…

 

「あ!!」

 

「気付いた?」

 

「コーラとポップコーン!!」

 

「That's right」

 

そう。映画館といえばコーラとポップコーンがお共に付いてくるというのは、万国共通の事である。読者諸氏の中で映画館に行ってポップコーンとコーラを買わなかったなんて者は、まず間違い無くいないだろう。まあ主の様にコーラというか炭酸がダメという者なら、代わりにオレンジジュースだったりはするが。

でもって最近の映画館というのは、ポップコーン以外にも色々ある。というかそもそも、ポップコーン自体にも色んな味がある。しかも本日は大和、五十鈴、高雄、愛宕、エンタープライズ、オイゲン、ヴェネトといった大人の女性、レディの皆様もやってくる。それも夜に。となればコーラ以上に必要なのが、酒である。酒があるならツマミもいる。流石にポップコーンだけがツマミでは、余りに味気ない。

という訳で急遽買い出し決定である。どうやらブレマートンもこの後は暇らしいので、一緒に街に繰り出して材料を買い込んでいく。ポップコーンは業務用の大容量のヤツを買い、ついでにキャラメルソースとストロベリーミルクのも買っておく。それから業務用のフライドポテトも。他にも色々買い込み、帰って速攻で仕込んでいると、いつの間にか約束の10:00になろうとしていた。

 

 

 

10:00 長嶺自室

「提督ー、来てやったぜー!」

 

「お、一番乗りは長波か」

 

この後に数分間隔で他の参加者もゾロゾロとやってきたのだが、全員部屋に入ると目の前の料理の数々に驚かされていた。ではここで、長嶺による宴の品々をご紹介しよう。

 

料理

・ポップコーン(塩、キャラメル、ストロベリーミルク)

・ホットドッグ(高級パン屋のコッペパンと肉屋のソーセージ使用)

・上州地鶏のフライドチキン

・伊達鶏の唐揚げ(塩、醤油、油淋鶏風、南蛮風)

・フライドポテト

・マックナゲット風の手作りナゲット(バーベキュー、マスタードソース)

・ピザ(マルゲリータ、カルボナーラ、ベーコン、サラミ)

・ソーセージ(ホットドッグの余り)

・生ハムのカプレェーゼ

・各種焼き鳥

・舟盛り

 

酒(大半が長嶺の酒蔵から持ってきた一級品)

・ビール(ドイツ、日本、アメリカの主要な物は揃えた)

・日本酒

・焼酎

・ワイン(ドイツ、イタリア)

・ウィスキー

・各種ソフトドリンク(勿論最上級品)

 

そして、話は冒頭に戻る。女性陣は常時叫び、何なら阿賀野と長波に限って言えばクッションに頭突っ込んで現実逃避する始末。結構阿鼻叫喚である。

 

「はぁ〜怖かった.......」

 

「ブレマートンさん、結構叫んでましたもんね」

 

「大和だって負けてないじゃん。特にタケーシが食べられた時とか、拷問のシーンとか一番叫び散らかしてたじゃん!」

 

「うっ.......」

 

「これ、夜中にトイレ行きたくなったら地獄ね.......」

 

「うふふ、そういう時はお姉さんに任せなさい」

 

「いや、めっちゃ声震えてるわよ?」

 

そう五十鈴に突っ込まれる愛宕。何せ愛宕、普段は余裕かましてるお姉さんキャラだが、ホラー系に耐性がない。今も普段の性格とかプライドとかで無理矢理平静を保っているが、声はガックガクに震えている。足も生まれたての子鹿並みに震えている。

 

「みんな、これは映画。現実にモンスターやお化けがいるわけないだろ?」

 

「いや、いるぜ?」

 

「ちょっと指揮官!?このタイミングでみんなを更に怖がらせる気!?!?」

 

「ならオイゲン。犬神と八咫烏はどう説明つける?犬神は妖怪、八咫烏は導きの神。それに、ほらコレ」

 

そういって差し出した長嶺の手のひらに、ラグビーボール位の大きさの火の玉が形成される。これは神授才による物だ。

 

「妖怪、神、謎能力。これだけ揃ってるんだ、幽霊位いたって可笑しくはない」

 

そう、そうなのだ。お化けやモンスターがいないというのなら、犬神、八咫烏、神授才の説明はつかない。そればかりかいつか高速で襲撃してきたURのシャーマンとか、髑髏兵とバーサーカーの説明も付かない。まあ髑髏兵とバーサーカーは化学でそうなってるらしいので、厳密にはスピリチュアル系とは違うかもしれないが。

お陰で部屋の空気は一気に下がり、全員震え上がる。長波と阿賀野は半泣き、大和、高雄、エンタープライズ、ヴェネト、オイゲンは真っ青、愛宕は笑顔のままフリーズし、ブレマートンは苦笑しているが震えている。

 

「あ、ヤッベ。怖がらせすぎたか?」

 

さぁどうしたものかと考えようとした瞬間、電気が急に消えた。お陰でまた悲鳴が上がる。

 

「「「「「「きゃーーーー!?!?!?」」」」」」

 

「落ち着け!すぐに自家発電に切り替わる」

 

ものの数秒で部屋が赤いランプに切り替わり、薄暗くなる。なんか、逆に怖い。

 

「タイミング良すぎだろおい。どっか架線でもやられたか?」

 

悪態を吐きながら長嶺は携帯を取り出し、取り敢えずグリムに電話をかける。コール音が鳴り、暫くすると繋がった。だが雑音しか聞こえない。

 

「あれ?もしもし?もしもーし!.......チッ、声が聞こえねぇ」

 

「て、ててて提督さん!!!アレ見てアレ!!!!!!」

 

「今度は何だ」

 

阿賀野から袖を引っ張られ、窓の方に連れて行かれる。窓から外を見ると、見るからに可笑しな事になっていた。今は深夜0時。本来、空は真っ暗闇の筈。だが今の空は、真っ赤に染まっていた。夕焼けとかではなく、文字通り真っ赤に。それに月も赤い。まるで異世界とか魔界的な場所の空である。

 

「こりゃ深海棲艦の攻撃かもな」

 

深海棲艦の取り分け姫級が旗艦となり支配する海域は、どういう訳か空が赤く変色したり黒い雲が常時滞空する様になる。とはいえ日本の鼻先にそんな大物を配置すれば、ほぼ確実に殲滅されるのは目に見えている。あんまり考えにくいが、恐らく反攻作戦に出たと考えるべきだろう。それに付随する電波障害なら、携帯の不通も説明がつく。

 

(八咫烏、周辺海域を偵察しろ)

 

(.......)

 

(八咫烏?)

 

八咫烏に念話で話しかけるも、反応がない。念話、テレパシーは対象同士を結んで念じる事で会話する。妨害電波は勿論、EMP環境下でも通じる。両方寝ていたら繋がらないが、片方でも起きていれば繋がる。繋がらないとすれば、どちらかが死んだ場合だ。

だがここで、長嶺は気付いた。今、八咫烏と犬神とも繋がりを感じないのだ。八咫烏と犬神とは、どんなに離れていても繋がっている感覚が常時ある。仮に両方死んだのなら、自分の所にも報せが来ると聞いている。それが無いとなると、何処か別空間に飛ばされたと考えるべきだろう。実際、長嶺が自らの内にいる神授才を司る炎の鬼。あの鬼と会話する為に、その鬼の住う世界に入ると2匹との繋がりは途絶える。今の感覚はそれに近い。

 

「指揮官、何か分かったのか?」

 

「.......なんとも言えんな。だがまあ、取り敢えずやるべき事をやろう。まずは仲間との合流だ」

 

流石に今、異世界に迷い込んだとか言えば全員がパニックになるだろう。ここは隠しておき、確証を得てから話すしかない。というか長嶺自身、未だわからないのだ。自分で考えてながら、普通に混乱もしている。

 

「あのー、お姉さん凄く混乱してるんだけど.......」

 

「拙者もだ。指揮官殿、一体どうなっているのだ?」

 

「それが分からんから調査するんだ。取り敢えず他の連中と合流して、情報を集めねぇと」

 

そう言っていると、ドアが破壊され中に黒いタコの巨大な触手みたいなのが飛び込んできた。触手はビチビチ言いながら壁やら何やらを破壊していく。

 

「テメェこのやろ!!お邪魔します言わずに破壊かよ!!!!」

 

「指揮官!これを使って!!!!」

 

さっきまでビクついていたのは何処へやら。即座に愛宕が愛刀の軍刀をこちらに投げ渡してくれた。空中でキャッチして抜刀し、そのまま触手に突き立てる。

 

ブシュッ!!!!

 

途端に嫌な音がして、そのまま青い血を吹き出した。恐らく痛がってるのか、バチバチと床に叩き付けて廊下へと戻って行った。

 

「なんだ今の.......」

 

「提督!アレ何!?!?」

 

「俺が知るか!」

 

歴戦の猛者たる長嶺を持ってしても、今の状況には動揺を隠せない。だが冷静さだけは維持している。仮にここが異世界だと仮定して、あの触手がここの生物だと言うのなら、少なくとも攻撃は通用する。これは確かだ。なら、武器が有れば気休めにはなる。

 

「エンタープライズ、ブレマートン!ちょっと手伝ってくれ!!他は部屋に異常がないか確認しろ!!」

 

長嶺はエンタープライズをブレマートンをベッドルームに連れ込む。実は長嶺のベッドルームには緊急時に備えて、隠し武器庫があるのだ。

 

「アタシ達は何をすればいい?」

 

「ブレマートンはそこの本棚を下に押し込め。エンタープライズは俺と一緒に、このマットレスをどかしてくれ」

 

「はぇ?本棚を下に押し込むって、えっと、こう?」

 

言われた通り、明らかに難しそうな本の並ぶ本棚を下に押してみると、本棚はそのまま下に潜っていき、代わりに奥から鍵付きのガンラックがせり出てきた。

 

「こんな仕掛けあったの!?」

 

「おもしれーだろ?エンタープライズ、そっち持って」

 

「あ、あぁ。よいしょ」

 

2人で巨大マットレスを退けると、下には緑色の布が貼られた板が出てきた。それを開けてみると武器が出てくるのかと思ったが、更に板があるだけで下には何もない。

 

「てっきり武器があるのかと思ったんだが.......」

 

「二重底だ。この辺りを押してやると…」

 

いたの一部を軽く押すと、くるりとひっくり返り裏面にタッチパネルが設置されていた。そこにパスワードを打ち込むと、板がスライドし中に大量の銃が収められていた。

 

「結構な量があるんだな.......」

 

「俺のコレクションだ。だが全て、しっかり手入れしてある。性能は折り紙付きだ」

 

長嶺はこれまで、世界中の戦場を渡り歩いてきた。その中で鹵獲という名の強奪で、現代戦用の銃は大体持っている。長嶺が銃の設計、整備ができるのも有り合わせで銃を改造して戦っていた経験があったからである。

 

「こっちのも凄いよ。えーと、機関銃っぽいのもあるし」

 

「これだけ武器があれば、一先ずは安心だろ?他にも、こんなご機嫌な物もあるからな」

 

そう言って長嶺が取り出したのは、大量のグレネードだった。そればかりではない。C4、クレイモア地雷、スタングレネード、スモークグレネード、白リン手榴弾もある。

 

「これ、爆弾?」

 

「こんな事もあろうかと、かなり用意している」

 

「よくこれの上で眠れるな.......」

 

「このベット自体が装甲で覆われてる。例えこれ全部一度に爆破したとしても、ベットの上には何の影響もない。精々、爆音が襲うだけだ。

まあ上蓋はスイッチ一つで穴を開けられるから、やろうと思えばブービートラップにもなるがな」

 

因みに装甲板は1トン爆弾の爆発にも耐える。ぶっちゃけ戦車並みである。

 

「よーし、そんじゃコイツとコイツと、あとコイツは運んでくれ。他にも、あー…」

 

何度かベッドルームとリビングを往復し、武器を持ち出した。いろんな武器があるとは言え、長嶺以外で実戦での射撃経験があるのはオイゲン位である。そのオイゲンとて練度は比企ヶ谷達にも劣る。彼女達の基本戦闘スタイルとは、知っての通り洋上で艤装を纏っての戦闘。銃撃戦は専門外なのは仕方がない。

 

「よーしお前達、今から武器を配っていくぞ。と言っても、今回は基本的にサブマシンガンだがな」

 

「あの機関銃とかは使わないの?」

 

「幾ら軽機関銃とは言っても、アレかなり反動あるからな?フィクションなら立ち撃ちでぶっ放してるが、あんな芸当ができるのは俺とか霞桜の連中みたいな鍛えてる奴らだけだ。お前達も、まあ撃つだけなら出来るだろうが、肩が死ぬぞ。冗談抜きで」

 

ゲームとかなら普通に立ってぶっ放す軽機関銃だが、本物でアレをやるのは実はかなりキツい。昔の機関銃、例えばショーシャとかBARは元々の装弾数が現代のアサルトライフル並みであるが、現代の軽機関銃は平気で100発とか装填してる。それを撃ちまくるとなると、その分リコイルが大変な事になるのだ。

 

「あ、これは映画で見た事がありますよ。確かUMP45ですよね!」

 

「おー、よく知ってるな。だがヴェネト、ソイツはUMP9だ。UMP45はコイツの45口径仕様だな」

 

「あ、提督!私、これがいいわ。P90!」

 

「あー、そういや五十鈴はGGO好きだったな。そりゃピーちゃん選ぶわ」

 

この後、なんだかんだ言いながら自分の好きな銃を選び出し、弾薬と最低限の装備も渡し、準備は整った。

 

「よーしお前達!現状、我々は恐らく異世界に迷い込んだ物と思われる。さっきの触手が意味する様に、今後何が起こるかは全く予想がつかない。場合によっては仲間が変わり果てた姿で見つかるかもしれない。敵として、目の前に立ちはだかるかもしれない。だがそれでも、生き残りたくば躊躇するな。躊躇は己を殺すぞ。それじゃぁ、いくぞ!!!!」

 

部屋を飛び出して左右を確認し、誰もいない事を確かめてからハンドサインで「クリア」と伝える。そのまま一行は、艦娘とKAN-SENの宿舎区画を目指す。

 

「赤灯がついてるって事は、非常用の発電機は正常って証拠ですね」

 

「あぁ。尤も、俺が敵ならそもそも非常用の発電機は落とさない。少人数かつ小規模ならいざ知らず、こんな大規模基地を落とすなら襲撃者が少人数だったとしても、非常電源は攻撃しない。トラップ仕掛けるのが関の山だ」

 

鎮守府内の廊下は全て、赤いライトで照らされている。これは非常用発電機に切り替わった時に灯る様になっており、一眼で鎮守府が本格的にヤバいとわかる様になっているのだ。

 

「指揮官殿なら、どんなトラップを仕掛けるつもりなのだ?」

 

「あー、そうだなぁ。1人でやるなら発電機からケーブル引っ張って、レバーとかドアとかに触れたら高電圧で攻撃したりとかだな。レリック辺りがいれば、クラッキングしてシステム書き換えたりとかも面白そうだ」

 

「全く、提督が考えるのは毎回毎回エゲツないな」

 

「いい長波ちゃん、あんな大人になったらダメよ?」

 

「おいこらそこー、人を悪人みたいに言うんじゃありません」

 

そう突っ込んだ長嶺だったが、逆に全員から総ツッコミを喰らう羽目になった。

 

「何を今更。指揮官殿はどちらかと言えば、悪よりだろう?」

 

「そうよねぇ。お姉さん達がレッドアクシズだった時なんて、何度ボコボコにされたことか.......」

 

「提督、敵には容赦しませんからね」

 

「そうよ!この間なんて、新人の艦娘相手に模擬戦ふっかけてボコボコにしてたわ」

 

「えー、何それ。弱い者いじめ?」

 

「提督引くわー」

 

「指揮官?」

 

「指揮官さまの事、信じてましたのに.......」

 

「指揮官、見損なったぞ.......」

 

「あはは、かなりの悪者っぷりね?」

 

「お前ら好き放題言いやがって.......。というか新入りとの演習は、俺は吹っ掛けられた側だからな!?しかもそれ、アイツら巻き込んだの比企ヶ谷だし!!俺悪くねーから!!悪くねーから!!!!」

 

「でもボコボコにしたんでしょ?」

 

「..............YES」

 

「ほらみなさい」

 

オイゲンからの鋭い指摘に、長嶺は蚊の鳴くような声に小さい声でそう呟いた。どういう経緯にしろ、ボコボコにしたのは事実である。正確にはボコボコにしたのは、他の艦娘とKAN-SEN……

 

「って、エンタープライにヴェネト!!お前ら当事者!!こっち側じゃねーか!!!!」

 

「あ、そういえば」

 

「そうだったな」

 

「何が信じてたに見損なっただよ。ってかお前ら、かなりノリノリで倒しに行ってたじゃねーか」

 

「そんな事もありましたわねー」

 

「偶には悪役側もいいものだな」

 

こんな馬鹿話をしていると、いつの間にか宿舎の前に到着した。ここからはチームに別れて行動する事になる。チームはそれぞれ大和、阿賀野、ブレマートンのチーム。エンタープライズ、愛宕、高雄のチーム。長嶺、長波、ヴェネトのチームである。

 

「チーム分けは済んだな。ここから先は兎に角しらみ潰しだ。片っ端にドアをノックしろ。基本は別れてもいいが、無人の部屋の中に入る時や何かしらの危険が予測される時は、3人一組で入れ。最悪の場合は他のチームを呼んで対処しろ。いいな」

 

最低限の指示だけ飛ばし、すぐにドアノックに当たらせる。とは言え一棟につき10階建のマンションみたいなサイズなので、かなり骨が折れる。だが長嶺がこの指示を出したのには、ある仮説を確かめたいからであった。

 

「なぁ提督。なんで部屋を一つ一つ調べさせるんだ?」

 

「それは私も疑問に思っていました。態々調べずとも、警報を鳴らせば良いのでは?」

 

「お前達、さっきから何か可笑しいと思わないか?今の時間は深夜0時。寝てる奴もいるが、起きてる奴もまあまあいる。少なくとも部屋の電気が全部消えてるってのは、まずありえないだろ?だがさっき、渡り廊下から見えたこの建物は、部屋が全部真っ暗。ロビーと廊下以外、電気はついてなかった」

 

「まさか、誰もいない?」

 

「恐らくな。仮に誰か居たと仮定して、もし警報鳴らせば向こうに居場所を教える事になる。出入り口で出待ちとか、かなり面倒だからな。取り敢えず、俺たちも行こう」

 

これが長嶺の建てた仮説である。最初はかつてアズールレーンとレッドアクシズが転移してきた様に、今度は江ノ島が異空間に転移し、自分達が巻き込まれたという仮説である。だがこれは、部屋の電気で違う事が証明された。仮にそうなら、何故電気が消えているのか。宿舎は例え電源が落ちて電力がカットされたとしても、鎮守府内のとは別の自家発電により問題なく電気は使える。にも関わらず、電気は全て消えていた。家主を置いて転移したとして、態々電気を消して転移するとは考えにくい。となれば、恐らく第三者による介入があったとみるのが自然だろう。

そんな事を色々考えながら、片っ端から扉を叩いていると、ブレマートンが血相を変えて飛んできた。

 

「指揮官!ヤバい事になったんだけど!!!!」

 

「何があった!!」

 

「リットリオの部屋から、骨が出てきた!!」

 

明らかに大事件の文言に、3人とも大急ぎでリットリオの部屋に走った。特に姉妹であるヴェネトは、一番大急ぎで向かっている。リットリオの部屋の前には、既にエンタープライズチームの3人も居た。

 

「指揮官.......」

 

「指揮官殿.......」

 

「ヴェネト、気をしっかり持って、ね?」

 

「はい.......。あの、指揮官さま。私も見てもよろしいでしょうか」

 

「勿論だ。だが、覚悟はしておけ。それから長波!お前は見ない方が良いかもしれん」

 

「分かった.......」

 

長嶺とヴェネトはリットリオの部屋に入る。部屋のベットの上には、布団を被った状態の骸骨が横たわっていた。これだけでは分からないが、ヴェネトは服を見てすぐに分かった。

 

「指揮官さま.......これ、リットリオの服です.......。間違い.......ありま.......」

 

ここでヴェネトは耐えられなかった。リットリオの骸骨に縋りつき、涙を流し始めてしまった。長嶺も壁に拳を叩きつける。

 

「クソ!!!!リットリオ、仇は取ってやるからな」

 

そう言いながら、長嶺はリットリオの骸骨を見た。だが、何か違和感がある。リットリオの服装は恐らく寝巻きなのだろう。白のキャミソールを着用しており、肩から胸元にかけて露出している。その肩がおかしかったのだ。

 

「なぁヴェネト、大事な事だ。答えてくれ。この服はリットリオのもので間違いないんだな?」

 

「ヒッグ間違い、ないです.......」

 

「オーライ。ちょっとどいてくれ」

 

ヴェネトを少し後ろに下げて、布団を引っ剥がす。下には白のショートパンツを着用しており、それもついでに脱がす。その下から出てきた骨盤を見て、長嶺は確信した。この骨はリットリオの物ではない。

 

「ヴェネト、多分これリットリオのじゃないぞ」

 

「.......へ?」

 

「まずは肩。鎖骨が逆ハの字になっているし、胸骨も広く、外側に広がっている。骨盤も角張っている。これは男性の骨の特徴だ。アイツ、ナルシストっぽい貴公子みたいな言動をしてはいたが、胸も並以上にある正真正銘の女だった。にも関わらず、骨が男なのはあり得ない」

 

「つまり、どういう事ですか.......?」

 

「なんでかは知らんが、リットリオのベットの上に態々人1人分の骨をセットした奴がいるって事だよ。死んだ死んでないは別にして、少なくともこの骨はリットリオじゃない。全く、危うく騙される所だった」

 

これでいよいよもって、長嶺の仮説が現実味を帯びてきた。恐らくこれは第三者が意図的に仕向けた、明確な攻撃行為。何が理由で何が目的なのか。そもそも一体どこのどいつが、こんなふざけた真似をしているのかは分からない。だが幽霊なんだの仕業じゃないというのなら、お礼参りのやり方はあるというものだ。

 

「喧嘩売る相手、間違えやがったな。まだ見ぬゴーストマスターくん?さぁ、戦争の時間だ」

 

 

 

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