最強提督物語〜大海原を駆ける戦士達〜   作:鬼武者

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第八十一話前路掃討戦

数時間後 釧路基地 地下指令室

「各艦隊、射程海域にまで進出完了」

 

「後方の日米合同艦隊、攻撃準備完了とのこと」

 

第一遊撃艦隊第三部隊の戦闘より数時間が経ち、いよいよこの作戦も大詰めを迎えようとしていた。当初想定された敵艦隊による迎撃は呆気ないまでに突破でき、殆どが小破で留まっている。第一遊撃艦隊第三部隊並みの苛烈な攻撃を加えられたのは、ぶっちゃけここだけである。多分、不幸型の能力が発動してしまったのだろう。

だがこれは同時に、この最後の作戦では敵の抵抗が今まで以上に苛烈である可能性が高いという事である。いや。最早、それは確定した未来と言って差し支えないだろう。

 

「航空隊は?」

 

「AWACSスカイアイより入電!突入進路確保済み、指示を待つとのこと!!」

 

「日米合同軍全部隊、攻撃開始だ。艦娘の突入を援護しろ!!!!」

 

命令を受けた日米合同軍は攻撃を開始する。艦隊からは無数の17式対艦誘導弾とハープーン、トマホークが一斉に発射され、さらに航空隊からもASM3とLRASMが発射され、のべ300発以上の対艦ミサイルが北方棲姫を守る護衛艦隊に襲い掛かる。

 

「ミサイル第一陣、敵艦隊に突入!」

 

暫くして、ミサイルの第一陣が敵艦隊へと突っ込んだ。着弾と同時にレーダー上でも次々に深海棲艦を示す赤い点が消えていき、一目である一定の戦果が挙げられた事が分かる。

 

「続けて第二陣、第三陣、飛来!!」

 

「驚いた。本当に通常兵器でも倒せるんだな.......」

 

「まあ国民のイメージは「深海棲艦に従来の兵器は通じない」だからね。でも実際は大量の火力を一点集中で投射する飽和攻撃を持ってすれば、さしもの深海棲艦でも撃退はできる。

でもあくまでそれが通用するのは雑魚だけだし、費用対効果も悪いしで、こういう大規模作戦時の露払いか本土とか重要拠点の防衛でもなければ使わないけどね」

 

深海棲艦はどういう訳か、その装備自体は第二次世界大戦当時の物に近い。ミサイルも保有していなければ、対空砲もバルカン砲の様な類は装備していない。故に深海棲艦であっても、ミサイルは迎撃できない。

だがそれでも、素の耐久力で阻まれるので結局は雑魚艦にしか通用しないのだ。因みに弾頭に対深海徹甲弾を用いれば、普通に通用する。

 

「ミサイル攻撃、所定のスケジュールが完了しました」

 

「効果は?」

 

「前衛敵艦隊、82.5%の無力化に成功。防衛ラインに穴が空きました」

 

防衛線に綻びが生じたとなれば、次のオーダーは突入一択。戦艦、超巡、重巡を先頭に支配海域へと侵攻していく。

、張巡、重巡を先頭に支配海域へと侵攻していく。

 

「敵が出てこないなんて、なんだか不気味ね......」

 

「敵は手薬煉引いて、我らを待っておるのだろう。いつ攻撃を仕掛けられても不思議はない」

 

前衛艦隊の大半は駆逐艦と軽巡からなる水雷戦隊であった為、ミサイル攻撃での殲滅は容易ではあった。故に残敵掃討もかなり楽であり、駆逐艦達が好き勝手に追いかけ回している。

だが先述の通り、想定よりも迎撃に出てきた数が少なすぎる。恐らく、そろそろ何かしらのアクションがあるはずなのだ。それを見抜いた江ノ島艦隊の艦娘とKAN-SENは、独自に警戒ラインを艦隊前方に構築。残敵掃討を他艦隊に任せて、足の速い物を斥候に出し、重巡と超巡で艦隊周囲を固めていた。

 

『こちら島風!吹雪さん!戦艦15隻からなる敵艦隊が現れました!!』

 

「分かりました。皆さん、斥候の島風さんから通報が入りました!!迎撃の準備を!!!!」

 

「あらぁ?吹雪、どうやら2時の方向からも敵機よ。艦載機、かなりの数ね」

 

KAN-SENの島風と赤城から報告が上がる。やはり、かなりの数が出張ってきている。だが、この程度で長嶺の鍛えた艦隊は臆する事はない。

 

「皆さん!敵を迎え撃ちます!!愛宕さんは三水戦を率いて接近中の邀撃、比叡さんと霧島さんは私と共に援護を!!赤城さん達は直掩機の発艦をお願いします!!!!」

 

「吹雪さんも旗艦が板につきましたね」

 

「そーそー。私達の所に初めて来た時なんか、碌に水上に浮かべなかったのに」

 

「それで特訓したよねー」

 

「茶化さないでくださいよぉ!!」

 

第二遊撃艦隊第二部隊は比叡と霧島という戦艦を有していながら、その旗艦は駆逐艦である吹雪が担っている。彼女は知っての通り、ミッドウェー攻略時に第五遊撃部隊の旗艦を務め勝利に導いた特別な艦娘である。故に江ノ島鎮守府内では、駆逐艦でありながら旗艦として運用されることがあるのだ。特に今回の様な特異なケースでは、彼女が旗艦になる場合が多い。

 

「でも吹雪ちゃん、結構頑張ってたっぽい!」

 

「あれは凄い努力だったよね。何度こけても立ち上がってさ」

 

「はいはいみんな!もうすぐ敵が見えるわよ」

 

一応KAN-SEN愛宕がそう注意はするが、それはあくまで形だけ。今回の作戦の為に復活させた旧三水戦ではあるが、KAN-SENが江ノ島にやって来た頃には川内は三水戦、神通は二水戦、那珂は四水戦と言った具合に江ノ島の中でもトップクラスの実力を誇る戦隊を率いていた上に、個としても3人は強い。

更に隷下の吹雪は言わずもがな、夕立は艦娘の駆逐艦ではトップクラスの攻撃力を持ち、睦月は燃費がいい位しかポテンシャルの優位性はないが部隊内の空気や関係の調整者、あるいは参謀や周囲の監視役として優秀な人材である。江ノ島でも指折りの精鋭達の前では、こんな注意は言われずとも分かっている。

 

「見えたぞ!戦艦ル級14、ツ級19、ナ級24だ!!!!」

 

「思ったよりも多いね.......」

 

「どうする吹雪ちゃん?」

 

「.......川内さん、高雄さん、愛宕さんは突撃してください。近接戦で敵を減らします。夕立ちゃんと睦月ちゃんは左翼、私と神通さんは右翼から回り込んで遊撃。比叡さん、霧島さん、那珂ちゃんは援護をお願いします!!」

 

『吹雪、私達も忘れないでくれるかしら?フフ』

 

無線から聞こえてきた上品だが、何処か冷ややかで恐ろしさを感じる声の正体は、吹雪達の背後に構えているKAN-SENの赤城であった。現在赤城の指揮下には妹分の加賀、そして赤城とは長嶺がらみだと犬猿の仲だが、それ以外は意外に仲の良い大鳳がいる。第二の一航戦みたいなものだ。

 

「赤城さん!援護、お願いできますか?」

 

『お安い御用だわ。ねぇ、加賀?』

 

『はい姉様。元より我らの任務は、艦隊の支援ですから』

 

『ようやく私たちにお鉢が回って来ましたね』

 

重桜という別の国家とは言えど、一航戦の名を冠する2人にKAN-SENの中でも新型の部類に入る大鳳。援軍としてこれほどに頼りになる存在も早々いない。

 

「では赤城さん達は、防空と攻撃隊による艦隊への撹乱攻撃をお願いします!」

 

『分かったわ。そっちに合わせるから、そちらは好きになさい』

 

「はい!」

 

無線を切ったのと同時に、赤城達も行動を開始する。飛行甲板には無数の艦載機が現れ、発艦の刻を待つ。

 

「加賀、大鳳!」

 

「さぁ、喰ろうてやるぞ!!!!」

 

「幸せそうに逝っちゃって、ふふふ…」

 

赤城達の艦載機には、戦闘機は局地戦闘機としては恐らく最も有名な紫電改の改修版を艦載機にした紫電改四。爆撃機には強力な大型爆弾を懸架可能な試作型天雷(特別計画艦仕様)。攻撃機にはロケット弾と魚雷を搭載できるワイヴァーンを採用しており、一航戦の名に恥じない編成となっている。

これに加え無敵と称えられた最強世代の一航戦に加え、事実上最後の一航戦となった大鳳が加わるのだ。その練度の高さも合わされば、鬼に金棒どころではない。

 

「さぁ、待ちに待った夜戦だ!!!!!!」

 

「最強の名、伊達ではないぞ!!!!!!」

 

「オイタをする子はお仕置きよ?」

 

艦娘に於ける突撃隊長たる川内に、サムライ気質の高雄と突撃要員としてはこれ以上ない厄介な連中だ。それに加えパワーこそないが繊細かついやらしい剣術を操るKAN-SENの愛宕が合わされば、もう敵は混乱の真っ只中だろう。

実際、この3人が突っ込んだのは攻撃隊形を組み終える寸前の、周囲への警戒が一瞬緩む瞬間であった。そこに突っ込まれるが最後、敵は何もできず指を咥えて崩壊する部隊を見るしかない。

 

「撃ちます!当たってぇ!」

 

「さぁ、砲撃戦、開始するわよー。主砲、敵を追尾して!…撃て!」

 

敵の隊列が乱れれば、逃げ惑う方向に向けて砲撃を加える。水柱と砲弾の雨で、言うなれば檻を作り上げるのだ。こうすれば敵は余計に混乱する上に、無駄に数の多い駆逐艦には至近弾でも脅威となりうる。

 

「パーティー、始めよっ!!」

 

「この勝負、改装強化された睦月がもらったのです!」

 

「各艦、突撃用意…行きましょう!」

 

「撃ち方始め!いっけぇー!」

 

隊列が完全に乱れ、指揮統制が通じなくなったところで右翼と左翼から一気に駆逐艦と巡洋艦を食い散らかす。試製61cm六連装(酸素)魚雷が四方八方から襲い掛かり、上からは砲弾の雨で深海棲艦は手も足も出ない。ある程度削り切れば、あとは上空の航空隊が戦艦達を一掃してくれる。奇襲の上に奇襲という、二段構えの戦法の前には戦艦であろうと太刀打ちできない。

だがこれはあくまでも江ノ島艦隊という、艦娘の中でもトップクラスの実力と装備を誇る上に、KAN-SENという存在による戦力の底上げが行われているからこそ出来る、言うなれば贅沢な戦術。これが他の艦隊であれば、こうは言っていない。

 

「くっ、敵が多すぎる!捌ききれん!!」

 

「ッ!那智さん、直上!!!!」

 

例えば足柄が率いる第一遊撃艦隊第二部隊。配下に那智、阿武隈、春雨、五月雨、山風、潮、曙、朧、漣がいる艦隊は、敵機と水雷戦隊の奇襲を受け、かなり追い詰められていた。

 

「那智さん大丈夫ですか!?

 

「.......これくらいの、なんてことは、ない」

 

「その傷でそのセリフは無理があるわよ!!」

 

爆撃の黒煙の中から出て来た那智はボロボロであった。頭から血を流し、腕からも血が大量に流れ、下に着ているシャツは血で真っ赤に染まっている。艤装の方も一目で、ギリギリ戦えるか戦えないかの瀬戸際だと素人目でわかるくらいには、満身創痍の状態であった。

流石にこの見た目での「大丈夫」は当てにならない。お陰でいつもは提督を「クソ提督」呼ばわりしている位には口の悪い曙ですら、いつものツンを忘れて本気で心配している。

 

「ちょっと那智!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫だ.......」

 

「敵機直上!急降下!!!!!!」

 

漣がそう叫んだ。見れば大破し落伍しかけている那智に向けて、5機の敵艦載機が突っ込んで来ている。だが投弾直前、2機の敵機が爆発。残る3機にもオレンジ色の火線が襲い掛かり、すぐに火だるまになって海へと落ちていった。

 

『よぉ、嬢ちゃん達。生きてるか?』

 

「ピクシーさんだ!!」

 

『上空援護は任せろ。一度退いて、態勢を立て直せ』

 

「いや、どうやら退けそうにないわね。敵水雷戦隊、高速接近中!みんな!迎撃準備よ!!」

 

見れば艦隊の2時方向より、チ級éliteを中心とした敵水雷戦隊が接近してきている。被弾し大破した那智を連れてでは、確実に背後から狙い撃ちにされてしまうのは目に見えている。

 

「足柄.......。私を置いて行け」

 

「そんな、出来るわけないじゃない!」

 

「いいか足柄!他を生かすために、私を棄てろ!!」

 

那智の言う事は、指揮官としてはこの上なく合理的かつ正しい事を言っている。1を助ける為に100を犠牲にするのか、100を生かす為に1を犠牲にするか。合理的に考えるのなら、明らかに後者だ。だがそれでも、仲間を、それも姉妹を見捨てる事はできない。足柄も、他の第七駆逐隊や阿武隈達もそうだ。

 

「絶対に見捨てないわ!!」

 

「そうです那智さん!!一緒に呉に帰るんです!!!!」

 

「絶対見捨てないわ!!」

 

「帰ったら麻婆春雨作りますから!絶対生きて帰りましょう!!」

 

「私まだ、恩返しできてないんですよ!!那智さんに沈まれたら困ります!!!」

 

「ぜったい、死なせない!!」

 

「漣的には、その選択肢はないんですよ!!」

 

「だから、やらせないって言ったでしょ!!」

 

「仲間は、沈ませません!!」

 

全員が那智を中心に円陣を組み、絶対防御の姿勢を取った。絶対に死なせないと、その意志を胸に全員が1つの戦闘マシーンの様に動く。その頑張りによって稼いだ時間により、彼女達の救援が間に合ったのだ。

 

「全艦、戦闘陣形、Tiro(ティーロ)!」

 

「雑魚は身の程を知らないわね」

 

「こっちから当ててやるわ!」

 

第二遊撃艦隊第三部隊。江ノ島鎮守府のサディアのKAN-SENで構成された艦隊であり、所属艦が戦艦と重巡のみという重装甲突撃部隊である。

 

「アリーヴェデルチ!!」

 

「ローマの威光の前に砕かれるがいい!」

 

「サディア帝国の力を見よ!」

 

前衛を務めるザラ、ポーラ、ゴリツィアのザラ級三姉妹の後方から、同じく三姉妹のリットリオ、ローマ、ヴィットリオ・ヴェネトから無数の砲弾が降り注ぐ。

 

「あなた達、ボロボロじゃない!」

 

「ここは私達が食い止めるから、すぐに後方に撤退しなさいな!」

 

「助かるわ!那智、ほら、行くわよ」

 

那智も含め、さっきの防御円陣のお陰で他の艦娘達もまあまあ無視できない被害を被っている。流石にこれ以上の継戦は、轟沈の可能性すら出てくる。その為、皆すぐに退いてくれた。

 

「敵艦隊損耗率31%」

 

「第六十一戦隊、大破3、中破1。第五○戦隊、全艦中破!」

 

「スケルトン1、ガーゴイル6、トランキーロ隊、ロスト!」

 

「戦線が膠着し始めた.......」

 

「長期戦は不利だよ!」

 

白鵬と影谷の言う通り、長期戦となるとこちらの分は悪い。幾ら同時進行で別鎮守府が欧州方面で攻勢を展開しているとは言えど、流石に長引けば長引くほど相手のホームグラウンドで戦うのは荷が重い。一応、江ノ島艦隊が獅子奮迅の動きを見せてくれているが、それでも遊撃と濃密な砲撃で敵を寄せ付けないというだけであり、防戦一方であるのは変わりない。

 

「被害もどんどん増えてきてる。早急に手を打たないと、こっちが食い尽くされてしまうね.......」

 

「長嶺.......長官。ここは霞桜を投入すべきでは?」

 

「.......仕方がないか。霞桜全大隊に告ぐ!総員、攻略艦隊前面に展開し各艦娘の援護を開始せよ!!全兵器使用自由、暴れてこい!!!!」

 

長嶺の命令に、霞桜の面々は「待ってました」と言わんばかりに行動を即座に開始した。最大推力で急行し、翼を翻して行動をグングン下げていく。

レーダー上には無数のアンノウンとして表示され、一時騒然となるがすぐに情報が更新され味方として表示する様に設定し、味方からの誤射もなく艦隊前面に到達した。

 

「目標ポイント上空!!」

 

「カーゴを開けろ!」

 

「後部ハッチ開放する!!」

 

徐々に後部の貨物ハッチが開いていき、隊員達の眼下に真っ赤な、まるで赤錆のような色の変わり果てた海面が広がる。これは深海棲艦のテリトリーを示す様な物なのだが、普段は真っ青な海を赤くされたの屈辱の極み。隊員達の胸中にも怒りの炎がメラメラと静かに燃え上がる。

 

「降下降下降下!!」

 

直後、頭上のランプが『降下スタンバイ』を意味する赤から、『降下開始』の緑に切り替わる。それを確認すると隊員達は我先にと戦域殲滅VTOL輸送機『黒鮫』から飛び降りていき、分隊ごとに変態を組んで各々の目標へと飛んでいく。

無論、一部を除いて全員が新兵装のシービクターと専用の各種武装を装備している。因みにこのシービクターを装着していないのは、水上バイクや水上装甲艇を操縦するドライバーと、各大隊の大隊長である。ドライバー達にはシービクターは大きすぎる上に装備自体が無用の長物であり、大隊長達は逆にシービクターが戦法を減らしてしまう。5人の大隊長は知っての通り、全員が人間離れした自身のスキルを用いて戦う。そういう存在にとってシービクターは寧ろ、自分の好きな戦法を取れなくさせる鎖になってしまう。そこで各大隊長達は従来の強化外骨格に、いつもの専用兵装という状態で戦闘に参加している。

 

「本部大隊は後方にて前線拠点を構築!被弾した艦娘とKAN-SENを回収し、補給と整備を行います!第二大隊はこれの援護と直掩にあたってください!!第三、第五大隊は艦隊前面に展開!接近する敵艦隊の迎撃を!!第一大隊はこれを援護してください!!第四大隊は遊撃戦闘を行い、場を掻き乱してください!!」

 

グリムが現場で指示を飛ばし、その動きをレーダーで見ていた長嶺が各艦隊に指示を飛ばす。

 

「全艦隊に告ぐ。後方に臨時の拠点を構築している。被弾した者は遠慮なく退がり、整備を受けて前線に戻れ。補給に関してはこちらに申告の上で行動されたい。

また諸君らが撤退している間の穴は、霞桜の面々が埋める。戦線に穴は開かないから、安心して退がれ」

 

霞桜は所詮人間。艦娘に比べれば、深海棲艦への攻撃力は低い。だが使い様によっては、逆に最強の兵種にもなる。例えば軽装甲目標の迎撃。魚雷艇の様な軽装甲の高速小型目標には、艦娘以上の制圧力がある。そしてもう一つが、この戦闘支援だ。傷付いた艦娘を即座に修理し、その間は霞桜の隊員が空いた穴を埋め、修復が完了次第また入れ替える。これにより高い継戦能力を得る事ができ、艦娘の生存性も上がる。

難点と言えば機密保持とか色々な制約がある為、基本的には江ノ島鎮守府でしか運用できない位だろう。だが逆に江ノ島の長嶺家族(ファミリー)共と共闘すれば、フルにそのポテンシャルを発揮できる。

 

「敵が来たぞー!!!!」

 

「っしゃぁ!!!野郎共、物理的マジカル弾幕パワーで撃退するぞ!!!!!」

 

霞桜の展開後、最初に接敵したのはバルク率いる第三大隊。この大隊はご承知の通り、弾幕教信者の弾幕狂共が多くいる。しかも今回9割以上の隊員が装備しているシービクターの背部には、他の銃器を二挺装備できる背部多目的兵装懸架システムが搭載されている。他の大隊の隊員はこの背部多目的兵装懸架システムことマニュピレータに、対深海棲艦用突撃銃エリミネーターとか対深海棲艦用パイルバンカー辺りを装備している。

だがこの大隊の大半の隊員達は、本来なら分隊支援火器である筈の対深海棲艦用歩兵機関銃イシスを手持ちで装備し、マニュピレータにもこれを装備する超弾幕仕様になっている。しかもこのイシス、長嶺の風神HMGを元に製作したライフルっぽい見た目の三連装バルカン砲なのだ。その弾幕は、もう一歩兵が展開できる弾幕を超える。オマケに両上腕に追加装甲代わりにバトルシールドを装備しており、シールド内部には2基のガトリング砲を装備してあるので、イシスが両腕+マニュピレータ×2+バトルシールド内のガトリング砲×4、つまり合計8つのバルカン砲を装備している事になる。これには弾幕教信者は崇め奉るだろうし、火力ジャンキーは過去最高のトリップを味わえるだろう。

 

「オラオラオラオラァ!!!!撃って撃って撃ちまくれ!!!!我ら汝等に問う!汝らは何ぞや!!!!!」

 

「「「「「「我ら弾幕信者!!地獄の神の代理人なり!!!!!!」」」」」」

 

どうやら本日はHELLSINGのイスカリオテ機関被れらしい。一応第三大隊は自称『弾幕教 濃密弾幕宗の総本山』らしいが、この辺の祈りの言葉というか名乗りというかは結構コロコロ変わる。

 

「弾幕はパワー!!!!!」

 

「弾幕こそ至高!!!!!」

 

「火力は正義!!!!!」

 

「火力こそ救い!!!!!」

 

「濃密弾幕は愛!!!!!!」

 

「聞かせてあげよう、弾幕による救済の鎮魂歌(レクイエム)を!!!!」

 

第三大隊の弾幕教信者達が救済のレクイエム(物理)を捧げている中、第五大隊の方も敵と接敵。交戦を開始していた。

 

「うらぁ!!!!!」

 

「せいやぁ!!!!」

 

「野郎共!!オヤジに続け!!!!!」

 

安定のヤクザらしい、近接特化の戦い方である。折角シービクターという、最強のパワードスーツを手に入れたにも関わらず、未だに銃ではなく鉄パイプ、バッド、刀剣類、トンファー、メリケンサックなんかの近接武器で相手をボコボコにしている。しかも全て対深海徹甲弾と同じ加工がしてあるので、しっかりダメージが通るという徹底っぷりである。

 

「舐メルナ!!」

 

「っとぉ!俺達喧嘩屋を舐めんじゃねーよ!!」

 

深海棲艦の中には殴りかかってくる奴もいるが、しっかりカウンターを食らわせて返り討ちにし、何なら殴りかかってきた奴を捕まえて他の敵に投げつけたりもしている。もう無茶苦茶だ。

 

「あら?ベーくん達かなり暴れてるわね」

 

「援護しますか姐さん?」

 

「う〜ん。周り、敵来なさそうだしねぇ。よーしみんな!私達もあの中に突っ込むわよ!!」

 

カオスが更にカオスになった瞬間であった。第四大隊と第五大隊。ある意味、混ぜれば危険な大隊だ。何せ大隊を構成する隊員の殆どが、元はベアキブルの部下たる極道で大隊長2人は姉弟。コンビネーションは他の大隊よりも頭ひとつ飛び抜けている。

 

「姉貴!!」

 

「べーくん、私達も混ぜて?」

 

「はいはい、姉貴の頼みは断れませんよぉっと。よーし野郎共!!いつも通りの共闘だ!!!!深海棲艦のクソ売女共を血祭りに上げてやれ!!!!!」

 

「「「「「「「「「「おう!!!!!!」」」」」」」」」

 

ベアキブルが前衛で場を掻き乱し、それをカルファンが後方からワイヤーで援護。逆にカルファンに接近する奴は、ベアキブルが拳銃で迎撃。シンプルだが強固な連携で、次々に向かってくる敵を撃退していく。

一般の隊員達もコンビネーションに拍車がかかり、仲間を抱えて、シービクターのジェットパックを利用してその場で高速回転しながら周囲に弾丸ばら撒いたり、刀で切り裂いたりする変態戦法を編み出してみたり、果てはジェットパックのジェット噴射を相手の顔面の前でやって火傷させてみたりと、かなりエゲツない戦法を使い始めていた。

 

「うわぁ.......。第四と第五の奴ら、ヒートアップしすぎて惨い戦法使い始めたぞ」

 

「うへぇ、マジだ」

 

「アイツら元ヤクザだし、顔怖いし、やる事怖いし、顔怖いんだよな」

 

「顔しか言ってねーじゃん!」

 

前面で大立ち回りをする第四、第五大隊と弾幕貼って好き勝手に暴れてる第三大隊とは違い、第一大隊の面々は後方から微動だにせず戦場を俯瞰していた。

 

『大隊諸君。お仕事の時間ですよ』

 

「おやっさんからのご指示も出たし、こちらも仕事を始めますかね」

 

超凄腕のスナイパー、マーリンが率いる第一大隊は霞桜面々の中で一番、射撃精度が高い隊員が集まっている。第二大隊なら爆薬や破壊などの工兵としての能力が強い者、第三大隊はパワー系と銃火器の扱いが上手い者、第四大隊は隠密行動や偵察の上手い者、第五大隊は超至近距離での近接戦闘特化といった具合に、各大隊には得意とする物がある。

第一大隊は射撃精度が高い者が多いことから、参謀やマークスマンやスナイパーとして支援する立場の者が多い。

それはシービクターの装備にも表れていて、マニュピレータに装備するのは何も対深海棲艦用狙撃銃オーバーロードである。このライフルは火薬による撃発後、電磁力で加速するハイブリッドな銃であり、通常ライフルの徹甲弾以上の貫徹力を通常弾で得る事ができる。

 

「ターゲットマーク。ファイア」

 

その為、戦場において彼らは高速移動可能なスナイパータレットとして行動する。因みに大隊長であるマーリンは…

 

「目標、90。戦艦レ級、3体」

 

「センターに捉えた」

 

「aim、Fire!」

 

ズドォン!ズドォン!ズドォン!

 

スポッターのビーゲンを連れて、遥か後方から愛銃のバーゲストを片手にスナイパーとして行動する。

艦娘とKAN-SENだって負けていない。特にオイゲンが旗艦を務める部隊は、かなりの大暴れを見せていた。

 

「Foyer!!」

 

ズドドドドドドォン!!!!

 

Z1(レーベ)、そのまま相手の頭を抑えて。チャパエフ、ハルピン!!」

 

「蹂躙する!」

 

「これでも食らいな!!」

 

江ノ島にも『精鋭』は数多くいる。だがその中でも、全体を見て指揮まで熟るのは数少ない。ちょっとした指揮なら大体誰でもできるが、目まぐるしく変わる戦況に合わせて戦術を適度に変えたり選べたりできるのは、艦娘なら大和、長門、金剛、赤城、鳳翔、古鷹、妙高、那智、川内、神通、吹雪位なものだ。KAN-SENも含めれば更に増えるが、それでも500人以上いる中で、20人から30人くらいなものだ。

オイゲンはそんな希少な、ある程度の規模の艦隊を旗艦として取りまとめられる存在の1人なのだ。

 

「姉さん、ブリュッヒャー。左の迎撃、お願いできるかしら?」

 

「ひ、左?」

 

「敵なんていないわよ?」

 

「いいえ。もうすぐ来るわ」

 

オイゲンはこれまで、長嶺と行動を共にしてきた。そして様々な場面で長嶺と接し、長嶺が持つスキルを少しだけ再現する事ができたのだ。今のもその一つである。元々オイゲンは本心を隠したり、別の人格を演じたりする事が得意だった。これには演技力の他に、相手の事を見極める観察眼が重要となってくる。

この観察眼を戦場で発揮させ、そこに長嶺がこれまで培ってきた人間の行動パターンを使えば、精度は低いが未来予知に近しい事ができる。目線の動き、敵の挙動等から数手先を読む事ができる訳で、これは戦場においては少ししか分からず確定じゃなくとも高いアドバンテージとなる。

 

「ほ、ホントに来た!!」

 

「ブリュッヒャー、やるわよ!!」

 

「う、うん!」

 

スキルを用いて接近してきた二個水雷戦隊を殲滅し、この辺り一帯の敵は掃討できたと言っていいだろう。となれば、次の手も打たなくてはならない。

 

「グラーフ、聞こえる?」

 

『どうしたのだオイゲン?』

 

「こっちの掃討はあらかた完了したんだけど、多分奥に敵がまだ残ってる。そっちで確認してくれないかしら?」

 

『ふむ、いいだろう』

 

ここまででかなりの敵を倒してきた訳だが、未だにボスたる北方棲姫は見えない。この作戦はまだまだ続く。

 

 

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