数十分後 パーム・ジュメイラ 大型ショッピングモール
「おい!あれ見ろよ」
「なんだよあの胸。デカすぎんだろ.......」
「どこかの女優か?」
「ねぇねぇ!あの人、かっこよくない!?」
「ホントだ!声かけようかな?」
ホテルからリムジンで移動して、楽しい楽しいショッピングのお時間である。実を言うとホテルの中にアクセサリーを筆頭とした免税店は併設されているのだが、やはりそこは本格的な商店街的なショッピングモールには劣る。こっちの方がショッピングモールである以上、品揃えは遥かに上だ。ついでにショッピング以外にも色々あるので、単純な暇つぶしにも丁度いい。
という理由で来たのだが、見事に目立っている。その原因は言わずもがな、長嶺&お供の嫁艦である。格好は空港に降り立った時から変わらないのだが、そのプロポーションが男共の目を引く。女性陣は全員が全員、揃いも揃って爆乳&爆尻とかいう世の男のイメージする「ぼくのかんがえたエロい女!」をそのまんま具現化したかのような見た目な訳で、若い男共はズボンにテントが出来上がっている。一方の長嶺も軍人故の程よく引き締まった、筋肉質な身体に高身長。サングラスで顔の全体像こそ分からないとはいえ、雰囲気や所作はイケメンのソレであり、こちらは道行く女性を振り向かせる。
「ねぇねぇていと、じゃなくてらいぞー。なんでみんな道を開けてくんだろ?」
「胸に手を当てて考えてみろ」
「.......ちょっと大きくなったかな?」
「悪いがお前のおっぱい事情は分かんないのよ」
仕事柄その日の体調の良し悪し位は知っているが、流石にバストサイズの推移までは知らない。というか知ってたらそれはそれで、逆にキモいと思う。
「ぶー、そんなガチで返さなくていいじゃん。おっぱい揉む?」
「揉む!って言うと思うか?」
「らいぞーっておっぱい星人だし、揉みたいんじゃないの?」
「ホテルならYESだろうなぁ」
そんな馬鹿話をしていると、最初の目的の店に着いた。なんでもアクセサリーが見たいそうで、ジュエリーショップが多く立ち並ぶ区画にやって来た。
「いらっしゃいませ。どの様な品をお探しですか?」
「あっ、えっと.......」
「取り敢えず彼女達に似合いそうなヤツ、適当に見繕ってくれ。金に糸目は付けないから、高かろうが何だろうが気にしなくていい」
「承知しました」
店員にいきなり話しかけられて困っていたブレマートンに、すかさずフォローに入る長嶺。流石にこういう高級店では、さしものブレマートンのコミュ力を持ってしても緊張が勝ってしまうらしい。
「ふぅ。ありがとね、雷蔵」
「礼には及ばん」
「にしても、よくあんなスッと対応できるよね。何かコツでもあるの?」
「コツって程でもないが、まあ、そうだな。こういう店では、基本的に店員が色々世話を焼いてくれる。お任せでって言えば、適当に見繕ってくれるさ。もちろん、予算があるんなら予算も伝えてな」
海外では客も店員も基本的に対等となるが、こういう高級店では日本でいう所の「おもてなし精神」に近い物がある。店員は基本的にその道のプロであったり、商品の事には詳しい。店員に任せておけば、大体どうにかしてくれるのだ。尚、高級と大衆の間位の店とかでやると、ぼったくりに遭う場合もある。
「お待たせしました。こちらにどうぞ」
店員に奥の部屋に通されると、様々な宝石類が並べられていた。ネックレスや指輪、イヤリング等々、その形態は様々であるが素人目に見ても高い事だけはよく分かる。
「それではまずは、赤髪のお客様に。こちらは如何でしょうか?」
ザラの前に差し出されたのは、赤い筋の入った水晶が付いているイヤリングである。周りにも何か宝石が散りばめられており、キラキラ輝いている。
「綺麗な水晶ね.......」
「こちらはストロベリークォーツと言いまして、マダガスカル等で採掘される希少な物となっております。周りにはダイヤモンドを散りばめており、とても高貴なデザインとなっております」
「ザラ。宝石にも花言葉の様に、宝石ごとにあった言葉がある。そのストロベリークォーツは、愛と美を司るとされている。お前にピッタリじゃないか?」
「えぇ。これにするわ」
ザラに続いて、他の宝石も紹介されていく。愛宕には愛の石の別名を持つトルマリンのネックレス、鈴谷には成功や挑戦の意味を持つスピネルの指輪、ブレマートンには絆の象徴とされるアパタイトのイヤリング、セントルイスには高貴や幸運の象徴とされるラピスラズリのネックレス、インプラカブルには愛や優しさの意味を持つローズクォーツの指輪、ポーラには情熱や独立の意味を持つアレキサンドライトのイヤリング、そしてオイゲンには信頼と一途な恋の意味を持つパパラチアサファイアの指輪を勝った。
「では、こちらがお会計になります」
「おー、すげー。0だらけ」
「私としましても、一度にこんな金額までお買い上げ頂いたのは始めてでございます」
ちなみにどの位の額になったかと言うと5000万ディルハム、日本円に直すと約2億円である。流石ドバイの一流宝石店と言うべきか、今回勧められた商品はどれも家1軒普通に立つ値段であり、それが掛ける8ともなれば、まあ妥当な額ではある。
「一括で」
「失礼ながら、限度額の方は問題ないでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。俺のカード、特別製だから落とせるよ」
普通なら限度額余裕で超えているし、アメックスの様なカードも限度額は存在する。あれらは限度額を顧客ごとの信頼度でフレキシブルに変わっており、長嶺の場合は特別製なので限度額がそもそも存在しない。
「.......確かに。お買い上げ、ありがとうございました」
無事に決済が完了し、店を後にする。もっと色々見たい所だが、丁度時間帯的には11時過ぎ。多分、考える事は他も同じで昼時には多くなる。早めの昼食を摂ってもいいだろう。
「よーしお前らー!飯行こうぜー」
「あら、何処に行くのかしら?」
「えー、例によって何も決めてません!」
「まあ、雷蔵ならそう言うと思ったわ。なら、私から提案させてもらうわ。アレ、どうかしら?」
そう言ってオイゲンが指さしたのは、外にあるキッチンカー。芳醇なスパイスの香りと、食欲を掻き立てるジューシーな肉の匂いから察するに、ケバブである。
「よし行こう。今すぐ行こう!」
「あー、この匂い好きなヤツだわー」
「やっぱブレマートンも?このジャンク感は、もう確定じゃん!」
「そうねぇ。私もこの匂いは好きよ」
「この香り。悪くないわね」
やっぱり肉は万国共通で最強の食材な様で、心なしか全員目がキラキラしている様に見える。いや、長嶺はキラキラしている。コイツは肉大好物なのだ、仕方ない。
さて、早速注文しようとした訳だが、問題があった。読めないのだ、メニューが。何せレストランではなくキッチンカーなので、見事にオールアラビア語。デパート内には英語版の説明もあったりするのでどうにかなったが、流石にキッチンカーにまで英語表記はなかった。ぶっちゃけミミズが這っている様にしか見えない。一応写真があるので、少しは分かる。とは言え、流石に詳細が分からないと怖い。
「そっか。お前ら、メニュー読めねぇか」
「雷蔵さんは読めるんですか?」
「レストランのメニューとかなら読めるぞ」
だが長嶺であれば問題はない。長嶺は英語、中国語、スペイン語、ポルトガル語を自在に操り、ロシア語、ヒンドゥー語、アラビア語は日常会話程度ならどうにかできる。更には霞桜のガジェットを用いれば、凡ゆる言語を同時翻訳可能である為、実質全ての言語を操る事すらできるのだ。
「あらぁ、イケメンなお兄さんね。いらっしゃい」
「おばちゃん、悪いが俺以外8人共、こっちの言葉が無理なんだ。俺が通訳するから、それで注文いいかい?」
「勿論!待ってて、そっち行くから」
キッチンカーの中から50代のおばちゃんが出てくる。恐らく雰囲気的には、下町の夫婦経営やってる定食屋のおばちゃんというのが1番近い。つまり、めっちゃ話しやすいタイプだ。
「で、どれが食いたい?」
「雷蔵?私達、そもそも何が挟まってるのか分からないわ。私はどうにか、そのメニューがトルティーヤなのは分かるけど、何が挟まってるのかさっぱりよ」
「そうか。そうだな。まあ、有体に言えば牛肉、鶏肉、もしくはミックスのサンドイッチだ。パンはスタンダードのピタパン、トルティーヤ、バーガーのバンズみたいなの、ナンの4種類。トッピングはチーズ、トマト、アンチョビ、ハラペーニョ、卵サラダ。ソースはチリ、グリーンカレー、ジャンジャン、スイートチリ、サウザン、シーザー、ジンジャークリーム、ヨーグルト。ドリンクはオレンジ、りんご、ブドウ、ココナッツ、コーヒー、コーラ。サイドメニューはポテト、ナゲット、フライドチキン、ナゲット、サラダだそうだ」
取り敢えずポテトは頼むのが即決で決定した。だが中々、ソースとかトッピングが決まらず、みんなうんうん悩んでいる。
「兄ちゃん兄ちゃん。ここにはな、全メニュー半分のサイズもあるんだわ。それを頼むってのはどうだい?」
「おーい、おっちゃんがミニサイズあるとよー」
「ミニサイズ.......」
「それなら色んなのを試して、みんなでシェアしましょうよ!」
「さんせー!」
愛宕の案が採用され、各々が別々のソースを選んで、3つずつ頼んだ。3つずつになったのは、パンが3種類あるからである。飲み物は各自が好きなものを適当に頼んでおり、結構な量を一気に注文した為、ちょっと待つ事になった。
「ところでおばちゃん。この辺で、なんかいいデートスポットはあるかい?」
「おや、まさか無計画だったのかい?」
「まあな。本当は予定があったんだが、生憎と臨時休業で全部パァよ。それで何かあるだろって、ここに繰り出してな」
「だったら、そうさね。水族館とかどうだい?」
「水族館?」
おばちゃんの話によると、どうやらこのモール内に水族館があるらしく、かなり広いらしい。結構有名なスポットだそうで、デートにも最適なんだとか。
「なんだい兄ちゃん、水族館行くのか?」
「まあ目的もないからな。現地人がおすすめだって言うなら、行かないと」
「だったら俺から支配人に連絡して、パスを予約してやるよ。あそこのオーナー、俺の友達でな」
「いいのか!?」
「おうよ。ここで会ったも、何かの縁ってな。日本って国には「オモテナシ」とか言うのがあるんだ。これはドバイのオモテナシさ」
こういう珍事があるから、旅はおもしろい。店主のおっちゃんはケバブを作りながらスマホで連絡し、恐らく支配人と話している。通話はものの30秒で終わり、こちらに向いて笑顔でサムズアップして来た。どうやらチケット確保できたらしい。
「フロントで「ケバブドネル」って言えばOKだ。さっ、できたぞ」
「うおぉ!ありがとよおっちゃん!」
出来上がったケバブをテーブルに持っていき、早速食べてみる。一口頬張れば、もう止まらない。肉汁と共に肉の旨みが広がり、それを野菜とパンが優しく包み込んでくれて、全く脂っこくなくて食べやすい。
「めっちゃうめぇ」
「ホント、美味しいわね」
「チーズとアンチョビとトマトも合うわよ。雷蔵、試してみる?」
「ポーラのお墨付きだ、無論もらう」
サディア、というかイタリア人にトマトとチーズの料理を任せて外れる事はない。それはイタリア人の誇りだと、昔訪れたレストランのイタリア人シェフは言っていた。であれば、そのイタリア人、もといサディアのKAN-SENたるポーラが言っているのだ。間違いない。
という訳で食べてみたが、しっかりうまい。チーズとトマトとアンチョビがいい感じにケバブに調和して、ソースもチーズがまろやかにしてくれて、かなり食べやすい。
「あー、美味かったー!」
「これ、今度ウチでも作れないかしら?」
「間宮さんに聞いてみる?」
「そもそもあんな巨大な肉の塊、どうやって作ればいいのかしら?」
ケバブの肉は普通の鶏肉や牛肉を鉄の棒に突き刺していき、間ごとに脂を敷いて、更に肉を重ねて、最終的にあの巨大な肉塊に整形している。個人でも出来なくはないが、流石に採算が取れない。まあ何かしらのイベント時に、屋台とかで組み込むのはアリだろう。
「どうだった、ウチのケバブは?」
「おいしかったよ。何度かケバブは食べた事があるが、ここのがダントツだった」
「だってさ、あんた」
「そりゃぁ良かった!じゃ、ドバイを楽しんで行ってくれ!!」
「ありがとう。だがその前に、コイツを受け取って欲しい」
長嶺は財布から2000ディルハム取り出して、2人に渡した。夫婦共にビックリしているが、長嶺は続ける。
「これはチップなんかじゃない。あくまでも楽しいランチタイムになった事と、今からのデート先を確保してくれた事への報酬だ。ぜひ受け取ってもらいたい」
「そういう事なら遠慮なく貰うぜ兄ちゃん」
「お兄さん、きっとお金に好かれるよ。こういう金の使い方は、金も好きなのさ。いつか巡り巡って、帰って来てくれるよ」
「そうだな。それから、これも渡しておこう」
長嶺は更に、数字の羅列が書かれた紙を渡した。恐らく電話番号だとは思うが、どこの電話かは分からない。
「もし今後、何か困った事。例えばそうだな、強盗にあって全部盗られたとか何処かに連れ去られたとか警察に捕まったとか、そういう人生に関わる様な事態に直面した時、この番号にかけてくれ。どうにか出来るかもしれない」
「へぇ、そりゃいい」
「おっちゃん信じてないな?俺達日本人は、義理っていうのを大切にする。受けた恩には、それ相応かそれ以上の恩を返すんだ。これは俺からの細やかな気持ちだ。
それに案外、人生とか世間ってのは可笑しな物だ。変な所で変な立場の変な奴と繋がるもんさ。もしかしたらここが変な所で、俺が変な立場の変な奴なのかもしれねぇな」
「らいぞー。行くよー」
「おーう。それじゃ、またいつか食べに来るぜ」
長嶺が渡した電話番号は、霞桜のフロント企業が運営するペーパーカンパニーの電話番号である。ここに電話を掛ければ、その話はすぐに長嶺に行き、そこから色々便宜を図る事ができる。
ドバイには知り合いが殆どいない為、こういう風に縁を作っておきたいのだ。こういう所で縁を作れば、今までの経験上、予想だにしない繋がりを齎してくれる。
「と、いう訳で!水族館に行きます!!」
「ここ水族館なんてあるんですねぇ」
「そもそもショッピングモールに水族館って、かなりぶっ飛んだ構造だよねー。日本で言うと、イオンの中に水族館って感じ?」
「.......想像できないわね」
一応巨大水槽がある商業施設も国内にあるらしいが、これから行く水族館はレベルが違う。受け付けで「ケバブドネル」の合言葉を使い入ってみたのだが、まずいきなりシロナガスクジラの骨格標本が天井に吊るされており、かなりビックリした。
「デカっ!!」
「これ、何の骨かしら?」
「あ、ポーラ。そこに説明文があるわよ。でも.......」
「まあ、わかりきってたけど読めないわね。しき、じゃなくて雷蔵。翻訳お願いするわ」
「はいはい。えーと、何々?この骨格標本は、ペルシャ湾にて発見されたシロナガスクジラの骨格標本って、シロナガスクジラ!?」
長嶺は説明文をもう一度読み直してみたが、やはり間違いなくアラビア文字と英語で「ペルシャ湾で発見されたシロナガスクジラの骨格標本」と書いてある。
「あー、そういや6、7年前にペルシャ湾でシロナガスクジラの死体が見つかったとか何とかってニュースになってたな。あん時のか」
「ちょっと雷蔵?私達、何の事か分からないんだけど?」
「簡単に言うとシロナガスクジラってのは、もっと寒い所にいるんだよ。生息域が違いすぎる。イメージで言えば、九州にシロクマが出たみたいなもんだ」
「それにしても大きいわね。こんな巨大な生物が海を泳いでるなんて、生命の神秘ね.......」
インプラカブルの言葉に、女性陣はうんうんと頷いている。彼女達は海で戦うのが仕事であり、生活の中に海は大きく関わっている。それ故にこういう海の話というのは、総じて興味があるし関心が高い。
特にインプラカブルは見た目はアレとは言えど、一応シスター。特に信じている神なんかは無いらしいが、それでも慈愛とか生物への慈しみというのは凄く、今もまるで聖母の様な雰囲気を醸し出している。まあ周りの男共はそんな聖母よりも、下卑た視線を母性の象徴たる巨大な胸の方に送っているのだが気にしてはいけない。
「みんなみんな!水槽の中にも大きいのがいるよ」
「あら、ホントね。何かしら?」
「ジンベエザメじゃないかな?テレビで見たことあるよ」
そのまま少し進むと、巨大水槽があり、中にはジンベエザメの他、かなりの種類の魚が泳いでいた。エイ、ウミガメ、イワシ、クラゲ、よく分からない普通サイズの魚、下の方にはカニもいる。
「へぇ、かなり大規模だな」
「ねぇ雷蔵くん。あれ、もしかして水中トンネルかしら?」
「ホントだ。後で行ってみるとしよう」
どうやらここは水族館であると同時に、海の歴史についても触れているらしい。その証拠に水槽の反対側にはアンモナイトの化石や、俗に言う水竜の化石なんかが展示されている。
「これは化石、かしら?ハンマーの様にも見えるけど.......」
「どうやら原始人の石器の化石らしい。そっちのは銛だそうだ」
「案外現代と変わらない部分も多いのね」
「その分、道具がより丈夫かつ強力な物に進化してるがな」
魚を見ながらも様々な展示品を見て回る。アラブ伝統の船舶であるダウ船という帆船があったり、海賊の使ってた弾痕付きのボートがあったりと、かなり楽しめた。
ここで3時間ほど時間を潰し、その後はまたショッピングに戻る。女性陣は新たに服や水着を購入しており、最終的にホテルに戻ったのは5時を回っていた。
「お帰りなさいませ。そのご様子ですと、お楽しみ頂けたようですね」
「あぁ。特に彼女達は楽しんでいたよ」
「それは何よりでございます。ご夕食は予定通り、19時からでよろしいですか?」
「それで頼む」
「承知しました。それでは、10分前にお迎えにあがります」
今は17:18であり、まだ余裕はある。取り敢えず手分けして買った物を分け、その間に交代でシャワーを浴びて、女性陣はイブニングドレス、長嶺もスーツに着替える。そんな事をしていると、ファーフーリーが部屋に迎えに来てディナーとなった。
「お席はこちらでございます」
「美しい夜景ね」
「アラジンの世界みたい!」
女性陣は夜景にうっとりしている。ブレマートンと鈴谷は素早く写真を撮って、即座にKAN-SEN通信にアップしている辺り流石だ。その後はフレンチとイタリアンのフルコースだったのだが、味もかなり美味しく、食べるたびに女性陣の表情が蕩けていて、かなり面白かった。
「イタリア人的には、ここのイタリアンはどうだ?」
「
「もしかしたらそれ以上かも。とっても美味しいもの」
「その反応だと、リシュリューさん辺りにも試してほしいですね。フランス人の感想も聞きたいですし」
愛宕の言う通り、そこは確かに気になる。恐らくジャン・バールはこういう雰囲気がダメで「味も何もわかったもんじゃねぇ!」とか言いそうだが、リシュリューなら問題ないだろう。
「失礼します。私、総料理長のフサインと申します。本日のお料理は如何でしたでしょうか?」
「おかげで良いディナーが楽しめたよ。炎の魔術師の料理を楽しめたのはとても貴重な経験だったよ、ありがとう」
「その名をご存知でしたか。何と言いましょうか、かなり恥ずかしいんですがねその二つ名。しかしお客様に覚えて貰えることは、料理人として嬉しい限りでございます」
「あなたのYouTubeはいつも拝見させてもらっているよ。私も料理を嗜むが、アレはかなり為になる」
このフサインという男、YouTubeの料理系チャンネルで369万人の登録者を誇るYouTuberでもある。メインは勿論このレストランのコックなのだが、休日はYouTubeで家庭で作れる物や家庭の味をプロに近づける裏技の紹介、偶にガチのプロ料理を作ったりしており、かなり面白い。
料理人としても優秀であり、海外からの要人や賓客の料理を担当したり、世界大会で何度か優勝した実績もあるプロなのだ。
「視聴者さんでしたか。どうもありがとうございます。良ければまた次の動画もご覧ください」
「楽しみにさせてもらうよ」
「あのー雷蔵?もしかしてその人、前に見せてくれた料理系の人?」
「そうだよ。料理系YouTuber、フサインフサインさんだ」
尚、フサインのチャンネルはブレマートンと鈴谷も見た事があり、実際に作ったこともある。中身はオールアラビア語ではあるが、英語字幕があるのでブレマートンがそれを即座に翻訳し、W鈴谷、マーブルヘッド、尾張で一緒に作ったのだ。
「ねぇ雷蔵!お願い、写真撮らせてってフサインフサインさんに伝えて!!」
「フサインさん。一緒に写真を撮らせて欲しいと言っているのだが、構わないか?」
「えぇ。美しいお嬢さんとのツーショットは、男冥利に付きますとも」
ブレマートンと鈴谷はフサインを挟む様に陣取り、そのまま写真を撮る。結構楽しそうなので、もうこの際みんなで記念写真撮っちゃおうとなり、ファーフーリーに頼んで集合写真を撮ってもらう。
「フサインさん、ありがとう」
「いえ。では、私はこれにて」
フサインを見送ると、長嶺達も部屋に戻った。とは言え、まだ時間は20時。流石にもう寝る、という訳にもいかない。何かしたいというのが本音だ。
「おや。まるで「遊び足りない」というお顔ですね」
「分かるか?」
「はい。流石にいくら大人数とは言え、お風呂に入られてゆっくりなさるには些か早いでしょう。そこで、こんなのは如何ですかな?」
ファーフーリーはタブレットで、とある画像を見せてくれた。所謂ナイトプールというヤツで、かなり豪華な作りになっている。
「当ホテルではナイトプールもご用意しておりまして、一定グレード以上のお部屋にご宿泊のお客様にはVIPルームの使用権が貸与されております。今回の場合ですと、最上位のVIPルームをご用意できます」
ファーフーリーのタブレットに、その最上位VIPルームの画像が映る。かなり大きな部屋で、中は大人15人が寛げそうな広さであり、ソファーや机は勿論、カラオケセットとベッドもある。更に反対側にはバルコニーがついており、星と海を一望できる様にもなっている。
「カラオケセットがある観点から防音となっており、中で大声で熱唱しようと、外に声が漏れる事はありません。またプール自体にバーカウンターが併設されており、中でお酒とお料理を楽しむ事もできますよ」
「よし。すぐに用意を頼む」
「かしこまりました」
部屋に戻ってナイトプールの話を伝えると、みんな二つ返事でノリノリで準備を始めた。のだが、オイゲンが女性陣を集めて何やらヒソヒソ作戦会議をしている。
「雷蔵。先に言ってて貰えるかしら?」
「いや、まあ、それは構わないが、どうした?」
「女の子には色々あるの!ほらさっさと行った行った」
半ば部屋から追い出される形で外に出され、取り敢えずそのままプールに向かう。プール横には更衣室があるので、そこで手早く着替えてプールに向かう。
「お待ちしておりました、長嶺様」
「ファーフーリー。もしかして、ずっとここに居るのか?」
「いえ。部屋の案内が終わりましたら、私はお暇いたします。勿論、呼び出されればすぐに参りますがね」
ファーフーリーに案内された部屋は思ってたよりも広く、普通にここで宿泊できそうなくらい広かった。しかも内装も金ピカで、流石ドバイという感じでもある。というかそもそも、外観からして下手な家よりも装飾されてるのだ。中もお察しというところだろう。
「こちらのタブレットで各種サービスをオーダーできます。私を呼び出す事も、お料理やお酒を頼む事もできます。こちらのアイコンは空調、その隣は照明のスイッチでございます」
「あぁ。ありがとう」
「では、私はこれにて。ごゆっくりお寛ぎください。あぁ、そうでした。このプールは1時で閉まりますので、それまでにはお部屋にお戻りください」
「わかったよ」
ファーフーリーは一礼して、部屋から出ていく。さて、これからどうしたものか。ただポケーッと待つのも、何だか性に合わない。バーにでも行って、酒の品定めでもしておくべきかと部屋から出る。
「ねぇ、お兄さん。私達と遊ばない?」
「お兄さんかっこいいなぁ」
出た瞬間、どういう訳か逆ナンされてしまった。白人の女性2人で、まあ普通なら美女と言うのだろう。顔立ちは可愛いと美人、2人とも背は高くスタイルもいい。来ている水着とアクセサリーも、センスがいい物だ。
だが生憎と、長嶺は美女判定というかその辺のカウンターが既にバグってしまっている。艦娘とKAN-SENという、テレビで見る様なアイドルや女優よりも可愛く美しい上、基本的に全員スタイル抜群であり、ぶっちゃけこの2人を持ってしても敵わない。普通の一般男性からしたら「美女に逆ナンされるーというご褒美展開でも、長嶺の場合は「さして可愛くもない女に逆ナンという名のダル絡みされてる」という展開に他ならないのだ。
「そうか、ありがとう。俺も君達の様な美しい女性に声をかけてもらえて光栄だ。でも今日は他に相手がいるんだ、申し訳ない」
「えー。硬い事言わないでさ。ほら」
2人は長嶺の腕を掴み、そのまま自分の胸に押し当てる。誘惑してるらしいが、その感触すらも彼女達には遠く及ばない。
「.......なぁ、俺はどう反応すればいい?童貞よろしく顔面を真っ赤にすればいいのか、それとも襲えばいいのか。どっちなんだ?」
「は、え?」
「そんな顔されても困る。俺は既に君達以上に美しい女と来ているんだ。そういう悪ふざけは、別の相手とやってくれ。迷惑だ」
流石にこんな場面を誰かに見られたら、要らぬ誤解を招く。いくら観光地のドバイとは言え、国柄自体はイスラム教信者、ムスリムが圧倒的多数を占める国だ。イスラム教の戒律では、セックスその他の淫らな行為というのは色々と規定が多い。少なくともこういう公衆の面前での行為は、普通にアウトである。というかムスリムとか以前に、大体どこの国でも痴漢行為は犯罪だろう。
そんな事をしていると、女性用更衣室からオイゲン達が出てきた。どうやら着替え終わったらしい。長嶺は何も言わず、オイゲン達の方に向かって歩く。
「ちょ、ちょっと!」
「オイゲン!みんな!こっちだ」
8人はプールにいた全員を瞬時に魅了した。同じ女だろうと、彼女達の美貌は眩しいらしい。野郎共は完全に視線が胸と尻に集中しているのが分かる。何せ今の格好、かなりすごい。
オイゲンはいつものビキニではなく、さらに布面積の小さい黒のマイクロビキニと黒のTバック、鈴谷はセーラー服風のビキニトップとスカート型のパンツ、愛宕は水色のVネック水着に琥珀色のサングラス、ブレマートンは黒のスリングショット、セントルイスは青のブラジリアンビキニ、インプラカブルはいつもの格好のベールとか裾とかが無いバージョン、ザラは赤のモノキニ、ポーラは白のザラと同じデザインのモノキニという格好であり、超攻めまくった格好をしている。既に周りの男性陣は股間がもっこりしている。
「な、なぁお姉さん達!」
「俺達とそこのVIPルームで飲まないか?」
5人の以下にも成金、もしくはボンボンという感じの男4人が声を掛けた。更衣室から出てきた10秒後にはナンパされるとは、もし「ナンパ最速選手権」とかあれば優勝間違いなしの素早さである。まあ、それくらいエロい、もとい美しいので仕方がない。
「(お前誰行く?)」
「(僕は赤髪と紫髪の、多分姉妹っぽい2人)」
「(じゃあ俺は銀髪のクールおっぱいちゃんと、青髪のおっぱい姉ちゃんだな)」
恐らく一団のリーダーと副リーダー的ポジションであろう2人がナンパしている間、後ろの男2人は品定めをしている。このまま飛び込んでもいいが、この際、一応の旅の目的であるハナトラ要員の訓練をして貰ってもいいだろう。こういう手合いのナンパを掻い潜るのもまた、ハニートラップには重要であったりする。
もし無理そうなら、割って助けに入ればいい。別にそのまま殴りかかってこようが銃とかナイフを持っていようが、4人くらい余裕で殲滅できる。問題はない。
「悪いけど、私達みんな相手がいるわ」
「冷たいなぁ。どうせならみんなでハッピーに行こうよ」
「それにそんなチンケな相手より、オレ達の方がお得だぜ?オレは石油王の次男、コイツは王位継承権持ちの王族、そっちのはロシアのIT会社の御曹司、その横は証券会社の跡取りだ。金はあるし、ビジュアルだって悪くない。それに、こっちの方もな」
そう言いながら指差すのは、海パンの中でパンパンになってる己達のイチモツ。まあ大きさ太さ共に悪くないが、気にするべきはそこじゃない。完全に全員引いている。普通の真っ当な感性を持っていれば、初対面でチンコ見せつけられたら引く。一歩間違えれば、普通に犯罪行為だ。
だが引くのが収まっていくの同時に8人全員、思ってしまったことがある。「ちっさ」と。
「(何あれ。ちっさ)」
「(鈴谷ちゃん言い過ぎですよー。まあ、所謂『粗チン』とか『短小』ですけど)」
「(あれ、一応アピールのつもりかしらね、ポーラ?)」
「(雷蔵の足元にも及ばないわ。あれでアピールのつもりなら、恥ずかしいわよ)」
「(あはは。みんな結構ボロクソに言ってるねぇ。まあ、気持ちはわかるけどさ)」
「(本当ねぇ。でも、アレはないわよ)」
「(あらぁ、アホな坊や達ね)」
「(この手の男って、やっぱりバカなのね)」
そう。ここにいる全員、既に長嶺と致しちゃってる組なのだ。でまあ長嶺さんのは「デカい・太い・長持ち・連射・大量」という、全ての男というか生物のオスの夢を具現化した様な物をぶら下げている。そのお陰で、こっちもこっちで世間一般とはシモの方の認識がズレているのだ。
「で、どうだ?俺達と来ないか?」
「悪いけど、やっぱりお姉さん達には雷蔵くんがいるから」
「そうね。早く行きましょう」
「雷蔵さんを待たせるのも悪いですしね〜」
うまいこと突破しようとするが、その進路を4人は塞ぐ形に移動して意地でも行かせないつもりらしい。そのままお目当ての女達に移動して、素早く胸や尻を揉み、或いは腰や肩に手を回す。
「そう言わずにさ?」
「オレ達と気持ちいい夜にしようぜ」
「うひょぉ、柔らけぇ」
「今日は眠らせないから覚悟してよ?」
流石にここまでされたら、対応は無理だろう。長嶺は素早く人混みを避けて、4人の前に立ちはだかる。
「よぉ、ヤリチンのハエ野郎共。俺だけの華達になに汚い手で触れてやがる。穢れるだろうが」
ちなみに長嶺、かなり激おこである。長嶺が家族とか仲間に執着するのは知っての通りだが、最近では良い感じに人間らしくなっており、新たに『俺の女』項目が追加された。こういう人の物に唾付けようとする輩にも、長嶺は容赦しなくなったのだ。え?前からだろうって?動機が違う上に、沸点が低くなっているので、ぶっちゃけ悪化してます。
「美しくないなぁお兄さん。こんな可憐で美しい女性には、相応の相手というのがいるのだよ。君では役不足だ。ほら、金をあげるから娼館にでも行って女を買うと良い」
「粗チン野郎は娼婦でも抱いてろや」
最初は舌戦でどうにかしようと思ったが、気が変わったらしく、縮地の要領でリーダーと副リーダー格の2人の前に移動し、そのままアイアンクローで無理矢理引っ剥がす。
「イデデデデデ!!!!」
「このっ!!放せ!!!!」
そのまま持ち上げると、ずっと「放せ放せ」とうるさいので、勢いよく下に腕を振り下ろしながら放す。次は奥の2人だが、コイツらはちょっとだけ加減をしてやろう。リーダーと副リーダーは胸とか尻を揉んでいたが、コイツらは肩とか腰に手を回しているだけだ。少しだけ加減しても良い。
とは言うが、長嶺がやったのは関節技。それもかなり強烈なヤツで、何ならリーダーと副リーダーよりも凄い悲鳴を上げている。
「おうテメェら。俺の女に手を出してそれで済んだんだ。ありがたく思え。お前ら如き粗チン野郎は、娼婦様を抱く価値すらない。そうだなぁ。部屋に戻って、俺の女の感触が手に残ってる間に1人寂しくシコシコしてろ。俺は寛大だからな。一夜のお供に使うくらいなら、幾らでも許してやるさ」
長嶺はさらに畳み掛けるべく、4人に顔を近づけて、お得意の殺気を4人に対して撒き散らしながらドスを効かせた声で脅しをかける。
「とっとと失せろ。殺すぞ」
さっきまで元気いっぱいだった自慢のイチモツは縮こまり、何なら1人は小便を漏らす始末。これ以上ないくらいに男としての尊厳を辱められた4人は、そのまま逃げる様に部屋へと走って行った。
「さーてと」
長嶺はさっきの出来事で怯え切っている他の客達に向き直る。面白いもので国籍も人種も違う人間が皆一様に、長嶺が振り向いただけで肩をビクリと震わせた。
「お楽しみのところをすまなかったな。迷惑料がわりだ。今から先、ここの酒その他で発生した諸君の追加料金、その全てを俺が持とう。思う存分楽しむがいい!!」
次の瞬間、プール中に歓喜の声が上がる。これで空気も元通りになったし、心置きなくナイトプールを満喫できるだろう。
「あんな事言っちゃって、良かったのかしら?」
「なんだ、今更金の心配か?」
「まあね。私達にアレだけ使ったのに、大丈夫なの?」
「まっ、それについては作戦があるから心配すんな」
心配するオイゲンを他所に、長嶺は飄々とした様子でVIPルームへと入る。部屋に入ったのと同時に、長嶺はスマホである人物に連絡を取る。
『総隊長殿、どうされました?』
「グリム。俺が泊まってるホテルの、そうだな。今から5分前後のナイトプールの監視カメラ映像、それをコピーできるか?」
『お安い御用です。他には何か?』
「恐らく映像中にオイゲン達に手を出そうとしたアホ共4人がいるから、そいつらの身元を割ってくれ。あと出来ればスキャンダルも」
『了解しました』
グリムにかかれば、いくら最高級ホテルのセキュリティでも突破は容易だ。さらに霞桜のメインコンピューターとサポートAI、これに各国のサーバーや監視装置を並列してやれば身元を割ったり追跡したりはお手のものである。
「もう雷蔵さん。こんな時まで仕事しなくても良いじゃないですか」
「ふっふっふっ。愛宕よ、まさか仕事をするわけをないだろう?俺がやるのは、そうだな。報いを受けさせるのさ。おっ、噂をすれば何とやら」
長嶺の携帯に、グリムからのメールが着信する。メールにはファイルが添付されており、中にはさっきの4人の男の様々なデータが入っていた。
「ほら。見てみろ」
「これは.......さっきの変態達ね」
「その通り。さーて、ではザラ。さらによく読んでみな」
言われた通り読み進めていくと、かなり色々な事が書かれていた。それも彼らの表にしたくないだろう、様々な悪行や恥ずかしい事がズラリと。やれ「大麻パーティーをした」だの「乱交パーティーをした」だの、他にも強姦、窃盗、イジメ、暴力、傷害といった犯罪歴もある。しかもそのどれもが、写真や映像がついているというオマケ付き。
「それで、これをどうするの?」
「なーに、簡単な事さ。まずここでじゃんじゃん飲み食いして、サービスもバンバン使え。金を大量に使うんだ。その請求は後で俺に来る訳だが、それを4人に請求するのよ」
「でもそれって絶対ゴネる.......あっ。それでこのデータって事?」
「その通りだ。これを盾に脅せば、アイツらもイエスとしか言えんだろう。という訳だお前達、まずは高い物を大量に片っ端から頼むぞ!!!!」
長嶺達の豪遊が始まった。まずはタブレットで高い酒を頼めるだけ頼み、さらにフルーツの盛り合わせ等の高い料理も頼む。余れば他の客に押し付ければ良いって事で、とにかく頼みまくった。
「はーい。では、哀れな粗チン共に乾杯!!」
「「「「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」」」」
「やっぱりワインは最高ね!」
「私はスコッチウイスキーが好きよ」
「ビールもっと飲むわよぉ!」
「愛宕はなに飲む?」
「私は取り敢えずウイスキーでいいですよぉ」
「ザラー。そこのフルーツ取ってよ」
「分かったわ」
「このビール、とってもフルーティーで美味しいわぁ」
流石に艦娘の武蔵や足柄、或いは霞桜の連中の様な呑兵衛には負けるが、それでも彼女達はどういう訳か酒にかなり耐性がある。お陰で強い酒を飲んでも、すぐには酔っ払わない。
「ねぇねぇ雷蔵!スライダー行こうよ!!」
「よっしゃ、行っちゃいますか!」
「鈴谷も行くー!!」
飲みの途中でも、誘われれば遊びに行ったりもする。まずはギャルコンビの2人に連れられ、プール内にあるスライダーへと向かう。流石にレジャー施設とは違って、ホテル内のナイトプールなので殆ど並ばずにスライダーに来れた。
「誰から行く?」
「じゃぁ、鈴谷から行くよ!!」
鈴谷は勢いよくスライダーに飛び込み、滑り出す。数十秒で下から「バシャーン!」という音が聞こえたので、恐らく着水したのだろう。
「じゃあ、次はアタシ!」
ブレマートンが次に飛び込み、スライダーのチューブに反響して楽しそうな悲鳴が木霊してくる。数十秒後にはまた「バシャーン!」と聞こえたので、長嶺も飛び込む。
「ひゃっほーー!!!!!」
流水で加速して滑り台よりも加速していき、スピードがぐんぐん上がる。カーブで身体が傾き、Gが掛かる。さらに加速していき、最後にはホテルの明かりと綺麗な星空が見えた。
だがその時にはもうスライダーのゴールであり、視界が満点の星空を捉えながら水中に沈んでいった。どうやら勢い余って、背中から着水したらしい。
「っはぁー!!あー、楽しい!!!!」
「らいぞー良い滑りっぷりだったよ」
「でも背中から行ったのは面白かったなぁ。雷蔵ったら、一瞬なにが起きたか分かってなさそうだったもん」
「いやー、考えるよりも楽しさが勝ってたわ。よーし次は.......」
何をしようかと考えているが、ザラとポーラがボールを5つ、いや。1つ持ってやってきた。
「雷蔵。今度は水球でもしましょ?」
「私達とも遊んでよね」
「よっしゃ、じゃあそれで行こうか。チーム分けは、あー。2対3か?」
「そうねぇ。ならブレマートンと指揮官、私達と鈴谷でいいかしら?」
ちなみに水球とは簡単に言えば、プールでやるバレーみたいな競技である。面倒なので、水に浸かりながらやるバレーだという認識で問題ない。
「それじゃ、いくわ、よ!!」
ザラのレシーブで始まり、ボールがこちらに飛んでくる。ブレマートンが前衛、長嶺が後衛なので、1番近いブレマートンが動いた。
「それ!」
「えい!」
ブレマートンがトスしたボールをポーラが打ち上げる。バールはそのまま、長嶺の方に降ってきた。
「雷蔵!」
「おう!」
まるで銃声の様な凄い音の割には意外と遅い、だがバレーでは普通に豪速球の球が相手の陣地に突っ込んでいく。余りの速さに対応できず、先制点をゲットできた。
「はーい1点」
「ちょっと雷蔵!手加減してよ!!」
「ははっ、嫌だね」
長嶺の答えに、鈴谷がすかさず「作戦ターイム」と叫んで作戦会議が唐突に始まった。1分もしないうちに終わったらしく、また試合が始まる。
「よーし、じゃあ、行くよ」
「はーい」
「来いやぁ!って、ん?」
なんと鈴谷の声と共に、何故かザラとポーラがこちらにやってくる。そしてブレマートンの両腕を掴み、そのまま引きずる様にして鈴谷達の方に連れて行かれた。
「あー、もしかして。これって俺1人?」
「そーれっ!」
「無視ですか!」
まあ、多分、そうなのだろう。3対2が4対1になったのである。しかと姑息というか何というか、女子グループは敢えて胸を揺らす様なオーバーな動きを入れて長嶺の動揺を誘う方向に戦略を変えたらしい。
シラフであったり戦闘モードの長嶺であれば効かずとも、今のリラックスモードではまあ多少は効く。ちょいちょいブルンブルン揺れるおっぱいに目が入ったりし始めてしまう。だって男だもの。
「(いやー、眼福ですわ〜)」
「行くわよ!」
ポーラがアタックした時、水着がずれて何かピンク色のポッチが見えた。すぐに周りがガードし、長嶺も一応側による。
「.......なぁ、これやめね?」
「そうね」
流石にこれ以上やると、こちらとしては万々歳でも女性陣の羞恥心が限界突破しかねないので、これ以上はやめた。この後も流水プールでまったり流れたり、水鉄砲で遊んだりして、ナイトプールを兎に角満喫したのであった。