夏は過ぎて秋となり、文化祭や体育祭といったイベントも目白押しの季節。
その体育祭の出場種目にて………
「何で私が
「仕方ねぇだろ、俺に合わせられる女子で出場種目の枠残ってんのお前だけなんだから」
「ごめんね、風。私もう出場枠全部埋まっちゃってて」
男女二人三脚のペア決めで出場者に選ばれた雪兎とペアに選出された風は抗議するも、雪兎とペアになれるのが風か静那しかおらず、静那は既にクラス対抗リレーを除くと個人技能が優先される競技で出場可能枠を全て使い果たしており、実質風一択という状況だったのだ。
また、風もクラスでは運動神経が良い方に分類される為に雪兎か立真、もしくは望くらいしか風の能力を殺さずに合わせられる男子がおらず、普段から追い追われる立場の雪兎が一番相性が良いだろうというのが風を除くクラス全員の見解だったりする。
「ぐぬぬぬぬ………」
「犬吠埼さん!お願い!クラスの為と思って」
「この通り!」
「あ〜!もうっ!わかったわよ!」
仲の良いクラスメイトに頭を下げられて仕方なく風は雪兎とのペアを了承する。
「よ〜し、出場種目についてはこれで決定な。皆、頑張っていくぞ!」
「「お〜!」」
ちなみに体育祭はクラス対抗となっており、1〜3年混合でクラス毎にチーム分けされている。
雪兎達のチームには3年に炎士、黎也、誠のテニス部3強が、1年には友奈、美森、銀の新旧勇者がいたりする。
まあ、美森は足の関係から見学で、銀も義手の関係で腕を使う競技には出場出来ない*1のではあるが………
そして、その練習時間。
「まずは歩幅の確認がてらゆっくり一周するぞ」
「わかったわ」
流石に決まってしまえば風もアレコレと文句は言って来ず、真面目に練習に参加している。
「やっぱり俺の方が若干歩幅が広いな………俺が外周が枠で犬吠埼が内側の方が良さそうだな」
「そこは男女の差ね」
結果は言わずもがな………そもそも雪兎に風、静那に望、そして立真がいるクラスが勝てない理由もなく、雪兎達のクラスが稼いだポイントは他のクラスを大きく引き離しており、1、3年の快進撃もあり大差での優勝であった。
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その間にも雪兎ら魔王一味はアプリの完成度向上を目的にしたデータ取りも兼ねて戦闘訓練に励んでいた。
「もう三ノ輪の記憶から再現した模倣データ程度なら問題無いレベルにはなったな」
「私としては少し物足りないくらいだけどね」
「あくまで銀の記憶を元にしてるだけだから油断すんなよ?」
「は〜い」
あくまでシミュレーションとしての仮想現実空間でのものなのでこの訓練では肉体的な成長は無いものの、実戦さながらの戦闘を行える点では便利なものである。
大型の星座級バーテックスとなると現実世界で訓練場を作ろうとすれば相応のスペースと秘匿性が必要となってくるが、仮想現実空間ならばそれを再現可能なサーバーさえあれば条件をクリアするのは容易い。
このサーバーとVRシステムは雪兎ではなく、雪兎に対抗したINABAのスタッフが創り上げたもので、これを利用したVRゲームの作成も行われていたりする。
「そういや望、例の計画の方はどうだ?」
「そちらも順調だ。この計画はこちらの派閥の切り札になりそうなのでな、上も乗り気だよ。候補者も8割程決定した」
「気合入ってんなぁ………」
「前回………例のシステムの導入の際にはかなり煮え湯を飲まされたからな。それにあの戦いでこちらに鞍替えした家も少なくはない」
「っ………」
例のシステム………“満開”は銀の友人から当たり前の生活と思い出を奪い去った憎きもの。
それを思い出し、銀は拳をきつく握る。
「もうあの2人のような犠牲者を出さない為の計画だ」
その第1段階が冬の長期休暇に予定されており、その為の施設も夏の一件*2で建てられた宿泊施設・合宿場の1つとして建造済みだったりする。
「支給するウルフォや
電子精霊核とは以前に作った擬似精霊コアの運用データを元に完成させたもので、雪兎達のもののように最初から完成した精霊ではないものの、所有者と共に成長し、所有者に合わせた能力を発現するように設定されている。
雪兎らも電子精霊核へとバージョンアップはさせているが、中身の擬似精霊はそのまま使っている。
合わせて個人カスタム用の能力強化や特殊技能を内包した霊珠と呼ばれている核よりも小さい珠も雨宮家経由で知り合った巫女さんらの手を借りていくつか完成している。
「静那や銀にも色々手伝ってもらうからな」
「うん、楽しみだね!」
「楽しみってお前なぁ………」
こうして本来のものとは大分異なる経緯で前倒しされた“防人計画”が始まろうとしていた。
さっさと原作本編に移る予定でしたが、最後にちょろっと書いた防人計画を前倒しで進行しようと思いますので、原作本編はもう少しお待ちください。