兎協奏曲番外編 天野雪兎は魔王である   作:ミストラル0

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防人編こと楠芽吹は勇者である………くめゆ編スタート


〜楠芽吹の章〜
防人計画


Another Side 楠芽吹

 

神暦299年12月20日

例年より少し早い冬休みの最中、私やかつての勇者候補生に加えて今回が初めてであろう何も知らされてはいない少女ら40名程がとある施設に大赦の呼び出しで集められていた。

ここはゴールドタワーに程近い最近作られたというINABAの合宿施設の多目的ホール。

こんなところを貸切なんて何をしようとしているのかしら?

そんな事を考えていると、仮面で素顔は見えないものの、前回私達が集められた際にもいた神官の女性が前に立った。

 

「まずは突然の招集にお集まりいただき感謝します」

 

けれど、その声色は前と違って柔らかく、これまでの個を殺した神官としてではなく、どちらかと言えば教師に近い感じがした。

 

「今回集まってもらったのは貴女達にとある計画へ参加してもらう為です。勿論参加するか否かは選ぶ権利があります」

 

計画?御役目ではない?

神官の言葉に周囲がざわつくも、神官は気にせず言葉を続けた。

 

「その計画についてですが、発案者である“彼”から説明していただきます」

 

そう紹介され現れたのは黒いシャツの上に白のスーツを着て眼鏡をかけた私達と同年代であろう少年だった。

 

「まずは静まれ、勇者の卵“だった”者共」

 

その一言にその場にいた私達全員が呑まれた。

どうしたらこの歳であの威圧感が放てるというの!?

 

「俺は天野雪兎。お前達をこの場に招いた張本人にしてこの計画の最高責任者になっちまった人間だ。あ〜、あとINABAの特殊技術開発室副室長なんて肩書きもある」

 

天野雪兎!?それって確か招集の際に配布された新世代型スマートフォン・ウルフォの開発者で、他にも多数の技術を開発・復元したというあの!?

私の趣味であるプラモデルの高速射出成形機を発案したのも彼だったはず。

 

「何人かは俺の事を知ってはいるようだな………それはさておき、今回の計画について説明しよう」

 

そう言って彼が指を鳴らすと照明が暗くなり、彼の後ろにあったモニターに映像が映る。

 

「質問は後でまとめて受け付けるのでとりあえず黙って聞け」

 

そこに映し出されたのは“防人計画”という文字。

 

「“防人計画”、この計画の根本にあるのは現状大赦が行なっている“勇者システム”の抜本的見直しだ。勇者と聞いてもピンとこないやつも多いだろうから先に勇者について話そう」

 

すると、モニターの映像が切り替わり、過去の文献と思われるものが映し出される。

 

「四国の外側にある壁はかつて西暦と呼ばれた時代に新型の感染症が蔓延し、その感染を防ぐ目的で神樹様が作られたとされているがそれは誤りだ。感染症ではなく天の神の尖兵たるバーテックス。その人類の敵の侵入を阻む目的で作られた防壁だ。そして、勇者とはそのバーテックスに対抗して選ばれた人類の守り手………つまり壁の内部へと侵入してきたバーテックスへの最終防衛線だ」

 

勇者候補生だった私達はまだしも、新たに招集された娘達は彼の突然の暴露話に顔が青褪めていく。

 

「先代の勇者には大赦に連なる家から3名の勇者が選出されたが、今代は家柄に関係なく勇者適性が高い者も候補としてリストアップされ各地に集められた」

 

ここでモニターの映像が地図へと切り替わり、各地の勇者候補となった者達の写真も表示されていく。

よく見れば新たに招集された面々の顔が何人か見受けられる事から今回招集されたのはその勇者適性が高かった者が優先で選ばれたのだろう。

 

「もう気付いているとは思うが、各地で勇者部や勇者同好会という名で発足した活動団体はこの候補者を一纏めにしておく為に作られたものだ。とはいえ、今代の候補はある程度決まっているようなものでな。特に適性の高い者が集められており、他は保険のようなものだ」

 

その言葉に対象だった娘らが複雑な顔をする。

 

「さて、本題はここからだ。この各地の勇者部・同好会にはまとめ役として大赦から派遣された者こそいるが、そのほとんどが何も知らされていない素人だ。そんな奴らに世界の命運を預けろ?冗談じゃない………だから俺はこれを開発した」

 

そう言って彼は取り出したウルフォの画面をタッチしてその姿を変える。

スーツの時とは一転した金の装飾の付いた真っ黒な法衣に所々に付けられたプロテクター。

それはまるで勇者とは対をなす魔王のようだった。

 

「勇者アプリを解析し、特別な資質を必要とせず使用可能とした対バーテックス用戦闘システム………プロトタイプのこれは魔王システムと呼んでいる」

 

やっぱり魔王じゃない!?

 

「これの量産試作型として開発したのが“防人システム”。お前達に行なってほしいのはこの防人システムの試験運用だ。何も実戦に出ろとは言ってない………希望者がいるのであれば成績如何で実働部隊に推薦してもいいがな」

 

つまり、防人とは量産型の勇者という事なのだろう。

 

「量産型と聞いて『勇者より弱いのに戦えるのか?』と思ったやつもいるだろう………いつ量産型が弱いと言った?はっきり言おう。この防人システムは使い手次第で勇者と互角以上に戦えると」

 

勇者以上………

 

「今回のテストを経て改良を行った防人システムを使いバーテックスを………いや、天の神を打倒する!これが防人計画の全貌だ。ここからは質問を許す」

 

「はい!」

 

そこで真っ先に手を挙げたのは弥勒さんだった。

 

「弥勒夕海子か、言ってみろ」

 

「防人として活躍すれば家の復興は可能でしょうか!」

 

「愚問だな。それはお前の成績次第だ。むしろ前よりも成り上がるつもりで来い!」

 

「やってやりますわ!」

 

「は、はいっ!」

 

続けて手を挙げたのは気の弱そうな少女だった。

 

「加賀城雀か」

 

「わ、私みたいなのがほんとうに防人に成れるんでしょうか?」

 

「ここに呼ばれた者は少なくとも資質があると俺が判断した者だ。自信が無いというなら無理強いはしない。だが、自分を変えたいと思うなら試験運用には協力してくれ」

 

そこからも何人かが質問を行なっていたが、彼は迷うことなくそれらに答えていく。

 

「はい」

 

「楠芽吹か」

 

そして最後に私が手を挙げた。

 

「貴方について行けば本当に勇者より強くなれますか?」

 

「ほぅ………お前の言う勇者とは以前の選抜で選ばれた勇者、三好夏凜だな?」

 

「はい」

 

「その覚悟があるのなら試験運用プログラムでトップを取れ………そうしたらそれが可能になる力を与えてやる」

 

貴女(三好夏凜)に勝つ為ならば私はこの魔王(天野雪兎)の配下にでも何でもなってやる!

そして、私が四国を………世界を守る!

 

「現段階での脱退希望者は無しか………いいだろう。ここに防人計画の開始を宣言する!」

 

こうして私達の………後に“最初の防人”と呼ばれる事となる少女達の物語は始まったのであった。

 

Side Out




次回より試験運用開始

試験は色々な作品を参考にした内容になるので原作はほぼ無視していく方向となります
原作より少し人数が多いですが、芽吹の周囲はあんまし変わってません
あと、兎が介入した影響等もいくつかあります


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