説明文が多めになったので何話かに分割していこうと思います
「試験まで付き合わせて悪いな、“亜耶”」
「いえ!私もお手伝いした事ですから」
候補生達への説明を終えて一度裏のモニタールームに戻ってきた雪兎はそこで待機していた少女“国土亜耶”に声を掛けた。
亜耶とは雨宮経由で“クォーツ”を再現した珠を作成する協力者として呼んだ巫女として知り合った。
その時に何か懐かれてそのままマスコットポジションに収まっている。
協力のお礼として彼女にも雪兎らと同じ規格のアプリが渡されており、専用の電子精霊として狐タイプの孤月をプレゼントしている。
VR空間で小狐と戯れる亜耶は癒し。
「ここからは某教官殿に習って進めるとしますかね」
「ほんとにやるんですか?あれを………」
「いや、亜耶も終盤にはノリノリでアーツ連打してたじゃん」
テストプレイと称して亜耶を含む魔王一味もプレイした第一試験はVR空間でのダンジョン攻略。
第一試験ということで装備も防人共通装備であるストライクカノンとウルフォのアーツのみという中々ハードなものだ。
ポジションの割り振りや各ポジション専用装備等は後の試験で行う予定である。
「さあ、試験開始といこうか」
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多目的ホールから地下に作られた専用施設へと移動した防人候補生達にはそれぞれ電子精霊核が配られる。
『そいつは電子精霊核と言って、勇者システムの精霊を俺が解析し、巫女の協力で電子的に再現したものだ。量産型のそれは初めから強力な力こそ無いが、お前らと共に成長し、それに合わせた能力が発現するようになっている』
候補生達は電子精霊核をウルフォにセットして画面上に現れた半透明で丸い2つ目のスライムのような電子精霊に「可愛い!」「えっ?お世話アプリもあるの!?」「このアプリだけでも世間に出したらヒットしそう」「試験後もこのアプリだけ残してもらえないかなぁ」等と盛り上がっている。
こういうところはちゃんと女子学生なのである。
『落ち着いたか?』
「「大丈夫です!」」
『よろしい。第一試験はそこのVRチェアを使ったVR空間で行う。右の手摺りの所にウルフォをセットする場所があるからそこにウルフォをセットしてダイヴしろ。わからない事があればそこにいるうちの職員に聞け』
そうして候補生達は次々とVR空間へとダイヴしていく。
ダイヴした先に待っていたのは円系のホール。
壁にはいくつかの扉があり、そこから先に進めるようだ。
『その扉の先はダンジョンになっている。第一試験はそのダンジョンの踏破をしてもらう。当然ダンジョンというからにはエネミーも配置してあるので注意するように』
「え、エネミーって………」
「ぶ、武器とかは無いんですか!?」
『落ち着け。その説明をこれから行う』
「「ほ………」」
『流石の俺も女子中学生に丸腰で何の説明も無しに戦え等とは言わん』
これ、原作大赦に対する皮肉である。
『まずはウルフォの防人アプリを起動しろ。それで専用の防護服が展開する』
候補生達が言われるがままアプリを起動すると、黒のアンダースーツに若草色の上下と各部にプロテクターが装着された姿へと変身する。
ウルフォは腰のホルダーにマウントされており、必要に応じて脱着が可能になっている。
『それが初期の防護服だ。これも電子精霊の成長に合わせて強化・カスタムが出来るようになっていく仕様だ』
尚、スカートかボトムかは初期状態でも選択可らしい。
スカートにしてもアンダースーツがあるのでパンチラ等の心配は無い。
『続けて起動状態の防人アプリの兵装選択をタップすると使用可能な武装が表示される。とはいえ初期状態ではIW‐01ストライクカノンしか選択出来ないのでそれを選択しろ』
言われた通りに操作すると、右腕のプロテクターに接続された状態の若草色の防人仕様のストライクカノンが展開する。
『そいつは
その後、ホールに試し撃ちやブレードとして振るう練習スペースが現れ、自由に練習が出来るようになり、候補生達はそこでストライクカノンの使い方を学ぶ。
御丁寧にアプリ内にチュートリアル用の説明動画まであったので順番待ちの間はそれを見て扱いを覚えている者もいた。
『使い方を学び終えた者から扉の先へ進め。どの扉を選んでもゴールは同じでスタート地点が違う程度になっているし、難易度も変わらん。1人で向かうもチームを組むのも自由だ。もしエネミーに負けてしまった場合はこのホールまで強制転移させられるだけなので死に戻り戦法も有りではあるが、試験の評価点は扉を通過してからゴールするまでのタイム、被ダメージ、やり直し回数から算出するので高得点を狙うなら気を付けるように………まあ、時間がきたら強制的にログアウトさせるのでゴールするまで出られませんとかいうのも無いから安心して挑戦してくれ。あと、ダンジョン内には当然宝箱もある。その中にはウルフォの空きスロットに装着する事で戦闘に役立つ
アプリにもアーツや珠、スロットといった項目のチュートリアルが追加されている。
「なるほど………本当にRPGのダンジョンのようなものなのね」
チュートリアルを見終えた芽吹は早速ダンジョンへと足を進める。
「楠さんはソロで挑戦なさるので?」
「ええ、まずは自分だけでどれだけ戦えるか試してみたいので。弥勒さんは?」
「私も最初はソロでやってみるつもりですわ!途中で会う事があればご一緒しましょう」
途中で合流してもルール上は問題が無いようなので芽吹はとりあえず1人で挑戦してみようと考えていた。
夕海子もそうらしく、途中で会う事があればとお互いの健闘を祈り、別々の扉へと進む。
それに続くように他の候補生達も芽吹達のように個人で挑む者や予めチームを組んで挑戦する者と分かれていった。
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Another Side 楠芽吹
扉を潜ると、石造りの古代遺跡のような建物の内部に出た。
所々苔むしたり、ヒビ割れ等も見受けられるのでこのVR空間を作った人達の拘りが感じられる。
そして………
「あれがエネミーね」
通路をしばらく進むと、前方に蝙蝠の羽を生やした猫のような生き物がその小さな羽を動かして飛んでいた。
物理的にはありえない飛び方をしているが、そういうツッコミは野暮というものだろう。
私は素早くストライクカノンを構えると、こちらに気付いた様子もないそのエネミーを撃ち貫く。
「ピッ!?」
そうして気付かれる事もなくエネミーを倒すと、エネミーはまるでガラスが砕けたようなエフェクトで消滅する。
「………これ、普通にVRゲームとして販売したら売れそうね」
それからまた少し進むと分かれ道があり、片方の道の先には先程と同じエネミーに守られた宝箱があった。
「次は近接戦の方を試してみましょうか」
アプリの身体強化によって生身の時よりも素早く動け、2体目のエネミーも難なく処理する事が出来た。
「宝箱には役立つ珠が入ってるって説明では言っていたけれども………」
あの男の性格と私達防人に求められている内容から罠付きの宝箱というのは無さそうなので宝箱を開けてみると、電子精霊核より少し小さな赤い珠が入っていた。
アプリで鑑定してみると【攻撃力】の珠のようで、スロットに装着すると攻撃に補正が掛かるらしい。
チュートリアルのスロットの説明を思い出す。
確かスロットは16まであり、4つのラインに4つずつ割り振られている。
その4つのラインはそれぞれアタック、シールド、アーツ、エクストラと呼ばれ、アタックラインは文字通り攻撃に関する補正を強化するライン。
シールドラインは防護服の防御力や精霊バリアと呼ばれるものを強化するライン。
アーツラインはまだ使った事は無いが、装着した珠によって使えるアーツが変化したり、アーツの発動までの時間を駆動時間といい、その駆動時間を短縮したり、アーツのコスト軽減や威力に関する補正を得るライン。
最後にエクストララインは上記3つのラインと同じ補正を得る事が出来るので、各ラインに収まりきらなかった珠を装着する5つ目6つ目として使うか、エクストラ専用の特殊な効果を持つ珠を装着する為のラインらしい。
今は各ラインのスロットが1つずつ開いているが、電子精霊の成長によって残りのスロットが順次開封される仕組みだそうだ。
何故最初から全て開封されていないのかというと、最初から全開にしてしまうと珠に頼りがちになりかねないのを危惧してとの事。
で、先程手に入れたのはアタックラインに使うもののようだ。
「ものは試しね」
早速装着してみたものの、この辺りのエネミーでは大した差は感じられなかった。
「もう少し先に進んでみましょうか」
この第一試験では徐々にエネミーの強さが増していくのだと予想している。
というのもこの第一試験の目的はおそらく“チームによる作戦目標の達成”だ。
この防人というシステムは個の資質を重視する勇者とは別で、隊での運用を前提としたものだ。
では何故最初からチームを組ませなかったのかといえば、最初からチームを組ませようとすれば反発する者も出るからだ。
そういう者程この第一試験を真っ先にクリアしようと躍起になるはずなので、最初は簡単に倒せるエネミーを配置しておいて徐々に難易度を上げていき、ゴール寸前のボス辺りで個ではどうしようもないレイド級のエネミーを配置しているに違いない。
でなければやられても何度も挑戦出来るルールにしない。
途中で候補生が合流出来る仕組みなのもそれを狙っての事だろう。
つまり、何度も挑戦させて1人ではどうしようもないと心を折り、否が応でもチームを組ませるつもりなのだ。
あの男ならやるという妙な確信が私にはあった。
それでも私はまずは1人でボスを目指そうと思う。
「私は歯車なんかにはならない」
その為にも出来る戦力強化は必要だ。
お誂え向きにもこのダンジョンでは他にも珠が入手可能なようなので今使えるスロット分の珠を確保しましょう。
Side Out
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候補生達がダンジョンを攻略する様子をモニタールームで観察している雪兎と亜耶。
数人はこの第一試験の意図に気付いている者もいるようで、最初からチームを組んでいる者や、気付いていながらも1人で進む者等、性格や個性が出ていた。
「あっ、1人ボスフロアに到達した方が出ました」
「おっ、一番乗りは弥勒か………ほぼ最短ルートで珠は2つだけとは随分と潔いな」
しかも【攻撃力】と【防御力】の2つだけである。
「あっ、強制転移させられました」
戦闘時間ジャスト1分であった。
「雪兎先輩、やっぱり“アレ”はやり過ぎでは?」
「大型バーテックス相手にするよりはよっぽどマシなんだけどなぁ」
芽吹の予想通り、雪兎に始めからソロでクリアさせる気などなかった。
ゴールを守るボス、それは6本の腕と3つの顔を持つ岩の巨兵………名をアシュラゴーレムという。
以前に地の文で書いてあった協力者の巫女は亜耶ちゃんでした
防人組と合流させる為にこういう形での登場となります
お察しの方も多いかと思いますが、このダンジョンのモデルは閃の軌跡の旧校舎でのチュートリアルダンジョンをベースにしています
そして、ガーゴイルポジションに配置されているのはオリジナルエネミーのアシュラゴーレムくん
2.5mサイズのゴーレム版アシュラマンをイメージしてもらえばよいかと
アシュラマンと違い、3面とも視界があるので現状の防人ではまずソロ攻略は不可能というレイド級エネミーです
雪兎の想定では最低攻略可能人数は6人とのこと
ウルフォのスロットはザイファと同じようなタイプで、防人勢には1スロット目には属性スロットがありませんが、2スロット目からは属性スロットが発生する事があります
尚、亜耶ちゃんはアーツメインの調整がされた仕様で、某無限駆動さんみたいなアーツ連発型
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オマケ
雪兎達魔王一味の属性スロット
雪兎:時、火、空
静那:時、風、幻
銀:火、地、空
望:風、水、幻
亜耶:空、時、水