前回の予告通り今回で第一試験は終わりとなります
今回は“あの娘”についても少し触れています
Another Side 楠芽吹
ゴールと思われる扉の先にはスタート地点のホールによく似た空間が広がっており、その中央にいたあの男………天野雪兎が拍手で私達を迎え入れる。
「Congratulations………まさかアシュラ・ゴーレムが攻略されるとは思わなかったよ」
「攻略されるとは思わなかったって………やっぱりアレは攻略させる気なかったのね?」
「ほとんどが素人だしな。そこまでは期待してなかったが、十数人で囲んで滅多撃ちにすれば勝てる調整はしてたつもりさ」
「想定の半数以下でのクリアでしたのね」
それだけの人数をまとめられる人物がいれば………でしょうけど、一応勝ち筋はあったらしい。
「誰もクリア出来ないようだったら後日別のテストでもう1回使うつもりだったんだがなぁ」
「“だった”?………つまりはアレより強いエネミーが!?」
「それは後日のお楽しみってとこだ」
どうせまたろくなものではないのは覚悟しといた方がよさそうね。
「さて、そろそろ終了の時間だな」
『皆様、お疲れ様でした。本試験はこれにて終了とさせていただきます。それに伴いポイントの付与を開始します』
「端末を見てみろ。ポイントとランキング順位が表示されるはずだ」
言われて端末を見れば『732P/4位』の文字があった。
「4位………」
「始めに言ったろ?ポイントはゴールタイム、被ダメージ、やり直し回数から算出するって………ちなみにゴールしてないやつは一律100Pだ」
「つまり………5位はこの中では最下位?」
「弥勒は被ダメージが多かったからな」
ということはこの5人の中でやり直しをしていない加賀城さん、山伏さん、浅霧さんがTOP3ということになる。
見れば加賀城さんの顔が青褪めているが、どうしたのだろうか?
「な、なんで私が1位なんですか!?」
そう言ってこちらに端末の画面を見せる加賀城さん。
そこには『1000P/1位』とあり、どうやら彼女が1位だったらしい。
「だって被ダメージ0、ゴールタイム最速、やり直し0だろ?お前」
確かに加賀城さんは今回が初挑戦。
私達が前衛を務めていてずっと後衛にいたからノーダメージなのだからあの算出方法なら間違いなくTOPだろう。
「さて、ここで話す事はこれくらいかね」
試験が終わったという事は私達もこの空間から現実へと戻れるという事だ。
「今日の試験は以上だ。今は実感無いだろうが、
「ちなみに明日の予定は?」
「ストライクカノン以外の装備のテストがメインだな。色々揃えてあるから楽しみにしとけ」
そう告げると彼は一足早くログアウトしていった。
「私達も出ましょうか」
「そだね………部屋は個室でシャワー付きらしいし」
「温泉もあるって前に見たパンフレットに書いてあった」
「………あの人、ほんとに私達と同じ中学生?」
肩書もそうだが、これだけの大規模な計画とその為にこの合宿場を貸切………いや、おそらくここはこの計画で使うのを前提に作られている。
それだけの影響力を持つ彼が同じ中学生とは加賀城さんでなくとも疑いたくはなる。
「それより早くログアウトしよ、私はもうクタクタだよ〜」
「ええ」
そうしてログアウトした私を待っていたのは私達5人を除く参加者達の視線だった。
聞けば私達より先にログアウトしていた彼女達は私達とアシュラ・ゴーレムの戦闘のダイジェスト映像を見せられたらしく、賞賛や驚きの声をいくつも受ける事になった。
中でも電子精霊が成長した加賀城さんは一部の電子精霊ガチ勢と化していた参加者数名から質問攻めにされていた。
そんな加賀城さんから助けを求める視線を向けられたが、電子精霊の成長していない私では助けになれないと視線を逸らしてしまう。
弥勒さん達にも助けを求めたようだが、弥勒さん達も私同様に視線を逸らしていた。
「そ、そんなぁ〜!?」
結局、加賀城さんが解放されたのはそれから20分後だった。
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「酷い目にあった………」
「災難でしたわね」
それから温泉のある大浴場にやってきた私達………浅霧さんは部屋のシャワーでいいと断られてしまったので、私、弥勒さん、加賀城さん、山伏さんの4人は疲れを癒やしていた。
「“もう1人の”山伏さんについても色々聞きたかったのだけれど、浅霧さんが一緒の時にした方がいいわね」
「そうですわね」
「誘った時もなんかバツが悪そうな顔してたし、どうしたんだろ?」
その時、私は気付いた。
「そういえば浅霧さんについて私達何も知らないのね………」
Another Side Out
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合宿施設地下に設けられたとある部屋。
そこはモニタールーム兼裏の管理人室となっており、今回の合宿試験中は雪兎の部屋として使われている。
そこで雪兎は第一試験で得られたデータを元にアプリの改善点や今回各個人が得た珠を現実世界にて使えるようにする手配等を行っていた。
そして、その作業の傍らで予定外の訪問者の対応も始まろうとしていた。
「で、あの4人はどうだった?“浅霧”」
その訪問者とは浅霧汐音だった。
「流石は先輩がマークしてる娘達ってとこですね………まさかあのゴーレム倒せるとは思いませんでしたよ」
2人は以前からの知り合いであり、色々とあって雪兎は汐音から学校は違えど「先輩」と呼ばれている。
「お前が“全力”出してたらもう少し楽だったろうに」
「そ、それは………」
「………少し意地悪な言い方だったな。まだ“全力”を出すのは怖いか?」
「医師からも大丈夫とは言われてはいるんですけどね………」
そう言いながら汐音は無意識に自身の脚を手で抑える。
「この試験が良い機会になればと誘ったのは俺だが、無理そうなら途中で辞退してもいい」
「大丈夫です。私もそのつもりで来てますから」
「………無理はするなよ?」
「はい」
管理人室を出た汐音は自身に割り振られた部屋へと戻り、1人シャワーを浴びる。
「わかってる………もう前みたいに………ううん、“前よりも”疾く走れるなんて事はわかってるのに………」
汐音は“つま先から太腿の半分程まで真っ黒な自身の脚”を見つめる。
「“また”走れなくなるのが怖い………あの世界が現実じゃない、あそこで何をしたって“壊れない”ってわかってたのに………」
という事で第二試験からは汐音についても色々と情報を解禁していきますのでお楽しみに
他にもオリジナルの防人も出す予定です(候補生の半数がそもそも本来の防人じゃないですし)
第二試験以降は長くならない………といいなぁ