兎協奏曲番外編 天野雪兎は魔王である   作:ミストラル0

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年末最後の日、皆はどうお過ごしで?

というわけで今年最後の投稿はゆゆゆです。

今回はあの話になります………


離別

それから時は流れ7月9日。

銀から聞かされた“遠足”の前日。

 

「やはり間に合わなかったか」

 

結局雪兎が行っていたシステムの改良は間に合わず、遠足後に襲来するバーテックスとの戦いは原作通りあの三人で戦う事になる。

 

「原作に比べれば俺や静那が鍛えたからちっとはマシのはずだが………」

 

雪兎は少しでも銀の強化になればと相手をしていたが、静那の方は純粋に銀を気に入って色々仕込んでいたので身体能力は間違いなく原作より上である。

それでも全く油断ならないのがバーテックスなのだが………

 

「ほんと歯がゆいな、何も出来ないってのは」

 

***********************

 

Another Side 三ノ輪銀

 

その日は楽しい遠足で終わるはずだった。

そう“はずだった”んだ。

遠足が終わってさあ帰ろうという時にバーテックスが現れたのだ。

しかも二体。

いつくもの球体を繋げたような尻尾を持つやつ、いつくもの板をクルクルと回転させているやつ。

兄貴や静那姉からよく言われる『目先や先入観じゃなくて戦場を遠くから眺めるように全体を観る』“観の目”という技術らしいのだが、これを意識して観るとこのバーテックスは何かが不自然だと気付いた。

これはもしかしてバーテックスも私達のように連携してくるのではないか?

だから須美と園子にその事を伝えると滅茶苦茶ビックリされた。

それで兄貴や静那姉に言われた事を話したら「そうよね、銀が自力で思いつくわけないわよね」とか「ミノさんに入れ知恵した人かぁ、私も会ってみたいなぁ」とか言われた、解せぬ。

それから園子に防御、須美の援護射撃をしてもらう合宿で練習した連携でバーテックスに接近した。

私が板持ち、園子が尻尾持ちを担当し攻撃をしていたのだが、突然上から無数の針が雨の様に降ってきた。

私と須美は咄嗟に園子が展開した盾を傘にしてそれを凌ぐ。

どうやら敵は二体ではなく三体らしい。

追加で現れたバーテックスは二つの口が縦に並んだ気持ち悪い見た目をしており、先程の針は上の口から放ってきたようだ。

他の二体のバーテックスにも針は刺さっているが、あれくらいのダメージならすぐに回復されるだろう。

そこへ尻尾持ちが薙ぎ払いを仕掛けてきて斧でガード出来た私は兎も角、須美と園子は宙に打ち上げられてしまい、追撃とばかりに尻尾の振り下ろしを食らい二人はボロボロになってしまう。

 

「須美!園子!」

 

見るからに戦闘不能だと察した私は続く後からきたバーテックスの下の口から放たれた矢を両斧でガードし、隙きを見て二人を連れてその場から離脱する。

二人の状態は服が破れてあちこちから出血しており、須美の方はまだ意識があったが、園子は完全に意識を失っている。

とてもではないが戦闘続行は不可能だと判断し、私は二人を置いて随分と先に進んでいた三体の前に立ち、斧で地面に線を引く。

 

「随分前に進んでくれたけどなぁ………こっから先は、通さない!」

 

まずは連射してくる方の針を防ぎながら接近し、板持ちが板で攻撃してくるのを躱して一閃。

そこへ尻尾持ちが先端の棘で突き刺そうとしてくるのを回避してそいつの脚の一本を斬る。

その二体を援護しようと二口が針を飛ばしてくるが、片方の斧をブーメランの様に投擲して怯ませ、そこに再び尻尾で攻撃してきた尻尾持ちの尻尾を足場に上にいる二口の所まで跳ぶ。

刺さっていた斧を回収して追撃を入れようとしたが、板持ちの板がまるで虫を叩くかの様に迫っていたのでその場から退避すると尻尾持ちが薙ぎ払い攻撃を仕掛けてくる。

ガードには成功したが、私もダメージが無視出来ないレベルになってきた。

そこから針を振り切りながら板持ちに近付きまた突き刺そうと伸びてきた尻尾を弾いて板持ちの胴体に突き刺し動きを封じたところで板持ちを攻撃していたが、兄貴達から鍛えられた結果身につけた勘からその場を飛び退く。

すると、板持ちの板を使って針が反射されてきたではないか。

 

「あっぶな………」

 

だが、そこに尻尾の薙ぎ払いを受けてしまい私は樹海に叩きつけられてしまう。

このままでは不味い。

もし私が倒されバーテックスが神樹様に辿り着いてしまえば………そう思ったら須美に園子、安芸先生にクラスの皆、兄貴達や家族の顔が次々に浮かんでくる。

そうだ、今皆を守れるのは私だけなんだ!

 

「させるもんか………絶対!私が皆を守るんだっ!」

 

針に貫かれながらも尻尾を斬り落とし、板持ちを斧で斬りつける。

 

「化け物共………何で私がこんなになっても、動けるかわからないよな?」

 

血が噴き出すのも知ったことか!と、私はひたすら斧を振るい続けた。

 

Another Side Out

 

***********************

 

銀達の遠足、そして蠍、蟹、射手のバーテックスの襲来のあった日の夜。

雪兎の自宅に思いもよらぬ電話が掛かってくる。

 

「もしもし天野ですが………えっ?」

 

掛かってきたのは思いもよらぬ一報であった。

それは………両親が事故に遭い、意識不明の重体であるというものだった。

慌てて病院に駆けつけた雪兎だったが、そこで待っていたのは沈痛な表情を浮かべる医師達だった。

 

「手は尽くしたのですが………」

 

「そう……です、か」

 

銀が戦ったその日にという事で、バーテックスの影響を考えるも、この時期はまだ大橋で被害を食い止めている為、そんな事は無いのは判っている。

それでもそんな事を考えてしまう程に雪兎も精神的に参っているのだろう。

 

「何で、今日なんだよ………」

 

銀の事もあって色々と考えてしまう雪兎。

しかし、非情にも時は進む。

 

「来ていたか、雪兎」

 

そこに祖父である徹心がやってくる。

 

「爺さん………」

 

「葬儀はこちらで手配をしておくが、喪主はお前が務めろ」

 

「ああ………」

 

二度目であろうと両親との別れは流石の雪兎にも辛いもので、徹心への返事は惰性地味たものになってしまう。

 

「流石のお前でも堪えているか………ならば一つ吉報をやろう」

 

「吉報………?」

 

「三ノ輪銀が重傷ながらも生き長らえたそうだ」

 

「………えっ?」

 

それは意外過ぎる言葉だった。

 

「茂文*1からの連絡だ。利き腕を失いつつも三体のバーテックスを追い返した。だが、意識不明のまま、利き腕も欠損したとあって御役目からは降ろされるようだ」

 

「………そうか、生きて………」

 

まさかの銀の生存の報を聞き、雪兎は少しショックから立ち直る。

そして、雪兎はある事を決意するのであった。

*1
望の祖父




銀、利き腕を失う重傷を負い、意識不明ではあるが生存。
勇者としては戦線離脱となります。
銀のその後については次回!
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