兎協奏曲番外編 天野雪兎は魔王である   作:ミストラル0

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とりあえず書けたので投稿です。

連載版からの追加パートである鷲尾須美は勇者であるパートはここまでとなります。
次からは空白期か後日談的なものを挟むかゆゆゆ本編直前辺りになると思います。


契約

両親の葬儀を終え、四十九日も済ませた頃には夏は過ぎ去り秋となっていた。

銀は一ヶ月で目を覚ましたそうだが、雪兎は時間が合わずに見舞いには行けていなかった。

静那や望からはリハビリに励んでいると聞いているが、やはり利き腕を失ってしまった事で勇者としては戦力外通告を受けてしまったらしい。

これにより“精霊”と“満開”の両システムの採用が確定してしまったという。

そんなゴタゴタを済ませた後、雪兎は銀の見舞いに行く事にしたのだが、銀の病室へ向かう途中、ベンチに座る見知った顔を見つけて足を止めた。

 

「そんなとこで何してんだ、鉄男」

 

「雪兎兄ちゃん………」

 

そこにいたのは銀の弟である鉄男だった。

鉄男とは雪兎も何度か会った事があり、姉弟仲が良かったのをよく覚えている。

 

「姉ちゃんの見舞いに来たんじゃないのか?」

 

「………んっ」

 

今にも泣きそうな顔をしている鉄男の隣に座り事情を聞いてみると、鉄男はいつものように銀の見舞いに来たのだが、部屋の前に来たところで中で銀が泣いているのを聞いてしまい、自分達の前では心配させまいと明るく振る舞っていたのを知り、気付けばここまで来ていたのだという。

 

「そっか………お前の姉ちゃんも辛いが、そんな辛さをわかってやれなかったのが悔しかったか」

 

「……ゔん………」

 

「ほんと似た者姉弟だな、お前らは」

 

そんな鉄男の頭をポンポンと軽く叩き笑みを浮かべる。

 

「姉ちゃんの事は俺の方でも何とかできないか考えとくよ………ほんとならしてやる!って断言できたら格好いいんだけどな」

 

「そんなこと、ない………雪兎兄ちゃんは格好いいよ」

 

「ありがとな」

 

そう言って雪兎はベンチから立ち上がると、立ち去り際にこう告げる。

 

「もし鉄男が誰かを守れる男になりたいって思ったなら道場に顔出しな、その時は色々教えてやるよ」

 

***********************

 

銀の病室の前に着き扉をノックをする。

「は〜い」という元気そうな声がしたので中へ入るとそこには銀以外にも二人の少女がいた。

 

「おっと先客がいたか」

 

「兄貴!?」

 

「ほうほう、これが話に聞くミノさんの兄貴さんですな?」

 

「こら園っち!まずは挨拶と自己紹介からでしょ」

 

「私は乃木園子、こっちはわっし〜」

 

「わ、鷲尾須美です!」

 

その二人とは『鷲尾須美は勇者である』の主人公である鷲尾須美と乃木園子だった。

 

「ああ、銀の同級生の………俺も話は色々聞いてるよ。俺は天野雪兎、歳はお前さんらの一つ上になる」

 

二人の事は原作知識でも知っていたが、そんな事は顔に出さずに名乗る。

 

「ふむふむ、ならばユッキー先輩と」

 

「そのあだ名は色々と背筋が寒くなるからやめてもらえると助かる」

 

「なら、あまあま先輩」

 

「なんかダボ袖の女子にも言われそうなあだ名だが、それくらいなら許容範囲か」

 

「許容範囲なんだ、それ………」

 

そんなこんなで原作の三人娘の全員と顔見知りになった。

 

「園っち、そろそろ時間よ」

 

だが、二人はこの後用があるらしく、もう帰るのだという。

 

「色々お話したいとこなんだけど、私達はこれから用事があるからバイバイなんだよ〜」

 

「「園子(園っち)が大人しく引いた!?」」

 

今までなら我儘を言ってもう少し滞在したであろう園子が素直に帰ると告げると銀と須美は驚く。

それには流石の園子もむくれていたが、雪兎が持っていた飴玉を渡した事で何とか機嫌を直してくれたらしく、銀と雪兎に別れの挨拶をすると二人は帰っていった。

 

「仲良いんだな」

 

「まあね」

 

「それはそうと悪かったな、直ぐに見舞いに来れなくて」

 

「いいっていいって!兄貴こそ両親が事故で亡くなったって聞いてたし」

 

事前に鉄男から聞いてはいたが、雪兎から見ても銀はどこか無理をしているように見える。

なので雪兎は単刀直入に訊ねる事にした。

 

「銀」

 

「兄貴?」

 

「もし、もう一度戦う力を得られるかもしれないって言ったらどうする?」

 

「っ!?兄貴がなんでそれを………」

 

勇者の御役目については情報封鎖・操作がされていて一般人には知らされる事は無い。

大赦に連なる家とて全てを知らされているのはほんの一部に過ぎない。

 

「それについて説明するのは銀が“こっち”に付いてからだ。まあ、大赦も一枚岩じゃねぇとだけ言っとくよ」

 

「………けど、私の腕は………」

 

「鉄男に聞いたぞ、一人の時に病室で泣いてたって。悔しいんだろ?もうあの二人と一緒に戦えないのが………守ってやれない事が」

 

「………っ」

 

図星だったのだろう。銀の目には今にも零れそうな涙が浮かんでいる。

すると雪兎はタブレットにとある情報を表示して銀に見せた。

 

「これは………」

 

「ウチで開発中の義手だ。一般向けの義手は既に実用化してるが、そいつは“戦闘用”だ」

 

「戦闘、用………」

 

「元勇者としての戦闘経験、そして義手のテスターとして銀、お前が欲しい。その代わりに俺はお前をもう一度戦場に引き上げてやる」

 

そう言って雪兎は“左手”を銀に差し出す。

 

「言っとくが、お前一人に全部押し付ける気はねぇぞ?俺は気に入らねぇ事は自分で解決する主義だからな」

 

「はは、兄貴らしいや」

 

それに対して銀はそう笑い返してその手を握る。

 

「となれば色々動かないとな」

 

「色々?」

 

「まずはお前の転院だろ」

 

「えっ?」

 

「義手の施術とかはウチ(INABA)の出資してる病院じゃねぇと出来ないからな」

 

ちなみに今いる病院は大赦の息が掛かった病院で、世間には秘匿している御役目での負傷等の治療は主にここで行われていた。

そして、転院予定の病院はINABAからの出資と医療用電子機器の提供をしている関係にあり、医療用の義手の臨床試験にも協力している。

 

「実はここに来る前に両親には話通してあってな」

 

その際に戦闘義手の話はしたのだが、銀の両親は「銀の意思に任せる」との事だ。

また、銀が御役目を離れるとなった事で大赦から多額の見舞い金が出たそうなのだが、それを使って銀が転院するのに合わせ引っ越しを決めたらしい。

今の家は他の親戚に譲るそうだ。

 

「ちなみに言っとくと、戦わないにしろ一般向けの義手はつけることになってたからどのみち転院だったりする」

 

「………流石は兄貴、手回しがはぇ」

 

そんなこんなで銀は翌週に転院すると正式に決まったのだが、タイミングが合わなかったのか新しいシステムの為の訓練があったからなのかこの日以降に須美と園子が病室にやってくる事は無かった。




最後のとこが不穏?冒頭の季節を読み返して下さい。理由がわかります。
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