人生とは選択の連続だ。
二者択一、そのルールはどこまで逃げても付いてくる。
どちらか片方を救うために、どちらか片方を見殺しにする。
選択の連続だ、人生とは。
天秤にかけるようにして、どちらか片方を選ばなければいけない。
そこに第三の選択肢は存在しない。神様はそこまで殊勝ではない。
そんな当然で残酷な現実を知ったのはたった齢六歳の頃。
幼馴染みのお転婆に当然のように付き合わされていたいつもの日に、それは起きた。
俺が『蛮族』に襲われたのだ。
『蛮族』、魔物達の中でも特別知性を有し、独自の言語を持ち、徒党を組み人間を襲う暴力こそが至高の最低の集団。ーー人間種の天敵。
俺が襲われたのはゴブリンという中でも強さは最下層に位置する存在だったが、いかんせん数が悪かった。
その数、約五十。各自兵装なども整っており、指揮官の姿も見られる。
どういうわけか今まで森に潜伏していたらしい。森を遊び場としていた俺たちは残念なことに奴らに捕まり、蹂躙されるーー、ことはなく。
魔法の天才、とまでいわれた幼馴染みはこういうときの心得というものを持っていたらしく、魔法で蛮族どもを風の刃で切り裂いていった。
徐々に蛮族を彼女は追い詰めていく。
しかし、運が悪く。ほんとうに運が悪く。
ーー魔力が、暴走した。
魔力の奔流が吹き荒れる。
その紫色の色彩が見えたところまでは覚えている。
◆◆◆
ーー気がついたら全てが終わっていた。
村外れの寂れた教会。
気がついたらそこにいた。焦って教会から飛び出して外に出た。
全てが終わっていた。
なにか嵐に襲われたかのように村は凄惨な有り様で。
思わず息を飲む。
この状況を起こしたであろう人物を俺は知っている。
後ろを振り向くと、彼女がいた。
こぼれそうなほどに大きな瞳で、泣き腫らした瞳で震えながらこちらを見ていた。
「お前がここまでつれてきてくれたのか?」
少女に一歩歩み寄ると、彼女は一歩後ろに下がった。
彼女の魔力を受けてこの教会が崩壊していないのはひとえに『神の加護』という奴のお陰なのだろうか。
訳も分からないまま、魔力が暴走して。
村がこんな有り様になって、俺も目を覚まさなくて。
きっとそんな状態で、彼女は泣いていたんだろうと、その目を見て分かった。
その涙を拭ってあげたいと、無意識に思っていた。
だから、彼女に近づいて。
彼女の涙を指で拭った。
もう金輪際。絶対に、俺が生きている限り。
「お前は、もう絶対に本気を出すな」
廃墟になった教会。虹色のステンドグラスから差し込む日差しの元で、小さな小指で指切りをして。あの日、俺は彼女と約束をした。
小指を差し出した瞬間、彼女は頬を緩めて、当然といわんばかりに細い小指を俺の指に絡ませた。
そうしてはにかむ彼女の笑顔を、俺はきっと忘れられないだろうと思った。
この村一帯を、”俺以外”を吹き荒らしたその力を。
俺はもう、二度と使わせない。
そんな決意が、怠惰な少女を産み出した。
その事にようやく後悔をするのは、俺が十五歳になる頃。
「ねえ、アル」
「...俺の経験則から何を言いたいかなんとなく分からないでもないんだが、とりあえず言ってみろ」
「無性にお腹が減ったの」
「ああ」
「ポテチ買ってきて」
「...売店で?」
「うん」
「お前が買いにいけ」
人生は選択の連続だという。
もしも、あのとき俺が本気を出すな、など言わなければ。
きっと、こんな怠惰な幼馴染みに寄生させることもなかったんじゃないだろうか。
俺こと、アルベルト・ブロークン。
弱冠十五歳にしてSランク冒険者ギルド『黒翼』所属。
あれから、なんやかんやあって。
冒険者ギルドに所属することに成功し、ある程度の危険と引き換えに穏当な生活を送る俺たちはーー、
「ねえ、アル」
「...なんだ」
「こんなにかわいくお願いしても、駄目?」
「...一緒に行くか?」
「ちょろ」
「殴るぞ」
何故か同じ家で、一緒に生活する事を強いられている。
なんで?????????
オリジナルファンタジー恋愛の波が来てる。気がする。
ランキングに天才多すぎて辛い。
ちなみに続く。