お前はもう絶対に本気を出すな   作:最条真

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毎日投稿、滑り込みセーフ。

...20時投稿を目安にしてました(震え声)


3.酒と女ときたら続く言葉はもう決まってる

ありがとう。ドレイクマーキス。卑劣な戦略を持って倒した貴様だが、俺はお礼を言いたい。お前が求めていなくても、お構いなしだ。

 

ありがとう、ドレイクマーキス。

思えば、楽な仕事だった。ギルドマスターが俺に『魔剣』をポンッと渡して、それで俺が単身突撃したらどうなってたかは知らないが。ともかくとして、ギルドマスターによって俺が単身突撃する事態とはならず、むしろギルドメンバーのみんなと集団で突撃して、ドレイクの聖なる決闘を邪魔する事態にはなった。

 

なった、が。それは置いておいてだ。

 

目の前ではパーティが開かれている。ドレイクマーキス討伐の祝勝会ということで、国から降りた褒賞金でどんちゃん騒ぎである。冒険者は高いランクになればなるほどこういうことは増える。冒険の最中で頼りになるのは結局自分ではなく仲間。つまり、いざというときに備えて仲間との親睦を深めるのも、冒険者として生き残るコツだ。

 

パーティ会場にはまあ百人はいるだろうか。

『黒翼』のギルドメンバーだけで百人を越えるのだから驚きだ。この数を見ると、ここまで大きくなったんだとしみじみと実感させられる。

 

時刻は月刻8時。そろそろ星が輝き始める時間帯だ。

そう、豪勢な食事が机に広げられ、今日に限っては酒は飲み放題。

 

そう、酒だ。酒と言えば男女の仲を進めるマジックアイテム。

酒の勢いで女といっしょにいたらデキちまう。そう、それは冒険者の中で伝わる了解。

 

酒と女と来たら何が続くか当然分かるよな?という暗黙の了解。

そう、大きな依頼を終わらせた後に開かれる、このパーティはもう実質ーー、合コンである。

 

「合コンだ。おい、アル」

 

「ああ、どうした。シルク」

 

わが同志であり、わが親友でもあるうちの頼れるパラディン、シルクと共に。

 

「分かってるよな。今回こそ、だ」

 

「ああ分かっている。いや、今回もだ」

 

「ああ、そうだったな、アル」

 

「「いっぱい飯を食うぞ!!」」

 

俺たちにとってこの合コンに参加する意味がない。

 

なかなかいい所出のシルクは婚約者がおり、婚約者にお熱。

そして俺は誰とはいわないが意中の相手がいる以上、不貞と思われる行為はしたくない。

 

つまり、俺たちにとって合コンとはただの豪勢な食事である。

 

横目でこのパーティ会場全体を見るとーー、

 

我らがギルドマスターであるダリウスさんが酒の勢いでまた女をどうにか口説こうとしている。今日も今日とてダリウスさんは頑張っている。今日こそ頑張ってもらいたい。

 

アリシアはーー、いつもどおりうちの女子勢に囲まれている。

よし、今日もあそこには近づかないように心がけよう。恐らく俺には分からない化粧の話とかしてるんだろう。多分。

 

あそこは獣の巣窟だ。

 

今さらながら皆格好に気合いが入っている。

ドレスとかスーツとかあからさまに気合いの入った服装が多い。

 

冒険者には出会いが少ない。

それこそ、自分のギルドやパーティメンバーの奴らとくらいしか出会う機会が割りとない。救って、救われてという関係だから恋愛にも発展しやすいからギルド内恋愛というのは意外と存在するのだが。

 

「なんか皆眼光鋭くないか...?」

 

「それはきっと気のせいじゃないぞ」

 

シルクにそう言われて、気づく。

眼光が鋭い?とんでもない。あれは獲物を狩る目だ。

 

長年同じギルドにいて恋愛に発展しない意中の相手がいればきっとああなるのだろうか。

男と女の視線が交差する。ここは戦場そのものだ。

 

「ふむ...」

 

なにかを考えるようにしてシルクは手に顎を当てる。

こいつ種族がエルフなせいで顔立ち凄く整ってるんだよな。人によってはこいつで新たな扉を開く人もいるかもしれない。

 

「どうしたんだ?」

 

「おいアル。今日こそ男になる時じゃないか?」

 

「は?」

 

なにをいっているんだこいつは。おもわず間抜けな声が出た。

 

「酒がいつから飲めるようになるか、知ってるか?」

 

「ああ、十五歳からだな。...で?」

 

そう、お酒は十五歳から。

つまり今年から俺は飲める年齢になったということだ。

 

「酒が巷でなんと呼ばれてるか知ってるか?」

 

「ふむ...?」

 

「男女の仲を進めるマジックアイテム、だ」

 

それは俺も知っている。

酔った勢いに任せて意中の相手に言い寄れば意外とうまくいく。

ところでシルク、その手に持っているものは何だ?

 

「さぁ、一緒に酒を飲もうぜアル。去年は僕、そして今年はお前と続いて酒デビューの波が来ている」

 

「知るか」

 

じりじりと魔の手はこちらに歩み寄ってきている。

 

「酒はいいぞー。本能に身を委ねることができる」

 

「忠告するぞ、これ以上近寄るな」

 

この場からの離脱を試みる。いつのまにか男どもに囲まれていた。

後ろから羽交い締めにされた。後ろを振り向くと、我らがギルドマスターが素敵な笑顔を浮かべていた。

 

「ギルドマスター...?」

 

「恨んでくれるなよアル...」

 

「いや恨みますよ?」

 

「これもお前が大人の階段を登るために必要な儀式。そういわば必要な犠牲...」

 

「童貞のおっさんがなに言ってんだ」

 

「最期の言葉はそれで良いか。よし。やれ」

 

「イエス!マイボス!」

 

「おいばかやめろ」

 

回りの奴らもなぜ止めないのか。ギルドマスターの圧力に屈しているのか。

もっと男気みせろやボケが。こうして俺は酒の波に飲まれーー、

 

 

 

 

 

ーーることは意外になかった。

 

俺を中心としてどんちゃん騒ぎが繰り広げられる最中、俺はシルクに酒をガブガブと飲まされるわけだが。

そこまで酔わない。というか酒は意外に飲めた。

 

美味しいわけではないが、なぜか癖になる味。

どうやら俺は酒に強かったらしい。

 

俺が酒に酔う前に回りが酔いつぶれる方が先だった。

 

「くそ、アルめ。こんなに酒が強いとは予想外だったぜ」

 

「まさかギルドマスターが先に酔いつぶれるとは俺もおもいませんでしたよ」

 

「く、この青二才め。俺たちの『酒の勢いに任せてドキドキ進展大作戦』が台無しだ...」

 

「どんなこと考えてんだよおっさん...」

 

「だって気になるんだもん」

 

この三十路の床に転がってうだうだ言ってるおっさんはSランク冒険者ギルド『黒翼』のギルドマスターである。

ギルドマスター。ギルドの代表者。国内で最高峰の。そのギルドマスターがこの体たらくである。夢見る冒険者がみたら間違いなく失望するだろう。

 

「へーい、アルベルトー」

 

「あ、アザミさん」

 

紫色のくせっ毛が特徴的なその女性は、現在我らがギルドマスターであるダリウスさんが口説き落とそうとしている意中の女性にして、ギルドの頼れるお姉さん。

露出がちょっと激しいのがたまに傷だ。

 

魔法の扱いに長けている王国有数の魔法使いにして、『黒翼』の最古参。

アリシアの魔法の先生でもあるその人は、こういうパーティでは損な役回りになりがちだ。

 

「そこのおっさんと酔いつぶれてる男どもを回収しにきましたー」

 

「いつもご苦労様です」

 

「とりあえずこいつらどこにぶちこめばいいかな?」

 

「普通に毛布かけて寝かせてあげましょう」

 

「アルベルトの優しさが身に染みるねー。感謝しとけよ男ども」

 

急ぎ足で毛布を持ってきてアザミさんは酔いつぶれた男どもに毛布をかけていく。パタパタと、こういう可愛らしい仕草がダリウスさんの心をくすぐるのだろうか。少し分かる気がする。

 

「...ぅ、アザミ?」

 

「お、起きたかギルドマスター?でも酔いつぶれてるおっさんはとっとと寝てろー?」

 

「...天使」

 

「きっしょ」

 

その一言で哀れギルドマスターは絶命した。

ダリウスさんのあの恋は叶うんだろうか。あの素っ気ない様子からみて脈はないだろうが、頑張ってもらいたい。

 

「あ、アルベルトー?」

 

「どうしました?」

 

「バルコニーの方にアリシアいたよー?そうだ、会ってきたらー?」

 

ニヤニヤと笑いながらバルコニーの方を指差すアザミさん。

とりあえず、感謝だけ伝えてその方向に向かう。

 

結局はダリウスさんの思惑に乗りかけてることに、少しだけ悔しさを覚えながら。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「ーーあ、アルベルト。やっときた」

 

手すりに体重を預けて、覗くように空を見上げていたアリシア。その声に、自分の名前を呼ばれてハッとする。

 

正面に立つのは、月光を浴びてなお美しさを増す月の妖精。

 

『妖精』。それが彼女の幻想的な姿を表すのにもっとも適している言葉だった。

ドレスに着替えたアリシアは、普段の彼女とは違う輝きで俺を魅せる。

 

月光にのように煌めく銀色の神に、まるで青空を写したような空の瞳。震えるほどに整った表情は笑みを浮かべ、こちらを見つめてくる。

 

天使か。

 

彼女の姿を視界に入れた瞬間、心の奥に沸き立つように心臓が躍動する。

アリシア以外の全てが目に入らない。

 

首から上が火照ったような感覚が抜けない。

 

「...可愛いな」

 

「へ?何に対して」

 

「お前しかいないだろ」

 

「へ、ぇ。そっか」

 

顔面の破壊力がやばい。

まともに直視できないくらいにはやばい。

 

「そういえばいっぱいお酒飲んでたけど」

 

「ああ。十五歳になったからついに酒が解禁されてな。俺より先に皆が潰れるのは予想外だったが」

 

「お酒強いんだね」

 

「ああ、どうやらそうらしい」

 

「だから、顔赤いんだ」

 

...どうやら俺の今の顔は赤いらしい。

鏡がないから自分の顔を見る術もないのだが。とりあえず、すべて酒のせいにしてしまおう。

 

「ああ。酒のせいだ」

 

「へー」

 

そこでアリシアは俺にずいっと顔を近づける。

 

「ねぇ、アル。酔ってる?」

 

「酔ってない」

 

「じゃあ、駄目か」

 

「...何が?」

 

何が駄目なんだろう。というかこいつ言葉たどたどしくないか?

かわいい。いや、そんなことより頬がほんのり赤い気がする。

 

「もしかして酒飲んだ?」

 

「うん。酔ってるよ」

 

「なるほど。通りでちょっと言動がおかしかったわけだ」

 

「私、そんなに変?」

 

「少しだけな」

 

「じゃ、アル以外には見せられないね」

 

「はい?」

 

服の裾をぎゅっと掴まれる。

 

「ねえ、アル」

 

「...何だ」

 

「ちょっと今日の私、変だからさ。運んで?」

 

「なあ、なんで手を広げるんだ?」

 

「お姫様抱っこ。持てるよね?」

 

「持てるけど...お前はいいのか?」

 

「アルだからいいの」

 

こいつはどうやら本気で酔っぱらってるらしい。

慎重に家まで送らなければいけない。

 

「よっ、と。軽いな」

 

「当然。いつでも準備してるから」

 

「...何の?」

 

「秘密」

 

マジで軽い。なに食ってるんだコイツ。

いや、朝御飯から夜ごはんまで全部俺が用意している筈だが。ホントに同じ人間なのだろうか。

 

「ねえ、アル」

 

「どうしたアリシア」

 

「私、ずっとこのままでいい」

 

「は?」

 

「腕のなか、暖かいから。ずっとこのままがいい」

 

「寝てろ。疲れてるんだろ」

 

「ずっと、続けばいいのにね。こんな日が」

 

「...そうだな」

 

この日々がずっと続けばいいと、俺も思ってる。

 

 

 

 

 

翌朝目を覚ますとーー、

 

俺と同じベッドで俺の腕のなかでアリシアが眠っていた。

 

 

 

 

 

なんで?????

 

 

 

 

 

 

 

 

 




酔っぱらったかわいい女の子を想像して書いたらこんな時間になっていた。
私は悪くない。同じ家にいるのに付き合ってすらいないこいつらが悪い。

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