俺はただ天井を見つめていた。
一つのシミすらない清潔な白い天井。
それはこのカルデアの志を示しているような、そんな気がした。
そしてその天井を見つめて俺が何をしてたのかと言うとだな。
己のフィルターを殺そうとしていた。
「ふむ…中々難儀なものだね。我が身を隙間なく包み、言の葉さえも変異させるとは…。我が王、その時間があれば他のものを破滅に導くなどバイアクヘーを遣わせるよりも容易でありましょうに」
(くっそ!このフィルター言動も変異させてくる!!何やってんだハスター!!お前暇かよ!!仕事しろ!!!)
と、まぁハスターがかけたであろうフィルターを恨んでいた。
ああ、めんどくさい。マシュに謝らないといけないのに、フィルターが許してくれない!!
やっとサーヴァントとして呼んでもらえて、しかも初召喚がカルデアのマスター!テンション高くなるだろそりゃ。
我らが後輩マシュにも会えて、そりゃあ内心ニッコニコ。でもフィルターのせいでマシュとマスター困らせちまった。
くそ、座に還りたい…でも今還るとサーヴァントとしての存在理由が無いし、またキャラクターじゃなくて読者に逆戻り。
黄衣の王にも叱られるだろうし、ああもう、どうして…。
多分、俺の性質故だ。
俺はセオドア・チェンバースであるが、セオドア・チェンバースそのものではない。
俺はセオドア・チェンバースの魂ではないし人格でもない。
俺は現代を生きた
セオドア・チェンバースはシャーロック・ホームズシリーズを生きた
そして、サーヴァントとして黄衣の王の意志を受けたフォーリナーとしての
この三つが入り混じってるから、フィルターも強いんだろう。
まぁ、今はシャーロック・ホームズシリーズの彼は寝てるし俺の魂が強いから代表として考えてたり動いてたりするんだけど、考えが荒ぶるとどこからともなくフォーリナーが出てきてフィルターが強化されるってわけだ。
なんかそう言うこと考えてると冷静になってきた。今なら多分フィルターも弱いだろうし…。
マシュに謝ってこよう。
彼女は悪くないし、至極当然のことを俺に聞いたんだ。俺だってそれに答えるつもりだった。「シャーロック・ホームズシリーズとクトゥルフ神話だよ」って。
なのにどうして…
あの時は感情が掻き乱された…?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
夢を見た。
誰かが机で何かを考えていた。
「彼は…彼はセオドアだ!」
机で何かを書いていた。
それはシャーロック・ホームズシリーズに憧れを抱き、熱を帯びたいきいきとした創作。現代では二次創作とも言われる行為。
彼は真剣に、嬉しそうに、楽しそうにその熱を文字にぶつけて、キャラクターと物語を考えて。
でも、暫くそうしているうちに、彼の熱はゆっくりと、緩やかと冷めていく。彼と彼の作り出したキャラクターにとっての、夢が醒めていく。
「ああ、ああ、だめだ。あの物語を私の愚かな考えで穢すなんて、私の考えではこんな、こんな物しか作り出せないのに」
彼は頭を抱えている。
だらだらと汗を垂らして、机の上のかつての熱を、ただ見つめていた。その視線は涙が混じり、悔しさが混じり、憎悪が混じったものだった。
己の才能に失望した。己の思考に絶望した。
そして、己の熱に酷く恥を覚えた。
彼はこの熱の塊を破り捨てようとした、燃やし尽くそうとした、水に流そうとした。
でも、できない。
彼にとってこの
自身の時間、知識、経験、技術、そして熱を何よりも込めたものだった。
それを無に帰すなんて、彼にはできなかった。
彼はそれがわかると、そっと、机の上の本に小さく畳んで挟み込む。
せめて、誰にも見つかることなく、忘れ去られる物語であることを望んで。それが書かれた者達にどれだけ辛いことであるかは、彼にとってもわかっていた。
彼もまた、多くの人に忘れられてきて、失望されてきた人だったから。
恨むなんて、妬むなんて、まして、殺意なんて。
思うことさえ、できないのに。
ああ、せめて、せめて彼の人生が。
安らかなものであったことを、切に願った。
説明&シリアス(当社比)でした。
最近メインよりこっちばっかり思いついて頭抱えてます。