今後の投稿内容と前後しますが、興が乗ったところから書くスタイルでやらせてもらいます
-小話17 氷雪を司る者-
巨大な扉をコキュートスは押し開く。そして扉の先の広間にコキュートスが足を踏み入れると、金を始めとする財宝の上に佇む竜が口を開いた。
「…なんだ貴様は…?ここを我が棲家と知っての狼藉か?答えよ。異形の者よ。」
コキュートスは声の主に対し、武器を構える事はせず、まずは礼を返した。そして再度対峙するように向き直り竜の顔を見て口を開いた。
「貴殿ガオラサーダルク殿カ?」
「貴様、我と知っての行いか。だが…その堂々たる態度、先ほどの一礼に免じて許してやろう。…何しにここへ来た?詫びを入れ、今すぐ引き返すならば命までは取るまい」
身体を起こし、財宝の山から床へと降りたオラサーダルクはコキュートスを見下ろしながらそう言い放つ。
「ソレニハ及バヌ。オラサーダルク殿、強者ト見込ミ一ツ頼ミガアル」
「…ほう?頼みとはな。…良いだろう、言ってみろ」
「一騎打チヲ、所望スル」
そしてコキュートスは空間へと手を伸ばしハルバートを手にし、石突で床を鳴らす。
「…良いだろう。お前達、手を出すなよ。」
オラサーダルクは振り返ると自身の妃達である他の竜にそう声を掛け、コキュートスへ向き直る。
「我ハ!栄エ有ルナザリック地下大墳墓、ソノ第五階層守護者、コキュートス!イザ…!!」
「ふむ?ナザリック…聞いた事の無い地だが良かろう。そのような武人たる名乗りにはこちらも相応の名乗りで応えねば無礼。…我は!このアゼルリシア山脈を統べし霜の竜の王!オラサーダルク=ヘイリリアル!いざ…!!」
その後の言葉に続くは互いの心の中でのみだが同じであった。尋常に、勝負…と。
「穿ち、貫けッ!!」
オラサーダルクが放ったのはスキル、-穿つ氷柱-自身の周囲に鋭利な氷の礫を発生させ、相手へと放つものである。
「フム、-穿ツ氷柱-!!」
そしてそのスキルはコキュートスも愛用しているスキルであった。互いの氷の礫は勢いよく飛んでいき互いの礫を破壊して終わった。
「ほう…?やはりその身体、氷に属する者か。この地でも問題無く動いているからそうかとも思ったが」
「フム、穿ツ氷柱ハ我ト互角カ。侮レヌ」
するとオラサーダルクはその翼で力強く飛び上がり、一回転しつつその尻尾を振り下ろした。
「ヌゥン!!」
その打撃をハルバートの柄で防ぐがその衝撃にコキュートスは地面を滑るように後退する。
「遠心力ト尾ノ筋力ニヨル打撃、マトモニ受ケル訳ニハイカヌナ…!」
「なるほど、純粋な力も強いと来たか。ふむ…」
するとオラサーダルクは一度地に降り、少し考えたようにするとある提案をしてきた。
「どうだ?今からでも遅くはない。同じ氷を司る者同士のよしみだ。我が配下にならないか?貴様は強い、我は歓迎するぞ?そうだな、我が右腕にしてやろう。光栄に思うが良い…悪くはない話だろう?」
オラサーダルクからの提案にコキュートスは首を振る。
「悪イガ、二君ニ仕エル気ハ無イ」
「…そうか、それは残念だ。ならば、死ね!-魔法最強化--魔法三重化-…-焼夷-ッ!!」
「ッ!?」
霜の竜、オラサーダルクが放つはスキルでもブレスでもなく、魔法。オラサーダルクは強者と認めたからこそ、炎系魔法を最大強化した上で三重化して放ったのだ。三本の凄まじい火柱がコキュートスを取り囲むように立ち上るとその火柱達はコキュートスへと吸い込まれるように動き、やがて収束する。
「あら、容赦ないのね」「アレでは骨も残らないでしょうに」「そもそも骨…あるのかしら?」
オラサーダルクとコキュートスの一騎打ちを眺めていた妃達はそれぞれ口を開く。
「ふん、霜の竜が炎を操れぬなど誰が決めた?この地に住まう者どもは我も含め皆氷に強く炎に弱い。ならばその弱点を突く術を得るのは当然のことだろう?…まぁ、跡形も無く焼き消えたろうがな。しかし、我が記憶に残る素晴らしき相手であったぞ。コキュートス、貴様の名…覚えておこう」
オラサーダルクは名残惜しそうに炎を眺めていたが、次の瞬間その目を見開くことになる。
「今ノハ、効イタナ…!」
「何…!?馬鹿な…!」
コキュートスは確かに氷を司る蟲王であり、炎はかなり苦手とする。しかし、それはあくまでコキュートスと同格の相手が最高位に近い手段を用いた時の話である。そして残念なことにオラサーダルクは霜の竜としてかなり秀でたものであったが、コキュートスがハルバートのみを用いて相手していることから分かる通り完全なる同格ではないのである。
「少シ、新技ヲ試サセテ貰ウ」
「ッ…!舐めるな!!」
竜の巨体は一気に距離を詰めるとコキュートスに向かってその爪を振り下ろす。巨体から放たれる体重を乗せた前腕の振り下ろしがどれほどの威力かなど最早語る必要もない。しかし、コキュートスはそれを片手で受け止める。
「何…!?」
「武技…-強者狩リ-…!!」
「なんだ…!?この気配はッ…!!」
受け止めたどころか片手で押し返すコキュートスにオラサーダルクは驚きを隠せない。
「フフ、上手ク行ッタヨウダ。…デハ、行クゾッ!!」
「ぐ…!穿ち貫けッ!!」
「-穿ツ氷柱-!」
最初と同じく穿つ氷柱の撃ち合い、そして互いの礫がぶつかった。しかし、最初の撃ち合いと異なりコキュートスの礫のみが残りオラサーダルクへと飛んでいく。
「ッ!?押し負けただと!?だが、勢いは死んだ!!フンッ!!」
オラサーダルクがその場で羽ばたくと暴風が巻き起こり、コキュートスの穿つ氷柱を叩き落とした。
「ホウ、翼デ弾クカ。ナラバ!」
「また穿つ氷柱か?…何!?」
コキュートスは穿つ氷柱を発生させるとそれを鷲掴み思い切り投擲した。それはオラサーダルクの反応を超え、オラサーダルクの翼に突き刺さるとその翼を凍てつかせていく。
「早い…!それに…我が翼をも凍てつかせる冷気だと…!?馬鹿な!」
本来、オラサーダルクは氷結に対する絶対的耐性を持って居た。しかし、強者に対峙する事で己の限界を越えかけているコキュートスの放つ氷のスキルはその耐性をも貫いて見せたのだ。
「舐めるなよ…!我は霜の竜王なるぞ!体が凍つこうともなんたるものぞ!!」
しかし、竜のプライドか、寧ろオラサーダルクは己に氷を纏いその身を覆った。
「貴様の攻撃で凍つかされたことで思い付いたぞ!我が堅牢なる氷ならば鎧として纏えるとな!!」
「闘イノ中デ進化スルトハ…!素晴ラシイッ!!」
翼を叩き切らんと振り下ろしたコキュートスのハルバートの一撃を氷の鎧を纏ったオラサーダルクは防いで見せた。氷の鎧は砕けたが、確かに防いでいたのである。
「この威力…!まともに受ける訳には行かぬな…!分かるぞ…!貴様、我以上だな…!?」
ようやくオラサーダルクは理解した。目の前の相手が強者たる己よりも強者であると。だが、オラサーダルクはその事実に怯むどころか寧ろ牙を見せ口角を上げる。
「我はッ!我は…霜の竜王ッ!!オラサーダルクなるぞ!!」
「ッ!」
再び氷の鎧を纏ったオラサーダルクの取った行動は突進。脚力に加えて翼による羽ばたき、更に尾を弾くように地面に叩きつけたことで加速を得たオラサーダルクのその一撃はコキュートスならば回避は可能であった。しかし、武人たるコキュートスはその一撃を敢えて正面から迎え撃つ。
「正面から迎え撃つか!コキュートス!!」
「コノ一撃、避ケルハ無粋ッ!!」
コキュートスの渾身の迎撃…ハルバートによる斬撃、首を叩き切れるほどのその一撃を氷の鎧で受け止め、オラサーダルクは王などという称号を捨て去った生物としても原始的な攻撃である噛みつきを敢行した。
「我が顎でも噛み切れぬか…!」
三本の腕で引き剥がさんとするコキュートスだが、その眼が捉えたのは魔法の輝き。
「ムゥ…!引キ剥ガセヌ…!」
「コキュートス、見事なり…!だが、この腕は貰って行くぞ!!-魔法上昇-!」
「ム…!?」
それはコキュートスでも知らぬこの世界の力。本来よりも膨大な魔力を使う代わりに、本来使用できないはずの位階魔法を無理矢理行使できるもの。その言葉を唱えた瞬間オラサーダルクの全身から血が吹き出す。コキュートスとの激闘によるダメージと無理な魔法行使に肉体が悲鳴をあげているのだ。
「燃えよ我が命!貴様諸共!!-朱の新星-ッ!!!」
「ソノ魔法ハ…!!」
コキュートスの脳内に蘇るはかつての同僚にして想像上で何度も相対した吸血鬼、シャルティア。彼女の放つ対個人最強の炎攻撃魔法。-朱の明星-…対個人の炎系魔法としては最上位と言っても過言でない魔法である。いかにコキュートスであってもそれを喰らえば無事では済まない。噛みつかれ、敢えてその口内で発生させたソレは爆音と共にオラサーダルク諸共コキュートスの腕を焼き尽くす。結果として腕を一本消し炭にされ、拘束を解かんと口元に近づけていた三本の腕も焼き焦げ、コキュートスの身体は今なおチリチリと煙を放っていた。
「どうだ…我が、力は…」
流石は竜王と言うべきか、オラサーダルクは尚も生き絶える事なく、地に伏しながらもその眼でコキュートスを睨む
「オラサーダルク殿…見事ナ闘イデアッタ…!」
予測していなかったゼロ距離からの炎魔法に流石のコキュートスでも看過できないダメージを負った。この雪山における霜の竜という種族が放つ魔法、それも命を削るような覚悟で放たれれば当然と言える。
しかし、コキュートスには一定時間に一度だけ使えるある種族特性がある。オラサーダルクが霜の竜の王であれば、コキュートスは蟲の王たるヴァーミンロード。故に実に蟲らしい自己再生の術を持っていたのだ。スキルの使用回数やMPをかなり持っていかれるものの、ゲームシステム上の体力の全回復…この世界においては失った腕も生えるようで焦げた外皮を突き破るように新たな外皮が現れた。
「!…フフ…脱皮、自己再生とは、儘ならぬものだな…」
「我ガ腕ヲ取ラレタノハオラサーダルク殿デ初メテダ。ツアー殿以来ノ真ナル強者デアッタ」
正確にはあくまでもこの世界でという言葉が付くがコキュートスはそんな無粋な男ではない。
「ツアー…?あぁ、なるほど、彼奴ともやり合ったか。道理で強い。」
すると、コキュートスが入ってきた扉から別のドラゴンが駆け込んできた。
「父上!…なんと酷い怪我を!」
突如入ってきた眼鏡をかけたドラゴンは焦ったように回復魔法を使用する。
「…フム、コレナラバ命ニ別状ハ無イカ」
この地が雪山ということもあるのか、それともドラゴンのタフネスがそうさせたのか、オラサーダルクは酷い怪我ではあるものの、命に別状無い状態まで傷は回復していた。
「ふん、ヘジンマールめ…余計なことを。敗者は死すのみ。…コキュートス、この首持って行くが良い。…だが、我が妻と子らの命までは取ってくれるな。…貴様を…いや、貴公を我をも降す真なる強者と見込み、頼む」
「ソレハ出来ナイ」
オラサーダルクの頼みに対し、コキュートスは首を振る。
「…そうか、止めたくとも少し傷が癒えた程度では歯が立つまい。弱肉強食は自然の摂理だ。…仕方あるまい」
オラサーダルクだけでなく周りのドラゴンも己の運命を受け入れたように頭を下げ首を差し出す。唯一眼鏡をかけたヘジンマールというドラゴンだけがビクビクと身体を振るわせコキュートスから距離を取ろうと後ずさっていた。
「勘違イスルナ。オラサーダルク殿ヲ殺ス気ハ無イ」
「…何?」
そう、今回のコキュートスの目的は殲滅では無い。さらに、一騎打ちに応じ、自傷覚悟の魔法行使などの覚悟を見せたオラサーダルクに対し、武人たるコキュートスは非常に好感を覚えたため今後も鍛錬に付き合ってほしいな、などと考えているのだ。
「我ガ依頼サレタノハ『ドワーフノ国ノ安全ヲ確保スル事』ダケダ。オラサーダルク殿ガ訳モ無ク虐殺ヤ蹂躙ヲ行ウ者デ無イノハ手合ワセデ分カッテイル。共ニ解決ノ為ノ方法ヲ考エタイ」
「ふむ…」
現在のアゼルリシア山脈及びドワーフの国周辺の事情は以下の通りである。
・クアゴアに襲撃され全滅の危機があるドワーフの国
・クアゴア達は鉱石が欲しく、そのクアゴア達は現在オラサーダルク達の傘下と言える状態
・現在のアゼルリシア山脈の支配者はオラサーダルク
そしてコキュートスはそのドワーフの国の為に冒険者として依頼され活動している。だが、その依頼の中では別にクアゴアやオラサーダルク達を抹殺しろなどとは言われていない。つまり、ドワーフ達を襲撃しているクアゴア…ひいてはそれを支配するオラサーダルクの行動が変更されれば問題が解決する可能性があるのだ。
「なるほどな、我はコキュートス殿に負けた身、そのコキュートス殿からドワーフを襲うなと言われれば襲うことはしまい。クアゴア共にも言い聞かせよう。」
「感謝スル。…ダガ、ソレダケデ良イノカ?」
コキュートスの懸念はそもそも何故オラサーダルクがクアゴアを使いドワーフの国を攻めていたのかである。
「ドワーフ共は貧弱だが、奴らの作る武具は強力だ。我はより強くなるために手段を得ようと思っていてな。奴らから強力な武器を奪おうと思っていたのだ」
「ナルホド」
コキュートスから見てもオラサーダルクはかなり強さに貪欲な者であるとわかった。その証拠に霜の竜でありながら炎魔法を扱う。つまりはそれだけ魔法の鍛錬を行なったという事である。つまり、スキルや魔法とは別に装備を整えようとしたと理解した。
「ドワーフ達ニ、オラサーダルク殿ノ為ノ武具…テイルアーマーナドノ装備ヲ作レナイカ相談シテミヨウ。」
「ふむ、既存の品を奪うより作らせた方が確かに良い、か…」
「そもそもあなたドラゴンでしょ?」
「剣や槍でも装備するつもりだったの?」「肝心なとこで脳筋よねぇ」
妃のドラゴン達は薄々ドワーフ達を滅ぼす必要がないことに気がついていたらしく、軽口を叩く。
そして暫くののち、コキュートスを仲介役とし、ドワーフの国とオラサーダルクの和睦がなされた。ドワーフ達はアルゼリシア山脈を統べるオラサーダルクの庇護下に入り、安全を得た。逆にオラサーダルクはドワーフ達による採寸がなされ、装備を献上されることになった。ついでに財宝の中に宝石も混じっていたためそれらを預かり宝飾品に加工してオラサーダルクへと返却などもしていた。もちろんオラサーダルクは妃達に適当にばら撒いて機嫌を取ったらしい。
クアゴアに関してはもともとオラサーダルクを恐れて献上品を贈っていたことにより一族の存続が危うい状態になっていたこともあったのでこちらも大体の問題は解決した。今ではクアゴアとドワーフは協力して鉱山の採掘に当たっているらしい。
「そう遠慮するなリユロ殿!飲め飲め!!」
「いやだから我々クアゴアは酒は…ゴブハッ!!」
「「「「ガハハハハ!!良い飲みっぷりじゃ!!!」」」」
ドワーフが元々細かいことを気にしない種族であったのが幸いし、オラサーダルクが現在占拠している旧王都ついてもそのままオラサーダルクが使用することになった。
「世話になったな、コキュートス殿」
「コチラコソダ。オラサーダルク殿、マタ手合ワセ願ウ」
「望むところだ。…しかしここから歩いて帰るのか?少し遠いのでは無いか?…そうだ、我が背に乗ると良い。直々に送り届けてやろう」
コキュートスは少しだけ考えてその提案を了承した。自分一人であれば簡単な話であるが、ドワーフの国への案内人であったゼンベルが居るのだ。行きが平気だったので帰りも平気ではあるはずだが、楽に越したことはない。それに別の目的もあったのだ。
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「フールーダ!報告は本当なのか!?霜の竜がここを目指しているというのは!」
その日、ジルクニフは報告を受け即座に行動を起こした。アルゼリシア山脈から竜が飛び立ち、今まさに帝都…それもジルクニフが今まさにいるこの皇城へと向かっていると。
「おお、陛下。本当ですぞ。アレを見なされ」
「…確かにこちらに近づいてくるな。一体なんの目的だ…!?まさか我々を餌にでもしようというのか…!ロイヤルエアガード達を…」
「やめなされ殿下。ワシの目が見たところあのドラゴンはワシを超えるマジックキャスター。空を行く竜、しかも魔法を使うとなれば立ち向かうだけ命の無駄というもの」
ゆったりとした動作で髭をいじるフールーダは目を細めており、その態度はどこか歓喜に近いものであった。
「…魔法を扱える竜、となれば恐らくバカではあるまい…もしや対話は可能か?…ならば…。」
やがて皇城の広間に降り立った霜の竜であったが、ジルクニフの予想通り暴れる様子はなかった。
「…賭けに勝ったか。いや、本当の勝負はここから…」
そう呟き、目の前のドラゴンを改めて見てジルクニフは困惑した。
「…背中にいるのは…コキュートスか?」
そう、ドラゴンの背中にはコキュートスともう一人、リザードマンが乗っているのだ。ジルクニフは困惑したが、それと同時に安堵した。見た目こそ虫の化け物であるコキュートスだが、その内面は強さを求める武人そのもの。一応呪いでその姿となったと報告されているが、何度か接触させたレイナースや稽古を受けている騎士団員からの報告書の内容から、フールーダとの話し合いの末、「元々そういう生命体である」と結論づけている。武人たる様やこれまでの行動から人間…というより他者に対して一貫として武人として接していることが分かっており、ジルクニフのような戦う力のない者でも丁寧に接すれば全くの無害であり、寧ろ友好的であった。そんなコキュートスが居るのだから少なくともこちらから危害を加えなければ彼方からも危害を加えることはないだろうとジルクニフは結論付けた。
「皆の者武器を下せ!…久しいなコキュートス!ドラゴンに乗って登場とは驚かされたよ!それで今日は何のようだい?」
「突然ノ訪問デ済マナイ。今日ハ我友ヲ紹介シニ来タ」
(友だと…?まさかあのリザードマンか?)
コキュートス達がドラゴンの背中から降りたのを確認しつつ、ジルクニフは思案する。
「紹介スル、オラサーダルク殿ダ」
「我はアルゼリシア山脈を統べし霜の竜王、オラサーダルク=ヘイリリヤルである。」
「なに…?」
アルゼリシア山脈、極寒の山々であり、かつて交流のあったドワーフ達の国のある地である。目の前のドラゴンはそこの支配者であるとなれば驚くのは無理もなかった。
「今回、我が友コキュートス殿の仲介によりドワーフの国は我が庇護下に入った。聞けばかつてこの…帝国とやらはドワーフの国と交流があったのだろう?アルゼリシア山脈は我が支配下、安全を保障してやろう。今後は存分に交流し互いに繁栄するが良い。」
目の前のドラゴンの言葉を聞きながらジルクニフは再度、改めてドラゴンを観察した。
(テイルアーマー…?あの見事な作りはドワーフ達による物か?…ドラゴンは財宝を好むと聞く。なるほど、我が帝国と貿易が成立すれば加工技術や武器の生産に秀でたドワーフの国が豊かになるのは必然。ドワーフを庇護するということは見返りもあるはず。それが狙いか、だが、考えていることがわかりやすい分やりやすいな。ドワーフ達の作る武器や技術を大国で独占できれば他国に対してかなり優位に立てる。ここは奴の思惑に乗っかるとしよう)
「それはありがたい。感謝するオラサーダルク殿。…心ばかりの礼に贈り物を受け取ってくれないだろうか」
ジルクニフはオラサーダルクへと財宝などの贈り物、それを気に入ったオラサーダルクはジルクニフの提案したオラサーダルク達及びドワーフの国、そしてコキュートスに対して友好的である内は決してジルクニフの統治する帝国を襲わないという条件を簡単に飲んだ。
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手合わせするという依頼であるため、冒険者として得た報酬を用いて購入した財宝をオラサーダルクに支払ったコキュートスはドワーフの国を訪れる。
「おお、コキュートス殿じゃねぇか!頼まれていた物、できてるぜ!」
「コレガ…ルーン武器カ、興味深イ…!」
コキュートスが今回の冒険で得たのは友と…そしてルーン武器。今はまだ効果の弱いルーンしかないが、コキュートスは長命の種族である。
1年、10年…そして100年後はどんなルーン武器が作れるようになっているか、コキュートスは未来に想いを馳せながらルーン武器を掲げる。
武技-強者狩り-…パルパトラの「竜狩り」のコキュートスバージョン。相手を真の強者と認識した時、コキュートス自身の身体能力が少々向上する。残念なことに元の能力値が高すぎるのでそこまで変化はない。
オラサーダルクの上方修正…原作では相手の能力を見抜けない愚者であったが本作では完全とは言えないが相手が強者か否かを見抜ける実力と、王たるに相応しい戦闘力を身に付けた。また、性格は少々武人気質となり、コキュートスの友になった。
・朱の新星…本来7位階までしか使えない上方修正版オラサーダルクだが、魔法上昇と竜たる素質による無理矢理の魔法行使により唯一使える9位階の魔法。彼がこの雪山を統べるに足る真の強者の所以である。
ルーン武器…廃れた技術ではあるが、コキュートスから「依頼」された為再度研究開始。帝国に卸すことも考慮されている。コキュートスの今回の初期目的。