小話13 極めし一刀
一発ネタ 異業種動物園に栄光あれ
-小話12 刃向かう者、助ける者-
「コキュートス殿〜!今日こそ御首頂戴仕るでござるよ〜!」
折角の背後からの奇襲を大声で叫んだことで台無しにするのはスレイン法国の持つワールドアイテム傾城傾国によって「コキュートスを殺害しろ」という命令の洗脳を受けてしまった森の賢王だった。
「不意打チヲスルナラバ静カニスルベキダ」
「なるほど!確かにそうでござるな!これでまたコキュートス殿を殺すのに一歩近づいたでござるよ!」
自分を殺さんとしている者に改善点を教えるコキュートスだが、別に親切心からそうしているわけではない。コキュートスは強者との闘いを望んでいるのだ。しかし、この世界には中々それを満たしある強者がいない。であれば、自らが鍛え上げれば良いのだ。ブレインやゼロにも稽古をつけてやっているが、そちらはどちらかと言うと武を磨こうと言う姿勢を気に入り目を掛けてやっているだけで、自らを殺しうるとは思っていない。それに短命な人間では自らを変える前に寿命で死んでしまうだろう。反面、森の賢王は魔物である。寿命は人間の物よりも長いのだからじっくりと強化できるだろう。今はまだ基本中の基本を教えているところだが、武技や戦術、スキルなどの鍛錬を積めばいつかは自分を満足させられるほどの強者になりえるかもしれない。そして、ここでコキュートスは一つの問題点に気が付いた。
「オ主、名前ハナンダッタカ…」
そう、森の賢王の名前問題だ。森の賢王とはあくまで肩書きや異名の奴なもの、コキュートスで例えるならナザリック地下大墳墓第四階層守護者と呼ばれているようなものだ。これから対等な強者同士となろうというのに名前も知らないのでは失礼だろう。
「名前でござるか?無いでござるよ?」
名前がないというのはコキュートスにとって衝撃だった。何故なら、敬愛する武人建御雷に作られた際、初めに賜る三つの秘宝、即ち姿形・名前・設定のうちの一つだからである。コキュートスは特にこの名を気に入っており、地獄の最下層にして罪人を氷漬けにするというこの名はナザリックの第四層を守護する自分にうってつけだと感じていたのだ。それと同時にその名に恥じぬ働きをせねばとかつては思っていたし、今尚賜ってから肌身離さず一時も隠したことのない大切な物なのだ。
「名前ヲ付ケテヤロウカ?」
名前とは大切な物、だからだろうか。コキュートスがそんなことを言ったのは。
…ちなみに、某ネーミングセンスの無いオーバーロードが彼の創造者だった場合、「四腕三指郎(よつうでさんしろう)」になるところだったのだが、そんなことはコキュートスは知らぬことであった。
森の賢王の名付けに於いて、まずは本人にどんな名前が良いか聞き取りを行う。
「コキュートス殿を殺せるような名前が良いでござるなぁ」
コキュートスはそれを聞いてどんな名前を付けようかと迷う。コキュートスを殺す、刃向かう…。
「マズハ、我ニ挑ムトイウ事ニチナンデ"刃向"ノ字ヲ入レヨウ」
「おお!なんだか格好いいでござる!でももう少し長い方が格好いいでござるなぁ」
無論コキュートスはそのことについても考えていた。助の字だ。刃向かい助ける者。つまりはコキュートスに刃向かい続けることでコキュートスの願いたる強者となり、己の夢の助けになって欲しい、そういう願いを込めた名だった。
「今日カラオ主ノ名前ハ刃向助(ハムスケ)ダ。」
「おお!なんだか不思議としっかりとくるでござるな!某はコキュートス殿に刃向かい続け、強者となり、コキュートス殿の夢を助ける者!刃向助でござる!」
本人も納得した訳でコキュートスは満足げに頷く。そしていきなり襲ってきた刃向助の尻尾を鷲掴む。
「くうー!折角の不意打ちが不発でござるよー!」
この不意打ちにはコキュートスも完全に意表を突かれており、身体能力の差で止めることは叶ったが、実にギリギリなものであった。コキュートスは刃向助に込めた願いが早く叶うことを願いながら修行を開始したのだった。
…まだまだ道は半ばなれど、刃向かう者は彼を助く。
-小話13 極めし一刀-
コキュートスを殺す為に躍起になっている弟弟子の森の賢王…いや、名前を刃向助に変えたんだったか…に代わり、ンフィーレア・バレアレの護衛は俺が任せられることになっていた。俺の修行のついでらしく、実力も問題ないとコキュートスの旦那には言われていた。
「すみませんブレインさん、本当は報酬をお支払いするべきなんでしょうけど…」
「構わないさ。」
ンフィーレア少年はテキパキと薬草を積み、偶に誰がどんな効能のなんなのかを教えてくれる。刀を振るってばかりいた俺には知らないことばかりなので、感心して相槌を打ちながら森を進んでいく。すると、ひ弱なゴブリンがバーゲストに襲われている所を目撃し、ンフィーレアと共に茂みに隠れる。
「君はここに隠れていろ。」
「ブレインさんはどうするんですか?」
「あの犬っころを叩き伏せてやるのさ」
弟子仲間に本気で剣を振るうわけにも行かず、コキュートスの旦那は強すぎて歯が立たない、となれば普段は止まった的に剣を叩き込むだけ、それでは物足りない。
「武技、神閃!」
バーゲストの鎖ごと叩き切り、真っ二つにする。血のついた剣を振り、血を飛ばしつつ、死にかけたゴブリンを見やる。
「ンフィーレア少年、君のポーションでこれは助けられるのか?」
「うーん、大分傷は深いですから、ポーションを使ってもなんとか持ち堪えるだけで歩いたりはとても…」
それならば下手に助けても苦しみを引き延ばすだけだろう。
「今楽にしてやる。」
ンフィーレアが薬草採取の際に、先程のゴブリンとバーゲストのものと思われる足跡を見つけたので、ンフィーレア少年と相談した結果足跡を辿ってみることにした。バーゲストはもっと奥地に潜む魔物だ。こんな浅いところに出るのはおかしい。暫く足跡を辿っていると、遠くに大きな影が見える。
「このグ様こそがトブの大森林の王に相応しい!あの忌々しい大魔獣が不在の今が好機だ!」
品のない声で剣を振り回して鍵を薙ぎ倒してからトロールの姿が見える。
「あんなのが居たら落ち着いて薬草採取なんて出来ないよ…」
「同感だ。」
品性はともかく、軽く振っただけで木々を薙ぎ倒すのだからその力は凄まじい。そしてトロールには再生能力がある。ゴブリンやオーガに比べて皮膚も硬く、新技を試すにはちょうど良いだろう。
「ンフィーレア少年、もう少し離れた場所に隠れていろ。俺が奴を仕留める」
「わかりました。無理しないでくださいね。」
ンフィーレア少年が自分を信じてくれるのは、コキュートスの旦那を知っているからだ。あの偉大な師匠の顔に泥をならない様にもしっかりと決めてやらねばなるまい。
おおよその反応方向にあった開けた場所にで刀を構えて待ち構える。早く新技を試したい。俺の心はその気持ちでいっぱいである。
「ん?なんだ貴様!このグ様の前に立ち塞がるとは!」
「オレはブレイン・アングラウスだ。悪いが新技の試し切りに付き合ってもらうぞ」
オレが名乗りを上げるとトロール達は馬鹿にした様に笑い始める。
「臆病者の名だ!」
「そう思うならさっさと来い、肉ダルマ」
その安い挑発に乗ったグとかいうトロールは剣を構え、駆け出してくる。
「まずは…虎落笛・改!」
アドバイスに従い、威力を高めた虎落笛を放つ。容易に脛を切り取ると、体を支える脚を切られ、グは体勢を崩す。しかし、自慢の再生能力ですぐさま立ち上がってくる。
「貴様ァ!」
再度突っ込んでくるグだが、よくやると他のトロールも襲って来ている、こいつにはプライドとかはないのだろう。しかし、俺の修行の成果を試すには好都合だった。
「くらえ…虎落笛・四連!」
ガゼフから盗み学び会得した四光連斬から着想を得た神速の4連撃、これでグの周りのトロールの首を刈り取っていく。
「グゥ!?なんだと…!」
部下をやられたことに驚いたのか、グは後退りをし始める。
「逃げたいならそのまま逃げろよ、臆病者のグ。」
「貴様ァ!」
随分とキレやすい堪忍袋だ。またまた挑発に乗り、学習せずに突っ込んでくる。これならば領域の方は必要ないかも知れないが、それでは格好がつかないので一応発動する。
全てを知覚し、認識する領域…それを研ぎ澄まし続けて得たのは新たなる武技、"階層"。領域と異なり、壁などに阻まれなければその知覚範囲に限りが無く、自身の任意の広さに展開できる。コキュートスの旦那曰く、「領域ヨリ階層ノ方ガ偉イ」らしいので階層と名付けた。
そして放つは神閃を更に鍛え続け、知覚不可なだけでない重さと破壊力を得た神速の一刀、"紅蓮一閃"。放たれる刃はただ払うのではなく、振るう腕を超高速微振動させることにより、空気摩擦で刀が熱を帯びるのだ。場合によっては着火をも可能とし、切り口を火傷させる事からトロールが得意とする治癒も封じられる。
この"階層"と"紅蓮一閃"を合わせしは何者も…但し、コキュートスの旦那以外は…防ぐことも避けることも耐える事も叶わぬ無慈悲なる一撃。
「武技!虎落笛・極ッ!!」
先ほど切ったトロール達の脂のせいか、炎を纏った一刀が空を裂き、音を裂き、グの巨体を切り裂く。纏った炎はその傷口も燃え上がらせる。その巨大に含まれる脂で自らを燃やし続け、トロールは暴れ回るが森に燃え移られては面倒だ。再度紅蓮一閃を放ち、命を刈り取る。
…この後ブレインは嬉々としてコキュートスに報告しに行くのだが、コキュートスが四つ腕のそれぞれから六光連斬を放つ二十四光連斬を会得したところを見て一人街の路地で泣いた。
-一発ネタ 異業種動物園に栄光あれ-
※人によっては非常に不愉快なネタになります。予めご了承ください。
ユグドラシル有数のDQNギルド、異業種動物園のギルド長モモンガは異世界に転移してしまい、途方に暮れていた。とりあえずNPCのみんなからの評価を聞き、忠誠を確かめんとエロサキュバスに頼んで4.8階層を除いた階層守護者を第六階層に集めたのだった。
「第一、第二、第三階層守護者、性癖盛り子、御身の前に」
「第五階層守護者、四腕三指郎、御前ノ前ニ」
「第六階層守護者、ダークエルフ姉」
「お、同じく、第六階層守護者、だ、ダークエルフ弟」
「「御身の前に」」
「第七階層守護者、眼鏡デビル、御身の前に」
モモンガはそこまで聞いて、ギルドのみんなから何故猛反対されたか理解した。
「ヤベェ、俺、ネーミングセンスねぇな…」
隣に立つエロサキュバスに関しては、エロ鳥の異名を持つ友人から
『サキュバスの時点で!!!エロいんですよ!!!モモンガさん!!!!サキュバスは!!!!エロいんです!!!!なんですか!?エロサキュバスって!!!お米ご飯と一緒だよ!!!!!!』
『いやぁ、でも俺お米とか食ったことないし…』
『話のキモはぁ!!!そこじゃねぇーーーんだわ!!!もう良い!!俺このギルド抜ける!!!』
そうか、だからみんなギルドを辞めてしまったのか、モモンガはあまりの後悔に涙を流した。
…オーバーロードだから涙とか流れないんですけどね!
チャンチャン♪
〜言い訳〜
●刃向かう者、助ける者
・はい、というわけで要望のあったハムスケ名付け回です。結構無理矢理でしたね。
●極めし一刀
・需要があるか謎のブレイン回。ブレインって扱いやすいよね…
・居合抜きしつつ手を超高速微振動させるって人間技じゃなく無い?→私もそう思います。書いててそんなことできる訳ねぇだろって思ってました。
・武技"階層"…武技"領域"のスゴい版、知覚範囲に制限がなく、広げたいだけ広げられる。但し、ブレインの処理能力には限りがあるので広がれば広がるほど精度が下がる。まぁ、体積を増やすと密度が薄くなる感じ。
・武技"紅蓮一閃"…高速微振動しながら居合抜きする事で斬撃の途中で刀の先端が空気摩擦で熱されるというトンデモ理論で放たれる高熱の居合抜き。刀に脂が付着していたりすると着火して燃えることもある。(そんなバカな)
・武技"虎落笛・極炎"…階層と紅蓮一閃を組み合わせた武技。知覚した奴絶対刻むマンと化したブレインが知覚した相手を刻んでついでに傷口を焼いて止血してしまう技。スッパリと切った後に焼いて止血するので出血は止まるが血流的には色々不味いことになる。あと治癒魔法も効きが悪くなると思う。
●異業種動物園に栄光あれ
・私のネーミングセンスがモモンガさんより酷い回です。モモンガさんごめんなさい。