本小話では一部の現地人に(主に斜め方向の)上方修正を加えています。苦手な方は投石の準備をしてください。
-小話15 "竜狩り"とコキュートス-
少し前、ブレインのアドバイスで始めたコキュートスの依頼は思った以上に魅力があったらしく…というか、四武器が実際に金貨を貰ったという話が広まり、連日腕に覚えのあるものがコキュートスに挑んでは散って行った。反面コキュートスとしては四武器以来得られるものは無く、退屈な日々であった。
しかし、その退屈な日々は一旦終わることとなる。
「もしや貴方はブレイン・アングラウス殿では?」
「…確かに俺はブレインだが…?」
ブレインがある日突然声をかけられたのだ。コキュートス監修の元修行に励むと言っても、ブレインはコキュートスと違い生きていくには消耗品が多い。故に定期的に街に入っては補給を行うのである。そしてついでにコキュートス向けの依頼がないかの確認を行ったりしている訳である。
そしてそんな訳で街にいたブレインは見知らぬ男…姿を見るに長距離移動をしてきた旅人らしき人物に声をかけられたのだ。
「あぁ、申し訳ない。私は"竜狩り"の者です。コキュートス殿の依頼を見まして…」
「…わかった。場所を移そう。」
「助かります」
竜狩りという言葉を聞き、すぐにブレインは人通りのない路地裏へ相手を案内した。
「何故帝国のワーカーが王国に居る?ここでは余り歓迎されんぞ?」
竜狩りが帝国で有名なワーカーチームという事をブレインは落ちぶれた傭兵時代に知る機会があった。そして帝国のワーカーとなれば王国で歓迎されないのは当然、彼らは冒険者と違って金に見合えば何の罪もない一般市民だって殺すのだから。
「冒険者向けの依頼とは知っているのですがコキュートス殿が出した依頼のことを耳にしまして」
「…なるほど。分かった…案内する」
「おお、貴方程の剣客ならかの有名なコキュートス殿の居場所を知っていると思っていました。いやぁ助かります…」
そうして門を潜り街から出たブレインと竜狩りの男はまた別の男に声を掛けられることになる。
「ほっほ…これはこれは、着いて早々大物に出会えるとは幸運しゃな」
「…あんたが竜狩りのパルパトラか」
「いかにも」
ブレインが周りを見渡せば竜狩りのメンバーと思われる人物は他にも居るとすぐに理解した。
「なに、ワーカーてあると身分を偽って入るにしても大人数しゃぁ怪しまれるしゃろ?」
「中々慎重な爺さんだな」
そうしてブレインが暫く歩を進めると、瞑想中と思われるコキュートスに辿り着いた。
「…ム、ブレインカ。…他ニモ何人カ居ルヨウダナ」
「ワシらは帝国てワーカーをしておる者しゃ。早速て悪いか…とれ、手合わせ願いたい」
「良カロウ。オ前ハ中々筋ガ良サソウダ…惜シムベキハ寿命カ、ツクヅク人間ノ命ハ短過ギル。」
「む…」
そうしてコキュートスが立ち上がるとパルパトラは何かに気が付いたように声を出す。
「ドウシタ?」
「ワシには分かる…お主…竜"トラコン"しゃな?」※
※トラコン…パルパトラ語でドラゴンのこと。
「ハ?」「は?」「「「「あぁ………」」」」
突然の頓珍漢なパルパトラの発言にコキュートスとブレインは首を傾げ、竜狩りのメンバーは顔に手をやり呆れたように首を横に振った。
「我ハヴァーミン…」
「言わすとも分かっておる!お主はトラコンしゃ!」
「イヤ…」
「お主は…トラコンしゃ。尻尾があるしゃろ!」
確かにコキュートスには長い尻尾がある。だからと言ってドラゴンにはならないだろうとコキュートスとブレインは思った。
「そしてその腕…四本ある内の二つは元々翼たったに違いない!いや、間違いない!」
本人であるコキュートスの否定もお構いなしに断定するその様にコキュートスは呆然とし、ブレインはため息をついた。そして竜狩りのメンバーに近づき耳打ちをする。
「なぁ、あの爺さんボケてんじゃないのか?」
「いやぁ…その…老公は思い込みが激しい質でして…あんな調子でギガントバジリスクなんかもドラゴンだって言って一人で倒しちゃうんです」
「…何?」
ギガントバジリスク…この世界ではかなりの脅威となるモンスターである。もちろんドラゴンのほうが格上であるが、それでも1人での討伐となるとチームでドラゴンを相手にするのと大差なくなる。そしてブレインは感じ取った。パルパトラから溢れる力の奔流を。
「ホウ…」
ブレインに感じ取ったそれをコキュートスを感じ取り、同時に感心した。
「武技"竜狩り"…!」
「早い…!」
それと同時に地を蹴り距離を詰めるパルパトラは齢80には思えず、思わずブレインも声を出した。
「武技"竜牙突き"」
恐ろしく早い槍による突きが放たれるとコキュートスは手に持った木刀で槍をいなした。しかし竜牙突きは二度突く技、いなされたにも関わらずすぐさま二撃目をコキュートスへと叩き込んだ。
しかし、その二撃目は読まれていたように木刀によって弾かれてしまう。
「二連撃トイウノハ前ニモ見タ…我ニ同ジ手ハ二度効カヌ」
「ほっほ…流石は唯一の単独アタマンタイト級冒険者しゃわい…!」
そう言って構えるパルパトラに対し、コキュートスは軽く木刀を振るった。
「むっ!?」
「ホウ?」
咄嗟にパルパトラは槍で防ぎ、それを見てコキュートスも少しだけ驚いた。
「吹キ飛バスツモリデ払ッタノダガ、速サダケデハ無イヨウダナ」
「その様子しゃとまたまた本気ては無いようしゃな…!悲しくなるわい、これたけの歳になるまて技を磨いても届かん相手か居ると言うのは…!」
そう言いつつバックステップで距離を取ったパルパトラは再び槍を構える。仕掛けてくると判断したコキュートスもまた木刀を片手で構え備えた。本当はそんな事をしなくても先程の攻撃を見たコキュートスは碌に傷つきもしないと理解している。しかしそれでは意味が無いことをコキュートスは理解しているのだ。
「来イ」
「武技"疾風加速"ッ!」
最初の突きの踏み込みより更に早くなり、左右に動いて翻弄をせんとしている。しかしコキュートスは微動だにせず待ち構えた。
「武技"青竜牙突き"ッ!」
放たれるパルパトラ渾身の突きは的確にコキュートスの胴体を貫かんと放たれた。
そしてそれをコキュートスはいなしも弾きも防ぎもせず、避けた。
「ほっほ、流石はコキュートス殿…まさか受けすに避けるとは。ワシの青竜牙突きには雷属性が付与されとる…それを見抜いたのしゃな?」
「イヤ…属性ノ付与マデハ見抜イテイナイ。タダ、何カ有ルト思ッタ。ソレダケダ」
一見すればただの突きでしか無かった。しかし、それが逆にコキュートスの警戒を煽った。この土壇場に何も仕掛けないタダの突きなど放つ筈がないと。
こうしてパルパトラはコキュートスから金貨を受け取り、別れを告げた。
それから暫くしてのこと。
「武技"冷気梱封"」
コキュートスが会得したのは武技による冷気属性の付与。スキルやMPに頼らない属性攻撃方法であった。
-小話16 閃光武術-
私がその人物を初めて見たのは武王ことゴ・ギン殿と闘っている姿だった。圧倒的であった。私もかつて武王の名を得んと挑んだ事がある。惨敗だった。ワーカー仲間のパルパトラ殿やグランガム殿は「相性が悪かった」などと言ってくれたが、相性が悪かったから勝てませんでした。死にました。では話にならない。だから鍛錬を積んできた。いつかは武王になるためにと。しかし、ある日武王が聞いたことのない者と戦うと聞き、思わず見に行った。そして知った。唯一の単独アダマンタイト級冒険者…コキュートス殿を。
私に仲間は3人いる。3人とも心無い人物から逃げている途中に助けを求められ、追手を返り討ちにし解放した。残念ながら彼女らの耳に残る痛々しい傷は癒せていないが、いつかは治してやりたいとも思っている。そしてつい先日、竜狩りのパルパトラ殿がコキュートス殿に手合わせを願い出たらしい。なんでもコキュートス殿は強者との対決や未だ知らぬ闘いの技術などを知りたがっているとか。あれほどの強さでありながらまだまだ強さを吸収せんとする姿勢を知れば今の強さに至ったのも合点が行く。…どれほどの鍛錬を積めばあの強さに至れるか知りたいものだが、手合わせできる機会があるのならば是非したい。武人たる者実際に刃を交えた方が分かることも多いのだから。
「…私は帝国のワーカー、"天武"のエルヤーと申します。コキュートス殿との手合わせを所望する。」
「ヨカロウ」
コキュートスがそう短く答えるとコキュートスはこの世界にやってきてから購入した何の変哲も無い鈍刀(なまくらがたな※)を取り出した。
※コキュートス基準
「ほう…私相手には真剣を用いて下さるのですね。確か殆どの冒険者にはタダの棒や木の枝、あのパルパトラ殿さえ木刀と聞いていますが」
「勘違イスルナ」
そう答えたコキュートスは刀を鞘に納刀し、抜刀できないように鍔を巻き込むように紐で縛り始めた。
「…少々自惚れが過ぎましたか」
「…悪クハ無イ。」
その言葉にエルヤーは少しだけ笑い、天武の仲間である3人のエルフ達をコキュートスに紹介した。
「彼女達は私のサポートです。…戦いに参加はしますが攻撃は私だけにしていただけると助かります」
「了解シタ」
コキュートスは首だけを動かしエルフの3人を見るが興味なしと言った様子でエルヤーを見た。
「あと…勢い余ってしまった時は彼女達の保護をしていただけると助かりますね」
「…?」
エルヤーの言っている事が分からず首を傾げたコキュートスに構わず、エルヤーは一気に駆け出した。
「武技"縮地"ッ!」
そのままコキュートスと距離を詰めたエルヤーは刀を横に振るうもののコキュートスの上段からの振り下ろしにより刀は簡単に地面へと押さえつけられてしまう。
「くっ…」
「遅イナ」
そう言ってから押さえつけるのをやめたコキュートスは背中を見せてゆっくりと歩き一旦エルヤーとの距離を取った。
「補助無しでは矢張りこの程度ですか…。皆さん、力を貸して下さい」
茶髪のエルフから渡された瓶の液体を飲み干し、金髪のエルフから肉体強化系の魔法を掛けられつつ、エルヤー自身も能力向上などの武技を使用した。
「これで力の差を少しでも埋められてると良いのですがね」
「実戦デハ相手ガ悠長ニ待ッテハクレナイゾ」
「これは耳が痛いですな」\エルヤーも耳が切れたの?/
笑えない冗談に苦笑いをしつつ、エルヤーは再び刀を構えた。それに合わせてコキュートスも軽く身構える。
「では行きますよッ!武技"縮地・改"ッ!」
縮地と縮地改の違いは方向転換が可能かどうか、エルヤーは真正面からではなくコキュートスの背後に周り、斬撃を仕掛ける。
「フム」
しかし即座に反転したコキュートスは軽く鞘付きの刀で地面を払い、それにより放たれる土砂と風圧でエルヤーを吹き飛ばした。エルヤーは受け身を取って着地し、コキュートスを睨む。
「マダマダ遅イナ」
「これもダメですか…。しかしここまで全く歯が立たないとは…。」
「終ワリニスルカ?」
そう尋ねるコキュートスだったがエルヤーは首を横に振ると、再び刀を構えた。しかしその構えは先程までと異なり刀の鋒を前方に向けていた。
「"アレ"をやるッ!」
コキュートスが見たのは更に武技や補助魔法などで肉体を強化するエルヤー、そして踏み込む際に余りの衝撃に折れた脚の骨であった。
「ソノ脚デハ碌ニ動ケマ…」
「"中傷治癒"!」
コキュートスが言い切る前に青髪のエルフが即座に回復魔法を使用した事でヒビ程度までに回復した脚をして更に距離を詰めんとするエルヤーを見てコキュートスは感嘆の声を漏らした。
「予メ折レル前提ダッタカ、素晴ラシイ…!」
「これが私達の全力ッ!武技…"閃光縮地"ッ!!」
先程までとは格段に早いエルヤーの接近にコキュートスはこの世界で暫くぶりに"焦った"。
それほどまでにエルヤー達の全力は早かった。
「…これでも、届きませんか」
「イヤ、見事ダッタゾ」
流石のコキュートスも暫く振りに本気を出した。ただしそれは捨て身…否、特攻とも言えるタダの突撃をしてくる相手を致命傷を負わさないようにするのに、である。結果としてコキュートスは突っ込んでくる相手に対して半歩横にずれ、横回転で勢いをいなしつつエルヤーの体を掴み、投げ技のように回転で勢いを殺したのであった。
「それではコキュートス殿、今回はありがとうございました。また修練を積んで挑みに来ます!」
エルヤーと別れたコキュートスはエルヤーが言った「勢い余って」の言葉の意味をようやく理解した。勢い余って"私が死んでしまったら"と言う意味だったと。
「人間トハ実ニ面白イ…己ガ全力ヲ出シ切ラント犠牲モ恐レヌトハ。素晴ラシイ…。正ニ閃光…命ノ輝キヲ確カニ見タゾ…」
-オマケ小話-
とある日、コキュートスはジルクニフのもとを訪れていた。
「どうだろうコキュートス殿、気に入った品はあるだろうか?」
机の上に並べられた武器を見てコキュートスは落胆した。
「質ガ悪イ」
コキュートス基準では当然であったが、ジルクニフとしては最高級の物を用意したつもりであった。コキュートスの反応に思わず顔を引き攣らせるが、なんとかポーカーフェイスを保つ。
「そ、そうか…力になれずすまないな」
「…ム?コレハ…?」
コキュートスが手に取ったのは不思議な模様の書かれたナイフであった。
「あぁ、それはかつて交流のあったドワーフの国から仕入れたとされるルーンの刻まれた武器だな」
「ルーン?…興味深イナ…」
竜狩り パルパトラさんの(斜)上方修正内容
・武技"竜狩り"の取得
→相手が"ドラゴン"であると"認識"した場合、身体能力が飛躍的に上昇する。あくまで必要なのは認識であり、実際に相手がドラゴンであるかは関係がない。ギガントバジリスクが相手でもドラゴン認識は適用される。
天武 エルヤーの上方修正内容
・人間性の逆転
→皆さん大嫌いエルヤーは人間性がありえんほどに上昇、例えるならセバスとガゼフとエルヤーの人間性を足して、エルヤーの人間性を引いてから3で掛けたような感じ。結果として原作とは別人になりました。ガワと名前だけ同じなだけの別人に等しい。高い人間性から真っ当な努力と直向きな研鑽、更にエルフ娘3人との関係が"仲間"になった為連携力が飛躍的に上昇。誰だこいつ。
・武技 "閃光宿地"の取得
→上記により才能的な物が開花。仲間との連携と研鑽の集大成的技。要はバフをモリモリにした後に脚の骨が折れるくらい強い踏み込みでスタートダッシュを行い、即時回復魔法で回復、等速直線運動をする縮地により凄まじい速さのスタートダッシュ状態で相手との距離を詰める。文字通り閃光の如き速さだが光速とかでは無い。なお、弱点としてこの技を使用中は速すぎる為エルヤーの視界はほとんど0になる上、方向転換ができないのでカウンター技を用意されやすく前述の通り視界0の為対応ができない事。ぶっちゃけ各下には使う意味がなく、超が付くほどの格上には対処されるためほぼ使う機会は無いだろう。