推敲はしたつもりですが、丑三つ時に書いて
ますので誤字脱字は許してネ♥
鉄生・テラス夫妻のウマ娘とヒト男の恋愛講座(?)が
好評だった数日後。夫婦と担当ウマ娘の四人は甲子園
球場に到着した。
「わぁ……♪」
「やっぱり写真より実物ですね……」
ライスシャワーとメジロライアンはツタにびっしりと
覆われた外壁に感嘆の声を漏らした。
「間近で見ると壮観だなー」
「六甲おろしを歌いたくなるわね」
高校野球の聖地を至近距離にした夫婦も、その威容に
圧倒される。
「よぉ、チームウインズやないか!」
四人が振り向くと、観客席入口の前でタコ焼きを
ひっくり返すちびっ…芦毛の小柄なウマ娘と、一般的
サイズの倍はあるジャンボタコ焼きを頬張る、同じく
芦毛の食欲魔人がいた。
「「タマモさんにオグリさん!?」」
「ふぁひほおほほふ、ふぁふへんへいふほはっへふ
はほう(何を驚く、学園でいつも会ってるだろう)」
「食うかしゃべるかどっちかでなオグリ…つーか、
二人とも合宿で見かけなかったのはこれが理由か」
鉄生がこめかみを押さえるが、タマモクロスはしれっと
したものだ。
「心配あらへん。生徒会には一人2パックのタコ焼きを
持ってったら快く了承してもろたで。特にブライアンは
大喜びやったわ♪」
「買収じゃねえかそれ」
「それよりも君たち、あと10分ちょっとで試合開始じゃ
ないのか?」
「えっ…本当だわあなた、急がないと!」
オグリキャップの腕時計を見たアマテラスアローが
慌てて叫んだ。
「やべっ、行くぞライス、ライアン!」
「「は、はいっ!」」
四人は脱兎の如く駆け出した。
「あの二人、いい顔になってきたな…タマ」
「せやな…秋口から楽しみやでオグリ♪」
『これより第四試合の開始でございます。守ります
帝政高校のピッチャーは…』
ウグイス嬢の軽やかなアナウンスが響き渡り、帝政の
ボール回しが行われる。
バックネット裏という最高の席に陣取った四人。呼吸が
落ち着いた頃、鉄生が二人に訊ねた。
「さてライスにライアン。君たちはこの試合、どっちが
勝つと思う?」
二人は鉄生の質問の意味を図りかねる顔をする。徐に
メジロライアンが口火を切った。
「やっぱり…何度も優勝経験のある帝政高校が有利だと
思います。攻・走・守とも高いレベルでまとまってます
から」
「まぁ順当に考えればそうよね。ライスちゃんはどう
かしら?」
アマテラスアローが今度はライスシャワーに問うた。
「ライアンさんの言う通りだと思います…200校以上の
中から勝ち上がった帝政高校と、39校の代表の浜木田
学園じゃ実力の差がありすぎます」
ライスシャワーも結果が見える勝負と予想した。
「プレイボール!」
主審のコールに続いてサイレンが鳴り響く。
「よし、まずは楽しもうか!」
一回裏、いきなり帝政が三連打で一点先行。浜木田も
必死にくらいつき、六回表に相手エラーを機に同点に
追いついた。
「がんばれ浜木田ー!」
「どっちも負けないでー!」
判官贔屓かメジロライアンが浜木田に入れ込む一方、
ライスシャワーは両校の懸命なプレイに魅入られる。
1-1でゲームは延長戦に突入、ナイターと化した。
十二回表。浜木田が適時打で1点を勝ち越して均衡が
破れた。しかし帝政もその裏死にもの狂いで反撃する。
「二人とも、ダッグアウトとスタンドを見てみろ」
グラウンドで繰り広げられる一挙手一投足に集中して
いる二人に対し不意に投げかけられた鉄生の指示。
「え…何これ…?」
「どうしてこんなに…違うの…?」
メジロライアンもライスシャワーも不可解な表情を
隠さない。それもそのはず、大歓声が続いているのは
変わっていないが押せ押せムードの一塁側・浜木田と
悲鳴と絶叫が交じる三塁側・帝政。テンションの差は
明白だった。
「気持ちの違い、ね…」
アマテラスアローがぼそっとつぶやいた。
「ストライクアウトォ!ゲームセット!」
最後のバッターが三振に終わり、浜木田学園の辛勝。
───ワアアアアァァ!
「いやあああああああぁぁ!」
下馬評を覆す結末が歓喜と落胆の叫びを誘う中、妙に
キーの高い金切り声が三塁側スタンドに木霊した。
「マックイーン(ちゃん)(さん)!?」
四人は名門のお嬢様のあられもない姿を目の当たりに
することとなった。
「四人ともお疲れさん」
「応援して腹も減っただろう。タコ焼き、どうだ?」
球場を出た四人をタマモクロスとオグリキャップが
笑顔で出迎えた。
───ぐきゅるるる。
パワーワードに反応した四人のお腹が、メシよこせと
大合唱。
「うふふ、オグリちゃんの言う通りね。じゃあ4パック
いただこうかしら」
懐から財布を取り出そうとしたアマテラスアローだが
タマモクロスが制した。
「テラスはん、ウチの奢りやから気にせんときっ♪
今年はオグリがおったさかい売上も五割増やってん。
ホンマ、オグリさまさまやで♪」
「なあタマ…もっと焼いてくれないか?手伝ってくれ
たら好きなだけ食べさせると言ってたじゃないか」
「もう具材が底をついたって、どいだけ言うたら
わかんねん!そのボテ腹で!」
───ぺしっ!
「むぅ…」
オグリキャップの壮大な食欲に、鉄生たち四人も
堪えきれずに吹き出した。
「なぁなぁテラスはん鉄生はん、この後に予定は
入っとんの?」
メジロライアンとライスシャワーがオグリキャップと
食欲談議に花を咲かせるその脇で、先ほどのノリは
どこへやら、タマモクロスが神妙な面持ちで夫婦に
訊ねる。
「いや、特にないな。メシ食ってホテルに帰って休む
だけだが…いったいどうしたんだ?」
「あ…あんなぁ、ちょーっと耳貸してや?」
元気と根性がトレードマークのタマモクロスにしては
珍しく小声でチョイチョイと手招きするので、鉄生と
アマテラスアローは中腰で耳をそばだてる。若夫婦に
内緒話をする一人娘の図。
───かくかくしかじか、まるまるうまうま。キミの
愛バがずきゅんどきゅん。
「あ~、そういうわけかぁ。テラス、どう思う?」
情実を知り意見を求めようと妻を見た鉄生は、次の
瞬間ギョッとする。
「……タ″マ″モ″ち″ゃ″あ″ぁ″ん″!」
───だきっ!
「うぶっ!?ちょ、ちょっとテラスはん!?」
泪と鼻汁をどばどば垂れ流すアマテラスアローが
タマモクロスを渾身の力で抱きしめたのである。
「あ″な″た″っ″て″子″は″ぁ″ぁ″、な″ん″て″け″な″げ″
な″の″ぉ″ぉ″ぉ″!」
「むごぐぐぐっ!で…でかチチ…で…ちっそ、く…」
「おっ、落ち着けテラス!くっ、びくともしない!
ライスー!ライアーン!手伝ってくれー!」
オグリキャップの手も借り、鉄生はすんでのところで
アマテラスアローを引き離した。
───ぶっちゃけ。
オグリキャップの協力と、タコ焼きを売るG1ウマ娘と
いうシュールな光景がマッチして今までで最大の売上を
叩き出したタマモクロスだが、トレセン学園への土産と
幼い弟妹への仕送りで残りは一割あるかないからしい。
その上まだ食べ足りないオグリキャップ…間違いなく
足が出る。
そこへ居合わせた妹尾夫妻に借金を頼もうと事情を
話したら、感極まったアマテラスアローのベアハッグを
食らったのである。
「おねーさんにまっかせなさい!」
鉄生も、タマモクロスの実情を知ったからには異論の
あろうはずがない。
「タマモ、君の行きつけに連れてってくれ。うまい
メシは大勢で食うに限る!」
こうしてチームウインズと芦毛阪神・巨人は大いに
飲んで(アルコールは夫婦だけ)大いに食べ、野球話で
盛り上がったのである。
「誰が阪神・巨人やねん!?」
一人称と第三者視点の違いは
妄想という名の匙加減に依存する…
当たり前だけどなかなかバランスが
とれないものですね