呪術廻戦×「巣くうもの」(洒落コワ話より)ネタ 作:蜜柑ブタ
かなり苦戦した…。
いい加減原作を取り入れようとしてかなり苦戦した。
今回は本来なら原作で大きなフラグになった少年院。
でもまったく原作通りにはなりません。
そもそも両面宿儺が原作から退場してますから。指と名称だけ残ってます。
肝心の指もすぐ壊れますけど……。
元ネタの『巣くうもの』よりスケールが大きく、より凶悪になっています。
そのことを頭に入れたうえでお読みください。よろしくお願いします。
それでもOKって方だけどうぞ。
いいですね?
夜蛾は長いため息を吐いた。
呪術界の上層部、五条が腐ったミカンと例える思想が腐敗した頭の固い呪術師達だ。
その上層部が夜蛾にある命令をした。命令…、任務ではなく実験のようなものだ。
上層部から送られたその呪物は補助監督のひとりによってとてつもない危険物を扱うやり方で慎重に移送されてきた。
特級呪物『両面宿儺の指』。
呪いの王と呼ばれる最凶最悪の呪詛師であった両面宿儺の指の屍蝋である。
あまりに強すぎた呪詛師の呪いは千年以上経っても衰えず屍蝋の指は何をやっても破壊できず、宿る呪力は無差別に不幸を撒き散らし呪いを呼び寄せ更に不幸を生む。
…………だったのだが、それが根底からぶっ壊される事案が起こったのは呪術界どころか一般社会に潜む呪詛師達にも衝撃的すぎた。
『両面宿儺の指』がただの屍蝋になって簡単に壊れるようなってしまった。
ある少年の中に巣くう、ソレによって。
五条によって『巣くうもの』と仮の名称が与えられたソレは15歳の少年の身体を住処とし、住処である少年と自分自身だけを守るために敵と認識した物を容赦なく徹底的に破壊する習性を持っていた。
破壊すべき対象は呪いを含めた神秘に向けられる傾向があり、ハッキリした形の無いものであろうと悪意のないものであろうと無差別に破壊する。そのせいで付喪神がいそうな古い家屋や神社などが建造物ごと失われたり、守護霊なども犠牲になってしまい守護を失ったその一族が全滅したり全滅はしなくても取り返しが付かない悲惨な状況に陥ったりと無傷で済んでいないことが虎杖悠仁を保護してから行われた調査で次々に判明した。あまりの酷い調査内容に呪術界の上層部でさえ閉口して調査にあたった者達ですら思わず目を背けたり惨劇の跡地が誰にも気づかれずに放置されていてそのままになっていたところに踏み込んでそこで目撃した光景のショックでPTSDになってしまい数日後に命を絶った者が1名出てしまった。
「忠告したのにな~。腐ったミカンは聞いちゃいないの? ボケどころか脳みそ腐ったかな?」
夜蛾が座る机の前に立っている五条が厳重な封印がされた小箱を見下ろして肩をすくめた。
「使える物は使えということだ。目先の問題を片付けるのにこれ以上のことはない。」
「それで藪蛇して自分達が危なくなったらギャーギャー被害者ぶって騒ぐくせに? 余計な問題持ち込んでくれるから何かお礼しないとね~。」
「何をする気だ!? まさかとは思うが虎杖を使う気か!?」
「九州旅行に誘おうかなって思ってますが?」
「却下!! おまえまでそれでどうする!?」
通りがかりに『巣くうもの』に攻撃させる気満々な五条にお前も人のこと言えないと叫ぶ夜蛾。
「まーそれはそうと、ソレをどうするんです?」
「…指の処分が確実に出来るか試せということだ。」
「簡単でしょ。」
「虎杖の様子は?」
「午前の授業中に居眠りしちゃって可愛かったですよ~。」
「居眠りだと!?」
悠仁が寝たというのを聞いて夜蛾がギョッとして顔色を悪くした。
椅子を蹴飛ばす勢いで動こうとしかけた夜蛾を五条が制止した。
「パンダは無事ですよ。ところでこの指、いつ送られてきたんです?」
「!」
「そーいうことでしょうね。恵が指を回収しに行ったときも封印場所の前で悠仁が寝てたそうですし、残穢も残らず消えて無くなっていたから……宿儺ほどの大物だと全力を出してくるんじゃないです?」
夜蛾がゆっくりと上層部から送られてきた封印されている小箱を見た。それから指で札などを剥がして中を確認した。
中には封印のための呪印が施された布きれに包まれた両面宿儺の指が1本納められているのだが、状態を確認するために手で持とうとすると触れた部位から中の指が崩れていき、小箱の中にボロボロと屍蝋の残骸だけが落ちるばかりだった。
もちろん呪力は欠片も残っていない。
どうやら午前中の授業の間に両面宿儺の指はその膨大な呪力と特級呪物としての硬度を一切失い、ただの屍蝋に成り果てて触っただけでボロボロに崩れて無くなるほど脆くなってしまったようだ。
授業中に『巣くうもの』が動いたことを誰も気づいていなかったということは、黒いモヤのような姿を見せずに破壊してみせたということだ。悠仁を眠らせる必要はあったが自分が出てくる必要も無かったという意味ともとれる。
「つまりあれですかね? 『巣くうもの』が反応する範囲と呪いを殺す確実な部分を調べたかった? この様子だと高専の領域に入る前にはもう終わってたかな? 悠仁が居眠りしたの午前中だったし。お昼ご飯直後には起きましたけど。ってゆーか、これだけじゃないんでしょ? 腐ったミカンの連中がやりたがってる実験って。」
「ああ…そうだ。指の在処が疑われている場所に虎杖を近づけて様子を見ろと…。」
「やっぱ『巣くうもの』のレーダーと攻撃力を知りたいわけか。まー、僕も気になるし。でもこのことはもちろん…。」
「虎杖には絶対に知られるな。分かっていることだろう。」
「それはもう。恵達もみんな絶対に知られないように頑張ってるし。こんなこと…、悠仁が知ったらきっと自責の念で押しつぶされて償うために手段を選ばないよ。あの子は本当に良い子だから。なのに…。」
なんであんな良い子が得体の知れない寄生虫の住処として利用されて、寄生虫が大人になったら体を突き破られて終わるんだろう?
五条の独り言に夜蛾は何も言えず、無言でいることで肯定として返した。
***
後日、悠仁を任務に行くよう指示する形で上層部からの実験が行われた。
指があると考えられた場所は少年院だった。封印が破れてしまい指から漏れた呪力によって少年には呪霊の巣窟に変貌してしまった。中にいる受刑者と少年院の監視員達が取り残されていると考えられその生死は不明だ。
『巣くうもの』の攻撃力とその影響を調べるにはもってこいの状況であったため、上層部は虎杖悠仁を現場に向かわせるよう高専に命令したのだ。
そうして補助監督が運転する送迎車に悠仁と共に伏黒、釘崎、吉野を含めた4名で問題の少年院に向かう。
少年院がある地域までの道のりは、ドライブレコーダーや悠仁以外の人間達の目と耳で悠仁の様子を観察されることになっている。どの辺りで悠仁に異変が起こるか、そして『巣くうもの』が動き出すか。少し前に悠仁の初任務として人里離れた場所の工場での一件もあり、伏黒と釘崎は顔に出さないよう必死である。あの時の嘔吐感を思い出してせり上がってくる胃の内容物と胃液に耐えてだ。少年院に近づいていく中ですでに嫌な感じがしていて胃が刺激されまくっている。
吉野に至っては悠仁の隣に座っているが顔色が悪くて車酔いを悠仁に心配されていて大変だ。原因が悠仁だとは本人に言えない。悠仁に『巣くうもの』のことを絶対秘密でいかないといけないのだからもう必死だ。
そうこうしていると悠仁が意識を失い吉野の方へ体を倒れさせた。
来た!?っと車内が緊迫し吉野が悠仁の体を受け止めて彼が寝ていることを確認し、目線を伏黒と釘崎に交互に向けた。
そしてすぐに車を止めて補佐監督が今回の実験に参加している他の人員に連絡を取り、少年院の状況とその周辺の観測データ収集の動きに一気に緊張感が走る。
吉野が悲鳴をあげかけながら口を手で押さえて耐えた。
吉野の眼前で座席の背もたれに背中を預けて眠っている悠仁の胴体から黒いモヤが溢れ出てきて車の車体の隙間へと流れるように外へ出て行った。
外へと出た『巣くうもの』が大気中を泳ぐようにある方向へ移動してモヤのような体をどんどん伸ばしていった。
途中まで普通の公道で車が走る程度の速度で移動していたが、ある地点から突然スピードを増してあっという間に少年院の上部に到達すると突如としてその形を変えた。
太くても抱き枕ぐらいの太さだった太さがやや定まらない棒状っぽい形状から先端が球状に膨らみ始めた。
膨れた部位が少年院の一部に触れると触れた部位からひび割れて、ひびが大きくなった部位は崩れて外れて地面へと落ちた。
球状の部位はどんどん大きくなるばかりで少年院は上から球体に潰されていくように破壊されていく。しかしこれはいわゆる見える人じゃないと分からない破壊の原因だ。見えない人から見たら少年院が上から謎の力で押しつぶされているという異常現象でしかない。
少年院が地面との接地面どころか、地下2、3階ぐらいまで潰されてやっと『巣くうもの』の攻撃が止まった。
潰れるように破壊された建物の瓦礫がクレーターになった部位に流れ落ちきるまでの間に『巣くうもの』は巻き戻されるように球状にした部位を縮めて悠仁がいる方へ戻り悠仁の中へと戻った。その間わずか5分程度。少年院押し潰しは10分とかかっていない。
クレーターに無惨に残った瓦礫の現場には、そこに濃厚な呪いが蔓延っていた形跡は残っておらず、両面宿儺の指を発見することもできなかった。ただの屍蝋になって脆くなっていたとしたら建物の破壊に巻き込まれて細かく砕けてしまい形状を残していないと考えられる。
ただ少年院に取り残されていた人間達が判別不能の遺体として発見されていき、『巣くうもの』の攻撃の無慈悲さと恐怖を思い知らされる。
爆睡している悠仁と悠仁の世話を任されている吉野が車に残し伏黒と釘崎が破壊された少年院を直に見に行った。
その惨状にただただ言葉が出ず、冷静さを保とうとしても顔がものすごく強ばってしまう。
クレーターに落ちている瓦礫の中からまだ見つかっていない人間を探すためにたくさんの人員が割かれているが、なにせ判別ができないためちゃんと行方不明者リストの人数分が見つけられるかどうか分からない。現状見つかっているのが、ぺちゃんこ、染み、粉砕、それらのミックスというぐらい形がないから瓦礫ごとクレーターから出して判別のために調べられないといけない。
「うわ~~~、これは……。」
そこに五条が来た。
「五条先生…。」
「うん、分かってる。大まかに動画とかで見せて貰ってたからなにがどうやってこうなったのかは把握してるから。それにしても……。」
五条が車の中でで寝ている悠仁の方を見た。
そして目隠しをずらして目を細めた。
「う~~~~~~ん……、やっぱり初めて見たときより大きくなってる…? なんか今朝よりも活発になってるような…。」
その言葉を聞いて伏黒と釘崎がギョッとして五条を見た。
「それって…、つまり…。」
「まだ成虫ってほどじゃないだろうけど、確実に成長はしてるよね。攻撃手段が変わったというか、手段を増やしたみたいだし。ってことは…、攻撃対象によって攻撃するやり方を変える必要があるって『巣くうもの』が判断するだけの外的刺激を……。あっ。」
そこまでブツブツ言っていた五条が最後の部分まで言い切る前にあることに気づいて『あっ』と言葉を止めた。
伏黒と釘崎は、もう顔色が最悪だった。なんとなく察したからだ。
「やば~~~~い…のかな? とんでもなく余計なことしちゃった? 藪蛇どころじゃないかも~?」
五条の顔からダラダラと変な汗が垂れた。ただでさえ白い顔が余計に青白くなる。
「『巣くうもの』が攻撃する理由を次から次に用意したせいで、アイツの成長と進化に加速が思いっきりついてきちゃったかもしんないじゃん……。どーすんのコレ?」
いや、それ誰にもどうしようもできないことだろ!っというツッコミを伏黒達はしたかったが恐ろしい現実に咄嗟の言葉さえ出てこなかった。
外的刺激で『巣くうもの』の成長が早まっている可能性。
そのこともレポートにまとめて上層部に報告され、少年院が破壊される動画も提出されたが、少なくとも特級呪物が呪物による影響を受けた危険領域ごと残らず綺麗さっぱり破壊され尽くされることをプラスと捉える人間が半数を占めたようで危険な状況に悠仁を連れていって『巣くうもの』を調べるのに利用するという実験は続けられるという方針が決まってしまった。
『巣くうもの』の成長が早まったり、成虫になった時の力を増すかもしれない危険すぎる可能性は目をつぶられることになってしまい、夜蛾は頭を抱えた。
五条に至っては『知~らない』っと鼻歌交じりに笑って知ったこっちゃないという姿勢だ。
***
「うーん…、予想以上の破壊力だね…。余計に近づけないな…これは…。」
「夏油様。」
「ただいま戻りました。」
「おかえり、美々子、菜々子。」
手にしている携帯端末機で再生する動画を視聴していた夏油は、二人の美女達を迎えた。
「言われたとおり、呪霊の配置は終わりました。」
「特級かそれに近い呪霊を即席で用意できる領域を用意するって…、例の…。」
「おびき寄せられたら万々歳。攫えたら百万点満点越えだね。」
「そこまで警戒する必要がありますか? 私達の呪術でなら…。」
「呪術で近づくのはダメだ。お前達をこんな状態にはしたくない。」
そう言って夏油が動画に映し出されている元少年院だったクレーターとそこに落ちている瓦礫の有様を二人に見せた。
夏油が簡潔に、これが少年院だったことを説明し、動画の再生位置を巻き戻して破壊されていく過程を見せたりすると美々子と菜々子は一気に青ざめた。
「分かったかい?」
「はい…。」
「わ、分かりました…。」
「二人の気持ちは嬉しいよ。虎杖悠仁をこちらに連れてこれたら、その時は力を貸してくれるね?」
「もちろんです!」
夏油の言葉に美々子と菜々子は二人同時にもちろんだと声をあげた。
そんな二人に夏油は優しく微笑んだ。
「そーうまく行くと思ってんのか、悪食小僧。」
「……………………まったく勝手に土足で踏み込んでくるとは。これだから猿は困る。」
夏油の表情が一変し、笑みを消して冷徹なものになる。
「夏油様! 下がってください!」
「またお前か!!」
夏油を庇うように前に出て構える美々子と菜々子だったが、彼らから少し離れた場所に立つ男は飄々とした姿勢を変えない。
感情が読めない淡々とした調子で3人を眺めていた男は、体に巻き付けていた呪霊から武器を吐き出させてその武器を握った。
「いい加減手を引け。お前らを相手すんのもう飽きてんだ。」
「それはこっちの台詞なんだが?」
「虎杖の坊主に住み着いてるもんを呪いと一緒に考えてる時点でアウトオブアウトなんだって分かんねーかなー? 舌どころか頭までゲロマズ味の食い過ぎでイカレたか?」
頭をボリボリとかく男の背後に呪霊が迫るが、攻撃する前に呪霊が横を通り過ぎた。呪霊はオロオロと周りを見回して困ったように夏油の方を見た。
「……相変わらず道端の石以下か。」
「ボートレースの時間が迫ってんだ、さっさと終わらすわ。」
男の横を通り過ぎた呪霊があっという間に輪切りにされて消滅すると同時に、男が地を蹴って夏油達に距離を詰める。
夏油が美々子と菜々子を覆うように呪霊の群れを出し、更に彼らがいる建造物のあらゆるところから呪霊が出現して男に殺到した。
後日、新聞の小さな欄にゴーストタウン化した街の一角が謎の爆発、炎上したという事件が載ったが、そこで出た犠牲者はゼロだったと記されていた。
少年院は、呪霊と指と少年院に取り残された人間達ごと建物もろとも潰されました。
物理的に。
『巣くうもの』を調べるためにやったことが完全に裏目に出て余計に極悪に成長を早めてしまうという結果に、『巣くうもの』を刺激しないようにするという方向に行かず、逆に目先の問題解決(※特級の呪いなどの処分)に利用することを決めてしまった呪術界の上。
夏油が動画を入手できたのは呪術界側に夏油一派の賛同者がいるからです。
甚爾が裏で頑張っていますが、悠仁が呪術界側にいるためかなり苦戦している模様。動画が夏油の手に渡るのを防げなかったのもそうした理由。
アンケート結果で、夏油が『巣くうもの』を狙う理由を描こうと思います。
どのエピソードを希望しますか?
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夏油が巣くうものを探す理由になった過去
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乙骨と里香を高専に帰還させるには?
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京都との交流戦でひと悶着
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悠仁の両親の死と、倭助の行動