錦が如く   作:1UEさん

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待たせたのぅお前ら、最新話やで!

いよいよ待ちに待った殺戮ショーの開幕や!
ワシの強さ、よぉーく目ぇに焼き付けるんやで?

よっしゃ、ほな早速本編開始やぁ!!

覚悟せぇ……錦山ぁぁぁ!!




Receive You Mad Type

ついに幕を開けた嶋野の狂犬との一騎打ち。

その先手を仕掛けたのは、真島吾朗の方だった。

 

「昔、言うたはずやで……錦山」

 

真島がゆらりと脱力した動きを見せた瞬間、錦山の全身を悪寒が駆け巡った。

彼は己の体が発したその悪寒に従い、僅かに首を横にズラす。

直後。

 

「ッ!!?」

 

真島の持つドスの刃が、先程まで錦山の首があった場所に突き出されていた。

 

「"お前じゃ俺には勝てん"ってな」

 

耳元で呟かれた直後、真島の放った前蹴りが錦山を襲う。

錦山はその一撃をガードで受けながら、後ろに飛び退いて距離を取った。

 

(は、早すぎる……!!)

 

その速度は明らかに常軌を逸していた。

あと一拍。

もしもあと一拍錦山の動きが遅れていれば、彼の首に真っ赤な風穴が空いていただろう。

 

「まだまだこんなもんやないで……覚悟せぇや!!」

 

真島が刃を翻らせ錦山に襲いかかる。

錦山は全神経を集中させ、迫り来る刃の軌道を読んで回避に徹した。

 

(一瞬たりとも気が抜けねぇ……これが嶋野の狂犬か!)

 

まるで自身の体の一部であるかのように変幻自在のその軌道を変える刃。

一度でもその軌道を見誤れば、一回でも判断を違えれば。

その瞬間が錦山の終焉の時だ。

 

「ウゥリャァ!!」

 

回転を加えた横凪の斬撃が錦山を襲う。

 

「ッ、オラァ!」

 

錦山は僅かに屈んでそれを躱すと、反撃の右フックを振り抜いた。

しかし、その一撃は真島の持つスウェイで見事に躱されてしまう。

 

「遅いわボケ!」

 

真島は再び距離を詰めると、カポエイラのような動きで錦山の側頭部に後ろ回し蹴りを繰り出した。

咄嗟にガードした錦山だったが、瞬発力と威力のある一撃からか、あっさりと防御を崩されてしまう。

 

「くっ!」

「てぃやァ!」

 

その次に襲いかかるのは真上から振り下ろされる刃だった。

錦山はすかさず両手を伸ばしてドスを持つ真島の右手を掴む。

 

(よしっ)

「甘いで!」

 

そのまま武器を無力化しようとした錦山だったが、直後に真島の放った鋭い膝蹴りが彼の腹部に突き刺さる。

 

「ぐほっ!?」

「でぇぇいッ!!」

 

思わず前傾姿勢になり明確な隙を見せた錦山の顔面に、真島は追撃の左アッパーを叩き込んだ。

 

「ぶはぁっ!?」

 

その一撃はあまりにも重く、錦山の両手は真島の右手を離れ、彼の体は文字通りぶっ飛ばされてしまった。

 

「ぐ、くっ……!」

 

何とか受身を取ってすぐさま立ち上がる錦山だったが、先の一撃によるダメージからか足元が若干覚束無い。

 

「ほれ、休んどる暇は無いで!!」

「ちっ!!」

 

錦山は言うことを聞かない自分の体に喝を入れると、眼前の真島の動きに再び全神経を集中させた。

 

「でぇりゃ!」

 

鋭く放たれる右の一刺し。

錦山がそれを紙一重で躱すと、真島はその場にドスを置くように手を離して体を反転させる。

 

「!!」

 

その意味を理解した錦山がすぐさま後ろへ一歩下がる。なんと真島は落下するドスを反転した左手で逆手に持ち替え、そのまま追撃の一刺しを繰り出してきたのだ。

 

「うりゃっ!」

 

錦山がその一刺しを躱すと、真島はドスを上に投げて足払いを仕掛けた。

錦山はその足払いを軽めの跳躍で回避してやり過ごす。

 

「シッ!」

 

すると真島は素早く体勢を元に戻し、上から落ちてくるドスを見事に掴んでそのまま顔面狙いの一刺しを見舞った。

 

「くそっ!」

 

思わず悪態を付きながら、錦山はその刺突を屈んで回避する。

だが、錦山の屈んだ頭を目掛けて真島が左足を振り上げた。

 

「キェェイ!!」

「ぐぁっ!?」

 

完全に虚を衝く形で放たれたハイキックは錦山のこめかみを的確に打ち抜いた。

視界が揺れ、三半規管にダメージの入った錦山の足腰はさらに安定を欠く事になる。

しかし、真島の連撃はまだ続いていた。

 

「てりゃっ!」

 

真島は蹴り抜いた勢いのまま身体を反転させると、右逆手に持ったドスを錦山に向けて突き出した。

 

「ッ!!」

 

平衡感覚も定まらない中、錦山は半ば本能的に身を捩った。

その行動が偶然にも真島の刺突を回避する要因となり、九死に一生を得る錦山。

しかし、奇跡とはそう長くは続かない。

 

「でぇぇぇい!!」

 

真島は再びドスを手放すと、そのドス目掛けて左の拳を真っ直ぐに振り抜いた。

 

「ぐぶぁぁっ!?」

 

真島の放った左ストレートはドスの柄を叩いて上に弾き飛ばし、そのまま錦山の顔面へと叩き込まれる。

平衡感覚を失った彼にこの一撃を耐え抜く事は出来ず、彼の体は後方へ吹き飛ばされるとロクな受け身も取れないまま地面に叩き付けられた。

 

「はっ、拍子抜けやな」

 

落下するドスを華麗に掴み取り、真島が独りごちる。今の曲芸のような動きも、彼からしてみれば日常茶飯事。

わざわざ特筆すべき事ですら無いのだ。

 

「桐生ちゃんやったら当たり前のようにぜーんぶ避けて、今頃返しの一撃をワシに叩き込んでる所や」

「ぅぐ……くっ、そ…………!」

 

平衡感覚を失い立つことが出来ない錦山を無感動に見下ろしながら、真島が問いかける。

 

「聞いたで。お前、葬儀会場で嶋野の親父を倒したんやってな?それで自分には実力があるとのぼせ上がったっちゅう訳か」

 

錦山はこれまで、数々の強敵を相手取ってきた。

全盛期の堂島組を拳一つでのし上がった拳王、久瀬。

東城会の内外にその名を轟かす大幹部、嶋野。

若くして近江連合の幹部衆に取り立てられた実力派、林。

三年間無敗を貫いて来た地下闘技場の王者、ゲイリー。

彼らは決して、一山いくらのゴロツキではない。

皆が皆、決して一筋縄では行かない強者ばかりだった。

 

「せやけどこれが現実や。身の程も弁えずにワシに喧嘩売ったんが運の尽き。精々後悔しながらあの世に逝けや」

 

それでも。

そんな彼らを打ち倒してきた錦山でさえも"伝説"の前には届かない。

今の彼はまだ、大海を知らぬ蛙に他ならないのだから。

 

「往生せぇ、錦山……!」

 

真島は手に持ったドスを逆手に持ち、勢いよく跳躍した。

狙いは錦山の胸元。

落下する勢いを加えながら鈍色の刃を突き立てんとする真島に、錦山は抵抗の意志を示した。

 

「っ、ぅ、ぉらァァァッッ!!」

 

寝そべったままの状態で、真上から落下してくる真島の身体に真っ直ぐ右足を突き出す。

 

「ぐぉっ!?」

 

ドスの刃よりも早く錦山の前蹴りが真島の腹部を直撃し、真島の身体が押し戻された。

 

「はぁ、はぁ……勝手に、終わらせてんじゃねぇよ。嶋野のワン公……!」

 

その隙に、錦山は痛みとダメージを無理やりねじ伏せて何とか立ち上がった。

揺れる視界の影響で誘発した吐き気を飲みこんで、真っ向から真島を睨み付ける。

 

「まだそんな減らず口叩く元気あるんか。活きの良いやっちゃのう……」

「吠えてられんのも今の内だ。テメーのドス捌き、俺ァ完全に見切ったからよ……!」

 

錦山はそう言うと、コンパクトにファイティングポーズを取る。刑務所での日々の中、久瀬から技を盗んで身に付けたボクシングベースの構えだ。

 

「スゥー…………フゥー…………ッ」

 

そして更に、柏木の教えである呼吸法を用いて身体中の余計な力を抜いて精神を研ぎ澄まし、集中力を高める。

久瀬の持つボクシング仕込みの動体視力とフットワークに、柏木の修めた空手の呼吸法から成り立つ集中力と瞬発力。

錦山はそれぞれの兄貴分から身に付けた技法を己の中で掛け合わせ、自らの中に落とし込んだ。

 

「ほう……?なら、ホンマかどうか試したるわ」

 

錦山の挑発に乗った真島がそう宣言した直後、一瞬にして距離を詰めた真島がドスを振りかざした。

真島の凶刃が錦山の首筋へと迫る。

 

「ッ」

 

錦山はそれを最小限の動きで躱すと、返しの左フックを放った。

 

「チッ!」

 

真島は持ち前の俊敏性でその一撃を難なく躱すと、再びドスの刃を閃かせた。

しかし、錦山はこれも危なげなく回避する。

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

しびれを切らした真島は、目にも止まらぬ速さで斬撃と刺突の嵐を錦山に繰り出した。

その攻撃はどれもが素早く変幻自在で、予測不可能な軌道を描いている。

彼の持つ俊敏さとドスを手足のように扱う彼の技量の高さが成せる技だった。

 

「シッ、フッ、ンッ、ッ、ハッ」

 

だが、錦山はそれらの攻撃を全て最小限の動きで処理していく。

躱し、いなし、捌き、流しと言った動作をその時々で正確に選んで実行に移しているのだ。

 

(なんやと!?)

 

宣言通りに己のドス捌きを読み取られ、驚愕を隠せない真島。

このような芸当を成せるのは、ひとえに錦山の努力の賜物と言えるだろう。

数々の闘いの中で培われた錦山の動体視力が真島の変幻自在な動きを捉え、そこに加えて彼の研ぎ澄まされた精神が真島の放つ斬撃や刺突に込められた殺気を感じ取る事で次に刃が来る場所を浮き彫りにしているのだ。

後はそれらを退けるために必要な動作を確実に正確にこなす。

 

(チッ……!そろそろ限界だ……!)

 

しかし、いつまでもこんな芸当が出来る訳では無い。

不規則で素早い刃の軌道を常に目で追いかけ、感じ取った殺気から斬撃や刺突が来る場所を予測し続け、己が選びとった判断を瞬時に身体に伝達し続ける。

これだけの事をやり続けるには心身ともに強烈な負荷がのしかかる為、非常に高い集中力の継続が求められるのだ。

そして、人間の集中力は長時間維持させる事が非常に難しい。

錦山の集中力もその例に漏れず、まもなく切れようとしていた。その時。

 

「でぇぇぇい!!」

 

錦山の動きを煩わしく思った真島が、ドスを一際大きく振り上げた。一気に相手を切り付て勝負を終わらせる魂胆なのだろう。

 

(今だ!!)

 

そこに錦山は"活路"を見出した。真島が攻撃のために晒した僅かばかりの隙を突き、錦山が反撃に転じる。

 

「オラァァ!!」

 

錦山は振り下ろされる寸前の真島の右手に向かって掌打を叩き込んだ。真島の持つドスを弾き飛ばす為だ。

 

「なっ!?」

 

その一撃は見事に真島の右手から離れ、高く宙を舞った。

 

「たぁッ!」

「でりゃァ!」

 

二人は同時にその場で跳躍すると、落ちてくるドスに手を伸ばした。

この凶器を手にした者が、間違いなくこの闘いのイニシアチブを握る事になるだろう。

 

「ヒヒッ」

「チッ」

 

同時に着地する二人。

ドスは、真島の手の内にあった。

 

「キェァアア!!」

 

独特の掛け声と共に横薙ぎに振り抜かれた鈍色の刃が、錦山の肩を浅く切り付ける。

彼の纏う白いジャケットの肩に、一筋の紅いシミが浮かび上がった。

 

「でぇりゃァァァ!!」

 

しかし、錦山の心は折れなかった。

彼は肩を切られながらも、ドスを持った真島の右手を垂直に蹴り上げたのだ。

再びドスが宙を舞う。

 

「なっ!?」

「ハァッ!」

 

真島が真上に蹴り上げられたドスに一瞬だけ気を取られた隙に、錦山は真島の顔面に右フックをぶち当てた。

 

「こんのォ!!」

 

その一撃に真島も返しの右フックを叩き込む。

伝説級の極道の拳は今の錦山にとってはあまりにも重く、この一発だけで意識が飛びそうになる。

 

「ッ、ゥオラァァ!!」

 

だが、それを気合いで耐え抜いて右のボディブローを直撃させる。

錦山にとっては、一戦一戦が命を懸けた闘い。

決して負ける訳にはいかないのだ。

 

「ボケェ!!」

 

真島は反撃の左ストレートを錦山の顔面に打ち込む。

負ける訳にはいかないのは真島も同じ。

この後にお目当ての桐生との闘いが待っている以上、錦山のような格下相手に手こずっている訳にはいかないのだ。

 

「ヒャァアッ!」

「オラッ!」

 

そしてお互いの放った前蹴りがそれぞれ直撃し、二人の距離を引き離す。

その間に、宙を舞っていたドスが落ちようとしていた。

 

「ハァァァッ!!」

「デェェェイ!!」

 

二人の掛け声が重なり合い、両者が同時に右足を下段に振り抜いた。

狙いは未だ落下を続けている中空のドス。

錦山は凶器を蹴り飛ばして無力化するために、真島は更なる追い討ちをかけるために。

そして。

 

「ぎぇぁぁあああああッッ!?」

 

果実を潰すような音と共に、真島の悲鳴がバッティングセンター中に響き渡った。

落下していたドスは錦山の蹴りに柄頭を押され、真島の右足を貫いていたのだ。

 

(貰った……!)

 

勝機を見出した錦山は、すかさずマウントポジションを奪って拳を振り上げた。

そして。

 

「オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラ、オラァァッ!」

 

左右のフックによるパウンドの連打で一気に勝負を決めに行く。

全力で振り下ろされる両拳によって、真島の顔面が赤く腫れ上がっていく。

 

「離れろやボケェ!!」

 

しかし、この程度で仕留められるほど"伝説"は甘くなかった。

真島はドスの刺さっていない左足で真っ直ぐに前蹴りを放つと、錦山の身体を蹴り飛ばす事で無理やりマウントポジションから引き剥がした。

 

「ぐっ……!」

「でッ……ィりゃァァ!!」

 

蹴り飛ばされた錦山が崩れた体勢を立て直すのと同時に、真島は立ち上がりながら己の右足に突き刺さったドスを勢いよく引き抜いて見せた。

同時に傷口から流れる赤い血がその勢いを増す。

大怪我なのは誰が見ても明らかだった。

 

「どうだ……?その足じゃご自慢のスピードも出ないだろう……?」

 

錦山の言う通り、真島の右足はもはや使い物にならない。いかに"嶋野の狂犬"と言えどこれだけの怪我はただ事ではないのか彼の表情にはいつもの余裕がなく、額には脂汗が浮かんでいる。

 

「ハァ、ハァ、やってくれるやないか錦山……どうやらワシは、少しお前をナメとったらしい」

「なに……?」

 

すると真島は怪我のある右足を前にし、左足を後ろに置いて腰を落とす。

それはまるで、野生の獣が獲物を仕留める前の動作に近かった。

 

「これで…………キッチリ仕留めたるわ」

 

次の瞬間。

先程まで錦山の数メートル先にいたハズの真島の姿が一瞬にして彼の視界から姿を消した。

直後。

 

「ぐわぁあぁああぁぁっ!!?」

 

錦山の背中に鋭い痛みが走った。

一瞬にして背後に回り込んだ真島が、そのドスを閃かせ彼の背中を切り付けたのだ。

白いジャケットに斜めの一文字が刻まれ、傷口から溢れる血によって生地が赤く染まる。

 

「まだや」

 

どこからともなく真島の声が聞こえた直後、錦山の脇腹に痛みが走る。

目にも止まらぬ速さで移動する真島が、すれ違いざまに刃を走らせたのだ。

 

「ぐっ、クソっ……!」

 

錦山が抵抗する間も無く、今度は太腿が狂犬の牙に傷付けられる。

 

「ぐぁぁっ!?」

「これで終いやァ!!」

 

度重なる斬撃により錦山が体勢を崩した直後、正面に回り込んだ真島がその顔面に飛び膝蹴りを繰り出した。

 

「ぶぐっ!?」

 

仰向けに倒れた錦山に、真島はそのままの勢いでのしかかってマウントポジションを取る。

完全なる形勢逆転だった。

 

「ぐ、ぁ…………ぅ…………」

 

度重なるダメージに加えて、マトモに飛び膝蹴りを受けてしまった事で意識が朦朧とする錦山。

真島はそんな錦山を見下ろしながら、逆手持ちしたドスを振り上げる。

 

「チェックメイトや。雑魚にしてはなかなか楽しめたで?」

「…………」

「言い残す事はあるか?せめてもの情けや、桐生ちゃんにくらいは伝えといたる」

「…………く、っ……」

 

真島の提案に対し錦山が取った行動は、遺言でも命乞いでも無かった。

 

「くた、ばれ……ワン、公…………!!」

 

真っ向から睨み返し、最後まで抵抗の意志を見せる。

それが錦山の選んだ選択であり、彼の矜持そのものだった。

 

「…………そぅか。ほな、死ねや」

 

そして、真島は感情の消えた表情で右手を振り下ろした。

鈍色の刃が今度こそ錦山へと突き刺さり、

 

 

 

真島の眼前で、紅い血の花が咲いた。

 

 

 




見たかボケェ!
これがワシの実力や!!


ただ、錦山も悪ぅなかったわ。流石に親父をぶっ倒しただけの事はあるのぅ。
まぁ、そんな錦山でもワシがちーっとだけ本気になれば、こんなもんや 。

さて、次回からは作品名を変更して"真島が如く"のスタートや!日間ランキング一位も夢やないで!

それじゃ、次回も楽しみにしとってや!
ほな!


※錦が如くはまだまだ続きます
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