錦が如く   作:1UEさん

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最新話です。

蛇華とやり合うには、あの男に頼るしかありませんよね

それではどうぞ!


関東桐生会───"真の若頭"

2005年12月10日。

時刻は19時30分。

俺は今、伊達さんの運転する車の車内にいた。

 

「横浜までだったな?」

「あぁ。最短ルートで頼む」

 

カラーギャングから遥の居場所と拉致した黒幕の正体を聞き出した俺はダメージで動けない海藤の介抱とギャング達の後始末を松金組若頭の羽村に任せ、署に戻っていた伊達さんと合流して横浜に居るであろう桐生の元へと向かっていたのだ。

その道中、俺たちはお互いに分かった情報を交換し合う。

 

「劉家龍……まさかあの蛇華まで絡んでくるとはな……」

「あぁ……」

 

車を運転する伊達さんの表情は渋い。

今まで神室町の中の組織だけを相手にしてきた伊達さんからしてみれば予想外の相手なのだろう。

 

「大丈夫だ、錦山。ペンダントはともかく、連中が遥をどうこうする理由はねぇ筈だ」

「いや、伊達さん。ところがそうもいかねぇんだ」

「なに?」

 

俺を安心させようと言った伊達さんだが、彼の放った言葉は今俺が最も危惧している事だった。

 

「どういう事だ?」

「……蛇華の総帥、劉家龍。アイツと桐生の間には昔から因縁があってな」

 

そこで俺は、かつて桐生がラウから受けた拷問やその経緯について語った。

あの二人の因縁がはじまったのは、もう十二年も前にもなる。

 

「なんだと……そんな事が……」

「以来、堂島組と蛇華との取引は中止。当時の東城会と蛇華との間では互いのシマやシノギにも干渉し合わない冷戦状態が続いていた。だが……その均衡は破られた」

 

それが、関東桐生会の発足。

五年前のクリスマスに起きた惨劇から端を発した東城会のお家騒動。

桐生はそれまで拡げていた神室町の中での勢力やシマを根こそぎ捨て去って、横浜へと拠点を移す事になった。

 

「なるほど……ラウからしてみりゃ、そんな因縁浅からぬ相手が自分らのシマのある横浜に流れて来た事になる訳か。当然、面白くはねぇだろうな」

「あぁ、そしてここからが問題なんだが……関東桐生会は今、蛇華と抗争状態にある」

「なに!?」

 

任侠堂島一家とのイザコザやカラーギャング共のせいで共有が遅れてしまったが、これは俺も今日知ったばかりの情報だ。

 

「桐生に会うための遣いとして車を出してくれた若いのが教えてくれた情報でな。そいつの話じゃ、和平交渉に向かった桐生をその場で殺そうとしやがったらしい」

 

そして、そいつら全員を正当防衛として返り討ちにしてしまった事で両組織の関係は悪化。抗争が決定的なモノになってしまったという訳だ。

 

「連中は焦ってる筈だ。何せ相手は"堂島の龍"……かつては東城会の内外問わず知らねぇ奴は居ない程の知名度と実力を持った伝説の極道なんだからな」

「待てよ錦山。って事は、連中が遥を攫ったのは……!?」

 

どうやら伊達さんの中でも合点が行ったようだ。

そう。おそらく蛇華が遥を狙った目的はペンダントだけではない。

 

「……桐生に対しての人質、と言った所だろうな。あの子を盾にされちゃ、桐生は動く事が出来ねぇ」

「クソッ、なんてこった……!」

 

伊達さんが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

事態は一刻を争う。

もしも何も知らない桐生達が乗り込んだ先で人質を出されたら、無抵抗のまま嬲り殺しにされてしまうだろう。

 

「ならどうする?蛇華のアジトに乗り込むのか?」

「いや、桐生はこの事をおそらくまだ知らない筈だ。なら、関東桐生会の方を先に止める必要がある」

 

事情を話せば桐生は協力してくれるはずだ。

そうなりゃ関東桐生会そのものが俺のバックに付いてくれる。

あれだけの組織力があれば、遥を救い出す上でもきっと役に立つはずだ。

 

「なら、行先は関東桐生会本部だな?」

「あぁ、桐生はそこにいるはずだ」

「分かった!」

 

伊達さんの運転する車は高速道路へと入っていく。

渋滞にさえ捕まらなければ、横浜までは一時間足らずで到着するはずだ。

 

「伊達さんの方はどうだったんだ?何か分かったことはあったか?」

「遥の事や組織については何も掴めなかった。だが、警察内部におかしな動きがある」

「おかしな動き?」

「あぁ、本庁の捜査一課に遥の捜査依頼があったらしい」

「は?捜査一課が?」

 

本庁。つまり警視庁の捜査一課と言えばかつて伊達さんが所属していた東京都の警察官のエリート集団。

主に凶悪犯罪を担当する事が多い刑事の花形だ。

子供の迷子や失踪を取り扱うような部署ではない。

 

「詳しい事までは分からんが、遥は"誘拐の被害者"って事になってる。東城会とは別の組織が動き出したんだろう」

「別の組織……」

 

そう言われて真っ先に思い浮かべるのは、スターダストで遥を人質にペンダントを探していたあの黒服の集団だ。

現在、松金組が秘密裏に監禁して尋問を行っているはずだがそちらから目立った情報は聞き出せていない。

 

「敵が捜査一課に手を回せる程の力を持っているとすれば、相当厄介だな」

「あぁ……噂じゃ東城会にもそういったパイプがあるって話だが、仮にそれが本当だったとしても今の内部抗争でゴタゴタした東城会にはそれだけの事をする余力は無いだろう」

「となれば、考えられる可能性は……」

 

関西最大の極道組織。近江連合。

現役の閣僚や官僚と言った政治家連中。

もしくは、日本警察そのもの。

考えれば考えるほど規模が大きくなる敵の正体に、俺は内心で頭を抱えざるを得なかった。

 

「ん?伊達さん、電話だ」

「あぁ、出ていいぜ」

 

俺はポケットで鳴った電話を取り出して発信者を見る。

記されていた番号は、松金組の若頭である羽村のものだった。

隣に警察官である伊達さんが居ることを意識しつつ、俺は携帯を耳に当てた。

 

「錦山だ」

『松金組の羽村だ。海藤が追い込みかけてた連中について話がある』

 

羽村から切り出されたのは、つい先程こちらでも話題に上がった"東城会とは別の組織"についてだった。

 

「何か分かったのか?」

『……尋問してた連中と見張りの若い衆が殺された』

「なんだと!?」

 

羽村からの想定外の返答に俺は耳を疑った。

 

『詳しい事は俺も知らねぇ。だが、組の者が様子を見に行った時には現場は既に警察と野次馬でごった返してたそうだ』

 

尋問していた謎の組織の連中が殺された。

羽村がわざわざこうして電話をかけてくるという事は十中八九松金組がヤキ入れをやり過ぎたという訳では無いだろう。

もしそうであれば見張りにいたとされる構成員が殺される理由も無い。

となれば、考えられる可能性は一つ。

 

(口封じ……情報を聞き出す前に先手を打たれたって訳か!)

 

このまま追い込みをかけられていれば自白するのは時間の問題。

そう判断した黒幕が、証拠を隠滅したと言う事だろう。

 

『今、ウチの親父が神室署に呼び出されて事情聴取を受けてる。どうやらサツは連中やウチの若いのが殺されてた件とは別に、連中を拉致監禁してた件で追求するつもりらしい』

「どういうこった?どう考えたって殺人の捜査の方が先じゃねぇか」

『俺にも分かんねぇって言ってんだろ?いくらヤクザ相手だからってよ……はっきり言って今のサツの対応は異常だぜ、クソが!』

 

電話越しで悪態を吐く羽村。

確かに、殺人現場の捜査において被害者側でもある松金組を追求するのは異常だ。

その上警察は、拉致監禁の罪を優先して松金の叔父貴に圧力をかけようとしている。

明らかに"黒幕"が裏で手を回しているとしか思えない対応だ。

 

(今回の件、黒幕の究明についても急いだ方が良さそうだな)

 

このままでは東城会が。何より神室町がその黒幕の好きにされてしまう。

それは阻止しなければならないだろう。

 

「分かった。また何か分かったら知らせてくれ」

『……あぁ』

 

電話を切り、静かにポケットに仕舞いこむ。

 

「誰からだ?」

「松金組のモンだった。尋問してた黒服の連中が殺されたらしい」

「なに?」

「おそらく、黒幕が口封じの為に放ったヒットマンに殺られたんだろう。見張りにいた組の若衆も巻き添えだそうだ」

「チッ、好き勝手してくれるぜ全くよ……!」

 

苛立つ伊達さん。

正義感の塊である彼からすれば、今の神室町を渦巻く現状は到底看過出来ないものなのだろう。

 

「急ごう、伊達さん。まずは遥。次にこの事件の黒幕を突き止めてとっちめる」

「あぁ。……どうやら、俺とお前の付き合いはまだまだ続きそうだな」

「ヘッ……頼りにしてるぜ、伊達さん」

 

車は横浜へと向かって進んでいく。

遥を救い出し、事件を解決に導くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は夜の21時。

神奈川県横浜市内某所にある第四倉庫街に、黒いスーツ姿の男達が続々と集まっていた。

港町である横浜市にとっては大して珍しくもないコンテナ街であるそこは、表向きは不動産会社が管理している。

しかし、その実態は横浜の極道組織"関東桐生会"がシノギや裏取引の一環で使用している場所であり、その不動産会社も関東桐生会のフロント企業の一つでしか無いのだ。

そんな第四倉庫街に足を運んでいる男達は皆、善良な一市民達ではない。

"堂島の龍"桐生一馬に憧れてこの世界に足を踏み入れた、関東桐生会のヤクザ達である。

 

「全員、気を付けェ!!」

 

先導役の極道が放った声に従い、ヤクザ達が一斉に姿勢と隊列を正してその場に待機する。

まるで軍隊のように整列した男達の総勢は、300人。

関東桐生会の勢力の半分以上がこの場に集っていた。

 

「会長。若い衆達が揃いました」

 

関東桐生会若頭代行の松重が、準備が整った事を報告する。

 

「そうか……ご苦労」

 

そして、たった今報告を受けたこの男こそ この場に集った関東桐生会構成員達のボス。

桐生一馬である。

 

「ただいまより!関東桐生会決起集会を行う!総員、心して聞け!!」

「「「「「押忍!!!!」」」」」

 

300人全員の一糸乱れぬ統率による返答を聞き、桐生一馬が群衆の先頭に設置された台の上に乗る。

しかと耳を傾ける構成員達を眼下に収めながら、桐生は声を発した。

 

「……関東桐生会初代会長。桐生一馬だ」

 

たったのそれだけで、その場の空気が一気に引き締まる。

あまりの緊張感から生唾を飲み込む構成員もいる中で桐生が最初に口にしたのは、挨拶がてらに贈られた彼らへの感謝の言葉だった。

 

「今日は、俺の呼び掛けにこうして集まってくれた事……感謝している」

 

挨拶もそこそこに、桐生は本題へと移る。

 

「皆も知っての通りだと思うが……先日俺は蛇華の総統である劉家龍と会合を開き、和平交渉に臨んだ。だが、奴らはこちらの要求を跳ね除け、俺を殺そうと襲いかかって来た。どうにか返り討ちにこそしたが……これで、関東桐生会と蛇華との抗争が決定的なものになってしまった」

 

桐生の言葉に耳を傾ける構成員達。

彼らは決して口には出さないが、皆一様にこう考えていた。

 

(((((この人、相変わらずやってる事がヤバい……!)))))

 

単身で関係が悪化している組織の本丸に乗り込んで和平交渉をし、決裂して襲いかかって来たマフィアを全員返り討ちにする。

ここに来るまでに各組織の長から事前に聞かされていた事実だが、彼らは改めてそれを言葉にして聞く事で、その凄まじさを実感していた。

今彼らの前で言葉を発しているのはただの極道ではない。

人の形をした"龍"の化身なのだ。

 

「全ての責任は親である俺にある。こんな事に巻き込んでしまって、本当に申し訳ない」

 

そう言って桐生が静かに頭を下げた。

理由はどうあれ、桐生の行動が原因で抗争状態になってしまったのは事実であるからだ。

 

「だが……それを承知の上で、俺の頼みを聞いて欲しい」

 

顔を上げた桐生は、意を決した表情で若衆達に願いを告げた。

 

「今夜、蛇華との決着をつける。皆……どうか俺に、力を貸してくれ!!」

 

極道にしてはあまりにも純真かつ誠実なその願いに対し、構成員達は息を揃えて返事をした。

 

「「「「「押忍!!!!」」」」」

 

彼らの多くは東城会時代から在籍している極道達だが、関東桐生会として組織を立ち上げてから盃を受けた者達もいる。

彼らに共通する事は、この組織に入って時から既に覚悟は決まっているという事だ。

 

「そうか……ありがとう」

 

桐生は改めて例を告げると、今回の作戦についての詳細を語った。

まず、この場に集った構成員達を二つの部隊に分ける。

一つの部隊を桐生自身が率いて蛇華本部がある中華料亭の翠蓮楼へと乗り込み制圧し、もう一つの部隊が逃げ仰せたマフィア達を捕えるという二段構えだ。

 

「戦争ってのは長引けば長引くほど泥沼化して、カタギの人達に恐怖や不安を与える事になる。だから……この抗争は絶対に今夜中に終わらせる。お前ら、覚悟は良いな?」

「「「「「押忍!!!!」」」」」

 

威勢の良い返事を聞き、桐生が深く息を吸う。

最後に一声、彼らに号令をかけて気合を入れる為だ。

しかし、その号令が放たれる事は無かった。

 

「ちょっと待ったァァァ!!」

 

号令に割り込むように何者かが声を張り上げる。

若衆たちが振り向いた先に居たのは、焦げ茶色のレザージャケットを身に纏った長髪の男。

 

「何者だテメェ!?」

「どうやって入ってきやがった!?」

 

突然現れた謎の人物に警戒心を抱く関東桐生会の極道達。

しかし その男の正体に誰よりも早く気付いたのは、他ならぬ桐生だった。

 

「お前……錦か!?」

「「「「!!?」」」」

 

桐生がその呼び名で呼ぶ人間は、この世でただ一人しかいない。

その事は、若衆達もよく知っていた。

 

「頼む……この抗争……ちょっと、待ってくれ……!!」

 

錦山彰。

元堂島組若衆にして、桐生一馬の兄弟分。

堂島の龍と呼ばれた彼が、この世で最も信頼する男の一人。

 

「「「「「お疲れ様です!!!!」」」」」

 

それを認知した瞬間の若衆達の行動は早かった。

一斉に錦山に頭を下げると人垣を分けるように列を展開し、桐生へと続く道を形成する。

それはさながら海を割ったとされる神話のような光景であった。

 

「ありがとよ、お前ら……!」

 

錦山は一言礼を言うと、出来上がった道を走り抜けて桐生の元へと辿り着いた。

 

「良かった……何とか間に合ったみたいだぜ……」

「錦……お前、無事だったんだな」

 

桐生は錦山が無事である事に酷く安堵していた。

彼にとってはつい数時間ぶりの再会なのだが、二人が別れる直前に錦山は任侠堂島一家と完全に敵対する道を選んでいたのだ。

故に、その後の錦山に対して任侠堂島一家から徹底した追い込みがあった事は想像に難くない。

だが、今の錦山にとってそれは些末な事だった。

 

「そんな事は良い!桐生、俺はお前に伝えなきゃいけない事があってここに来たんだ!」

「なに?」

 

錦山の表情には焦燥の色が浮かんでいる。

そのあまりにも緊迫した態度から、桐生もまた気を引き締める。

 

「落ち着け、何があった?」

「あぁ……ここにいる関東桐生会のみんなも聞いてくれ!!」

 

錦山はそう言うと若衆達へと向き直って声を張り上げる。

それを受け、若衆たちが静かに耳を傾ける。

そんな中 錦山が次に放った言葉によって彼らの中に衝撃が走る。

 

「つい数時間前……俺が保護していた桐生の娘。澤村遥が蛇華に拉致された!!」

「な……なんだと!?」

「「「「「!!!?」」」」」

 

突如として齎された情報に、ここまで統制の取れていた関東桐生会の面々が初めて騒々しくなり始める。

それほどまでに、錦山の発言は衝撃的だった。

 

「錦、一体どういうことだ!?」

「言葉通りの意味だ。蛇華は神室町のカラーギャングを買収して遥を拉致したんだ。アイツらにとってあの子は……桐生。お前の動きを封じる何よりのアキレス腱になるからな」

「ば、馬鹿な……!」

 

あまりの緊急事態に狼狽える桐生。

冷静さに欠ける者が多い中、誰よりも早く冷静さを取り戻した男が錦山に声をかけた。

 

「錦山さん、一つお尋ねしてもよろしいですか?」

「松重……」

 

関東桐生会若頭代行、松重。

今や桐生の右腕となったこの男が、状況を把握する為に質問を投げかける。

 

「遥のお嬢は錦山さんが保護されていた筈。いくら神室町のゴロツキとはいえ、貴方ほどの男がそんな連中に不覚を取るとは思えません。失礼ですが……お嬢が攫われた時、錦山さんは何をされていたんですか?」

 

言い方にこそ気を配っている松重だが、彼は錦山にこう尋ねていた。

"遥が攫われている間、お前は何もしなかったのか?"と。

 

「っ、それは……」

 

言葉を詰まらせる錦山。

理由はどうあれ、遥が敵の手に堕ちてしまったのは事実。

彼は今、己の不甲斐なさを追求されたとしても文句は言えない立場なのだ。

 

「やめろ、松重」

 

しかし、そんな錦山を桐生は庇い立てた。

 

「会長?」

「みんなも聞いてくれ。ここにいる錦は、つい数時間前に東城会にマトにかけられた俺を逃がすために身体を張ってくれたんだ」

 

堂島組長殺害の真犯人である事が明らかになった桐生が任侠堂島一家から狙われた時、錦山は自分が囮になる事で桐生がその場から離れるまでの時間を見事に稼いだのだ。

 

「そのせいで錦は、東城会の連中に狙われる立場になっちまっていた……そんな中じゃ、いくらお前だったとしても遥を護り切れる訳がねぇ」

 

事実、錦山は神室町に戻ってからというもの、任侠堂島一家から総力を上げて命を狙われていた。

遥を余計なトラブルに巻き込まないためにも、錦山が任侠堂島一家との決着を付ける為には単身で挑む必要があったのだ。

今回の一件は、その間隙を突かれたと言っても良いだろう。

 

「そんな事が……錦山さん、御無礼な事を言ってしまい、申し訳ございません」

「いや、良いんだ……俺が遥を護り切れなかったのは事実だからな……」

 

錦山は桐生に向き直ると、真剣な眼差しで桐生を見つめた。

 

「桐生……あの子を護り切れなかった俺が、こんな事言うのは筋違いだと思う。でも……それでも俺ぁ、お前に頼みたい!」

 

そう言って、直角に頭を下げた。

 

「遥を助ける為に、力を貸して欲しい」

「錦……」

「悔しいが、俺一人じゃあの子を護ってやる事が出来ねぇ。だから、頼む!一緒にあの子を救ってくれ!!」

 

己の不甲斐なさに打ちのめされ、傷付けられたプライドをもかなぐり捨てて。錦山は桐生を頼った。

全ては、母親を探す為にたった一人で神室町までやってきた女の子の想いに報いる為に。

そして。

 

「……?」

 

その直後。

錦山の耳朶を打ったのは、割れんばかりの拍手と歓声だった。

錦山の話を聞き、その真摯な態度と漢気に触れた若衆達が、一斉に彼を讃えていたのだ。

 

「こ、これは……」

「見た通りさ、錦」

「桐生?」

 

困惑する錦山に桐生はゆっくりと手を差し出す。

 

「この拍手や歓声が……俺たち、関東桐生会の答えだ」

「桐生……!」

 

錦山はすかさず桐生の手を取り、握手をする。

 

「大変な中 この事を知らせてくれてありがとう、錦。一緒にあの子を……遥を救い出そう」

「あぁ、勿論だ!」

 

今ここに、錦山と桐生の間で正式に協力関係が成立した。

十年越しに手を取り合った二人の姿に、関東桐生会の男たちは更なる歓声を上げた。

中には雄叫びに近い声を出す者や、感化されて涙ぐむ者もいる。

 

「そうだな……よし。聞け、お前ら!!」

 

桐生は再び若衆達の方へと向き直る。

先程まで興奮と熱狂に包まれていたコンテナ街が、一気に静まり返る。

 

「桐生?」

「一つ、この場を借りて皆に宣言させてもらう!」

 

桐生の言葉を待つ若衆達。

困惑する錦山。

会長の思惑を察して頷く松重や幹部陣。

 

「ただ今を以て、錦…………錦山彰を────」

 

そして。

関東桐生会初代会長、桐生一馬は。

 

「関東桐生会の───若頭に指名する!!!!」

「な……なんだとぉぉぉ!!?」

 

これ以上無いほどに満足気な表情で、そう宣言したのだった。

 




と、言うわけで錦山、若頭にされるの巻でした。
次回はいよいよあの男が登場です
お楽しみに

追伸
私事ですが、ついに7を購入しました。
RPGということで不評を買っていた中から、一躍大人気になったイチの冒険譚、体験させてもらいましょう!
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