錦が如く   作:1UEさん

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最新話です。
本当に色んな人に支えられています。
感謝です。


復帰

2005年12月12日。

時刻は17時50分。

神室町天下一通りにあるホストクラブ"スターダスト"のバックヤードに俺は居た。

椅子に座って鏡を見ながら、ヘアメイクを施していく。

 

「それにしても驚きましたよ。まさか錦山さんがいきなり"アキラ"になりたいって言い出すなんて」

 

そう言って話しかけてきたのはこの店のオーナーである一輝だ。

若輩でありながらこの"スターダスト"を神室町No.1の店にまで育て上げたやり手の経営者であり、実力No.1ホストでもある。

 

「あぁ。俺もしばらく世話になることはねぇと思ってたんだが、急遽金が必要になっちまってな。左手の怪我も前よりは良くなったし、手っ取り早く稼ぐにはここしかねぇと思ったからよ」

 

そう言ってヘアメイクを終えた俺は、顔のメイクへと移行した。

先程言った通り、左手の怪我はだいぶ良くなったので黒手袋でも嵌めておけば目立つことは無い。

しかし顔は別だ。

度重なる激闘で生傷の絶えない俺は、ここでキッチリメイクを施して傷跡を消しておく必要がある。

ホストは顔が命。縁が欠けた皿で料理を出す店が無いのと同じで、欠けた部分は補修しなければならないのだ。

 

「そうだったんですね……でしたらおそらく大丈夫ですよ」

「何がだ?」

 

一輝は得意げな笑みを浮かべると、吉報を齎してくれた。

 

「実は今日……アキラさんが出勤するということを鮎美さんに連絡したら、すぐに来てくれるとの事だったんです」

「なに?そりゃ本当か!?」

「はい。これは紛れもないチャンスですよ」

 

鮎美ママと言えば前回俺が接待した銀座最高のNo.1ママだ。

かなり俺の事を気に入ってくれてた様子で、今回も来てくれると言う。

 

(鮎美ママのおかげで前回は200万円を手取りで獲得できた。あの人がいりゃ今回の売上も期待出来そうだな。)

 

桃源郷の会員証を手に入れる為にシンメイから提案された偽造パスポートとの引き換え。

それを作ってくれるニンベン師に支払うクライアント代は、相場の分からない俺にはいくらかかるかなんて分からない。金はあればあるほど良い。

なら、狙うのは当然最高売上だ。

 

「そりゃ、気合い入れねぇとな!よし、後はスーツだ!」

 

メイクを終えた俺は特注のホストスーツに身を包む。

プラムレッドのジャケットとスラックスに、黒のシャツが味を出している逸品だ

 

「よし、これでどうだ」

 

髪型は良し。

顔の傷も完璧にメイクで完璧に隠れ、衣装も完璧に決まっている。

おっさんホスト"アキラ"の完全復帰だ。

 

「流石です錦山さん。相変わらずお似合いだ」

「褒めたって何も出ねぇぞ?」

「そうですか。でも……売上は出してくれると、期待して良いですよね」

「フッ……善処させて貰うよ。一輝オーナー」

 

軽口を叩き合う一輝と俺は、これから始まるであろう鮎美ママとの二回目の接待に向けて気合を入れる。

程なくしてユウヤがバックヤードへと入ってきた。

 

「一輝さん、アキラさん!」

「ユウヤ。どうした?」

「アキラさんにご指名です。」

「お、早速だな!」

「いえ、あの、それが……」

 

歯切れの悪そうにするユウヤに違和感を覚え、俺はバックヤードから出るのを思い留まった。

 

「アキラさんにご指名なんですけど……鮎美ママじゃなくて」

「は?どういうこった?」

「そのお客さんは……"レイナ"って言えば分かるからって言ってたんですが……」

 

瞬間。

俺の脳裏を一人の女の顔が過った。

当たり前だ。その名前には聞き覚えしかない。

ましてや"俺の事を知ってるレイナ"なんて、一人しかいないのだから。

 

「ま、まさか……」

「アキラさん、それってもしかして……」

 

一輝は察しが着いたのか非常に気まずそうな顔をしている。

何せ俺を指定したその女は、俺の身内に他ならないのだから。

 

(なんてこった、タイミングが悪すぎる……!)

 

どういう意図を持って彼女がこの店に来たかは分からないが、俺は彼女の"本心"を知っている。

俺はそれに対する返事を先送りにしている状態なのだ。

仕事とは言えこんな所で他の女とやり取りしているのを、よく思うはずが無い。

 

(だが指名が入っちまってる以上、行かない訳にはいかねぇ……鮎美ママが来るまでの間にどうにか収めねぇと!)

 

麗奈は俺が今置かれている状況は全て承知してくれている。それに彼女は聡くて思慮深い。事情を説明すれば分かってくれる筈だ。

 

「錦山さん、どうしますか?」

「仕方ねぇ、俺はその卓に着くよ。なに、相手は俺の馴染みだ。どうにかしてみせる」

 

腹を決めて俺はバックヤードから店の外へ。

ボーイの指示に従って席へと向かうと、そこには思った通りの人物がいた。

 

「わっ、凄い!錦山くん、ホントにホストなのね!」

「……い、いらっしゃいませ……麗奈」

 

セレナのママ、麗奈。

贈り物のジャケットを託されて以来の再会が、まさかこんな形になるとは夢にも思わなかった。

 

「ほら、座って座って」

「……失礼します」

 

どこか上機嫌にさえ見える麗奈の声に従い、隣に座る。

色々と聞きたい事はあるが、まずはこれを改めないと行けないだろう。

 

「……麗奈。どうしてここに?」

 

麗奈の目的を単刀直入に聞く。

俺はここに資金調達に来たのであって、遊びでやってるわけでは無い。

彼女に限って万に一つも有り得ないとは思うが、冷やかしや興味本位だけでここに訪れたのであればそれは頂けない。

一から説明して分かってもらう必要があるだろう。

 

「分かってるよ、錦山くん。お金がいるんでしょ?」

 

しかし、直後に俺は麗奈の思惑に対してそんな邪な考えを抱いていた事を後悔する事になる。

 

「……なんで、それを?」

「少し前に、一輝くんから聞いたの。急なお金が必要になった錦山くんに、スターダストで働いて貰ったって。それで、表の写真に錦山くんが映ってるのを見て思ったの。今の錦山くんにはお金が必要だって」

 

麗奈はスターダストの表に掲載された出勤しているホストの写真から、俺が金を必要としている事を察してわざわざ指名してくれていたのだ。

 

「直接お金を渡そうとしたって貴方は受け取らない。でも、お客さんとして接客して貰えば、私が入れたボトル代の何割かは貴方の手に渡る。この店も潤うし貴方も助かる。そして……ホストとしての錦山くんも体験出来る。いい事ずくめじゃない!」

「麗奈……!」

 

麗奈なりの気遣いとちょっとした欲求。

筋の通った彼女の理由に俺は何も言う事が出来なかった。

しかし。

 

(クソっ、どうすりゃいい……!?)

 

その根底にあるのが善意と好意によるものであるからこそ、俺は内心で頭を抱えた。

俺の為にここまでしてくれた麗奈を、酷く傷つける結果になりかねないからだ。

 

(こんなの……"他の女に貢いで貰うアテがあるから大丈夫"……なんて言える訳ねぇじゃねぇか!!)

 

万に一つも無いと思ったが、むしろ冷やかしであった方がマシだったとさえ思えてしまう。

こんなにも真っ直ぐな麗奈の気持ちを踏みにじる事など出来ない。

 

「麗奈……あのな……?」

「あ、もしかしてお金の心配してる?錦山くん忘れてるかもしれないけど、私の店 一応高級クラブ店なのよ?ホストクラブで遊ぶお金くらいどうって事ないわ」

「いや、そうじゃなくてよ……?」

 

何とか事情を説明しようと俺が口を開いた、その直後だった。

 

「ご予約のお客様、ご来店です!」

「っ!」

 

ボーイの声が聞こえ、反射的に入口に目を向ける。

そこには、大勢のホストとボーイに出迎えられた一人の女性。

深紅のドレスにブロンドの髪を靡かせた彼女は、華が咲くような笑顔を浮かべながらこちらへと近づき────

 

 

 

「あ、アキラさん!一輝くんから連絡受けて早速来ちゃい……ま……………………」

「ん?…………………………」

「───────────────!!!!」

 

 

麗奈と、カチ合ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は18時。

錦山がスターダストでの営業を開始したのとほぼ時を同じくして。

神奈川県警横浜警察署にて、一人の男が事情聴取を受けていた。

 

「ったく、強情だなアンタ。いつまでそうやって強がるつもりだ?」

 

男の名は、桐生一馬。

ここ数年で横浜に根を張った極道組織"関東桐生会"の会長。

かつて東城会に所属していた頃は"堂島の龍"として恐れられていた伝説の極道である。

彼は昨日に第四倉庫街で起きた真島組との騒動の一件で神奈川県警からの任意同行要請を受け、事情聴取を受けていた。

 

「……………………」

 

だが、逮捕でないにも関わらず桐生の手には手錠がかけられている。

現役暴力団組長を警察署に呼び出す以上 警戒するのは当然と言えるが、ただの事情聴取と言う話を受けてこの場所へ来た途端にこの扱いを受けるのは、いくら極道者とは言えあまりに不当と言えるだろう。

 

「暴行、傷害、凶器準備集合罪……もし本当なら懲役は免れないぞ」

「…………」

 

桐生にかけられた容疑を羅列していく担当刑事。

彼の仕事は、これらの容疑を桐生に認めさせる事だった。

しかし、桐生はこの警察の不当な扱いに思う所がある為か一向に口を割らずに黙秘を続けている。

 

「……何とか言ったらどうなんだ!?」

 

何を聞いても答えようとしない桐生に激した担当刑事が、机を叩いて恫喝する。

彼はまだ若く、激しやすい部分があったのかプレッシャーを与えて自供を促そうとする。

 

「……………………」

 

桐生は、そんな担当刑事の目を真っ直ぐ射抜くように睨み付けた。

"お前では話にならない"。

そう言外に告げている桐生の態度に対し、担当刑事は怒りを募らせる。

 

「貴様……!」

「待ちたまえ、井上くん」

 

己の名前を呼ばれた担当刑事──井上は、すかさず背後を振り返る。

そこに居たのは井上の上司にあたる男で、この横浜警察署で第四課の課長を務めている人物でもある。

 

「やっと来たか……待ってたぜ、課長さん」

「相変わらずだな……桐生くん」

 

待ち侘びたと言わんばかりに口を開く桐生に対し、課長は嘆息しつつも会話を続ける。

そのやり取りは一見すると気心の知れた知人同士に見えるが、互いに腹の探り合いをするかのような妙な緊張感を漂わせていた。

 

「この若いのをしつけたのはアンタか?バカ正直に怒鳴り散らすだけで、世間話もする気になれなかったぜ。もっとも……ただの事情聴取と言って連れて来るなり いきなり手錠を嵌めてくるような奴らに話す事なんぞ、何も無いがな」

「貴様……!」

 

目くじらを立てて前に出ようとする井上刑事を手で制し、課長はどこか平坦な声で続けた。

 

「彼に不手際があった事は認めよう。ただ……クズ共を唆して仁義だ任侠だのと掲げさせて我が物顔で街を練り歩かせてるのよりは、遥かにマシだがね」

「……とても警察関係者が口にするような言葉じゃねぇな」

 

桐生の意見など何処吹く風と言わんばかりに、課長は糸のように細い目元をさらに細くして淡々と言葉を紡いでいく。

 

「事実さ。実際、今回の件もキミが自分の所のクズ共を倉庫街に集めたのが原因だ。それを嗅ぎつけた神室町のヤクザが襲いかかって来た事で事件になった……違うかね?」

 

桐生は決して口に出すことはしないが、課長の言っている事は限りなく真実に近かった。

横浜中華街にある蛇華の本部へと攻め入るための決起集会。

しかしそこへ、嶋野の狂犬が乱入した事で両組織は一気に暴徒化。

桐生と真島の放つ殺気に当てられて戦意喪失した構成員も多かったが、怪我人なども多数出る大騒ぎとなった。

そんな事になれば近隣住民から通報されるのは当然の事と言える。

 

「ただでさえこっちは"蛇華"や"異人三"のクズ連中とやり合うので手一杯なんだ。これ以上新しいクズ共の面倒なんぞ見てられないのだよ」

「…………」

「分かったら大人しく罪を認めなさい。なに心配は要らない。君が面倒見てたクズ共もすぐにブタ箱に送ってやる。寂しい想いはさせんよ」

 

あまりにも高慢かつ見下したような物言いに対し、桐生苦言を呈する。

 

「……さっきから黙って聞いてりゃ、随分な言い草だな。」

「なに?」

「何度も何度もクズとばかり……他の言葉を知らねぇのか?」

「クズにクズと言って何が悪い。貴様らヤクザが一般人を脅して泡銭をせしめてた時代はもう終わってるんだ。貴様らには既に人権など無い。少しは身の程を弁えたらどうだ?」

「…………そうか」

 

課長の相も変わらずな物言いを神奈川県警側の総意と捉えた桐生は、静かに反撃の狼煙を上げた。

 

「流石……酒の勢いで女に乱暴する四課長は言う事が違うな」

「……なんだと?」

 

眉一つ動かさず平坦な声で話していた課長の声音に、僅かな戸惑いが見え隠れする。

桐生はその反応が図星であることを確信し、続けた。

 

「ひと月前だったか。11月18日。アンタは居酒屋で部下たちと飲んだ後、街で強引に女を引っ掛けてホテルに連れ込み、そいつらと一緒になって女に乱暴してたらしいじゃねぇか」

「…………」

「もっとも、その女もその女で援助交際で男から金を巻き上げてるような奴だったらしいが……だからって寄って集ってってのは頂けねぇな」

「何の話だ?」

「とぼけるのは勝手だが、既に裏は取れている。無駄な抵抗って奴だ」

「貴様、この後に及んでふざけた事を言うな!!」

 

激した井上刑事が桐生の胸ぐらを掴み上げた。

それ以上の勝手な発言は許さないと、桐生に対して牽制を行う。

 

「随分な焦りようだな、刑事さん。何か後ろめたい事でもあるのか?」

「黙れ!事実確認も出来ないような与太話で警察を侮辱しやがって!今すぐブタ箱にぶち込んでやる!!」

「そうか……だが、その時はアンタも一緒だな?井上刑事」

「なんだと!?」

 

桐生は決して力づくで抵抗をせず、あくまでも胸ぐらを掴まれたまま話を続ける。

 

「その集団強姦には……アンタも関わってるからだよ」

「……!」

「さっきも言ったがネタはあがってる。なんならアンタらがどれだけの人数で、どんな事をしたのかまで言えるぜ…………ここで、全部ブチ撒けてやろうか?」

 

桐生は強気な態度を決して崩さない。

確証がある事を話す以上、根底がブレる事は無いのだ。

 

「お前らの集団強姦は今回だけの事じゃねぇ。先々月もその前の月も、そういったスネに傷のある女達が、お前らに弱みを握られて無理矢理手篭めにされたってウチの組の連中に泣きついて来てんだ。現場になったホテルの従業員からの証言も監視カメラ映像の証拠も握ってる。言い逃れは出来ないぜ」

「き、貴様……!」

「弱い立場の人間を良いように弄び、薄汚い欲望をぶつけて愉しむ…………本当のクズはどっちだろうな?」

「っ……!」

 

殺気も出さなければ威嚇もしない。

ただただ冷淡な目で井上刑事を見つめる桐生。

その無機質な視線に堪えられなくなったのか、いつしか刑事の手は桐生の胸ぐらから離れていた。

 

「俺に罪を認めさせて逮捕するのは勝手だが、そうなった時は今の情報がウチの組からリークされる。そうなればお前らの人生も終わりだ。」

「くっ……!」

「…………」

「それでも、自分の立場や今後の人生を引き換えにしてでも俺を捕まえようって覚悟があるんなら……やってみろ」

 

桐生の最後の言葉の迫力に押された井上刑事が思わず後ずさり、課長が表情だけは崩さないままに声を発した。

 

「……正直意外だったよ、桐生くん。てっきり君は暴れるだけが取り柄のお山の大将だと思ってたんだがね。どうやら私は、君を侮っていたようだ」

 

課長のその返答は、桐生の語った事実への回答そのものと言って良いだろう。

桐生に罪を認めさせるはずが、彼らは逆に自分達の非道な行いを肯定させられたのだ。

 

「ふん、お前らみたいな腐った連中に褒められた所で何も嬉しくねぇな」

「だが、それを理由に君を釈放するなんて事が認められるはずも無い。我々も組織で動いているからな。となれば、リスクを負ってでも君を検挙する以外に道は無いのだが」

「そうか……だが、それには及ばないぜ」

「なに?」

「課長さんの所には、まだ何も来てないか?」

 

桐生の意味深な発言の後、課長のポケットにあった携帯電話が着信音を響かせる。

すぐに電話へと出る課長。

 

「はい、私です。…………え、なんですって?」

「?」

「……」

「……はい……はい…………かしこまりました。失礼します」

 

静かに電話を切った課長が眉間に皺を寄せる。

その反応を見た桐生は、その電話が誰からのものでどんな内容であったまでを全て把握した。

 

「桐生くん……事情聴取は終わりだ。お帰り頂こう」

「な、なんですって!?」

 

驚愕の声を上げる井上刑事。

 

「署長の指示だ。致し方あるまい」

「フッ、そうか。なら俺は行くぜ」

 

桐生はそう言って静かに立ちあがると、手錠をかけられた両手を前に差し出す。

手錠の鍵を外して貰う為だ。

 

「署長が、一体どうして……?」

「さぁな。よく分からんが……"後ろめたい事が"あるのは、お前らだけじゃないんじゃないのか?」

「ま、まさか貴様……!?」

 

強請り、脅迫。

その言葉が井上刑事の脳裏を過ぎった。

横浜の裏の世界の住人である桐生の耳には、彼らのシマとされているエリアのあらゆる情報が入ってくる。

自分達の例があるように、署長も何かしらの弱みを握られ脅しをかけられた可能性があるのは想像に難くない。

 

「アンタらが俺達をクズ呼ばわりするのは勝手だが……自分の立場に胡座をかいて好き放題しているお前達に、見下される筋合いはねぇ」

「…………」

「さっき、俺達に人権は無いとか言ってたが……そう言うお前らこそ"身の程を弁えた方が"良いんじゃないのか?」

「────いい気になるなよ。ヤクザ風情が」

 

ここに来てずっと表情を動かさなかった課長の糸目が見開かれ、凄まじい形相で桐生を睨みつける。

 

「貴様はいずれ必ずブタ箱にぶち込んでやる。その時を楽しみにしておくんだな」

「そうか……ならその時までに、せいぜい真人間になっててくれ。どうせ捕まるなら、俺も真っ当な刑事に手錠をかけられたいんでな」

「……チッ」

 

忌々しげに舌打ちをし、ついに課長は桐生の手錠の鍵を外した。

 

「じゃあな、課長さん。刑事さん」

 

晴れて自由の身を勝ち取った桐生は悠々と取り調べ室を出ていく。

課長と井上刑事は、苦虫を噛み潰したような顔でそんな桐生を見送る事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────そして。

 

桐生の耳に、田中シンジの訃報が届いたのはこの僅か五分後の事だった。

 

 




如何でしたか?

今後も錦が如くをよろしくお願いします!
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