人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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 いよいよ魔人族の基地に殴り込みます。そして、意外なキャラが活躍します。


魔ノ山―Movement-3―白霞ノ贖罪

「全く揃いも揃って……」

 

 ハジメは存在を思い出した護衛隊達を回収して溜息を吐いていた。護衛隊達は襲撃してきたヨルハ部隊に対して、殆ど有効な手を打てなかったのである。勿論、ハジメが『死神ノ手』で一掃してしまったのも原因の一端だが、そこまで待ってやる義理も無い。

 

「これでは武器を持たせたところで……」

 

 大前提として、使用者があまりにもボンクラすぎる。幾ら武器の性能が良くとも、限界という物が有るのだ。そして、彼等はハジメ達を疎んでいながらハジメ達が起こす奇蹟に期待してすらいる。

 八方ふさがり、為す術がないというのはこういう事を言うのだろう。

 

 ハジメは自分のことを無気力な人間だと思っていた。不治の病に侵され、香織を拒絶し、自暴自棄になって世界へと怨みを、そして上から目線の救済欲を募らせたテロリスト。あの時の自分は生きる屍も当然だったとハジメは思っていた。

 

 狂ってんだ 間違ってんだ 全部消えてしまえ

 

 当時は本気でそう思っていた。そのために仲間を集め、実行に移そうとしていた。生きる事を放棄した死霊のような存在がハジメだったわけである。香織がいなければ、ハジメとてヨルハ部隊と同じようになっていただろう。

 

 しかし、護衛隊は死霊の軍団にすらなれない。生きる屍ですらない。それはゴミ捨て場に捨てられた人形のような容態であった。

 

「もう結構。我々は死霊の討伐に向かいます。我々は〝強い〟ので」

 

 ハジメは皮肉を言って、護衛隊の男性陣を置いて外へ出る。すると、今度は奈々と妙子がハジメ達に話しかけてきた。

 

「何か?」

「私達も、一緒に連れて行って欲しい!」

「せめて、愛ちゃんだけは助けないと……!」

 

 二人の少女は必死にハジメ達に頼み込んで来る。さて、とハジメは考え込んだ。まだ愛子を助けようとするだけこの二人には見所がある。しかし、問題が皆無というわけではない。奈々も妙子も、正直弱いのだ。このままついて来させても死んでしまう。

 

 はてさてどんな装備と戦略を与えようかとハジメが思案していると、断られると思ったのか不安な表情を見せる。もう一人、ハジメに頼む者がいた。

 

「ハジメ、お願いできないかしら。親友だから贔屓にしてると思われても仕方が無いけれど、この二人はまだ腐ってない。だから、お願い」

 

 それは優花だった。奈々と妙子に九龍という転職先を紹介した優花だが、二人の愛子に恩返ししたいという気持ちを聞いて、叶えてあげたいと思ったのだ。それに、形式上とはいえ、優花も愛子を護衛していた立場である。義理くらいは通そうというのが彼女の考えであった。

 なお、清水は自分の意志で離反したのだが、ハジメを手伝う目的で参加している。本人曰く、少しでも戦果を上げて集団内での立場を確立したいとのことだが。まあ、本心を突っ込むのは野暮であろう。

 

「断ろうと思ったわけではありませんよ。ただ、どのような装備や戦術を与えようか思案していまして……」

 

 その言葉を聞いて、三人はホッとしたように息をついた。そして、尚も思案しているハジメに、奈々と妙子は頭を下げた。

 

「「たくさん迷惑かけてごめんなさい!」」

「!?」

 

 ハジメは少し驚いた。まさかここで謝罪されるとは思わなかったのである。ハジメとしては迷惑をかけられたという認識は無く、ただひたすらに愛子と男性陣が鬱陶しいという認識だったのである。この二人は優花と和解してからは大人しかったわけであるし。

 

「まあ、謝罪は受け取っておきましょう……元々、大して怒ってはいないのですがね……」

「え……」

「いえ、菅原さんの方の装備は案外直ぐ思いつくのですが、宮崎さんの方がね……《氷術師》……魔法を強化するのも手ですが……」

 

 やがて、ハジメは深刻な顔で奈々を見る。その表情に不安さを隠せない彼女に、ハジメは告げる。

 

「貴方の天職を、著しく強化する術があります。しかし、それはとても危険な方法です。宮崎さん、貴女は命を賭ける覚悟がありますか?」

 

 選択は貴方次第だ。

 

 ハジメは言外にそう言って、彼女の返事を待つ。そして、そのアーティファクトの詳細を聞いた時、奈々は悪魔の手を取った。

 

 

 

 

 

 その後、ハジメ達は手分けして魔人族の根城、山の中に作られた工場に突入した。その中ではヨルハ部隊の装備や兵器の製作、機械生命体の利用などが行われている。当然、ヨルハ部隊も駐屯している。正に山の中に作られているという言葉が相応しく、鉄の渡り廊下やパイプなどが山の斜面に沿うように配置されている。見ようによっては廃墟のようにも思えるが、しっかりと生きていることは香織が音を聞けば一目瞭然であった。

 

 その工場の入り口の一つに、ハジメと奈々、優花と妙子が立っていた。事前に香織が音響測定を(おこな)ったところ、この入り口付近に愛子がいる可能性が高いとのこと。

 

「まさか、南雲っちがついてきてくれるなんて思わなかった……」

「それくらい危険という事ですよ。製作者が間近で見て調整しなければならないほどに」

 

 ハジメの横で恥ずかしそうに振舞う奈々。しかし、これはハジメに対してなにか思慕の念を持っているわけではなく、彼女が纏っている衣装が原因だろう。彼女の衣装は純白で、着物と鎧を組み合わせたような外見だ。しかし、鎧要素はあまりなく、殆ど着物であり、戦闘用でもあるためか袂は無く、脚の部分には動きやすいようにスリットが入っている。更に、白い足甲と手袋を付ければ完成。

 

 これはハジメが作ったアーティファクトであり、名を〝白ノ矜持〟と言う。

 

「ハジメって変態よね」

「なんですか。藪から棒に」

「別にぃ? しれっと女の子の服をデザインできるあたり、相当色んなものを見てきたんだろうなって思っただけよ」

「母が漫画家なもので」

 

 そんな会話を優花とハジメが繰り広げている真横で、奈々は赤面する。〝白ノ矜持〟は極端にエロスを誇示するデザインではないが、着物自体、現代では着る機会が少ない。それも多少アレンジが加えられたものとなれば、どことなくコスプレ感がある。

 

 だが、そんな会話もそこそこに、目の前に敵が現れる。黒い機械の鎧を身に纏ったヨルハ部隊。奈々と妙子の足が震えるが、逃げ出したりはしなかった。

 

「優花と菅原さんは先に。先生の救出を最優先にするべきでしょう」

「ハジメと奈々は?」

「彼らを倒してから、いえ、殺してから行きましょう」

 

 ハジメは敢えて『殺す』と言った。奈々はこれから救出に向かう中での最大の障害を改めて意識する。ハジメはこの程度の雑兵であれば全て片付けてしまおうかとも思ったのだが、奈々はやる気を見せていた。

 

 闘いを怖がる彼女に人殺しをさせることに思う所が無いわけではないが、奈々の覚悟を無視するのも違うと、ハジメは静観の姿勢に入った。優花と妙子が奥に進むのを見届け、奈々が〝白ノ矜持〟を起動する。

 

 踏み出した奈々の足元が凍てつき、手に氷の剣が生成される。長さは三尺七寸、この上なく軽い。ヨルハ部隊が奈々に斬りかかるが、しかし、奈々が軽い剣を振ると眼前の空気が凍てつき、氷の斬撃となってヨルハ部隊を斬り伏せた。

 

 更に奈々は剣を振ると、ヨルハ部隊の足元から氷が突き出すように凍り付き、それを斬る事によってヨルハ部隊が倒れてゆく。更に剣で頭上に円を描き、空中に氷柱を出現させるとそれを飛ばし、残りの兵を貫く。

 

 どの冷気も以前よりも研ぎ澄まされ、威力も上昇しているが、それと同時に奈々はこうも感じていた。

 

(寒い……痛い……!)

 

 奈々の息は白く、身体は震えている。闘いの恐怖もそうだが、今回はもっと直接的な理由である。〝白ノ矜持〟は触れた物の温度を零度以下まで低下させるアーティファクトだ。空気を凍結させる事で氷の剣や氷柱を作ったり、氷の斬撃を飛ばしたりと多彩な攻撃が可能である。威力も申し分ないのだが、強力な分デメリットもある。

 

 それは、温度低下の対象は使用者自身にも及ぶという事である。仮に奈々が機械であれば踏み倒せるかもしれないが、生憎と彼女は人間である。一応、生成魔法で回復効果も付けてはいるのだが、冷気によるダメージを踏み倒せるほどではない。現に、奈々の身体は一部に凍傷が出来ており、更にその一部は皮膚が裂けている。

 

 奈々が二本の剣を振って周囲に冷気を飛ばす。その光景は拡がる白霞の如し。黒い鎧の夜は部隊を飲み込み、体組織を凍結し、氷の刃が敵を砕く。それによってこの場のヨルハ部隊が全滅すると、思わず倒れ込む。ハジメが彼女を支えるが、彼女の息は驚くほどに白く、そして……

 

「ううっ」

 

 人を殺してしまったという事実が、奈々に吐き気を覚えさせる。しかし、その吐き気が自分に体温を戻してくれるような気がして安心するという奇妙な感覚を奈々は味わった。奈々はハジメに支えられながらも自分の身体を抱きしめる。

 

「痛っ」

 

 その際に、指にあかぎれが入ったのだろう。鋭い痛みが走る。だが、〝白ノ矜持〟の回復効果でその傷が塞がってゆく。凍傷も直ってゆくが、機械であるはずのハジメの体温が暖かく感じて、奈々は離れたくなかった。

 

「ごめ……んね……こんな、醜態をさらすはずじゃ……無かったんだけど……」

「いえ、〝白ノ矜持〟は僕が作ったアーティファクトの中でも扱いが難しい。半歩の過ちで身体が壊れてしまう。何より、使うたびに痛みが走るなど、本来ならば失敗作の烙印を押すべきものです」

 

 本当ならば奈々の天職を鍛え、魔法や技の使い方を教え込むべきである。しかし、今回は時間が無い。その譲歩案として作られたのが〝白ノ矜持〟。痛みや凍傷を伴う代わりに、強大な氷の力を操るアーティファクト。

 

「それに、人殺しのショックは思った以上に大きいものです。大丈夫、今はゆっくり行きましょう。傷が癒えるまでの時間はある」

「うん……(南雲っち……意外と優しい……)」

 

 奈々はハジメに対して冷酷で怖い印象を抱いていたが、今回のように優しい一面もあるのだと知った。それに、ハジメが存外美しいというやや場違いな感想も抱いてしまったが。

 

 そして、息が白くなくなったころ、奈々は行動を再開した。

 




 いかがでしたでしょうか。ここにきて奈々の強化です。デメリットがありながらも即席で力を底上げするアーティファクトです。


 備忘録

 >タイトル

 BLEACHに登場する袖白雪の卍解『白霞罸』、NieR: Automataの『イニシエノウタ—贖罪』より。

 >白ノ矜持

 NieR: Automataより参戦。本家では槍だったが、今作では服(鎧?)である。触れた物の温度を零度以下にまで低下させる事が出来る。が、使用者の温度も下がる。元ネタはタイトルと同じくBLEACHの袖白雪。ただ、モーションに関してはパニグレの曲を参考にしている。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
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