人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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 奈々を書いたので、次は妙子です。


魔ノ山―Movement-4―文弱ナ学者

「僕は文弱な一介の学者に過ぎないわけでして」

「ちょっと待って?」

 

 愛子救出前に作戦会議をするハジメと妙子。早速ツッコミどころ満載の発言がハジメから飛び出した。文弱な学者は銃を撃たないし、天候を操作して敵を殲滅したりしない。だが、ハジメはそれを無視して話を進める。

 

「前衛も中衛も後衛もそれなりにいるのですが……」

「やっぱり、私じゃ役に立たない……?」

「最後まで聞きなさいな。全てのポジションが揃っているという事は、どのような天職であれ、ある程度対応する装備は作っているという事です」

 

 ハジメはそう言って二本の鎖を妙子に渡した。それぞれ手首に嵌める用の枷のようなものがついており、それを見た妙子は少し訝し気な表情を作る。相手に使う趣味はあるが、自分が嵌める趣味は無い……と、口にしなかったのは賢明な判断だろう。

 

「あのー、私、そういう趣味はないかなって……頼んでおいて烏滸がましいって思われるかもだけど……どうしても身体は差し出せないというか……」

「ナニを想像したのかは聞かないでおきますね……僕は単に貴女の天職で操れる紐状のものを用意しただけです」

 

 ハジメのやや呆れた表情を見て妙子は赤面した。ハジメは単に妙子の天職が鞭を操る〝操鞭師〟であり、紐状のものを自在に操ることに関して天性の才能を有するという情報を優花経由で聞いたために、殺傷性、耐久性の高い紐状の武器を用意しただけである。鎖の先端には返しのついた刃が取り付けられており、完全に武器としての使用を前提としている事は見れば分かったりする。

 

 ハジメからそんな視線を受け取った妙子は涙目になった。女性から見てもかなりの美人であるハジメからそんな視線を貰うのは中々にダメージが入る。

 

「……因みに、その鎖の名前は〝黒ノ慟哭〟です。今考えました」

「明らかに悪意が混ざってるよね!? お願い! 改名して! 謝るからあ!」

 

 結局、改名はされないまま突入する事になってしまった。なお、一連の流れを見ていた優花は妙子のサディスティックな性格を知っている故か、特に口を挟んだりしないのだった。

 

 

 

 

 

 そんなコントのようなやり取りを経て入手した〝黒ノ慟哭〟は戦場では中々の活躍をしてくれる。〝操鞭師〟の力を以て振るわれる鎖はヨルハ部隊の纏う装甲を容易く破壊し、先端の刃は人体を貫き、返しで完全に絶命させる。

 

 更に、その刃を壁に突き刺して上方に逃げ、もう片方の鎖で敵を討つ。落下時を狙おうとするヨルハ部隊だが、透明な糸に乗った妙子は落ちることなく留まり続け、攻撃を続ける。

 

「凄いわね。本当に初めて?」

 

 ナイフと戦輪を掻い潜り、近接戦を仕掛けてきたヨルハ部隊の隊員の鋼刀を触れた物を斥力で弾き飛ばす魔法〝遊麟〟でへし折り、更に同じ魔法で人体を直接破壊しながら優花は妙子に聞く。

 

 すると、妙子は首を横に振った。

 

「優花と清水がいなくなった後……ううん、私達が追い出しちゃった後に、私と奈々も護衛隊として戦ってたの」

「おい男共」

「森で糸を張り巡らせて、盗賊達を一網打尽にしたこともあった。そうするしかなかったから。でも、今でも吐きそうになる! 優花達は、いつもこんなことをしてたんだね……」

 

 妙子の目には涙が溜まっていた。親友の苦悩を理解できなかった後悔か、それとも吐き気を必死で堪えているのか。いずれにせよ、優花は妙子を抱きしめた。優花に関しては追い出されたというより自分で出て行ったが正しいので、その罪悪感もある。

 

 なお、魔物の侵攻時の避難所でもこっそり奈々と妙子が糸と氷の罠を張り巡らせていたため、外部からの被害は軽微なものであった。内輪揉めだけはどうにもできなかったようだが……

 

 しかし、そんな瞬間も長くは続かず、新たな敵が現れる。今度は大剣を持ったヨルハ部隊が二人と、二足歩行の搭乗型兵器が一体。二人の方は明らかに装備の規格が違い、精鋭と分かるし、兵器の方は三メートルはありそうな高さが優花と妙子を見下ろしている。

 

「ひっ!?」

 

 精鋭ヨルハ部隊――名を〝ラストゼーレ〟という――は肉体改造を施された兵士で、ステータスは神の使徒に匹敵する。だが、その闘い方は周到で、〝グラヴ・ファレンセン〟という装置を使って妙子を重力フィールドに閉じ込める。

 

「脇が甘いわね」

 

 優花が妙子の頭上の装置をナイフで破壊すると、妙子の身体は自由が効くようになった。妙子は礼を言うと、優花は手を振って応えた。

 

「顔を見せたらどう? 色男さん達」

 

 フルフェイスの装備で顔の見えない敵を優花は揶揄う。相手が無言でいると、優花はさらに畳みかける。

 

「それとも血液の代わりに墨汁が血管を流れてるからそんな素顔になったの?」

(なんで煽るの!?)

 

 煽る優花に妙子は気が気ではなく、案の定、敵は無言で斬りかかって来た。優花は難なく回避すると、お返しとばかりに戦輪〝イエスタデイ〟をぶつける。しかし、流石は強化人間と言ったところか、一撃では倒れず、サブウェポンの拳銃で銃撃を返す。

 

「残念」

 

 しかし、その銃弾は優花によってキャッチされ、一発も当たらなかった。更に歩行兵器から放たれたミサイルが優花を狙うが、優花が『投げた』銃弾で破壊される。更に、歩行兵器から地面に電流が流される。ラストゼーレはダメージを受けている様子が無く、何かしらの耐電措置を施されているようだ。

 

 見れば妙子も鎖を回転させるように振り回してもう一人のラストゼーレに対処しており、最後は糸に乗って電流から退避していた。とりあえず、一人は任せておいて大丈夫そうだと優花はもう一人と歩行兵器の方に集中する。

 

 すると何やらラストゼーレはビーコンのようなものを優花の近くに出し、そこにミサイルとレーザー、そして収束した電流が襲い掛かる。

 

「ふーん……」

 

 しかし、織り込み済みとでも言うように優花は予備動作を見て電流を跳んで躱し、ナイフでミサイルを撃ち落とし、〝蛇喰〟でレーザーを吸収して攻撃力を底上げしたイエスタデイで歩行兵器を討つ。

 

 背後のラストゼーレが再び〝グラヴ・ファレンセン〟を展開するも、優花に効いている様子は無い。

 

「はあ、妙子にあんなこと言っといて、結局当たっちゃった……でも残念。重力なら少しは操れるわ」

 

 優花は〝重力魔法〟で効果に抵抗しながらナイフでラストゼーレを貫く。戦闘不能に陥った強化人間は倒れ、歩行兵器は爆発して機能を停止した。

 

「ねえ、トドメは必要?」

 

 しかし、優花がナイフで貫いた兵士はまだ息があった。そして、喋れなくなる前に優花は聞いたが、その返事は肯定だった。

 

「ありがとう、闘ってくれて……出来れば、他の仲間も解き放ってやってくれ……この、地獄から……」

「そういうことはハジメに言って……でも、トドメは刺してあげる」

 

 戦輪〝イエスタデイ〟がギロチンのように落とされ、兵士の首を刎ねた。優花はハジメほどこの兵士達の狂気を理解は出来なかったが、死によってしか救われないのであろうことは見れば分かる。

 

「どいつもこいつも……」

 

 優花は溜息を吐きたい気分だった。

 

「やあ、調子はどうですか?」

 

 そして、ハジメと奈々が優花達に追いつく。妙に陽気なハジメに、優花はとうとう溜息を吐いた。

 

「奈々、ごめんなさいね。こんなのに付き合わせちゃって」

「こんなのとは何ですか」

「こんなのはこんなのよ」

「だ、大丈夫だよ。凄く優しいし……」

 

 とりあえず奈々が辟易していないことに安堵した優花は、ハジメの耳元で警告する。

 

「もう香織に言われてる事だと思うけど、気を付けなさいよ。あなたの身体には既に死霊の手が絡みついてる。半歩の間違いであちら側に引きずり込まれるわ」

「ええ、分かっていますよ。墓石の上、踵で拍子をとりながら真夜中にヴァイオリンで死神が奏でるは舞踏の調べ。僕の耳には常にそこへと誘う響きが聞こえている……しかしながら、僕はその誘いに乗ることはしませんよ」

 

 ハジメはアンリ・カザリスの詩を引用しながら警告に対して返事をするが、優花は否定も肯定もしなかった。蝶葬機体となり、意識海の不安定性は大きく改善したハジメ。しかし、問題がすべて解決したわけでもなく、換装前とはいえ魔物を死体打ちしていたこともあると香織から聞いていた。ハジメは演算能力による反動以外にも数々の精神的問題を抱えているのである。

 

 こればかりは外部から解決を図ることは出来ず、ハジメが適応するか克服するかの問題なのだが……

 

 冬の風は吹きすさび、夜は深い。菩提樹から漏れる呻き声、青白い骸骨が闇から舞い出で屍衣を纏いて跳ね回る。

 

 魔の山の死霊たちは、常に仲間を捜し、そして闘いに狂う。

 

 それを示すように、ハジメ達のもとへ新たな兵器が投入された。

 




 奈々と妙子の強化はこんな感じです。情報の無い奈々はともかく、妙子はアフターでの戦いぶりを見るにこれくらいのポテンシャルはあると考えました。ちょっと盛り過ぎですかね? でもまあ、こんなもんでしょう。

 備忘録

 黒ノ慟哭:

 NieR: Automataより。原作では格闘武器でしたが、今作では鎖に。先端に返しのついた刃が取り付けられており、中々エグイことになります。

 ラストゼーレ:

 ありふれ原作に登場した強化アイテムが元ネタ。

 グラヴ・ファレンセン:

 同じくありふれ原作より。重力を増大させるアーティファクト。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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