人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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 中途半端に幕間挟んで、読みづらくて申し訳ない。でも書きたくなってしまったので書きました。後悔はしておりません。

 一人称視点です。



幕間/ミランダ

 私、白崎香織は何の気なしに、星について調べたことがある。

 

「ミランダ……」

 

 シェイクスピアを知る前に、図鑑の中で目についた天体の名前を言ってみる。ミランダは天王星の第五衛星。ミランダという名前の由来はシェイクスピアの『テンペスト』の登場人物だと後で知った。その時はシェイクスピアにここまで傾倒するなんて思っていなかったけれど。

 

 まあいいや。これが中学生の時。

 

 そして、高校生になって、南雲ハジメという少年に恋をして再び私はこの天体の名前を思い出す事になる。

 

 恋人になるまで、いや、なってからも彼との思いはすれ違っていた。ミランダに限った話ではないけれど、天王星の衛星は黄道に対して横倒しで公転している。何故なら天王星が横倒しで自転しているから。私とハジメ君の思いはそんな軌道のようにすれ違っていた。

 

 名前の由来のミランダが父親のプロスペローに言われたように、「貴方はその幼馴染と僕しか男性を知らないが故に、初めて知った僕に対して至上の男であると勘違いしているのでは?」とか聞かれた時は病人と分かっていながら張り手を喰らわせてしまった。

 

 でも、それくらい、私には看過できない事だった。

 

「なら、きっと私は余程欲が無いんだと思うよ。君以上に良い男性に出会いたいとは思わないもの」

 

 最愛の人にそんな皮肉めいたことを言ってしまうほどに、私は怒っていた。改めて言うが、衛星ミランダの自転と黄道が全く違う軌道を描くように、この時の私達は見事なまでにすれ違っていたのだ。

 

 彼がここまで他人と関わる事を拒絶するのか。病気のせいか、それとも画家として活動する中で何かがあったのか。あるいはその両方かもしれない。私達の間にはヴェローナ断崖の落差と同じくらいの壁があるように思えて絶望しかけた。

 

 でも、私はあきらめなかった。星空を仰ぎ見るきざはしで、お互いの腕で繋がった数メートルが遥か彼方に思えた。プロスペロー(お父さん)の試練を乗り越えたと思ったのに、こんなのはあんまりだ。

 

 でも、私は彼を好きになった事を否定するつもりはなかった。それが世間や彼の思いを映し出す黄道と、私が公転する天王星の赤道がどれだけすれ違っていても、私はあきらめない。テンペストのミランダも、最終的にはファーディナンドと結ばれたのだから。

 

 きっと、試練はこれからなのだと思った。

 

 何万回、何億回、私は自転を公転をすれば彼に受け入れてくれるのだろう。おまけにミランダは第五衛生で、彼が天王星だとしてもかなり遠い。それでも、何万回でも、何億回でも、私は彼の周りを廻る。

 

 触れられないのも分かってて、それでも離れることもできない。恒星のように肥大した光で、壊れそうだ。どれだけ距離が離れていても、終点も変えれないまま彼の周りを廻る衛星。

 

 ねえ、君は私がノリで告白したとでも思っているのかな。

 

 それとも何の気なしに気付いているのかな。

 

 君の軌道と私の軌道、ごくたまに交差して見た景色は、とても綺麗だよ。何周目かの互いの明日は違うものだとしても、私は廻り続ける。横倒しの黄道が重なるまで、あと何周かな。

 

 ねえ、知ってた? ミランダは天王星の五大衛星の中で、いちばん近いんだよ?

 

 彼が天王星なのか太陽なのか、分からなくなるけれど、私にとっては大差無い。公転軌道を徐々に近づけて、無限に寄り添うだけだ。ロッシュ限界を迎えて衝突したらごめんね。でも、それくらい、私の重力は強いんだ。質量は重いんだ。

 

 いつも、どうしても君が掴めない。

 

 ねえ、誰でも良いと思ってるの? そんなわけないよね。君は頭がいいから、私を観測せざるを得ないよね。ねえ、ボイジャー二号さん。

 

 いつか君は言っていたね。

 

 雲を頂く高い塔、煌びやかな宮殿、厳めしい伽藍、いや、この地球でさえ、元よりそこに住まうありとあらゆるものがやがては溶けて消える。後には一片の霞すら残らない。私達は夢と同じ糸で織られている。

 

 もっと簡単に、全ての存在は滅びるようにデザインされている、だったかな。

 

 否定はしないよ。でも、だから私との恋が虚しいとか思ってたのかな? 彼が病によって死んでしまう、もしかしたら私だって交通事故か何かで死んでしまうかもしれない。でも、それはただのロッシュ限界だ。

 

 天体が破壊されずに他の天体に接近できる限界の距離。

 

 だったら、私はそこまで廻り続ける。いつしかロッシュ限界を迎えて壊れてしまうまで。むしろ、それに彼は耐えられるだろうか。もしかしたら耐えられないのかもしれない。でも、もう衛星軌道に捕まってしまった私は、今更軌道を変える事なんてできない。

 

 ねえ、ハジメ君。

 

 きっと、君が私を拒絶するのは、ロッシュ限界を迎えるのが怖いからだと思う。死と言う絶対的な終わりがある中で、それを迎えてしまうのが怖いのでしょう? 臆病なんて言わない。でも、少しは軌道が重なったかな。

 

 でも、私は死を恐れない。怖くないわけじゃない。けれど、それはいつか天体がロッシュ限界を迎えるように、避けられない事だと思うから。私は君の衛星であり続ける。

 

 1,2,3,4でループ。標準的な四拍子で、速度は、どうしよう。ラルゴ? アダージョ? いずれにせよ、ゆっくり演奏すればいい。ピタゴラスだったっけ。天体が廻る調和によって音が鳴っていると言った数学者がいた。

 

 私はロッシュ限界まで演奏するよ。君が真の意味で振り向いてくれるまで、公転する。あと少しが届かないけれど、あと少しが届くまで、今日も同じ軌道で廻る衛星。

 

 君と軌道が重なるまで、あと何周かな……

 




 転移前の香織の心境でした。一番付き合いが長いという事は、本当に紆余曲折ありまして……或る意味ハジメが拒んでいたというのは原作準拠ですね。それを、衛星の軌道とか、距離に喩えて書いてみました。最近、私の中でキャラが迷走しているので、半分思い付きで書いたものでもあり、自分自身の復習のために書いたものでもあります。

 投稿するかは迷いましたが、これも香織の一部という事で投稿します。本編がぶつ切りなのは本当に許して欲しいです。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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