人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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遅くなって申し訳ありません。ちょっとリアルが忙しかったもので。

今回は短めの話になります。あと、最後が雑なのでまた書き直すかも。

それでは第七話。スタートです。


死期ノ恒星

イシュタルの案内で白い円形の動く台座に乗り、神山を降りたハジメ達はトータスで最も格式の高い国、ハイリヒ王国の王城に着く。そして真っ直ぐに玉座の間に案内された。教会に負けないくらい煌びやかな内装の廊下を進む。

 

道中、騎士のような装備を身に着けた人間や文官らしき人間、メイド等の使用人とすれ違うが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた視線を向けてくる。ハジメ達が何者か、ある程度知っているらしい。

 

仰々しいデザインの巨大な両開きの扉の前に到着すると、その両サイドで直立不動の姿勢を取っていた兵士二人がイシュタルと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たずに扉を開け放った。けったいな手続きは不要らしい。

 

イシュタルはそれが当然というように悠々と扉を通る。光輝等一部の者を除いて生徒達は恐る恐るといった感じで扉をくぐった。その先には真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪奢な椅子――玉座があった。玉座の前で威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。

更にレッドカーペットの両サイドには軍服らしき衣装を纏った者達や文官らしき者達がざっと三十人以上は並んで佇んでいる。

 

玉座の手前に着くと、イシュタルはハジメ達をそこに留め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

そして、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら教皇のほうが立場が上らしい。神がこの国を動かしている事が確定した。神は天にいまし、世は事も無し。ハジメは内心溜息をつく。ハジメは神とやらを信用してはいない。だいいち、30人近くも異世界から呼び出す力があるなら魔人族を滅ぼすなり強力な神獣を創るなりすればいいだろう。ハジメは『神』が自分達を戦わせる為だけに喚んだのではとさえ思っている。オレオレ詐欺のほうがまだ信用できる。まあこんな状況なので滅多な事は言えないが。

 

ハジメが思考を弄んでいると、異世界人の自己紹介タイムに入った。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒといい、王妃をルルアリアというらしい。金髪美少年はランデル王子、王女はリリアーナという。

後は騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。途中、美少年の視線が香織に吸い寄せられるようにチラチラ見ていた事から、香織の魅力は異世界でも通用するようである。後、王女の視線が時々ハジメの方に飛んでくる。ハジメは「自分の顔に何か付いているだろうか」と思うも、「そういえば包帯巻いてあったな」と結論付けた。ハジメの見た目は、所々色が抜けた少し長めの髪、右目や左腕の包帯と漂白されかけたビジュアル系ロックバンドのような見た目なのである。そりゃ人目も引くだろう。

 

その後、晩餐会が開かれ、異世界料理を堪能した。ピンク色のソースや虹色の飲み物が出てきたりしたが、どれも美味であった。

 

「ん!結構おいしい」

「本当ですね。見た目は奇天烈ですが」

 

料理好きの香織がコメントをし、ハジメが相槌を打つ。

 

そして香織はハジメの袖を掴む。

 

「やはり、不安ですか」

「うん、ごめんね。やっぱり私、怖いよ」

「それは極めて正常な反応です。寧ろ甘えてくれるのは嬉しいですね。恋人としては」

「ありがとう」

「まあ南雲君のおかげで多少はマシになったじゃないか。『死の家の鴉』の活動が休止してしまうのは遺憾だけど、こればっかりはどうしようもないね」

 

ハジメと香織が桃色空間を形成していると、いつの間にか近くにいた恵里がそんな事を言い出す。因みに優花もさりげなく近くにいる。

 

「僕らの集まりに変な名前を付けんで下さい中村さん。というかこの前は『D坂の思想犯』とか言ってましたよね」

「あれぇ?そうだっけ」

「ついでに言うならその前は『黒死病時代の饗宴』だったからね、エリリン」

 

鈴も近くに来た。ハジメの近くというよりは恵里について来ただけだが。

 

「何よそのラインナップ。不穏な臭いしかしないじゃない」

 

優花が顔を顰める。

 

「僕は図書委員だからね。ネタは存分にある」

「確かにそれぞれドストエフスキー、江戸川乱歩、ジョージ・オーウェル、プーシキンの作品から引用されてますね。あ、どうせなら『D坂の思想犯』で」

「気に入ってんのかよ…。というか、さらっとロシア人ハブられたな」

「あれ、遠藤。いたの?」

「ずっと近辺にいたわ…」

 

遠藤もいたらしい。すると優花が口を開く。

 

「でも南雲ってすごいわよね。いつも冷静で。私は自分を落ち着かせるのに精いっぱいだった」

「ああ、そう言えばずっと膝の上で手を動かしてましたね。何の曲を弾いてたんです?」

「い、言わないでよ!でも、南雲の近くなら安心できる気がする…て、そういう意味じゃないから!」

 

独学でピアノを練習している優花、ネットに挙げた動画は若者の間で流行っている。ジャズを弾くことが多いが、それは既存のジャズ曲に限らずクラシックや現代曲をアレンジしたものもある。実家の洋食店の人気もそれに伴って浮上していった。

 

「まあ君は戦場では生き残れるんじゃないかねえ、ジャズピアニスト」

「確かピアニストは代わりが育つまで時間がかかるから殺すな…的な話だっけ?エリリン」

「その通り」

「…この世界にピアノってあるのかしら」

「…そっか、もう優花ちゃんとセッションできないんだね」

 

香織が悲しそうな声で言う。香織もチェロが弾けるので二人で合わせたりしていた。二人で弾いたアニソンメドレーはそこそこ受けが良かったのだ。

と、そこに目が死んだ清水が現れた。

 

「クラスの男子どもが令嬢やメイドに鼻の下伸ばしてるからって味を占めるんじゃねえ。ぶち殺すぞ」

「あらやだ清水君過激」

「女性アレルギーだもんコイツ」

「相手は清水にハニートラップを仕掛けようとした…とか?」

「十中八九そうだろ。まあ清水は女性アレルギーだし、南雲も俺も恋人いるし、効果ねえけどな」

 

遠藤の言葉にハジメと清水以外が驚いた顔をする。二人は事情を知っているが、女性陣は初耳だ。

 

「遠藤って…恋人いたの?」

「イギリスにな。エミリーっていうんだが」

「あーはいはい。惚気話は要らないよ」

「というか清水君だってチェスの師匠というか戦友というか…そんな女性いましたよね」

階音(カイネ)さんな。唯一アレルギー反応が出ない」

「クラスの日陰者が皆リア充ねえ。面白い展開だ」

 

因みにこの会話は全て日本語であるため、トータス人には理解できない。一連の流れでそれを理解したハジメ達は今後の予定を詰める事にした。下手に部屋に集まればかえって怪しまれる可能性があるし、仮に盗み聞きされていたとしても言語が通じないのであれば問題は無い。そうして七人が話し合っていると、天之河光輝が近づいて来た。

 

「香織、鈴、恵里、君達も戦争に参加するんだったらトータスの人々と交流を深めたほうが良い。南雲や清水なんかと話してないでさ」

 

遠藤には気づかなかったらしい。そして、光輝は実はジャズが嫌いであるために優花のことも無視した。まあ誘われたところでいい迷惑だろうが。

『D坂の思想犯(笑)』の一員であるハジメや清水を貶すような物言いに当人たち以外が不快感を示す。更に言うなら恋人を馬鹿にされた香織の心中は穏やかなものでは無い。

 

「鈴達はもう挨拶は済ませたよ。それに…」

「僕達は明確な参戦表明はしてないんだがねえ。黒ひげよろしく記憶がぶっ飛んだかい?」

 

鈴と恵里からの返しに光輝は鼻白む。まるで自分達は参戦しないとでも言いたげだからだ。

 

「この世界の人達を見捨てるっていうのか?君達はそんな事を言うような人間じゃないだろう!」

「この世界には『天職』とか言うのがあるみたいだし、場合によっては参戦するんだろうけど、鈴達は基本的に自分優先で動くよ」

「リスクとリターンが嚙み合ってれば考えるかな。あとKは僕達の何を知っているのかな?勝手に決めつけないでくれよ」

 

デジタルな論法を貫く二人に再び鼻白む光輝。ならばと香織に詰め寄るが、

 

「私はハジメくんと一緒にいるよ。彼は病気なんだから戦争なんてできないし」

「そんな事が…」

「許されるよ。逆に病人を戦場に連れて行こうとする君の神経が理解できないけど」

「この世界の人達が困っているんだぞ!」

「六等星と恒星ベテルギウスだったら後者を選ぶよね」

「なっ…!」

 

そもそも戦争への参加は志願制にするという事で話がついている。ならば無理やり参加させるような言動は許されるはずがない。香織はハジメに死んで欲しくはなかった。病死という事なら覚悟も決まっているし、臨終に寄り添うことも出来る。しかし一度戦場に出ればそれは叶わない。否応なしに人が死に、臨終の瞬間に立ち会えるかどうかも分からない。

ただでさえ恒星ベテルギウスのように近いうちに命を散らしてしまうハジメ。その命を無駄に縮めるようなことはしたくない。六等星…遠いのか小さいのか、香織にとってはどうでもいいことなのだ。

 

「クラスメートを死なせるなんて、俺がそんな事させない。全員を守って見せる!」

「思い上がんじゃねえよ。人間」

 

光輝の演説に水を差す形で呟いたのは遠藤だった。

 

「思い上がる?どういうことだ、遠藤」

「驕れるものは久しからず、ただ春の夜の夢の如し。猛き者も終には滅びぬ。偏に風の前の塵に同じ」

「…何をいっているんだ?」

「平家物語だ。中学で習うだろ。要するに戦場ってのは人が簡単に死ぬ場所って事だ。病人を連れていく場所じゃねえわな」

 

腐っても学年トップである。光輝は遠藤の言う意味が理解できてしまった。しかしそれでも納得できないのか光輝が詰め寄ろうとすると、

 

「まあ、僕に出来る事と言ったら精々後方支援です。戦争においてはそちらも重要でしょう」

 

とハジメが言い、席を立つ。体力が限界となって来たので、与えられた部屋で休もうと思ったのだ。当然、香織も追従する。光輝がまた何かを言おうとするが、二人は聞いていない。

 

晩餐会の会場を抜け、ハジメが自分の部屋に入り、香織も一緒に入る。異世界召喚という有り得ない事態にハジメは疲弊していた。

 

「お疲れ様、ハジメくん」

「すみませんね。一緒についてきてもらって。八重樫さんとお話しして来なくてもよろしいのですか?」

「雫ちゃんとはまた今度、ね。とりあえずあの場を離れたかったし」

 

そして香織はハジメの隣に腰を下ろす。するとハジメは自分に香織を寄りかからせた。

 

「ハジメくん?」

「手が震えていましたから」

「ありがとう。でも、ハジメくんだって疲れてるのに」

「これくらいはさせて下さいな。いつも助けてもらってばかりですから」

「そっか…じゃあ、遠慮なく甘えるね」

 

そして二人はそのまま眠りに落ちた。




本作オリジナル設定

優花はジャズピアニスト。そして光輝はジャズが嫌い。

清水には階音という師匠がいる。

遠藤はイギリスにエミリーという恋人がいる。


作者の優花に対する第一印象が「ジャズが似合いそう」だったのでこうしました。清水と遠藤に関してはありふれとNieRシリーズが分かる人だったら察しが付くかも?

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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