人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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おかしい、ベヒモス戦まで行く予定が…

いや、無駄に戦闘描写にこだわるからこうなるって分かってるんですけどね。後悔も反省もしていない三文小説家…これで駄文とか言われたらマジで凹みそうでございます。


隠サレタ罠

一行は特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げていった。道中弱らせた魔物をハジメや香織と戦わせる事もあったが、香織が音で魔物を牽制し、ハジメが数学者の技能による正確無比な射撃を行うという連携で倒している。ハジメが拳銃を開発していたことを知らなかった面々は驚き、魔法でもなく素早く強力な攻撃が行える銃という武器に騎士団員は驚いていた。

 

そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層に辿り着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者が成した偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。

ハジメ達は戦闘経験こそ少ないものの、全員が強力な技能を持っているので割とあっさりと降りる事ができた。

 

もっとも、迷宮で一番怖いのはトラップである。場合によっては致死性のトラップも数多く存在するのだ。迷宮攻略をメインとするRPGをやった事がある人は分かると思うが、床から飛び出す針や、敵を呼び寄せるアラーム型の罠、果てには地雷式の魔法陣などという物まで存在する。

従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのは、ひとえに騎士団員達の誘導があったからこそだと言える。メルドからも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

「よしお前達、ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが順調だったからと言ってくれぐれも油断するなよ。今日はこの二十階層で訓練して終了だ。気合い入れろ!」

 

これまでと同じように交代で戦闘をしていく。光輝達の活躍も目立つが、最も目を引くのは恵里、鈴、優花、遠藤、清水の五人だ。

鈴が『伽藍ノ堂』を飛ばして地上の敵を排除し、恵里はファイを使って遠隔攻撃。空を飛びエネルギー弾を放ってくる機械生命体もいたが、攻撃が来た場合は鈴は防御に徹し、代わりに優花が飛び上がって錐揉み回転しながらナイフを連投し、敵を撃墜するという離れ業を見せる。その間に遠藤がククリナイフを使った近接戦やカランビットナイフを使った格闘戦で敵を倒し、更には清水が『黒ノ手』という魔法で敵を拘束したり、『黒ノ処刑』という地面から槍を無数に生やす魔法で敵を刺し殺すついでに一時的に壁を作り、一人が多数の敵に囲まれるという状況を防ぐという補助も行っている。最後に恵里が『霊視』という幽霊の目を借りる魔法で辺り一帯をスキャンし、敵がいない事を確かめてこのターンは終わった。

 

「凄いわね、鈴達。図書館で勉強してたって聞いたけど、今の多彩な戦術を見れば納得できるわ」

「ああ、そうだな…」

 

雫がその様子を褒めるが、光輝は浮かない顔をしている。その理由は自分達と違うやり方で強化を図った彼らに対する嫉妬か、無意識に気に入らないハジメのやり方への抵抗か。

 

ハジメ自身も中々に活躍している。小悪党達への反撃に用いた『零度』や、冷気を噴射する『極寒』、熱を集めて爆発を起こす『重合爆発』など、ステータスの関係上火力では光輝達戦闘組に劣るものの、非戦闘職とは思えない多彩な攻撃で敵を追い詰める。更にはつい最近得た数学者の技能『超速演算』の派生技能『圧縮詠唱』によってほぼノータイムで攻撃に移れるのである。そして香織との連携や銃での攻撃を組み合わせ、護衛の騎士達もすぐには対処方法を思い浮かべることができない戦闘を行っている。特に『圧縮詠唱』は一瞬だけ口が動いているのが見えるだけで、あまりに早すぎて声が聞き取れないのだ。敵に回られたら脅威である。

 

実を言うとメルド以外の騎士達はハジメには全く期待していなかった。騎士団員達としては、ハジメが碌に使えない剣で戦うと思っていた。ところが実際は多彩な技能で敵を翻弄し、見たことも無い武器を使い、更には『圧縮詠唱』などという詠唱が必要な魔法の弱点を帳消しにするような技能持ちと来ている。

錬成師は鍛冶職と同列に考えられている。故に錬成師が実戦でその技能を利用する事など有り得なかった。

 

小休止に入り、ハジメの横に座りながら香織は微笑んでいた。

 

「迷宮内でラブコメなんて随分余裕ね。爆弾魔さん?」

 

揶揄うような口調に思わず顔を赤くする香織。

 

「もう、雫ちゃん!私はただハジメくんと一緒に後方支援をしてるだけだよ!」

「はいはい、そういう事にしておきましょう」

 

そんな様子を横目に見ていたハジメは、ふと視線を感じた。負の感情を集積したような、普通の神経の持ち主なら不快に思う視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べ物にならないくらい深く重い。その視線は今初めて感じたというわけではない。今朝からずっと感じていたものだ。視線の主を探すと途端に霧散する。だいたい誰かは見当が付くが、視線だけではどうしようもない。

 

休憩が終わり、一行は二十階層を探索する。

迷宮の各階層は数キロ四方に及び、未知の階層では全てを探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一カ月はかかる。現在四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷う事は無い。トラップに引っかかる心配もないはずである。

 

二十階層の最深部はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

そこまで行けば今日の訓練は終わりだ。神代の転移魔法のような便利なものは現代には無いので、また地道に帰らねばならない。一行は若干弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

すると先頭を行く光輝達やメルドが立ち止まった。訝しそうな表情をするクラスメートもいるが、『演奏者』の技能で音を聞いた香織や、『霊視』によるスキャンを行った恵里は気付いた。どうやら魔物がいるらしい。

 

「擬態しているぞ!周りをよく注意しておけ!」

 

メルドの忠告が飛ぶ。その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやら擬態能力を持ったゴリラらしい。まあ自然界に住む動物は皆何かしらに擬態しているというし、進化の結果そうなったとしても別に違和感はない。

 

「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

メルドの声が響く。光輝達が相手をするようだ。飛び掛かって来たロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように戦えない。

龍太郎を突破するのが不可能と判断したのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

直後、

 

「グゥガガガァァァァァァアアアーーーー!!」

 

部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。爆竹など比較対象にすらならない音量だ。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

ロックマウントの固有魔法『威圧の咆哮』だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。身体をビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体は無いものの前衛組が硬直する…前にチェロの音色が響いた。音源は香織。どうやら演奏者の技能で咆哮を無力化したようだ。

 

埒が明かないと判断したのかロックマウントはサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。無駄に見事な砲丸投げのフォームである。とりあえず鈴が結界を張るために詠唱を開始。しかし女性陣は割と衝撃的な光景を目にする。なんと、投げられた岩もロックマウントだった。空中でこれまた見事な一回転を決めると両腕を広げて香織達へと迫る。その姿はさながらギャグシーンの某大泥棒三世である。しかも妙に目が血走り鼻息が荒い。どうやら香織は勇者と王子だけでなく擬態能力を持ったゴリラにもモテるらしい。全くもって嬉しくないだろうが。

 

しかし鈴は岩の正体が魔物であると分かると詠唱を変更。『伽藍ノ堂』とも違う、これまた騎士団員の聞き覚えの無い詠唱だ。そしてロックマウントは空中で結界に激突する。その直後、結界が無数の飛び散る刃と化し、ロックマウントを切り刻んだ。これも鈴のオリジナル魔法の一つ、名を『閃光』という。対象が結界に密接、もしくは近くにいた場合、結界が刃となり敵を刻む魔法だ。一言で言うとバリアバーストのようなものである。威力もそこそこ高く、今の一撃でロックマウントは瀕死だ。それを近くにいた遠藤がカランビットナイフで絶命させる。

メルドはその様子を褒めるが、クラスの女性陣は相当気持ち悪かったらしく、まだ顔が青ざめている。そんな様子を見てキレる人間が一人。正義感と思い込みの塊、勇者天之河光輝である。

 

「貴様……よくも彼女達を……許さない!」

 

どうやら気持ち悪さで青ざめているのを死の恐怖を感じたせいだと勘違いしたらしい。彼女達を怯えさせるなんて!と、なんとも微妙な点で怒りを顕にする光輝。それに呼応してか聖剣が輝きだす。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ―――“天翔閃”!」

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

メルドの声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

パラパラと部屋の壁から破片が落ちる。「ふぅ~」と息を吐きイケメンスマイルで香織達へ振り返った光輝。女性陣を怯えさせた魔物は自分が倒した。もう大丈夫だ!と声を掛けようとして、笑顔で迫っていたメルド団長の拳骨を食らった。

 

「へぶぅ!?」

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうすんだ!」

「ホントだよ。僕達を殺す気かい?」

 

メルドの叱責と恵里の呆れに「うっ」と声を詰まらせる光輝。何と言うか、雪山登山とかしたら真っ先に死ぬタイプじゃなかろうか。

その時、ふと香織が崩れた壁の方に視線を向けた。

 

「…あれ、何かな?キラキラしてる…」

 

その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」

 

グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ3に入るとか。

 

「素敵…」

「宝石ってのは貰って嬉しいモノなのかね…俺にゃ分からんが」

「右に同じく」

「男子ちょっと黙りなさい?」

 

清水と遠藤が余計な事を言おうとしたので優花が黙らせる。一方香織は、メルドの簡単な説明を聞いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、誰にも気づかれない程度にチラリとハジメに視線を向けた。もっとも、雫ともう一人だけは気がついていたが…

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのはメルドだ。

 

「こら!勝手な事をするな!安全確認もまだなんだぞ!」

 

しかし檜山は耳を貸さない。それどころか、「うるせえよ。こっちの気も知らないで」という声を香織の耳が拾い、顔を顰めてメルドと共に止めようとするが、とうとう檜山は鉱石の場所に辿り着いてしまった。

同時に騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。

 

「団長!トラップです!」

「ッ!?」

 

しかしその警告は一歩遅かった。檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。どこぞのチョコレート工場に見学に行ったら散々な目に遭うタイプであろう。

魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。

 

「くっ、撤退だ!早くこの部屋から出ろ!」

 

メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。

部屋の中に光が満ち、ハジメ達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。

ハジメ達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。

 

殆どのクラスメートは尻餅をついていたが、ハジメや遠藤、メルドや騎士団員達、光輝達など一部の前衛職の生徒は既に立ち上がって周囲の警戒をしている。どうやら、先の魔法陣は転移させるものだったらしい。現代の魔法使いには不可能な事を平然とやってのけるのだから神代の魔法は規格外だ。

 

ハジメ達が転移した場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。

それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が…

 

その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

――まさか……ベヒモス……なのか…

 




バカみたいな奴のせいでバカを見た。この状況を端的に説明するとしたらこうなるでしょうね。

元ネタ紹介

重合爆発:パニグレのソフィアの必殺技。どういう仕組みか分からんが敵を引き寄せる力もあるらしい。ただハジメのステータスが低いので威力も低い。

零度:パニグレのAビアンカの二つ名(?)

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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