人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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戦闘描写って難しいですね。動画や文献と睨めっこしながら書いてます。最近NieR要素が少な目ですが、その内出てくるので安心してください。

今回のタイトルの元ネタはダンテ・アリギエーリの『神曲』です。って言うまでもないか…


神曲/地獄篇

(…上へ戻る道は無し、か)

 

ハジメは奈落を歩き回り、地上へ戻る道を探した。しかしいくら探せども見つからず、この階層の未踏破区域は全て網羅してしまった。道中例のウサギや、新たに爪を持った熊とも遭遇したが、いずれも勝利を収めることができた。

 

「こうなっては仕方がありません。ダンテの神曲よろしく地獄を遍歴するとしましょう。尤も、ここには詩人ウェルギリウスも、永遠の淑女ベアトリーチェもいませんが…」

 

そこでふと違和感に気付く。

 

(いえ、僕にとってのベアトリーチェは香織です。無論、彼女が愛想を尽かしたとあれば、それを止める権利は僕にはありませんが)

 

そこまで考えた所でハジメは身体を傾ける。ザスッという音がした後、ハジメがいた空間の延長上の壁に切れ込みが入った。

 

「…あなたいつから床屋になったんです?」

 

ハジメが皮肉を言いつつ振り返ると、つい先日倒した熊とウサギがいた。しかし様子がおかしい。一目見て機械化しているのは明らかだった。

 

(パニシング…?魔物にも感染するんですね)

 

前衛としてウサギが跳躍力と、新たに会得したらしき前足の爪で攻撃してくるが、ハジメは扇状に複数の弾丸を飛ばす『拡散射撃』で牽制と攻撃、回避を行う。だが機械と化したウサギは一撃では倒れず、尚もハジメに向かってくる。熊も爪から風の刃を飛ばしてくるが、ハジメは狼との戦いでも使った銃技『ガンアーツ』で攻撃と回避を織り交ぜながら闘う。そしてウサギを倒したハジメはバク宙しつつ銃撃するも、熊は応えた様子は無い。理由は機械化により硬化した腕を盾にし、銃撃を防いでいたからだ。

 

「ではこんなのはどうでしょう」

 

ハジメはセインをしまうと、一緒に作ったブレード『朱樺』を取り出す。そしてその場に残像を残して熊に対し高速接近し、朱樺で強力な二連撃を加える。王宮の図書館の本に書いてあった『氷剣士』という職業の剣技『氷晶』だ。熊の防御が一瞬だけ崩れたが、ハジメにとってはそれで十分だった。ハジメは朱樺による横薙ぎ一閃を初撃として、更に上から下へ振り下ろす斬撃を二回喰らわせ、朱樺による連撃の後、ハジメを中心とする円を描くような中段、下段攻撃を続けて加える。これも氷剣士の技であり、名を『霜刃』という。

 

ハジメの怒涛の連撃にたたらを踏む熊。ハジメは相手に立て直す隙を与えずにその場で浮き、側宙からの錐揉み回転の要領で縦回転の斬撃を熊にぶつける。『白夜還流』という氷剣士の業だ。これがとどめとなり、ハジメは勝利を収めた。

 

 

「しかしコレ、どうしましょう」

 

ハジメはパニシングに侵蝕された魔物の残骸を見る。人間だけでなく魔物にも影響が及ぶとは予想外だったが、対処可能な範囲であった事に安堵するハジメ。しかしこれからは魔物の侵蝕体とも遭遇すると考えていいだろう。

 

そしてもう一つハジメを考えさせているのはこの残骸の活用方法だ。パニシングに侵蝕されているという事は機械、つまり有機物の集合よりはハジメが扱いやすい代物である。しかし異重合核には極力手を出さないと決めた以上、資源の回収には慎重を期さなければならない。

だがハジメの願いは無慈悲に蹴落とされる。なんとそれぞれの魔石が勝手に覚醒し、出来上がった異重合核がハジメを目掛けて飛んできたのだ。

 

「――ッ!」

 

一つ目は何とか避けたハジメだが、回避先を読んでいたかのように二つ目の異重合核がハジメに衝突する。そして、避けた一つ目もハジメに衝突してしまった。

 

「うっ…ぐ…」

 

一度に二つの核を取り込んでしまった事に苦痛の声を上げるハジメ。だがその甲斐あってか。身体能力はそれまでよりも向上したようである。

 

「力には代償が付き物と言いますが、これはあんまりだ。せめて選択の余地くらい残しておいて欲しいのですが。しかし一瞬の痛みこそあれ、身体はやはり軽いですね。まあ、このくらいの役得が無ければやっていられませんが」

 

この状況では独り言が多くなるのも致し方ないだろう。とりあえず新たな武装を作る事にして、ハジメは残骸を拠点に持ち帰った。

 

 

「さて何を作りましょうかと」

 

現時点で材料は申し分ない。先程の魔物の残骸に、周りには鉱脈もある。技能も考えると余程大それた物でない限りは作れるだろう。そこでハジメはマシンガンとスナイパーライフルを作る事にした。理由は連射性能の高い武器と遠距離射撃が可能な武器を作ろうと思ったからである。セインも遠距離攻撃は可能であるが、射程はそこまで長いわけではないのだ。マシンガンなど作って弾丸は足りるのか?問題ない。材料は腐るほどある。しかしここは奈落、何が起きるか分からないのもまた事実。ハジメは自身の技能『熱操作』によって作り出した火球や氷弾を撃ち出せるように武器を改造した。数学者の技能をフルに使って改造したため、トライアンドエラーは少なく済んでいる。

 

その辺の魔物で試し撃ちも済ませたので、準備は万端だ。逆にこの状態で対処不能な事態に遭遇したら、それはハジメの対処能力を超えている。

 

 

結論から言うと、ハジメは地獄、もとい奈落を問題なく下る事が出来ている。道中完全な暗闇であり、石化効果のある邪眼を持つトカゲが出没する階層もあったが、あまり問題は無かった。確かに視界が悪いのは不利だが、ハジメが持つ『熱操作』から派生した技能『熱源感知』により魔物の場所は特定できるし、そもそも(勝手に)身体を改造されているハジメだが、その効果は眼まで及んでいるらしく探知機でも埋め込まれたかのような視界となっている。最後に石化の邪眼だが、くらった瞬間に治癒されていた。

そして階下への階段を見つけたハジメは躊躇いなく踏み込んだ。

 

その階層は、地面がどこもかしこもタールのように粘着く泥沼のような場所だった。足を取られるので凄まじく動きにくい。とりあえずハジメは『熱操作』で氷の足場を作りつつ進んでいく。周囲の鉱物を『鉱物系探知』の技能で調べながら進んでいると、途中興味深い鉱石を発見した。

 

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フラム鉱石

艶のある黒い鉱石。熱を加えると融解しタール状になる。融解温度は摂氏50度ほどで、タール状のときに摂氏100度で発火する。その熱は摂氏3000度に達する。燃焼時間はタール量による。

 

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「火気厳禁ですか…」

 

とはいえ冷気も使えるハジメ。面白いギミックだな、くらいにしか思っていない。

 

「―――ッ!」

 

タールの中から突然襲ってきたサメのような魔物の攻撃を咄嗟に回避するハジメ。『超速演算』の派生技能の中には『動体解析』や『敵性反応感知』などの索敵技能なども存在するが、今の攻撃は察知することが出来なかった。

 

(ステルス戦闘機みたいな物か?現状僕にはそのシステムを打破する手段は無い…)

 

だがハジメは再度襲撃してきたサメに対し、朱樺で斬撃を浴びせる。

 

(しかし相手は中・遠距離攻撃手段を持たない。ならば攻撃をくらう直前にこちらの攻撃を合わせれば仕留められる)

 

そうやってハジメがサメを掃除しながら進んでいくと、途中からタールの水質が変化した。今までは黒一色だったのが、不気味な赤黒い色へと変わったのだ。試しに種々の解析技能を用いて調べてみると、断片的ながら情報が分かった。

 

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パニシング赤潮

機械と生物を飲み込み、エネルギーや養分に転換して大量の異合生物を発生させる。特有の潮汐現象がある。

 

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パニシングという単語に反応するハジメ。そして赤潮とやらの領域に入った後、サメなどの敵の襲撃が一切無い事にも警戒をする。そして暫く進むと、ソレはいた。

見た目は『異様』の一言だ。ソレは人型の上半身のみの状態で、赤潮から生えている黒い棘のようなものに長い腕を拘束され、磔にされた罪人のようにぶら下がっていた。ハジメの存在に気付くと拘束を引き千切り、赤潮に飛び込んだかと思うと今度は下半身も伴った姿で相対した。

ハジメの脳裏に警告信号が響く。

 

WARNING  セイレーン

 

 

 

見上げるような身長に、針金のような細い体躯と異様に長い手足を持つ、様々な金属片や機械が歪に組み合わさった人型とも異形とも呼べる外見を持つセイレーン。ハジメがセインを抜くと、セイレーンは歪な動きで飛び上がると同時に長い腕で薙ぎ払ってくる。ハジメは回避して銃撃するが、セイレーンには大したダメージになっていない。ハジメはセインをしまうと、魔物の残骸で作ったマシンガン『リーブラ』とスナイパーライフル『アストレイア』を構える。

 

セイレーンが再び攻撃してくるが、ハジメは距離を取り、リーブラによる連射を浴びせる。再びセイレーンが腕で薙ぎ払ってきたと同時に回避し、今度はアストレイアで強力な一撃をくらわせる。セイレーンは赤潮に潜りハジメに奇襲を仕掛けるが、ハジメはサメとの戦闘と同じ要領でカウンター攻撃を当てる。

 

「■■■■a■■■―――!」

 

セイレーンは苦悶とも慟哭ともつかない叫び声を上げ、赤潮に手を浸す。するとハジメの足元からエネルギーの爆発が襲う。ハジメは咄嗟に回避するも、今度は同時多発的に爆発を起こし、攻撃範囲を広げてくる。ハジメは間一髪で回避しながらリーブラとアストレイアで攻撃を加えていく。

 

そんなギリギリの攻防が繰り広げられる最中、突如としてセイレーンの動きが止まる。怪訝に思うハジメをよそにセイレーンは直立し、エネルギー体で作ったヴァイオリンのような物を演奏する。

 

「あ……あ……」

 

ハジメの心はその光景を見て絶望に染まる。なぜならその楽器はハジメが最愛の恋人に贈った物に瓜二つであったから。

 

「そんな………………」

 

更には演奏されている曲はクライスラーの『愛の悲しみ』。紛れもなく()()()曲だ。ハジメは気付いてしまった。目の前の異形(セイレーン)が、『彼女』であることに。『彼女』が自分と同じ、パニシングに侵蝕されてしまったことに。

 

演奏を終えたセイレーンは倒れ込むように赤潮に沈む。そして再び浮上したとき、その姿は片腕だった。彼女は左腕を引き千切り、一本の剣にしたらしい。

 

「今……」

 

ハジメは彼女を見据えながら涙を流す。そして、銃を握りしめながら宣誓する。

 

殺し(助け)ます」

 

それが彼女に対する、精一杯のハジメの懺悔の言葉だった。

 

「香織…」

 




遂にセイレーン戦まで到達。長かった…。途中挟まったWARNINGはNieR Automataのオマージュです。

備忘録

セイレーン:パニグレのボスの一体で異合生物。詳細は各自検索してください。

氷剣士:本作オリジナルの天職。ハジメは過去の記録から戦闘スタイルを分析、再現した。

リーブラ/アストレイア:パニグレのAバンジの武器。本来はマシンガンとスナイパーライフルで1セットだが、今作では別々の武器として扱っている。名の由来はリーブラ、つまり天秤座のモデルは女神アストレイアの持ち物であるという事から。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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