人形タチハ世界最強   作:三文小説家

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そろそろ香織ファンに怒られそうな気がする。

仕方ないよ。NieRクロスだもの。そして自分の語彙力の無さが…肝心な時に表現が出てこないんだよなあ。


ワタシノキオク

電脳空間。実際はインターネット環境やインターネットそのものを指す言葉だが、今作では人間や機械などの意識や思考の上に成り立つ仮想空間である。そしてこの電脳空間内に一人の少女が倒れていた。

 

「う…ん…ここ、は…?」

 

電脳空間で倒れていた少女、白崎香織は目を覚ました。意識が覚醒すると同時に、気絶する前の記憶がハッキリしてくる。

 

(確か私はパニシングに感染して…そうだ、ハジメくん!)

 

異形の怪物となった自分が何故人間の姿をしているのか気にならないわけでは無かったが、香織にはそれよりも優先すべきことがあった。奈落に落ちた恋人、南雲ハジメである。今現在の香織にとって、何が原因で、誰がハジメを落としたのかなどどうでもいい事だった。とにかくハジメを探し出し、安否を確認しなければ…

 

(でも…ここ、どこだろう?)

 

香織の目の前には一本の通路があり、他は空白、虚無と言ってもいい空間だ。自身の知識に無い場所に香織の不安は広がるが、他に道は無い。香織はその通路を歩きだした。

 

(ハジメくんがああなったのは…やっぱり私のせい?私がハジメくんと一緒にいたから?私とハジメくんが恋人だから?オルクス大迷宮での訓練は、無理やりにでも断ればよかったのかな。でも、そんなことしたらハジメくんはもっと悪く言われちゃうし…一体どうすれば良かったの?)

 

何もない通路を歩く中、香織の心は一度は割り切った自問自答で溢れていた。ハジメはクラスメートの裏切りによって落とされた。理由は「自分とハジメの関係」に対する嫉妬しか思い浮かばない。

 

(どうしてハジメくんを憎むの!?私が美人だから?私が人気者だから?私の恋人になろうとしてハジメくんを落としたの?)

 

学校の二大女神などという呼称をつけられているのだ。自分が美人の部類に入るのは自惚れでもなんでもなく事実なのだろう。だが、香織からすればその称号に価値など無い。路傍の石の方がまだ価値を見出せる。

 

(ふざけないで!貴方達が勝手に付けた評価(呪い)で、私からハジメくんを奪わないでよ!!)

 

無価値どころの話ではない。その評価が、羨望が香織からハジメを奪ったのだとしたら、それは香織にとって呪いでしかない。この半身を抉られたかのような痛みを、他に誰が癒してくれると言うのか。

 

 

香織が暗い感情を持て余しながら歩いていると、通路が終わり、広い場所に出た。そしてその中心にいたのは、

 

「ハジメくん…?」

 

香織の最愛の恋人、南雲ハジメだった。

 

「ハジメくん!」

 

香織はたまらなくなって駆け出す。まずは思う存分抱きしめよう。そして、あの時の無茶を叱って、一緒に本を読んで、チェロを弾いて、それから、それから…

香織は再会した後の時間を思い浮かべ、心を躍らせながらハジメを抱きしめる。

 

「ッ!?」

 

しかし香織はハジメをすり抜け、勢いを抑えきれずに転倒してしまう。香織が起き上がって後ろを見ると、ハジメの姿こそあるが、実体は無く、輪郭も揺らいでいた。

 

「幻…影…?」

 

おまけに周りを見回せば大量のスクリーンが浮いており、デートやお見舞いなどのハジメとの思い出が映し出されていた。

 

「これは、ハジメくんとの…記憶?これが思い出だとしても…私は…!」

 

そう言って香織は再び手を伸ばそうとする。

しかしその時異変が起きる。思い出を映したスクリーンの一つが黒い粒子に覆われた。

 

「なに…これ…」

 

それを合図にスクリーンが次々と黒に覆われ、消えてゆく。

 

「やめて…やめて…」

 

全てのスクリーンが消え去った後、黒い粒子はハジメの幻影を覆い、それを核にして黒い異形が出来上がる。

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

香織は絶叫しながらウーベルチュールを構える。黒い異形は攻撃として粒子を飛ばしてくるが、香織はものともせずに敵を攻撃する。

 

「私の記憶に、勝手に入ってこないで!」

 

チェロと弓で異形を切り刻む。しかし次々と粒子が補充され、一向に倒すことができない。

 

「返して!返してよぉ!!」

 

香織はハジメの記憶を取り戻そうと攻撃を続ける。すると異形は巨大な腕を作り、香織を殴り飛ばす。

 

「あぐぅ!」

 

香織は広場の端まで飛ばされ、見えない壁に激突する。香織は涙を流しながら相手を睨んだ。

 

「これは…私の、宝物!」

 

起き上がった香織はなおも攻撃を続ける。直接攻撃だけでなく、破壊音響も織り交ぜながら相手を壊していく。

 

「勝手に!触らないで!!」

 

粒子の補充が追い付かなくなり、異形はよろけ、倒れる。香織は更に異形を弓で刺し倒した。

 

「私の…私の…記憶…!」

 

香織は一心不乱に異形を刺し続ける。叫び声を上げながら刺し続けるうちに、黒い粒子は無くなり、ハジメの幻影は輪郭を取り戻していた。しかし泣き叫びながら相手を殺そうとする香織は気付かない。ハジメの幻影に刺し傷が増え、返り血が飛び散る。

 

暫くして香織が返り血まみれになった頃、香織はようやく落ち着きを取り戻し、幻影に縋り付いてすすり泣く。

 

「助けて…誰か…助けてよお…」

 

その声に答える存在は、この空間にはいなかった。

 

 

 

 

 

一方ハジメは攻撃が苛烈となったセイレーンに苦戦していた。剣を振るようになってから攻撃範囲が増大し、半端な回避では斬撃を受けてしまう。ハジメの身体は既に『自動修復』を以てしても再生が追い付かない程に損傷していた。

 

(この狭い洞窟内ではあの攻撃を避け切る事は困難…ならば!)

 

ハジメは逃げ回るのを止め相手の攻撃を誘い、セイレーンが剣を振ってきた動きに合わせて朱樺を振り、相手の攻撃を弾く。ガキィィン!という音を立てて剣が弾き返され、セイレーンが隙を晒す。ハジメはそれを見逃さずにアストレイアで撃ち抜く。

 

(この戦術は有効なようだ…!)

 

ハジメは続けてリーブラで連射する。体制を立て直したセイレーンが再度攻撃を仕掛けてくるが、ハジメは今度はリーブラで攻撃を弾き、アストレイアを撃つ。セイレーンは弾き返された勢いを利用し、縦斬りを行うが、これも返される。

 

「■■■■■■■■―――!」

 

セイレーンは叫び声を上げると、赤潮に剣を突き刺し、広範囲の爆発を起こす。ハジメが防御態勢を取り、爆発の勢いを利用してその場を離脱するが、その頃にはセイレーンは赤潮に潜っていた。ハジメが警戒していると、足元からセイレーンが強襲する。咄嗟に回避するも、続けて剣の刺突攻撃が襲い掛かる。ハジメはどうにか朱樺で攻撃をずらし、自分はアストレイアの反動で移動する。

セイレーンはその攻撃を何度も繰り返すが、動きを見切ったハジメが攻撃を弾き、アストレイアでカウンターをする。セイレーンは疲れ切ったかのように動きを止め、そこにハジメのリーブラによる追撃が襲う。

 

このまま押し切れるか、とハジメが思った時、セイレーンが再び動き出し、斬撃の衝撃波を飛ばしてくる。ハジメは咄嗟に回避するが、セイレーンは宙に浮かび上がる。

 

(何をする気だ…?)

 

訝し気に思いながらも、ハジメは攻撃を続ける。しかし今回に限ってはそれは悪手であった。

 

「■■■■aaa■■■a■■a■■■―――!」

 

セイレーンは叫び声と共に全方位に衝撃波を放った。オマケに叫び声も破壊音波であるため、防御態勢が間に合わなかったハジメは二重の攻撃をくらってしまった。

身体が麻痺し、武器が弾き飛ばされたハジメ。セイレーンは剣による刺突攻撃を繰り出してくる。ハジメはかろうじて動く右腕でアストレイアを撃つと、転がるように避ける。ついでに武器も拾い直し、攻撃態勢を取った。

 

セイレーンが再び剣で薙ぎ払ってくるが、ハジメは攻撃を弾き、アストレイアで剣を撃つ。セイレーンの手から剣が弾け飛ぶが、セイレーンはそのままハジメに向かって走ってきた。

 

「安らかに眠れ…」

 

ハジメはリーブラを持った左腕を支えにアストレイアを放つ。冥福を祈りながら、せめて二度と辛い悪夢に目覚めないように。

 

 

 

 

電脳空間から目覚めた香織は、両手に痛みを感じ、そちらを見る。すると両の掌には黒い棘が刺さっていた。香織は自分の全身を見るが、どうやら何かに磔にされているようである。そこは暗く狭く、冷たい場所であった。

 

「ハジメくん…」

 

こんな時でも香織はハジメを求めてしまう。なんて虫の良い話だろうと自虐する。自分はハジメが奈落へと落ちた原因を作った爆弾魔で、彼を助ける事もできなかったのに。しかも香織は幻影とは言え、ハジメの事を刺し殺し、死体蹴りの如くメッタ刺しにした。

 

「ふふ…あはは…」

 

香織は自分自身を嗤う。磔…彼を殺した自分にこれ以上ないほど相応しい。

 

「・・ ・―・・ ーーー ・・・― ・ ―・ーー ーーー ・・―」

 

香織は泣きながら歌う。もう彼に逢う事は二度とないだろう。一生逢う事はないだろう。だから彼を殺した咎人は、思い出の掃き溜めに歌を捨てる。あと何回彼の事を思い出せるだろう。自分が死ぬのはいつだろうか。きっとその頃には何もかも忘れてしまっているのだろう。彼の全てが好きだった。シエルブルーのような輝きも、花緑青のような儚さも、時折見せる青嵐のような荒々しさも……

全てが今失われてしまった。それが悔しくて、悲しくて、香織は泣き続け、歌い続けた。

 

 

香織がそうして暫く経った後、香織の目の前の黒い壁に罅が入る。何かと思い香織が目を向けると、銃声と共に再び壁が割れ、小さな穴が開いた。そこから見えたのは、

 

「ハジメくん!」

 

銃を手に闘うハジメの姿だった。彼が目に入った瞬間に、香織の中に狂おしいほどの渇望が生まれる。逢いたい、手を繋ぎたい、抱きしめたい、話をしたい、その口で、その声で名前を呼んで欲しい。

 

「う、ああああああああああ!」

 

香織は磔にされた手を引き抜く。激しい痛みが身体を駆け巡るが、そんな事は気にならなかった。右手が抜けると、壁の穴が閉じようとしていることに気付く。

 

「―――!」

 

香織は左手が刺されたまま右手を伸ばし、壁をこじ開ける。そのまま左手も引き抜き、自分を捕らえる牢獄から出ようとする。しかし力が足りず、壁は塞がっていく。

だがそこに再び銃声が響く。同時に壁が壊れ、香織は弾かれたように外に出る。

 

「ハジメくん!」

 

 

 

 

 

ハジメは打ちひしがれていた。死闘の末セイレーンを撃破したハジメだが、それは自分の恋人を殺してしまったという事でもある。彼女を助けられなかった自分の無力さを、暢気に奈落を歩き回っていた自分の愚かさを恨む。異重合核を取り込むことを厭わなければ、あるいは自分は更なる力を手にし、香織を助け出せたのではないか。そんなありもしないifを考える。

 

「―――くん!」

 

ハジメは耳を疑った。今聞こえた声は香織のものだった。だがハジメはそれを幻聴だと判断した。自分はまだ彼女の死を受け入れられていないようだと自嘲する。

 

「ハジメくん!」

 

……幻聴ではない。今度はハッキリと聞こえた。ハジメが顔を上げると、そこには失ったはずの最愛の姿があった。

彼女は、香織はセイレーンの身体から飛び出し、ハジメのもとに走ってきた。そして躊躇いなくハジメに抱きつく。

 

「香織…なのですか?」

 

自分を抱きしめる少女は泣きながら答える。

 

「うん…!そうだよ。ハジメくん!逢いたかった!逢いたかったよ!」

 

香織はハジメを抱きしめながら答える。ハジメは彼女の声を聴いて確信する。この少女は自分の最愛の恋人であると。そしてハジメは彼女に答える。

 

「僕も、逢いたかったですよ、香織」

 

そしてハジメは、香織を抱きしめた。

 




めでたく再会。さすがにNieRよろしくマルチバッドエンドにはしません。アレはアレで特有の美しさがあるけど、書いてる方が鬱になる…
もしそれを期待してくれていた方がいらっしゃったらごめんなさい。

オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように

  • 修理して連れていく
  • 見なかったことにして放置する
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