いやー、『花』のインパクトが強いですね(笑)。最早バッドエンドの代名詞とも言えるNieRシリーズ&DODシリーズ。今作はそれを敢えてハッピーエンドにしようじゃないかと言う(ふざけた)精神で書いております。
ハジメ達の迷宮攻略は続く。ハジメ達に時間の感覚は既にないので、どれくらいの日数が過ぎたのかはわからない。それでも、驚異的な速度で進んできたのは間違いない。数学者なんだから計算しろよと思うかもしれないが、意識を失っていた期間もあるため正確に算出するのは不可能である。
その間にも理不尽としか言いようがない強力な魔物と何度も死闘を演じていた。
例えば、迷宮全体が薄い毒霧で覆われた階層では、毒の痰を吐き出す二メートルの虹色のカエルや、麻痺の鱗粉を撒き散らす蛾に襲われた。『自動修復』が無ければ探索しているだけでヴァルハラに辿り着いただろう。機械生命体も当たり前のように出現する。意外とワールドワイドな奴ららしい。地上や迷宮表層の個体よりも知能が高いのか、身の回りの毒物を武器に塗って襲い掛かってきた。ハジメが攻撃を受けた時、神経を直接侵され激痛を齎した。念のために回収しておいた魔石で異重合核を作り、取り込まなければ、ヒドラの毒矢を受けたケイロンのように永遠にもがき苦しんでいただろう。機械と化した身体でも痛覚は存在するようである。
なお、香織に対して異重合核を近づけてもハジメのように勝手に取り込まれるというような事は無かった。これはセイレーンと化したときに多数の魔物や機械を取り込み、魔石や機械生命体のコアを大量に取り込んでしまった故に人間でいうところの空腹感を感じなかったからであるが、当人達はそんな事は知らない為、異重合核は今のような緊急時以外はあまり取り込まない事にしている。とはいえ機械化した魔物達と闘えば勝手に取り込まれてしまうが…
「大丈夫?ハジメくん」
「なんとか痛みは治まりましたね。しかし僕の射撃と香織の破壊音響を掻い潜って来るとは…」
「しかも音を察知できない敵もいるし…厄介極まりないなあ」
この階層では出来る限り遠距離攻撃で制圧し、出来る限り敵に近づかないようにして突破した。
また香織の右眼に咲いている白い花だが、香織曰くしっかりと両目分の視界があるらしい。また、花に物が触れても特に痛みは感じず、敵の攻撃で破損してもいつの間にか修復されている。奈落に落ちた直後よりも増えたハジメの技能によって鑑定してみると、どうやら見た目通り植物細胞に近似しているようだ。
香織が言うには何かを吸われているとか、寄生されているような感覚はしないらしい。それがかえって不気味だが、現状ではどうしようもない。まさか無理やり引っこ抜くわけにもいかない。
探索を続けていると、地下迷宮なのに密林のような階層に出た。物凄く蒸し暑く鬱蒼としていて今までで一番不快な場所だった。この階層の魔物は巨大なムカデと樹だ。突然頭上から巨大なムカデが降って来た時は香織はショックで戦闘不能になりかけた。しかもこのムカデ、体の節ごとに分離して襲ってきたのだ。数珠玉と節足動物を足して2で割ったらちょうどこの魔物になるだろう。
一心不乱にチェロやヴァイオリンを弾き続け、魔物を倒していく香織。
彼女の武器は地上で使っていた『ウーベルチュール』の改良版であり、名を『ワルドマイスター』という。授格者となってから魔法の発動に詠唱や魔法陣を必要としなくなったため、その分のソースを別のところに回している。ハジメはこの武器を作るときに地球の電子楽器を思い出した。エレキギターなどが有名だが、ヴァイオリンやチェロにも電流で音を出す物は存在する。思い立ったが吉日、ハジメは錬成師と数学者の技能を総動員してその機構を作り上げた。電池の役割を果たすのはパニシングの力である。また、チェロのままでも良かったのだが、素早い敵が相手では機動力に欠けるためヴァイオリンVer.も作った。こちらの名は『オディリア』という。
余談だが、これを作るためにかなりの集中力を要したために香織の事をほったらかしにしてしまい、感謝はしつつもヤキモチを焼いた彼女が暫くハジメから離れなくなってしまった。
「もう嫌ぁぁぁぁ!」
香織が泣き叫びながらヴァイオリンを演奏し、彼女の周りに現れた魔法陣から無数の光弾が飛び出る。その魔弾はムカデに着弾すると白い花のような爆発を起こした。空中に咲き乱れる白い花にハジメは見とれたが、同時に明らかに演奏者の技能ではないその攻撃に首を傾げていた。授格者と化してから見た香織のステータスプレートには『ウタ』という技能が追加されていたが、それによるものだろうか。
だが得体は知れないながらも役に立っている事は事実。奈落から生還するためには手段を選んでいられない。
「えっぐ…ひっく…」
「よしよし」
ムカデの殲滅を終え、泣きついてくる香織を慰めるハジメ。嫌悪感が先だったのか、香織の方がキルレートが高かった。
やたらと美味な木の実を投げてくるトレントのような魔物もいたが、ハジメが『重合爆発』で殲滅した。因みに木の実はきっちり回収しておいた。
その後、一通りこの階層を探索し、次の階層へ向かおうとした所で問題が起きた。次の階層への通路の前に二体の機械が陣取っていたのだ。白い球体に四本の黒い脚が生えており、見た目はさながら脚の少ない蜘蛛という感じである。しかもそこそこデカい。
「…また虫?」
香織が嫌そうな顔をして呟く。蜘蛛恐怖症というわけではないが、好き好んで見たいものでもない。
「無視して進めればいいんですけどね。虫だけに」
「………………」
香織が凄まじいジト目を向けてくる。ハジメとしては場を和ませるために鈴の真似をしてみたが、彼女の場合は見た目効果もあったのだろう。「冗談です」と取り消した。
暫く様子を見ても蜘蛛達はどく気配が無いため、こちらから仕掛ける事になった。しかしハジメ達が物陰から出ると、敵『異合探査ユニット』はすぐに察知して攻撃を仕掛けてくる。二体のユニットは四本の脚を一点に集中させ、ドリルのように回転しながら突っ込んで来る。二人はそれぞれ躱しながら、ハジメはアストレイアによる銃撃、香織はオディリアによる魔弾を撃ったが、それ程効いていない。実はこの異合探査ユニットにはそれぞれ『抗物理』『抗魔法』というバフが付いており、二人はそれぞれが耐性を持つ攻撃を加えてしまったのだ。
今の攻撃がそれ程効いていない事を悟った二人は装備をセインとワルドマイスターに変更。四本足で踏みつけてくる探査ユニットに熱の弾丸による掃射とチェロのエンドピンによる刺突攻撃を行う。今度は攻撃が通り、二人は勝機を見出す。
しかし探査ユニットも黙って殴られているばかりではない。二体は脚を折りたたみ、ハジメと相対しているモノは突撃してきて、香織と相対しているモノは距離を取り、レーザーを放ってくる。
「ハジメくん!」
「了解」
二人は回避すると同時にスイッチし、標的を変える。香織はワルドマイスターから磁場の渦を放出し、『抗物理』を持つユニットを引き寄せると同時に攻撃する。さらに突撃して楽器本体で横薙ぎし、弓を回転させながら投げて連続攻撃を加える。全てに電流を纏わせているため問題なく効果を発揮し、敵を倒すことが出来た。
一方ハジメも『抗魔法』を持つ探査ユニットにアストレイアによる狙撃を放つ。これは実弾による攻撃なので阻害される事は無い。リーブラによる制圧射撃も交えて探査ユニットに攻撃を続けるハジメ。
しかしここで異変が起こる。なんとハジメが放った銃弾が跳ね返ってきたのだ。咄嗟に『超速演算』を使って避けるハジメ。因みに『超速演算』は脳の処理能力を強制的に上昇させる技能であるため、過使用は禁物。トータスに飛ばされた初期よりも効果時間や使用頻度は増やせるが、むやみやたらに使えるわけでもないのだ。
ハジメは自分の銃弾を避けた後に敵の方を見ると、敵の脚が回転し、バリアのような物を展開していた。先程の現象を振り返るに、おそらく攻撃を反射する類のものだろう。「ふむ…」とハジメは思案する。こうなってしまうと自分が持つ銃器の類はほぼ無効化されたと考えていい。『熱操作』で周囲の温度を上げるか下げるかしてゴリ押すのも一つの手だが、もっと簡単に済む方法がある。
「香織」
「はーい」
ハジメは先に敵を倒していた香織を呼んだ。そして香織は『破壊音響』で敵を押し潰す。あのバリアも流石に音圧までは弾き返せないらしく、為す術なく潰された。
こうして二体の異合探査ユニットは倒され、ハジメはまた新たな兵器製作に取り掛かった。
その後もハジメ達は階層を突き進み、五十階層まで到達する。実のところ奈落に落ちてから一カ月近くは経過しているのだが、地上への出口どころか
ハジメ達は此処で作った拠点にて、鍛錬や装備のアップデートを行っていた。というのも、階下への階段は既に発見しているのだが、この階層には明らかに異質な場所があった。
それはなんとも不気味な空間であり、脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有った。その両脇には槍と盾を持った二対の石像が鎮座している。そして扉の前に槍を交差させていた。
ハジメ達は期待と嫌な予感を両方同時に感じていた。あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる。だが、しかし、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。
「パンドラの箱…ですね。待ち受けるのは絶望か希望か」
「聞こえてくるのは
自分達の今持てる武技と武器、そして技能。それらを一つ一つ確認し、コンディションを万全に整えていく。
扉の部屋にやってきたハジメは油断なく歩みを進める。特に何事もなく扉の前にまでやって来た。近くで見れば益々、見事な装飾が施されているとわかる。そして、中央に二つの窪みのある魔法陣が描かれているのがわかった。どうせ、けったいな鍵が要るんだろう。
「なんでしょう、これ。それなりに勉強したつもりですが…」
「ハジメくんが知らないとなると、相当古い式なのかな?」
低いステータスを補い、武具の製作の為に座学に力を入れていたハジメ。無論、全ての学修を終えたわけではないが、それでも、魔法陣の式を全く読み取れないというのは些かおかしい。ハジメは推測しながら扉を調べるが特に何かがわかるということもなかった。いかにも曰くありげなので、トラップを警戒して調べてみたのだが、どうやら今のハジメ程度の知識では解読できるものではなさそうだ。
「仕方ありません。このようなやり方は好きではありませんが、強行突破です」
やはり謎解きゲームを作っている身からすると好ましくはないらしい。ただ今は趣味にこだわっている場合ではない為、『錬成』でこじ開ける事にする。しかしその途端、
「きゃっ!?」
「おっと…」
扉から赤い放電が走りハジメの手を弾き飛ばした。ハジメの手からは煙が吹き上がっている。『自動修復』で直っていくが、直後に異変が起きた。
突然扉から赤い電子回路のような模様が走ったかと思うと、両脇の石像に入り込み、二体が動き出したのだ。
「様式美…ですかね」
扉の前から離れ、セインとワルドマイスターで攻撃するハジメ達。しかし石像はそれでは倒れない。そして二人の脳裏に警告信号が響く。
WARNING ヘンゼル グレーテル
「少し面倒な相手のようだ…」
「ちょっと長めの演奏になりそう」
しかし、幾つもの修羅場を乗り越えてきたハジメ達は恐れを為さなかった。
「アダージョ」
「アンダンテ」
「「演奏開始!」」
こういう事してるから話が進まないのである。直す気はありませんが。まあこういう余計な戦闘はちょいちょい入れていくので気長に宜しくお願い致します。
備忘録
ワルドマイスター/オディリア:パニグレのセレーナの武器。名前は前者は香草の一種、後者は花の名前、もしくは人名らしい。セレーナのチェロ以外の武器はフルートだが、作者の趣味と「自分が弾いてる楽器の方が書きやすい」という理由でヴァイオリンとなった。
異合探査ユニット:パニグレの敵の一種。奈落で何を探査していたのやら。プレイヤーからは嫌われている。
ヘンゼル&グレーテル:NieR Replicantのボス。今作では背景ストーリーは無い。
オルクスの隠れ家の作りかけのメイドロボの目が瞬く。まるで何かを伝えようとするかのように
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修理して連れていく
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見なかったことにして放置する